藍色宇宙(メイキング)
藍宇のDVDに特典として入っているメイキング。「藍色宇宙」という題名もロマンチックな響きで素敵だけど,内容がまた素晴らしい。ある意味,本編より感動ものだ。
まず最初に驚いたのが,撮影風景や作品中の印象的なシーンに被さるように,挿入される胡軍(フージュン)さんと劉燁(リウ・イエ)のコメンタリー。普通のメイキングの場合,撮影秘話や演技上の苦労や役作りの工夫など,役者本人の気持ちが語られるものだけど,このメイキングは違う。胡軍さんも劉燁も,役の中の人物になりきって,物語のその折々の場面で藍宇として,また捍東として感じたことを語っているのだ。これは嬉しかった。
台詞の少ない本編だけでは推察しきれなかった二人の気持ちが言葉で表現されると,「ああ,あのときの藍宇はこう感じていたんだ」「捍東の気持ちはこんな風に変わっていったのか」と,主人公たちへの理解が深まり,二人への愛しさも増す。
特に劉燁が演じた藍宇の気持ちがわかると,この物語ってなんて切なさが増すんだろう!捍東と初めて出会ったとき・・・・・彼に捨てられたとき・・・・そして,偶然の再会から愛が再燃するとき・・・・それぞれのシーン,劉燁の言葉で綴られる藍宇の心の声。
特に好きなのは,藍宇の部屋で酔いつぶれた捍東を起こすシーンの藍宇の気持ち。彼の捍東への深い愛情が,たまらなく切なく心に沁みてくる。・・・しかし,このような心境がサラリと口を突いて出てくる劉燁という俳優の感性にも,空恐ろしいほどのものを感じるけれど。
いったいこの懐かしさは何だろう。愛する人と過ごしたあの頃の感覚が戻ってくる。あの頃と同じ寝顔,僕が何年も思い続けた人だ。・・・・彼に抱きしめられた。一瞬で昔に戻ってしまった。一緒に過ごした頃に感じていた空気。声もまなざしもすべて昔のまま。だから,昔に戻るのに言葉はいらなかった。気持ちを確かめる必要もない。熱い誓いも甘い囁きも何もいらない。必要なのは心だけ。
ジョニー・キャッシュの曲「Spiritual」(歌っているのはジョシュ・ヘイデン)のシンブルで美しい調べを背景に,捍東が回想するさまざまな藍宇のシーンが連続して流れる場面に来ると,私はいつも号泣モードに心地よく突入。
それにしても胡軍さんも劉燁も,スクリーンの中では完全に捍東と藍宇として生きていたんだ,とあらためて脱帽。そうでないと絶対に出てこない迫真の泣かせるコメントばかり。
スタンリー・クワン監督の演技指導にも驚いた。とにかく細かいと言うか,ねちっこいと言うか。(←褒めてます) 特にラブシーンを指導するときの,監督のこだわりといったら!手の動きの順番まで細かくダメ出しする監督の指導に,比較的柔軟に対応している(ように見える)劉燁に比べると,ちょっと困惑した(ようにも見える)生真面目な表情の胡軍さんの様子がまたツボで。
カットされた二人のシーンも随所に入っていて,二人が絡むシーンは,とにかく全部観たかったのに~!と,悶々とすることしきり。
私は本編と,このメイキングをいつもセットで観て,そして毎回メイキングの方で泣いてしまう。本編で飽和状態になった涙が,メイキングで一気に溢れる感じだ。今まで出会った作品のメイキングと言われるものの中で,最も愛してやまないメイキング・・・それが「藍色宇宙」。・・・・画質がイマイチなのだけが,唯一残念だけど。
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