容疑者Xの献身
TVドラマの「探偵ガリレオ」シリーズは未見だ。
しかし,原作である東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」は,話題作だったので一読している。(詳しいところは忘れてしまっていたが,愛する女性のために完全犯罪を実行した天才数学者の物語・・・ということは記憶していた。) 原作では,小太りでまったく冴えない男・・・という数学者「石神」を,ハンサムな堤さんが演じると聞いて俄然興味が湧いてきて・・・。
あらすじ: 惨殺死体が発見され、新人女性刑事・内海(柴咲コウ)は先輩と事件の捜査に乗り出す。捜査を進めていくうちに、被害者の元妻の隣人である石神(堤真一)が、ガリレオこと物理学者・湯川(福山雅治)の大学時代の友人であることが判明。内海から事件の相談を受けた湯川は、石神が事件の裏にいるのではないかと推理するが……。(シネマトゥデイ)
いや~何てったって,堤さんの変貌ぶりに驚いた。
原作を読めば読むほど,「もう,堤さんじゃ,ルックスの点だけでミスキャストでしょう!」と懸念していたのだが。・・・・だって石神がこの犯罪を犯したのは,隣人のシングルマザー,花岡靖子(松雪康子)への崇高と言えるほどの片思いのゆえなのだ。そして,そんな一途な秘めた愛を抱く根暗な数学者は,断じてハンサムであってはならないからだ。・・・・全身から「モテないオーラ」がぷんぷんと匂ってくるような人物でなければいけないはず・・・。
しかし,この作品の石神を演じた堤さん・・・・見事にご自分のイケメン・オーラを消すことに成功されていた!その立派な体格なんかはどう変えようもないのだけど,背中の丸め方,洋服のちょっとだらしない着方,とぼとぼとした歩き方・・・そして何より,その自信のなさそうな,無気力そうな表情と,聞いてる方が思わずイラつく,辛気くさいしゃべり方!・・・な,なんて地味なんだ!
そして,どうしたんですかぁ~,その目?と聞きたくなるくらい,なぜか始終腫れぼったい瞼(泣きはらした後みたいに・・・・)いやはや,クライマーズ・ハイの,あの精悍な堤さんとはまるで別人で。
佇んでいるだけでファッションモデルのように麗しい福山さんと並ぶと,まさにその「冴えない」「不器用な」「孤独な」「変人の」キャラが際立っていた。いや~,この堤さんを見れただけでも,この作品を観てよかったと思った。
この作品の見どころって,石神の仕掛ける,完全犯罪のなぞ解きだけではない。天才物理学者である湯川と,天才数学者である石神の知恵比べも面白いし,友人を追いつめなければいけない湯川の,内心の苦悩や葛藤など,心理的なドラマも深いものがある。・・・そして何といっても鑑賞後に,心に強烈に訴えかけてくるのは,それほどまで犠牲を払った石神の「靖子に対する思いの深さ」だろう・・・。
なぜ石神は,靖子のためにそこまですることができたのか?
彼女とその娘は,孤独で潤いのない石神の人生に
いったい何をもたらしてくれたのか?
ラスト近くの彼の号泣シーンは圧巻だ。
顔をくしゃくしゃにゆがめて,声を振り絞って慟哭する堤さんを,ぜひしっかりと観てほしい。数学しかこの世に持っていなかった孤独な男が,生まれて初めて抱いた「愛する対象」を,どんなにいとおしく思い,生きがいにしてきたか。靖子たち母娘の幸福こそが,彼の生きる目的だったということが,堤さんの狂おしい泣き顔から切々と伝わってくる。
TVシリーズはもっと軽妙なテイストらしいが,この映画版は原作の持つ雰囲気に忠実に,真摯な人間ドラマに仕上がっていたようだ。TVシリーズを観たことがない私は比べることができないけど。
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