何曜日に生まれたの
ドラマはあまり観ない私が、あの「VIVANT」よりハマッてしまったドラマ。昨日最終回を観て、まだ余韻にひたっている。このドラマ、スタート時は「VIVANT」の陰に隠れちゃってなかなか話題に登らなかったけど、じわじわと人気が出てきて、最終回が終わったときには視聴者から「名作!」「今期最高のドラマ!」というコメントがネットで続々と出ている状況だ。
私は日曜の「ナニコレ珍百景」と「ポツンと一軒家」にゲスト出演した飯豊まりえさんがドラマの番宣をされたのを観て、そのタイトルに惹かれて最初から観始めたのだけど、予告編の印象からは何となく「ミステリかしら?」と期待していた(ミステリ好きだし)。それに脚本があの「高校教師」の野島伸司さんだというではないか!私はリアルタイムでドキドキヒリヒリしながら観ていた世代だからね、「高校教師」も「人間・失格」も。だから不穏で不道徳な社会問題をテーマにした物語かもしれないとちょっと身構えていたのだけど・・・。ちなみにざっくりとしたあらすじは以下の通り。
高校時代、バイク事故をきっかけに引きこもりになった黒目すい(飯豊まりえ)。ある日、売れない漫画家であるすいの父・丈治(陣内孝則)は、人気ラノベ作家・公文竜炎(溝端淳平)とのコラボ漫画を描くことになる。そして、その主人公のモデルに指名されたのがすいであった。この依頼を受けることにしたすいは、高校の同窓会をきっかけに、元サッカー部の旧友たちと再会する。そして、10年前の事故の真相が明らかになっていく…(ウェキペディアより引用)
このドラマの魅力のひとつは何といっても、冒頭とラストの印象が180度変わり、驚きと何とも言えない爽やかな感動に包まれたこと。最初は不穏で重苦しい雰囲気満載で始まった。ひきこもりのヒロイン黒目すいは、締め切った暗い部屋でボサボサの頭とくたびれたスウェット姿で、とりつかれたようにゲームをしているし、売れない漫画家の父に毒舌美人編集長(シシド・カフカ)が持ちかける人気ラノベ作家とのコラボが、ひきこもりの娘をモデルにピュアなラブストーリーを描こうという・・・なんじゃそれ?のストーリー設定にはいささか違和感があったのだが、すいが引きこもる原因となった10年前のバイクの事故の映像が、思わせぶりなモノクロで挿入されたりするものだから、真相を知りたいという誘惑に逆らえず、2話目も観てしまった・・・・そして、見事にハマった。
さすが野島さんだなって思ったのは、毎回「ええっ?」と声をあげたくなるような驚きの場面を仕掛けてエンディング曲に繋げること。いやでも次回が気になって仕方なくなるし、それまで思い込んでいたストーリーや登場人物の印象が、がらっと変わったりするので、展開から目が離せなくなる。毎回、プチ衝撃のラストで終わってくれるこの感じ、あの「高校教師」と同じで、もちろんあちらは「プチ」ではなくまさに「衝撃」の連続だったけど。
ドラマの前半は主な登場人物がそれぞれ闇を抱えていて、自己中な行為で傷つけあっているように思え、登場人物みんなに共感できなかった。元サッカー部員たちがすいにした仕打ちは残酷だったし、再会してからも親友の瑞貴の態度も悪女そのものだったし。すいをモデルに小説を書こうとする公文竜炎も盗聴や監禁なども平気でして、相手の心理の痛いところにもどんどん土足で踏み込んでいく「ヤバい人」に見えたし・・・。
印象がガラリと変わったのは、10年前のバイク事故のときにすいと純平を病院に運んでくれたのが、実は公文だったことが明らかになった回あたりから。え?これってすいちゃんが引きこもりから救われるだけじゃなく、陰の主役は公文センセだったの?というあたりから面白さが加速。それからの二転三転ぶりからの、本物の純愛ストーリーへの着地は見事だった。
曲者だらけに見えた登場人物たちが、みんな力を合わせてそれまでの「恩返し」とばかりに公文を救うトラップを仕掛ける。結局みんな善人で、みんな幸せになり、そしてこの上なく素敵で愛おしいカップルが誕生するラストは、深夜にもかかわらず一人で大拍手。不穏で暗いスタートだっただけに、大団円のラストはそのギャップからか感動もひとしおだった。伏線の見事な回収といい、良く練られたストーリーといい、毎回ラストに驚きの仕掛けが用意されていることといい、ほんとにこれはあっぱれな脚本!終わってみるとただただ唸ってしまった。
主要登場人物たちはみんな素敵でいい演技。特にこのイケメン三人組。それぞれの個性が立っていて、それぞれ抱えているものもあって、それでもラストの回ではみんな素晴らしかった。他人を思いやる余裕などなかった思春期を超えてみんな素敵な大人になって、相手を想いやることや力を合わせることの大切さに気付いたのかな。
それにしても、主演の飯豊まりえさん、陰の主演の溝端淳平さん、このお二人の演技が特に素晴らしかった。まりえさんは前半と後半では真逆のキャラに変貌しなくてはならないし、溝端さんは繊細で脆い三島公平というキャラの上に冷徹?な公文竜炎の仮面を被っているわけだから、いわば二重人格のようなもの。まりえさんが暗くていじけた雰囲気としゃべり方からどんどん本来の明るく素直な女の子に戻っていくのが見事だったし、溝端さん演じる物に動じない冷静な公文が、意に反して三島公平の素の顔をのぞかせる瞬間の演じ分けも素晴らしかったと思う。
まりえさんと溝端さんはかつて、「祈りの幕が下りるとき」でも共演している。二人の絡みはなかったけど、その時から心に残っている俳優さんたちだった。今作の二人は本当にすごく魅力的で、これからもずっと応援していきたいなと思った。
ブルーレイの円盤が発売されると知って、お高いけど予約しちゃいましたよ!何度でも観直したい神ドラマ決定です。
最近のコメント