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カテゴリー「映画 ま行」の29件の記事

2018年7月 1日 (日)

万引き家族

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先週、劇場で鑑賞。カンヌでパルムドールを獲っただけあって、樹木希林さんやリリー・フランキーさん、安藤サクラさんたち演技派の俳優陣による熟練した演技と、重く切ないテーマに深い感動を覚えることができた。素晴らしい作品だ。

演技もよかったが、取り上げられている社会問題が、現代の日本が抱えている実は切実なものばかり。高齢者所在不明問題、実の親によるネグレクト、JKの風俗店バイトなどなど、実際に救済の手が回りかねている社会問題で、いわば日本の「暗部」「恥部」といっても過言ではない。

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東京の下町に暮らす、柴田一家。
年金暮らしの祖母と日雇い仕事の父。クリーニング店のパートの母と、風俗店で働く母の妹。そして、学校にも行かず、スーパーで父から万引きを指南されている少年。社会の底辺で生きているような、殺伐とした暮らしぶりなのに家族の会話や表情は飄々として明るい。しかし、物語が進むにつれて、何の説明もなしに始まったこの「家族」のメンバーが、実は全員、血のつながっていない他人の集まりであることがわかってくる。

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途中で家族に加わった幼い女児以外の他のメンバーが、いったい過去に何を抱えていて、どんなきっかけと理由で柴田家の一員になったのか、最後まで詳しくは語られない。しかし、誰もが実の家族には恵まれなかったり、築くことができなかったり・・・という事情を抱えていたんだろうなという想像はつく。

家族を作りそこねた者たちによる疑似家族。彼らは、その日その日は楽しく気楽に生きているようだが、実際は犯罪に片足を突っ込んでいたり、就学できてなかったり、というさまざまな問題を見てみぬふりをしているに過ぎない。それはまるで、この作品に描かれている社会問題を、政府が、社会が、見てみぬふりをして先送りしているのと同じなのかもしれない。

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この家族は、祖母の死と、祥太がおこしたある行動がきっかけで、崩壊に向けて動き出すことになる。崩壊というよりは「解散」かもしれない。

それぞれ「本来の」アイデンティティに戻って生きていくことになった彼らの、これからはどうなるのだろうか。少なくとも、祥太少年は柴田家と訣別し、前を向いて歩いていくだろう。それと対照的に、虐待する実の親のもとに戻された少女ゆりの、ベランダから何かをじっと見つめる瞳が切なかった。

2018年4月25日 (水)

女神の見えざる手

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DVDで鑑賞。すごく面白く、同時に胸のすくような作品で大満足!

敏腕ロビイスト、エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は、銃所持を後押しする仕事を断って、大会社から銃規制派の小さな会社に移る。卓越したアイデアと決断力で、困難と思われていた仕事がうまくいく可能性が見えてきたが、彼女のプライベートが暴露され、さらに思いも寄らぬ事件が起こり……。 (シネマトゥディ)

とにかくヒロインのエリザベスが男前でカッコいい。敵ばかりが味方まで欺く戦略の天才。。今まで強い女性は沢山見てきたが、体力や腕力という意味でなく、気力や知力という点ではまさに最強の女性だった。

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ロビイスト(=圧力団体の利益を政治に反映させるために、政党・議員・官僚などに働きかけることを専門とする人々)という職業は、日本では馴染みがないため、ストーリーがわかりにくいかもという心配は杞憂。スリリングで面白く、聞きなれない専門用語を脳内スルーしながらでもストーリーを追える作品だ。ただし、エリザベスが仕掛けた罠の全貌が明らかになり、すべてがひっくり返って逆転ホームランを成し遂げた後、必ず初めから確認のために再見したくなるけれど。DVDだったので私はもちろん再見して二度見した場面がたくさんあった。あ~ここでこれを仕掛けたのね~とかね。

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一番感動したのは、彼女が自分のキャリアを賭けてまで闘ったこと。失うものを恐れずに勝利をつかんだこと。その代償に支払ったものも大きかったけれど、仲間を巻き込みたくないために、仲間を欺いて罪をも一人で被ったこと。これを一人でやりとげる精神力はまさに「神」がかっていると感動。

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私的な家庭生活は無きに等しく、家族も恋人も友人すら必要としないエリザベス。彼女がどんな生い立ちでこれほどの女性になったのか、彼女の過去まで知りたくなる。同じ名前でもあるけど、男前な孤独な闘いに心身を捧げた強い女性としてエリザベス・ゴールデンエイジのエリザベス女王を思い浮かべた。

キャリアのために手に入れることを諦めた私生活や、手段を選ばぬ方法のために傷つけてしまった部下に対する、彼女の内心の思いがちらりと垣間見える場面もあり、彼女が決して氷の心を持った女性ではないことも描かれていた。

2017年11月18日 (土)

マンチェスター・バイ・ザ・シー

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DVDで鑑賞。今年の第89回アカデミー賞で、主演男優賞と脚本賞を受賞した作品。主演はケイシー・アフレック。彼の演技は、心に傷を負った繊細な主人公を演じさせたら、彼の右に出る者はいないと再認識したくらい、見事だった。 

これほどまでに「哀しさ」と「優しさ」が詰まった作品を私は知らない・・・・。

ボストンの便利屋で働くリー・チャンドラー(アフレック)。彼はかねてから心臓病を患っていた兄ジョーの訃報を受け、長い間帰っていなかった故郷(マンチェスター・バイ・ザ・シー)に帰郷する。そこは、彼にとって、幸せな思い出とともに、それをはるかに上回る重すぎる過去がある町だった。

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葬儀のあと、リーは自分が兄の遺児パトリックの後見人に指定されていることを知る。しかし、遺された甥と一緒に暮らすには、この町はリーにとって辛すぎる思い出のある場所だった。それでも今後の方針が決まるまでの間、リーとパトリックは、時には衝突し、時には不器用にいたわり合いつつ、ぎこちない同居生活をスタートさせる。

この町では暮らせないリーと、ここで築いてきた交友関係や思い出との訣別を嫌がり、リーの住んでいるボストンに引っ越すことを拒否する思春期のパトリック。最愛の父親を亡くし、再婚した母には頼れないパトリックの寂しさと、深いトラウマを抱えたリーの痛み。二人とも哀れで、二人とも切ない。

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挿入される回想シーンで、徐々に明らかになるリーの過去。それは、自分の過失から愛児を喪うというあまりにも痛ましいもので、癒えることは一生不可能だと思えるものだった。リーを責め、去っていった妻のランディとの再会。演じるミシェル・ウィリアムズは出演シーンは多くないのに、なんと印象的で見事な演技をすることか。

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これは過去のトラウマからの再生の物語ではない。辛すぎる過去を乗り越えられない主人公と、彼を取り巻く親しい人たちの物語だ。かつて自分がリーを責めたことを赦してほしいと涙するランディ。弟や息子を気遣いつつ逝った兄のジョーと、兄弟の友人で、パトリックの養父になってくれるジョージ。 容赦のない哀しみは厳然と存在するが、ひそやかな優しさもまた存在することが慰めとなっている。

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ラストシーン、ボストンに帰るリーと、残るパトリックの、道を歩きながらのやりとりが心に沁みる。二人とも実は一緒にいたいんだな・・・・それを素直には表現できなくて、でもお互いの気持ちは通じ合っているんだ・・・という感じがよく伝わってきた。

「乗り越えられない・・・辛すぎる。」と言ったリーの気持ちはよくわかる。ほんとうによくわかる。軽々しく頑張れなんてとても言えない。ただ黙って彼の肩を抱いてあげたい。いや、それすら憚られ、ただ見守りながら祈り続けたい…そんな気持ちになった。、時やパトリックの存在が、彼の悲しみを少しでも癒す日は来るのだろうか。折に触れて生々しく疼く痛みは、きっと生涯、消えることはないだろう。それでも前を向いて生きていってほしいと思った。

2017年8月23日 (水)

ムーンライト

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9月にはDVDリリースされるそうだけど、遅ればせながら劇場で鑑賞。第89回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞に輝いた本作品は、登場人物の心情が丁寧に描かれた美しいヒューマンドラマだった。

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マイアミの貧しい母子家庭に生まれた少年シャロン。売春で生計をたてる母は麻薬中毒でシャロンはどこにも居場所はない。麻薬売買が行われる地域で不良少年たちから逃げ隠れするシャロンはフアンに助けられ、心を開かないシャロンの面倒を見続けるフアンとパートナーのテレサはやがてシャロンの養父母の役割をするようになる。しかし、フアンもまたその生業は皮肉にも麻薬ディーラーだった。

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思春期になっても母のネグレクトは続き、息子から金銭を巻き上げる場面も。弱くて孤独な彼は、学友からの執拗な虐めも受けている。そしてゲイである自分への気づきと、ただ一人の親友ケヴィンの存在。彼との美しい一度だけの思い出と裏切り。心にも体にも傷を負ったシャロンは、意を決して不良たちに反撃する。

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青年期のシャロンは一転して体を鍛え、皮肉なことに自分もまた麻薬ディーラーの道を選んでいた。麻薬によって体を壊した老いた母との和解したてシャロン。そして彼は、ずっと心の中に封印していた相手、ケヴィンとも再会を果たす。

シャロンの幼少期、少年期、青年期を演じている俳優はそれぞれ別々の俳優。リトルと呼ばれた幼少期を演じた子役のアレックス・ヒバートと、思春期のシャロンを演じたアシュトン・サンダースは顔立ちが似ているし、心を閉ざし、おどおどした雰囲気もよく似ている。しかし、青年期を演じたトレヴァンテ・ローズは雰囲気も体つきもマッチョになって随分と違う感じだ。・・・・外見は。
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しかし、たくましい青年のシャロンのまなざしや表情から、やはり少年期のシャロンと同じ内面が覗くから不思議。その瞳の奥に存在するのは、傷つき続け、愛に飢えた孤独な魂だからだろうか。物語の背景は貧困、麻薬、暴力といった過酷なものだが、これは人種や民族、性別などを超えた普遍的な愛の物語だと感じた。静謐でシンプルなストーリーだけに、それぞれの俳優たちの繊細で確かな演技が際立っていた。

2017年3月20日 (月)

ミッドナイト・スペシャル

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「ラビング 愛という名前のふたり」「MUD マッド」ジェフ・ニコルズ監督・脚本のSFスリラー。DVDで鑑賞。これ、日本では非公開だったのだろうか。新作コーナーからチョイスしてレンタル。消化不良のところもあったけど、全体としてはなかなか面白かった。

冒頭から始まるのは、緊迫感あふれる深夜の車での逃避行劇。

登場人物の背景の描写はほとんどない。逃げているのは、一人の少年とその保護者らしき二人の男性。少年は夜なのにゴーグルをつけ、さらに布をかぶっている。男性は一人は少年の父親で、もう一人は父親の知り合いで協力者らしい。TVのニュースによると、彼らは「誘拐犯」として指名手配されているが、これには政府機関が絡んでいるようで、彼らが追っているターゲットは、犯人の大人ではなくて、この少年のような感じがする。

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少年の名はアルトン。どうも超能力があるらしい。そして父親のロイを演じるのがマイケル・シャノン。父親の幼馴染で逃避行を助けて同行する役にザ・ギフトのジョエル・エドガートン(最近ほんとに活躍)。

さらに、少年アルトンは、政府機関だけでなく、「牧場」と呼ばれるカルト教団からも追われている。政府機関は、少年の能力を国家を脅かすものとして拘束・調査しようとしているみたいだし、カルト教団はやがて起こる世の終わり?から逃れる手段としてアルトンの能力を利用できると考えている・・・らしい。

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「・・・らしい。」とか、「・・・ようだ。」という書き方ばかりになって自分でも歯切れが悪いのだが、この作品、あえてそうしているのだとは思うけど、すべてにおいて説明不足なのだ。何もわからないまま逃避行を手に汗握りながら見守り続け、ストーリーが進むにつれて謎が解けていくかもという期待はみごとに裏切られた。その点はとても消化不良。

少年アルトンの能力。
それは「目から光を出す」「いろいろな交信ができる」「予知能力」「自分を監視している衛星を落とす」など、多岐にわたる・・・というか何でもありって感じもする。こんな人間がいたらそりゃ政府としては拘束していろいろ調べたくもなるだろう。カルト教団も、もともと少年の両親が所属していた集団らしいので、そりゃ少年の力に無関心でもいられないだろう。追われるのは仕方ない。

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出演陣はなにげに豪華で、少年の母親にキルステン・ダンストが、政府機関に雇われたNSAの専門家に、沈黙ーサイレンスーアダム・ドライバーが扮している。

アルトン少年には、決められた日時に行かなければならない場所があるらしい。政府に追われるのも大変だが、アルトン少年自身もなぜか体調がどんどん悪くなって弱ってきているし・・・・。そんな中で、彼の父親(マイケル・シャノン)と母親(キルステン)、ロイの友達(エドガートン)の三人は命をかけて少年を守りながら、その目的地までなんとかアルトンを届けようとする。

物騒な銃撃なんかに対抗しないで、話し合う余地って皆無だったのか?とか。そもそも宇宙人レベルの超能力を持ったこの少年が普通の地球人の夫婦からなぜどのようにして生まれたのか?とか。逃避行に至るまでどんな出来事があったのか、とか。頭のなかは疑問でいっぱい。そこ教えてほしい!という点が山のように出てくる。
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アルトン少年は可愛いです。ちょっとハリポタのダニエル君のようです。

で、この子が異次元の世界からこの地球に来たことと、最後に元の世界に帰っていっちゃったことは予想通りだった。そう、まるでこれは・・・・竹取物語のようだ。地球の両親はさしずめ、満月の夜に月に帰ったかぐや姫を見送る翁と媼のよう。

それならそれで、またまた疑問がいっぱい。

何しに来たの?この地球に。
ヒドゥンのように何か使命があったから送り込まれたの?
それともかぐや姫のように何かの罪を償うために一時的に追放された?
それともそれとも単なる実験かミステイク?
そして、なぜ彼らが両親に選ばれたの?なぜ?なぜ?なぜ?

などなど そこが知りたいのに~!ということばかり。

しかし、これだけ書き込み不足にも関わらず、この作品、なぜが退屈せずに面白く観れてしまうところが凄いかもしれない。わからないこといっぱいなのに、それをスルーしても一向に平気な不思議な魅力がある。最近の凝りまくりのSF作品に食傷気味なら、かえって新鮮かもしれない。書き込み不足のところは、それぞれが勝手に想像すればそれはそれでまた楽しいのかも。

2017年3月 5日 (日)

未来を花束にして

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本日鑑賞。
20世紀初頭の英国での,婦人参政権論者サフラジェットの活動を描いた作品。ロマンティックで洒落た邦題とは裏腹に重く暗く,考えさせられる内容だったが,女性なら観ておくべき作品だと感じた。もちろん男性にも観てほしいが。

主人公のモード・ワッツ(キャリー・マリガン)は,低賃金と劣悪な環境のもと,洗濯工場で働く平凡な女性で,夫のサリー(ベン・ウィショー)と幼い息子のジョージとともに,ささやかな家庭を築いていた。

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7歳の時から洗濯婦の仕事につき,女性の参政権など,「もともと無くて当たり前」だと疑問にも思わなかった彼女が,活動家のイーディス(ヘレナ・ボナム・カーター)との出会いや,議会の公聴会で友人の代わりに証言したことをきっかけに,運動にかかわっていくようになる。
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キャリー・マリガンは今作ではナチュラルメイク?すっぴん?とにかくアイメイクをほとんどしていないので,素朴であか抜けない感じ。(それでも十分可愛らしいが)でも,それがとても役の雰囲気に合っていた。子供の時からの働きづめの生活,男性よりも労働時間が長いのに男性よりも低賃金で,健康を損なう重労働に加えて工場長からのセクハラ・・・そんな待遇に慣れてしまっている忍耐強く悲しげな表情。そんな彼女が,公聴会での証言をきっかけに「もしかしたら,異なる生き方があるのかも・・・」と思うようになる。

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「もし,娘が生まれていたら,どんな人生かな?」と夫に問いかけたモード。その問いに対して事もなげに,「君と同じさ。」と答えた夫。女に生まれるということは,未来に何の可能性もないということ。自分の人生だけでなく,これから生まれる娘たちすべての人生も。もしかしたら,モードが集会やデモに参加しようと決意を固めたのはあの夫のセリフを聞いたときではないだろうか。
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サフラジェットの投石や爆破などのテロまがいの活動は,一見過激すぎて賛同しにくい面も確かにある。活動のリーダー,エメリン・パンクハースト(メリル・ストリープ)の「言葉ではなく行動で!」という主義は,同じサフラジェットの中でも賛否両論があったようだ。

しかし,何十年も穏便な方法で訴え続けても何も変わらなかった事実があるからこそ,過激な行動によって注目させるという手段を取ったのだろう。テロ活動なので当然活動家たちの払う代償も大きい。度重なる逮捕と投獄,警官からの暴力。そして獄中のハンガーストライキに対して取られる強制摂食。まさに命がけの運動だったのだ。
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モードもまた大きな犠牲を払う。夫から強制的に離縁されて家を身一つで追い出され,息子を取り上げられてしまうのだ。参政権と同じく,男性にしか認められていない親権。だのに,自分では育てられなくて息子を養子に出す夫。なんと理不尽なのかと思うけれど,夫もまた妻と同じ職場で雇われている身としては仕方がなかったのだろうか・・・・。「ママの名前はモード・ワッツ。いつか見つけに来てね。」と,モードが涙ながらに息子と別れる場面は辛かった。

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強い信念と長い年月と,大きな犠牲を払って勝ち取った権利。エンドロールで,各国で女性が参政権を勝ち取った年が表示されたけど,ごく最近やっと女性の権利が認められた国もあった。日本は戦後に与えられたものだから「勝ち取って」はないのかな・・・・。自爆テロのような方法はともかくとして,今は当たり前のように手にしている権利を,こんな風に命がけの運動で獲得してきたなんて,知らなかったし,知ることができてよかったと思う。

2017年2月18日 (土)

マリアンヌ

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第二次世界大戦下の1942年のモロッコ。夫婦を装ってナチスの要人暗殺の任務についたケベック出身の空軍情報員マックス(ブラッド・ピット)と,フランスの女性工作員マリアンヌ(マリオン・コティヤール)。二人は任務を通して恋に落ち,結婚して娘をもうけ,ロンドンで幸せな生活を送っていたが,ある日妻のマリアンヌに二重スパイの疑いがかかる。もしそれが事実なら,「妻を自分の手で始末するように」との指令を上官からうけたマックスは,妻の無実を証明しようと奔走するが・・・・。

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物語の筋はわりと先読みしやすく,終盤になって驚愕のどんでん返しなどもない。あー、やっぱりこう来てこういう結末よね・・・・という感じに終わったので、ストーリーは王道かもしれない。それでもマリアンヌの秘密が明らかになっていく見せ方はサスペンスフルでどきどきする。

この作品の見所のひとつは、ブラピとマリオンのカップルのゴージャスぶり。なんといっても,お二人とも華があり,それに加えて演技派でもあるから。戦中戦後(1940~1950年代)のファッションは,男性も女性もとても素敵だと常々思っていたけど,この作品の二人も最高に美しく,そしてまあ似合うこと似合うこと!
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軍服も似合うブラピ

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はぁ~~~ ため息 なんて美しいのlovelyマリオン・・・・

ブラピは,久々に(失礼)ダンディで麗しいです。50歳過ぎてるなんてとても見えない。特殊メイク?それとも単に髭を剃ったから?ベンジャミン・バトンのころのブラピを見ているようで,ほんとこのひとかっこいい~~。

マリオンも41歳だなんて!ラストシーンの彼女の表情はまるで少女みたいにも見えた。ロング・エンゲージメントで初めて彼女を見てから10年はたっているのに,老けるどころかますます美しくなっている。
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恋人や妻が敵のスパイかも・・・という物語はあの有名な韓国映画「シュリ」を少し思い出した。「シュリ」では実際に恋人を撃ち殺してしまうが,この作品は・・・・。それはネタバレなので書かないけど,悲恋ということで,予想はつくと思う。「シュリ」の場合は相手が婚約者だったけど,この物語は妻で二人の間に子供までいたので余計に切ない。

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実話がベース・・・というよりは,実際にあったらしい出来事をヒントにして作られた物語らしい。国籍の違う工作員同士が任務がもとで結婚し,後に妻が二重スパイの疑いがかかった夫婦が実際にいたんだね・・・・。なんともシビアな世界だなぁ。

この時代,ネット情報もメールもないから,妻が偽名を使っているかどうか確かめるのに,夫は妻の写真を持って問い合わせに奔走する,というところも,顔や雰囲気は似ていても決め手になるのがピアノを弾けるかどうか,だった・・・とかいう展開も面白かった。

ブラピの作品の中では,かなーりお気に入りの一つになりました。ちなみに今までの彼の作品で好きなのは

ベンジャミン・バトン 数奇な人生
トロイ
③インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
セブン

で,5番目くらいにこの作品が来ますね。

2015年8月16日 (日)

ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション

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どこまで続くのかこのシリーズ,そしてどこまでエスカレートするのか,50代になってもなお限界に挑戦し続ける天晴れなトムの命知らずのアクション・・・・絶対に絶対に劇場で鑑賞したいこのシリーズの作品,夏休みの時期に公開してくれて嬉しい限り。

あらすじ:正体不明の多国籍スパイ集団“シンジケート”をひそかに追っていたIMFエージェントのイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、ロンドンで敵の手中に落ちてしまう。拘束された彼が意識を取り戻すと、目の前に見知らぬ女性と、 3年前に亡くなったはずのエージェントがいた。拷問が開始されようとしたとき、その女性は思わぬ行動に出る。 (シネマトゥディ)

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いやー,やはり面白かった。
私的には,前作ゴースト・プロトコルを超える面白さとまでは言わないが,やはりすごく面白い!冒頭からトムの「クルーズ走り」の後はノースタントの軍用機張り付きアクションが展開され,いきなりこんなハイテンションで始まって,あとあと息切れしないの?と心配になったが,監督・脚本がユージュアル・サスペクツクリストファー・マッカリーだけあって,先の見えない展開続きで最後まで緊張の糸も途切れず,謎解きの面白さも十分すぎるほど。

ローグ・ネイションとは「ならず者国家」という意味だそうで,世界平和に対する脅威を画策する国家や体制」のこと。この作品でイーサンが追うローグ・ネイションは,死んだことになっている元エージェントたちが集結した多国籍スパイ集団「シンジケート」。後ろ盾になるはずのIMFは解体の危機にあり,相変わらずイーサンは国際手配されてたりして,孤軍奮闘なのはお約束通りの展開。
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今作で一番注目せずにおれなかったのが,↑のお方。
イーサンを拷問から救い,その後も敵なのか味方なのか立ち位置が謎のままイーサンと一緒にシンジケートを追う美女イルサ。実は彼女はシンジケートに潜入中の英国の諜報員なのだが,このイルサを演じた女優さん(レベッカ・ファーガソン)が,身体能力も美しさもお色気も凄い。今までのこのシリーズの中でも一番魅力的なヒロインかもしれない。スウェーデン出身の,碧眼の惚れ惚れするほどの正統派美人さんだが,華麗な太ももさばきで敵を締め上げて殺したり,男顔負けのバイクアクションをこなしたりする最強の女性エージェントだ。
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そのほかにも,このシリーズではおなじみになっているベンジーやルーサー,ブラント(ジェレミー・レナー)たちもしっかり脇を固め,特に今作ではベンジー(サイモン・ペッグ)が大活躍している。

新作が出るたびに過去のミッション・インポッシブルも再見してみるのだが,思えば20年も続いているこのシリーズ,これだけ回を重ねても,主役も交替せず面白さを保っているというのはすごいことだと思う。ひとえにトムの頑張りのおかげか。彼も今さら地味なヒューマンドラマにも戻りにくい俳優さんだと思うので,これからもスパイものやSFものでアクションをし続けるしかないのかもしれないけど,その路線で頑張ってほしいよね・・・・。できる限り。やっぱりかっこいいもの。アクションしているトムは。

2015年8月 1日 (土)

めぐり逢わせのお弁当

O0434062013055348053マダム・マロリーの魔法のスパイスに続いて,インド料理が食べたくなる映画をもう一つ。こちらは従来のインド映画のイメージとは違って,とても繊細で静かなラブストーリーだ。お弁当に登場するインド料理が美味しそうなのは言うまでもなく,この映画の鑑賞後ももちろん,インド料理専門店に足を運んだし,映画に出てきたインドのお弁当箱も欲しくなった。DVDで鑑賞。お気に入りで何度も観ている作品だ。

この物語の背景には,インド特有のダッパーワーラーという弁当配達業の存在がある。

Title_2インドでは,三食をきちんと調理したあたたかい食べ物を食べるという文化があり,文化や宗教が入り交じっているインドでは,タブーとなる食べ物が人それぞれに違うことから,必然的に昼食は,外食ではなく家庭で調理した弁当を食べる労働者が大多数を占めるそうだ。お弁当は「ダッバー」と呼ばれる金属製の弁当箱に入れて,「ダッバーワーラー」と呼ばれる配達人に集められ,お昼に届けられる。下の画像はダッバーというお弁当箱。金属製のお椀にそれぞれ違うおかずが入れられて,汁ものも漏れない。これを保温機能のある袋に入れて届ける。
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ダッバーワーラーたちの届け間違いのミスは1600万回に1回、驚異の低エラー率なのだが,なんとこの物語は,このダッバーワーラーの届け間違いによって起こる設定になっているから面白い。ある日,妻イラの作ったお弁当が,全然違う見知らぬ男性のもとに間違って届けられる・・・・。イラの夫はそれまで妻の弁当に感想も感謝もなく,完食することもなかったのに,その日イラの手元に帰ってきたお弁当箱は綺麗に完食されていた。

はじめは夫がやっと完食してくれたのだと喜んだイラだが,帰宅した夫の話の食い違いから,食べたのは別の人だと気づく。普通はその地点で配達会社に苦情を入れ,翌日からは正確に夫に届くようにするものなのだが,イラはそうしなかった。かわりに「食べてくれてありがとう」という手紙を弁当箱にしのばせるのだ。こうして,夫に顧みられない寂しい人妻イラと,早期退職を目前にした男やもめのサージャンの間に,お弁当箱を介した手紙のやり取りが始まる・・・・。

10295731_729435773773903_5617187558顔も知らない相手とのお弁当箱を介しての不思議な文通。顔も知らない他人だからこそ打ち明けることができる,ささやかな悩みの数々。次第に生まれていく親愛の情。やがて互いに実際に会いたいと思うようになる二人。この設定は,手段こそ違えど,「ユー・ガット・メール」の二人のいきさつややり取りのようで・・・・。いや,こちらは「お弁当」を作ってあげてるぶん,実はもっと絆が深まっているのでは?と感じた。

毎日毎日,相手の顔や心情を思い浮かべながらお弁当を作り続けるって・・・やっぱり関心や好意を持っている相手にしかできないよね…普通。特にその相手が喜んで食べてくれるなら,余計に気持ちは深まっていくと思う。これって,食べてもらえる相手に対して思い入れや親愛の情がないとなかなかできない。(プロは別としてね。)

Img_cast02食べるほうもまた,赤の他人の手作りを毎日食べ続けるって,もちろん味がとても美味しかったのも理由の一つではあるかもしれないけど,作り手に対して気持ちがないとできないよね。両者の間に生まれた,プラトニックでありながら疑似夫婦のようなときめきは,妻を亡くして殺伐とした生活を送っていたサージャンの心に潤いを与え,夫に愛されないイラの生活にも張り合いを与えてくれるものだったに違いない。

Img_introで,いよいよ二人が「実際に会いましょう」という展開になって,これはプラトニックから一気に進展するのかしらと思ったら,サージャンの方が待ち合わせ場所まで出向きながらも,結局イラの前に姿を現すことなく帰ってしまう。彼を思い止まらせたのは,唐突に自覚した彼自身の「老い」による気後れ。それは,洗面所で気がついた祖父と同じ匂い(加齢臭?)や,電車の中で若者に席を譲られそうになった出来事など。若いイラの前に姿を現して失望させるのが怖くなったのだ。うーーーん,すごくなんだか・・・よくわかります。その気持ち。そして会うことがないままサージャンは転勤する。「良い夢を見させてくれてありがとう」という言葉をイラに残して。

物語はサージャンの部下の青年との,心温まるエピソードも盛り込みながら,インド映画には珍しく始終ゆっくりと静かに進んでいき,結局白黒つけないまま・・・というか,イラがはたしてサージャンの元へ行くのかどうかわからないまま,余韻を残して終わる。

O0600040013055348051イラは思いを綴った手紙を実際にサージャンに出せたのだろうか?行動に起こしたかどうかはともかく,それまで自分を顧みてくれない夫へ向けられていた彼女の心が,そんな寂しい呪縛から解放されたことだけは,確かだと思う。

心にじんわり沁み入るようなプラトニックラブのお話。それも大人のしっとりとした・・・・こういう作品大好きだ。花様年華恋におちてのような。

イラの手紙に書かれた,「人は間違った電車に乗っても正しい場所に着く」・・・・いい言葉だなぁ。運命とか宿命とかを感じさせる言葉。でも個人的には間違った電車に乗ったら別の場所に着いて,それもまた面白いというか受け入れて生きていくのも場合によってはありかも・・と思うのだけど。この言葉がこの物語の中でイラの口から語られると,サージャンへの確固たる愛のメッセージに思えてしまう。彼女のたどりつくその場所には,果たしてサージャンは居るのだろうか・・・。

2015年5月 6日 (水)

マダム・マロリーと魔法のスパイス

Mv5bmtq3mjg2mte4m15bml5banbnxkftztgラッセ・ハルストレム監督作品で主演は大好きなヘレン・ミレン
劇場でも観たし,DVDも購入し,加えて原作も買って読んでしまった。感想を書くのは今ごろになってしまったけど,とっても素敵で美味しそうで,心があたたかくなる大好きな作品。ストーリーもテーマも異なるけど,同監督の「ショコラ」に少し感じが似てるかな。

インドで曾祖父の代から飲食店を営んでいたハッサン・カダム一家は、繁盛していたレストランと母を,暴徒の襲撃によって失ったことをきっかけに故国を後にする。彼らは英国滞在を経てから欧州に渡り,家財道具一式を積み込んだ車で,落ち着く先を探して旅をするうちに,南フランスのとある片田舎にたどり着く。

Mv5bmtq4mdu1ndkwnf5bml5banbnxkftz_2そこでハッサンのパパは,通りすがりに目にした売り家の田舎屋敷を気に入り,家族の反対や心配を押しきってその屋敷を買い取りインド料理レストラン「メゾン・ムンバイ」を開店することに。 しかし、あろうことか,その屋敷と道を隔てたお向かいに建っていたのは,マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)経営のフレンチ・レストラン「ル・ソール・プリョルール」。それは,ミシュラン一つ星を獲得した有名老舗レストランだった。
1421381792924「マダム・マロリーと魔法のスパイス」なんていうファンタジックな邦題のお陰で,なんか魔法使いの出てくるお伽話のようだが,この物語は一言で言えば異文化(ことにその中でも食に関する文化や伝統)の対立と融合をテーマにしたものなんだろう。

インド料理VSフランス料理。味や調理法だけでなく、お店の内装からBGMからサーブの仕方からすべて天と地ほど違いのある文化だ。そして戦闘を率いるのは家長であるハッサンのパパVSマダム・マロリー。始めに仕掛けたのは,「この土地に下品なインド料理なんて!」と怒り狂ったマロリーの方だが、迎え撃つパパもなかなか強烈なキャラクターで負けていない。どちらも長年の経験とプライドと頑固で一徹な性格の持ち主ゆえ、互いに一歩も引かない。面と向かっての喧嘩はもちろん,食材の買い占め合戦やら町長への直訴やら…スタッフ同士の反目も加わって両レストランの競争は加熱していく。

Mv5bmjm2nti1nzuznl5bml5banbnxkftztgそんななか、シェフとして生まれつき天才的な腕を持つハッサンと,マロリーの店の副シェフのマルグリットは,互いに淡い恋心を抱く。食に関して柔軟な発想と好奇心をもつハッサンは独学でフランス料理の勉強をし,マロリーは彼の才能に密かに衝撃を受けることになる。いわば「敵」である彼の中に,たぐいまれな料理人の才能を感じ取ったマロリーは,最初こそ落ち込むものの,やがてその才能を伸ばし,生かしていこうと決心する。

マロリーの意識の変化とハッサンの橋渡しのおかげで,反目していた両家の間には和解と親愛の情が生まれ,マロリーの店に修行に行ったハッサンは,伝統的なフレンチにオリジナルのスパイスを加えて次々に新しい味を生み出していく。マロリーの店はハッサンを迎えてから悲願だった2つ星を獲得し,ハッサンはパリの斬新な店に引き抜かれることになり…。
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ハラハラドキドキする場面や展開も程よく盛り込まれてはいるが,あくまでよく効いたスパイス程度で、全体にはとても優しく、あたたかくて最後は大団円!という物語に仕上がっていた。しかし,出てくる料理のなんと美味しそうなこと!ハッサンの鳩のロティとオムレツ,特に食べてみたい… そんなわけで 映画の帰りに立ち寄ったのはもちろん,タンドリ料理が食べられるインド料理専門店でした。

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映画の後に読んだ原作は、読みごたえ十分で,特にハッサン一家のインド時代の出来事や,料理の師匠としてのマロリーの存在や,さまざまな食材や料理がハッサンの視点で綴られていて,長尺な物語でも少しも飽きずに楽しく読めた。ただ、映画と違う設定も多々あり,小説ではマロリーとパパの間にはロマンスは発生しないし,ハッサンもフレンチにインドのスパイスを加えた料理を作り出したりはしないけれど。映画はハルストレム監督独自のほのぼのスパイスが加えられて、味わい深い癒し系グルメ作品に仕上がっていたような気がする。

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