カテゴリー「映画 ま行」の19件の記事

ミケランジェロの暗号

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これは面白い!おすすめ。
ヒトラーの贋札のスタッフが,ユダヤ人であるポール・ヘンゲの実体験を基に執筆された原作を映画化したもの。異色のナチスものは多々あるが,「こんな史実もあったんだ~」と楽しめるだけでなく,純粋にストーリーが面白い。サスペンス仕立てにもなってるし,途中の展開もハラハラドキドキの見せ場もあるし,最後は「してやったり」というカタルシスも味わえる・・・・作品の雰囲気は違うが,鑑賞後の痛快感が,大好きな暗い日曜日と似ていた。

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あらすじ:
ユダヤ人美術商の一家に代々伝わるミケランジェロの絵画をイタリアのムッソリーニに送り付け、優位な条約を結ぶ材料にしたいナチス・ドイツは絵画の強奪に成功するも、贋作であることが判明。一方、本物の絵を隠した一家の息子ヴィクトールは、父親が遺した謎のメッセージを受け取っていて家族の命を守るためナチスと駆け引きをしようとするが……。(シネマトゥディ)

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主人公のユダヤ人青年ヴィクトールを演じたのは,ノッキン・オン・ヘブンズ・ドアでとぼけたアラブ人を演じたモーリッツ・ブライブトロイ。収容所に入れられていた時もあるという設定なのに,彼が最初から最後までちっともやせておらず、むしろ,やや太り気味なのが妙に気にはなったが,なかなか味のある実力派の役者さんだ。

ミケランジェロの絵画を何とかナチから守り抜こうと知恵を絞った画商とその息子。彼ら一家に可愛がられて育ったにもかかわらず,ナチに入党し彼らを裏切ったドイツ青年ルディの密告により,ヴィクトール一家は収容所に送られ,絵画はナチの手に。
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しかしそれが実は贋作だったことがとわかり,本物の有り場所を吐かせるために,ナチは収容所のヴィクトール尋問しようとする。本物の在り処を知る唯一の人物だったヴィクトールの父親は,すでに謎の遺言をヴィクトールに残してこの世を去っていた。絵の在り処など知らないまま,尋問へと移送されるヴィクトール。しかし移送途中のヘリが墜落し,彼と護送役のルディだけが生き残った時ヴィクトールは,今も収容所に囚われている母を助け出すために,一か八かの賭けに出る。
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この,ヴィクトールが捨て身でナチとの駆け引きを始めてからが,とにかく面白くて目が離せない。裏切り者でどこまでも卑劣なルディとヴィクトールの対決や,途中からこの駆け引きに参加するヴィクトールの恋人レナとの絡みなど,先の読めない展開にハラハラしつつ,そして根っこにはやっぱり「で,本物のミケランジェロはいずこに?」という謎があって,最後まで緊張感や期待感が持続する。ヴィクトールの作戦が何度もバレそうになりながらも,運の良さやなにやらでなかなかバレずに上手く進むあたり,手に汗を握る。あまりに上手く行く展開に「ほんまに実話?」と首をかしげつつ,やはり面白くて。
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同じスタッフ作でも,ヒトラーの贋札よりこちらがエンタメ色が強く,見やすいかも。それは,この作品が,結局ハッピーエンドと言うか,勧善懲悪の色合いがあるからかもしれない。

ラストシーンの,ヴィクトール一家がルディに対して,静かに「逆転満塁ホームラン」を宣言するかのような笑みを満面に浮かべて去っていくシーンは,心憎くて何度でも観たくなるシーンだ。

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ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル

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ミッション・インポッシブルシリーズ4作目!このシリーズは,前作でイーサンが婚約者を助けて無事に引退したところで終わってたんじゃないのか?と思いつつ,やっぱり好きなので観に行った。

あらすじ: ロシア・クレムリン爆破事件の犯行容疑がかけられたイーサン・ハント(トム・クルーズ)。アメリカ大統領は政府の関与への疑いを避けるべく、ゴースト・プロトコルを発令。イーサンと仲間は組織から登録を消されるも、新たなミッションを言い渡される。真犯人への接近を図るイーサンは、世界一の高層ビル、ブルジュ・ハリファの高層階へ外部からの侵入にチャレンジするが……。(シネマトゥディ)
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前作とうって変わって,今作ではやたらと暗く厳しい表情のイーサン。冒頭から彼はロシアの監獄に収監されてて,あんなに仲の良かった奥さんはなぜか影も形もなく・・・・。でも憂いを帯びてちょっとくたびれた雰囲気のイーサンもなかなか素敵だ。彼の脱獄から物語は始まり,そこからはノンストップでインポッシブルなミッションの連続で息つく暇もなく面白かった。それはもう,盛り沢山すぎるほど,不可能なミッションの連続で。

ゴースト・プロトコルってなに?と思いながら観たが,これは「やり取り」「手順の指示」などを意味するプロトコルの前にゴーストがついているので「空指令」「孤立無援」のような意味合いだろうか。
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本部の指令を受けてクレムリンに潜入したイーサンだが,盗み出す予定の資料は何者かに抜き取られた後で,おまけにその後起こった爆破の犯人にまでされてしまう。そのためにイーサンのチームは政府から援助を受けることができなくなり,まさに孤立無援で新たなミッションに挑むことになるが,それは核戦争をもくろむある人物を追い,核テロを未然に防ぐというものだった・・・・。

このシリーズが回を重ねる度に,「トム,まだアクション大丈夫なんだろうか?」と作品のストーリーそっちのけで心配になる私だが(だって彼はスタント使わないし49歳だし)今作の見せ場のアクションは,ドバイの超高層ホテル,ブルジュ・ハリファの壁面,なんと地上約800メートルを吸盤手袋ひとつでよじ登るというもの!命綱一本でトムはあれを実際にやったというから,凄すぎて言葉もない。
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その他にもこのシリーズにお約束の,侵入も脱出も不可能な場所に,最新のテクノロジーを駆使した兵器を使って潜入する指令とか(今作ではクレムリン),「クルーズ走り」と呼ばれるイーサンの全力疾走とかも健在で,やはりそんなシーンではワクワクと血が騒ぐ。

それに今作は脇役の存在感や,彼らの背後にあるちょっとしたドラマなども,いい味を出しているし,絶妙なタイミングで入るジョークもセンスがよくて秀逸だった。3作目では技術屋として登場したベンジーが今回エージェントに昇格してユーモラスな役まわりで笑わせてくれる。
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イーサン・チームに今回参加した,分析官(実は元諜報員)のブラントを演じたのは,ハート・ロッカージェレミー・レニー。性格はちょっと繊細で,あるトラウマを抱えているキャラなのだが,キレのいいアクションは,やはりハート・ロッカーの猛者ぶりを思い出した。

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このシリーズはどれも好きだけど,この4作目が一番よく出来てるんじゃないだろうか。スパイアクション,人間ドラマ,ユーモアのセンス,俳優のキャラ立ち・・・どれをとってもバランスよく仕上がっている。面白い。

それにしても,前から思ってはいたけど,トムが高いところ,本当に得意goodだってことがよ~~くわかった作品だった・・・・彼は実はその気になれば空も飛べるんじゃないかな?なんて。

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ミスター・ノーバディ

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さまざまな異なる運命の選択をすることによって,何通りもの人生を生きる男を描くSFドラマ。
舞台は不死の世界となった近未来。唯一残った死を迎える人間ニモの過去を回想し,彼の人生に関わった3人の女性とのそれぞれの運命を映し出すユニークな設定のファンタジーだ。パラレル・ワールドのお話だから,ストーリーも先が見えなくて面白いし,驚異的に映像が美しいし・・・俳優さんもジャレット・レトやダイアン・クルーガ―とかみんな好きなので・・・・私はとってもお気に入りの作品。

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この作品を観て,つくづく人生って選択の連続なんだなぁ・・・・と思った。そしてその選択の結果が全く異なる人生へと自分を導くものなのだとも。「もし,あの時,違った選択をしていたらどうなっていただろう。」と考えることは誰しもあるだろうけれど,それを実際に映像化して何通りもの「ニモの人生」を観客も同時に見ることができるなんて,面白い設定だと思った。
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どの選択をすれば・・・というよりは,「どれも選択しなければ,どんなことが起こりうるか?」って言うのを見せてくれたわけで,いったいどれが本当のニモの人生なのよ?って混乱はなはだしいけれど。

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「もしあの時,ああしていたら今頃は・・・・」という思いは,人生が折り返し地点を過ぎた私のような年代の方が,切ない共感が多いかもしれない。長く生きるほど,人生の選択場面は増え,同時に異なった運命を生きる自分の姿を想像する機会も増えてくると思うから・・・・たとえ現在の人生に取り立てて不満がなかったとしても。
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ニモの場合,最初に大きな選択の場面が訪れたのは両親の離婚のとき。母についていくか,父と残るか・・・駅のプラットホームで,土壇場まで迷って母の乗る列車に向かって駆け出したニモのスニーカーの紐が切れるか切れないかで・・・,もうそこで彼の運命は枝分かれする。その後どんな暮らしをしてどんな女性を愛するかも・・・・。

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ニモと関わる三人の女性,アンナ,エリース,ジーン
・・・・。彼女たちとの人生もまた,折々の選択によっては,別れることになったり,結婚したり,自分や相手が死んだり死ななかったり,幸せだったり不幸だったりと幾通りにも枝分かれしてゆき,それをごたまぜに見せてくれるわけなので,解り辛い面もある。しかしまあ,大筋のところでは,「このニモは誰をパートナーにしているニモなのか?」というのは,彼の髪形や雰囲気をちゃんと決めてくれているので混乱はしなかった。それでもこれ,一度だけじゃ全部のシーンの理解ができないので,何度か再見しているうちに新しい発見がいくつもありそうな作品だと思う。
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アンナ役のダイアン・クルーガーは,いつもの大人っぽくスノッブな印象ではなく,くしゃっとしたセミロングにガーリーなメイクで,素朴で可愛らしい雰囲気が魅力的だった。彼女とニモとの深く堅い絆や結びつきに,ちょっと切ない気持ちになった。また,ニモ役のジャレッド・レトは好きな俳優さんだけど,役作りのために激太りしたり,前髪を引っこ抜いたりという荒業もこなす方なので,今作では本来のカッコいいジャレが見れて嬉しかった・・・かな。彼のブルーのガラスのような瞳が美しい。

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細部はよくわからないところもあるのだけど,音楽も映像も洒落てて美しく,とても惹き付けられる作品だ。日々の些末な選択や偶発する(ようにも見える?)出来事の影響で,こんなにも幾通りもの可能性が私たちの人生に起こりうるんだなぁ・・・と,鑑賞後は不思議な不思議な気分になっちゃった。もし1度だけ過去の選択をやり直せるとしたら・・・・あの時のあの選択だけはやり直す!と心密かに思ったりもして。どんな選択かはもちろん誰にも言えないが。

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モーリス

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以前に,DVD化,もしくは再版してほしい作品という記事の中で取り上げたこの作品,先頃,手の届く価格でHDニューマスター判が再版されて,ようやく念願の購入を果たした。二十世紀初頭の,伝統と階級に縛られた英国で,自らのセクシャリティーに苦悩する,上流階級の若者たちの物語。

いや~,もう10年ぶりくらいですね,これ観たの。
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ハマっていたころは,なんというか,ヒュー・グラントをはじめとする英国美青年heart04たちの美しさと,舞台となるケンブリッジ大学やマナーハウスの醸し出す,格調高くスノッブな雰囲気にひたすら酔っていた記憶が・・・・。でも観返してみると,なかなかに深いヒューマンドラマで,主人公たちが己のセクシャリティーに苦悩するさまからは,花蓮の夏の切なさもまた思い出したりして。

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原作者のE・M・フォースターもまたケンブリッジ大学出身で,彼の小説は,「階級を越えて理解し合おうとする人物たち」を描いたヒューマニックなものが多く,また彼自身も同性愛者であったため,セクシャリティーも重要なテーマとなっている。

同性愛者は逮捕され,投獄された時代の英国。それは同時に,「階級制度」が強固に人々を支配していた時代でもあった。

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上流階級の子弟のモーリス(ジェームズ・ウィルビー)とクライヴ(ヒュー・グラント)は,ケンブリッジ大学の学生寮で出会い,互いに惹かれ合うようになり,社会に出てからも世間や家族には親友と偽ってプラトニックな恋人同士の絆を保ち続ける。

しかし弁護士を志し,着実に上流階級の花道を歩んでいたクライヴは,同窓生のリズリー子爵が,同性愛者として社会的制裁を受けるのを目の当たりにして怖じ気づき,モーリスとの関係を終わらせようと決断,平凡な女性と結婚し政治家になる道を選ぶ。

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一方,クライヴから一方的に別れを告げられたモーリスは悩み苦しみ,自分の性癖は病気ではないかと医師の催眠治療を受け,ボクシングに打ち込んで苦悩を紛らわせる。その後,クライブの屋敷の狩猟番の青年スカダー(ルパート・グレイブス)に性癖を見抜かれたモーリスは,彼と関係を持ち,タブーも階級をも越えてスカダーと共に生きる決心をする。
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当時の社会からは受け入れられないセクシャリティーを,共に抱えていたモーリスとクライヴ。愛し合いながらも,彼らがそれぞれに選択した道は正反対のものだった。

片方は世間と妥協し地位や名誉を守る道を選択し,
もう一方はすべてを捨てて「本来の自分らしく」生きる道を選択する。

クライヴが保身の道を選んだ,というか「選べた」のは,彼が女性との性生活も可能なバイセクシャルだったからかもしれない。それに彼の方が,モーリスよりも社会的地位も高く,失うものが多かったせいもあって,保身の道を選ばざるを得なかったのだろう。

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一方,労働者階級の恋人と同性愛を貫く決心をしたモーリスは,世間から見たら敗者かもしれない。しかし,鑑賞後はなぜか,モーリスではなく成功者としての人生を歩んだクライヴの方に同情したくなった。

ラストシーン,別れを告げて庭園の夜の闇の中に消えていったモーリスを思うクライヴに,妻は「誰と話してるの?」と言葉をかける。その時のクライブの複雑な表情・・・そこに込められた,ケンブリッジ時代を懐かしみ,自分は選び取らなかったものに憧れるかのような寂しげなまなざしが切ない。

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今ではすっかり,ラブコメキングの異名を取って久しいヒュー・グラントが,この作品では正統派美青年として輝くばかりに美しい魅力を放っている。(私はこれで彼のファンになったっけ)

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マディソン郡の橋

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大人の切ない恋愛映画の金字塔。これもまた,私にとっては初見時より,年を重ねた現在のほうが,ずっと心に響く作品だ。

アイオワ州マディソン郡の農家で,夫やティーンエイジャーのこどもたちと平穏に暮らしていたフランチェスカ(メリル・ストリープ)。人生の折り返し地点をとっくに過ぎ,家族のためにだけ生きていた中年の彼女に,突然降ってわいたように訪れた恋の相手は,ローズマン・ブリッジの写真を撮るために町を訪れたロバート・キンケイド(クリント・イーストウッド)だった。
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夫とこどもたちが留守にしている四日間,恋に落ちた二人は夢のような日々を過ごすが,結局フランチェスカは,ロバートと一緒に行かない選択をする。家族を犠牲にするわけにはいかない,一緒に行けば必ずこの恋が色褪せ,後悔する日が来るからと。それきり二人は会うことはなかったが,この恋は二人にとって生涯の恋となる。

初見時にはやや消化不良ぎみだったこの作品だが,フランチェスカの年齢に近くなってから観ると,何と身につまされることか。
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突然目の前に現れた,ミステリアスで自由で,セクシーな雰囲気をまとった男性,ロバート。彼はフランチェスカに,若い頃の夢や情熱を思い出させてくれ,子供たちの母としてより,女として生きる喜びやときめきを甦らせてくれた。

へそくりをはたいて彼のためにドレスを買いに行くフランチェスカの高ぶりは,まるで少女のそれのよう。そしてまた,ロバートを諦めるときの彼女の表情の切なさ。雨の街角で,夫の車を降りてロバートの車へと走っていきたい気持ちを必死で押さえるシーンは何度観ても泣けてしまう。

この作品はもちろん,大女優メリルの上手さを見せつけられる作品だが,硬派の作品専門のようなイメージがあったイーストウッドの,意外なくらいソフトで優しい物腰や声音にも驚かされた。

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それにしても,たった4日間だけの恋を生涯のものとして,その後は一度も逢うこともなく,死ぬまで秘め続け,想い続けるなんて可能だろうか?若い者同士ではなく,人生の様々なことも経てきた年代の二人だからできたことだろうか。

駆け落ちすることを拒み,
4日間の愛を美しいまま心に保ち続けたフランチェスカ。
家族のために捧げたこの身の残りはせめて彼に捧げたいと
遺灰を思い出のローズマン・ブリッジから撒くことを
子供たちに言い残して逝ったフランチェスカ。

あまりにもきれいすぎる,寓話めいた物語のようにも感じるが,このような運命的な恋をしたいという願いは女性なら誰でも持っているのかもしれない。いくつになっても。

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ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

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近年のスウェーデン・ミステリはすごい。
ということで,これは原作を先に流し読みしていた。原作者はスティーグ・ラーソン。世界中で大ベストセラーとなった3部作のうちの1作目だ。劇場では見逃したので,DVDで鑑賞。もちろん期待を裏切らない,面白く完成度の高い作品になっていた。

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あらすじ:
ジャーナリストのミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)は、ある大物実業家の違法行為を暴露し、名誉棄損で有罪になる。そんな彼に目をつけた大企業の前会長が、40年前に疾走した自分の血縁にあたる少女についての調査を彼に依頼する。ミカエルは天才ハッカーでもある調査員リスベット(ノオミ・ラパス)と協力して、未解決事件の真相に迫る。(シネマトゥディ)

原作を読んだときにまず思ったことは,ヒロインのリスベットを映像化するのはけっこう大変だなぁ,ということ。既知のハリウッド女優さんの誰の顔も思い浮かばない,斬新にして魅力的,そして型破りなキャラクターのリスベット。
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天才ハッカーであると同時に,後見人が必要なほどの,いわくつきの過去を持つ男性不信の権化のリスベット。

パンク・ファッションとでもいうのだろうか,登場シーンでの彼女のメイクに魅了される。似合わないのは百も承知だが,黒いアイシャドウ(これは持ってる)と黒いルージュ(これは持ってない)と皮ジャン,私も試してみたくなった。リスベットを演じた女優さんが黒いルージュがとても似合っていたので余計にそう思ったのかも。
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ストーリーが面白いのは,もう原作で知っていたのだが,実際にスウェーデンの荒涼とした自然を背景にテンポよく進む物語からは,ハリウッドものにはない魅力を感じた。

陰惨なシーンも多く,テーマのひとつには,女性を対象にした性犯罪や虐待という重いものもあるのだが(スウェーデンではこの問題は他の国より深刻らしい),鑑賞後に感じる爽快感やカタルシスは,やはりヒロイン,リスベットの行動が痛快だからだろうか。心に深いトラウマを秘めながらも,「やられたらやりかえす」という強さや突き抜けぶりは,同じ女性としては観ていてとても気持ちがいいものがある。
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三部作なので続編もとても楽しみだ。ちなみに原作の方は2作目以降はまだ未読。スウェーデン・ミステリの秀逸さは,他にも「スウェーデンのアガサ・クリスティ」と呼ばれるカミラ・レックベリの「氷姫」を読んだときも感じたが,どんどん映画化してほしい。(「氷姫」は映画化が決定しているそうだけど)その際にはぜひ,ハリウッドの手によるのではなく,スウェーデンを舞台にしてスウェーデンの俳優さんたちを使って。

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マイケル・ジャクソン THIS IS IT

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恥ずかしながらこの年になるまで,マイケル・ジャクソンのステージや映画を目にしたことがなく,彼の歌やダンスがどんなものかも,はっきり知らなかった私。この度の彼の急逝はまことに遺憾なことだけど,ぶっちゃけその急逝と,この映画の製作がなかったら,私はもしかして,一生彼に関心がないまま終わったかもしれない。なんで今まで関心を持たなかったんだろう・・・・。彼の存命中に,もっともっと彼のことを知っておくべきだった。

こんな才能のあるアーティストがいたんだね。
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何をいまさらと笑われそうだけど,彼の声,その動き,パフォーマンスのすべてが素晴らしく,音楽を表現するために生まれてきたとしか言い様がない。

その歌声やダンスの多様な魅力。
しなやかさ,力強さ,甘さと優しさ,躍動感。

私は特に,彼のセクシーな美しい高音に魅せられた。ソフトで繊細なのに,艶と張りがあり,相手のハートを優しくとろかすようなあの声。そして,身体のあらゆる部分を自在に操るダンスにも釘付け。たとえ踊っていないときでも,すべての動きが美しくキマっている人だ。姿勢が美しい。彼の年齢を考えると,これはまさに驚異。

キング・オブ・ポッブ。
史上最高の偉大なエンターテイナー。

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彼に捧げられた数々の称号に納得した。
なるほど彼は,音楽界の宝,いや神と言ってもよいかも,と思う。その才能も,オーラも,カリスマ性も,人を惹きつけてやまない魅力も,いつまでも自分を高め,挑戦し続けるパワーも彼のようなひとは二人といない。

一流のスタッフやアーティストたちをリードして,最高の舞台を作り上げていく,彼の創造力や人柄もまた素晴らしかった。完璧主義なのに気配りの人で,それに何よりもみんなを魅了し,まとめてゆくオーラが凄い。ともに舞台に立つ誰もが彼を愛し,彼との仕事を心から光栄に思っているのが感じ取れた。

彼の提案や指示によって,演奏やパフォーマンスがどんどん進化し,深みを増してゆく有り様は見事。そしてスタッフにかけるねぎらいの言葉の優しさに,彼の人柄が見える。熱気に包まれながらも,和気あいあいとした心地よい現場の空気は,マイケルの人柄が作り出したものでもあるのだろう。
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彼がこの舞台にかけた情熱と愛の大きさを思うと,公演前に唐突に訪れた彼の死は,まことに悔しく残念なことだ。関係者の無念と嘆きの思いは,いかばかりだったろうと思う。

しかしこの映画を観て,きっと世界中があらためて感じるに違いない。たとえこの世を去ったとしても,マイケル・ジャクソンは永遠だと。私もまた,呆れるほど後ればせではあるが,彼に出会うことができてよかったと思う。

彼はまさに,世代や時代を越え,また国籍や音楽ジャンルをも越えて,人々を魅了することができる偉大なアーティストだった。

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マッハ!!!!!!!!

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チョコレート・ファイターでピンゲーオ監督のムエタイアクションものにハマって,こちらを遅ればせながら鑑賞。トニー・ジャーの古式ムエタイに魅せられた!いやー,人間の身体って鍛えればあそこまで出来るようになるのか!この作品も,ノースタント,ノーCG,ノーワイヤー,ノー早回しの正真正銘の身体を張ったアクションだ。深夜,DVDを再生しているPCの画面に向かってこぶしを握りしめ,何度も「うっそー!!!!」と叫んでしまったわたし。(かたわらの猫catがびっくりしていた)

ストーリーは,これもあってないようなもの。もしかしたらチョコレート・ファイターより,もっとシンプルでバカバカしいかもしれないストーリーなのだが,かえってアクションだけに意識を集中して観ることができた。

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タイの寒村で村人たちの守り神として大切にされてきた仏像オンバクの頭が盗まれ,信仰篤い若者ティン(トニー・ジャー)が,村のためにバンコクまで仏像を取り戻しに行くお話。冒頭,白塗りの若者たちが,なんだかわけのわからない木登り合戦をやっているシーンでもう目がテンに。大木のテッペンに結び付けている黄色い布を,一番先に取ったものがチャンピオンらしいのだが,観てるそばから脱落者がボコボコ地面に落っこちてくる。これもスタントなしだとしたら相当痛そうだ。

で,見事優勝したのは,もちろん主人公のティン。ここでまずさりげなく,彼の身体能力の高さが紹介されるのだけど,彼のほんとうの凄さが発揮されるのは,仏像奪還のためにバンコクへ赴いてからだ。

いやー,でもアクションする彼の顔が,時々ハルクに似てると思ったのはわたしだけ?

この作品って,結局見せたかったのは「トニー・ジャーのアクション」だけだったような気がするが,そのアクションがバラエティに富んでるし,後になるほどパワーアップもするので,まったく飽きない。その手足の動きは目にもとまらぬ早技なので,一瞬たりとも画面から目が離せない。
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チョコレート・ファイターのジージャーちゃんの足技に比べると10倍もの迫力と殺傷力がありそうで,彼のひじやひざが,相手の顔面や頭部にめりこんだ時の「ボコッ!」「グサッ!」という音も重く,半端じゃないのだ。(相手役,命がけだね)

数あるアクションの中でも好きなのは,バンコクの街中を,チンピラに因縁をつけられたティンとその相棒のジョージが逃げるシーンのアクション。
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なにもわざわざ,こんな中をくぐらんでも・・・・

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乗用車を馬跳び状態・・・・凄い跳躍力!

その他にも,何人もの肩や頭を踏んで飛び越えるとか,狭いガラス板の間を宙返りして通り抜けたりとか,もうやりたい放題なのだが,これらも実際にやってるんだから凄すぎる。体操選手のような連続宙返りのアクションもあり,まるでオリンピックの床体操を観てるようだった。タイの三輪タクシー,トゥクトゥクのカーチェイスも物珍しかった。(三輪って小回りも効くけど横転しやすいのよね~)

そして,何と言っても凄いのは・・・・
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炎の中からの飛び蹴り!
もうこのシーンに至っては,開いた口がふさがりませんでしたよ。だって,ほんとに燃えてるもん・・・トニーさんの足!いくら仕事とは言え,彼の役者魂というか,度胸にはもう言葉もないし,監督の無謀ぶりにも・・・言葉もない。しかし,そこがこの作品とトニーのアクションの魅力なんだけどね。スタントマン出身の彼だからこそできた離れ業なのかもしれない。エンドロールのNG集で,このシーンで足の火がなかなか消えなくてスタッフが大慌てで彼を追いかける場面もあった。(怖)

最後には無事に仏像も戻って,平和な村で象に乗って凱旋って・・・どこまでもタイだねぇ。ありがたや。

続編の「トム・ヤム・クン!」はなんでも象奪還物語だそうな。これはDVDがレンタル屋になかったので他を探してみようっと。

 

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ミルク

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1970年代のアメリカで,ゲイであることを公言して公職についた政治家ハーヴィー・ミルクの生きざまを描いた伝記映画。2008年のアカデミー賞で,主演のショーン・ペンが主演男優賞を獲得した作品だ。

自分もゲイであるガス・ヴァン・サント監督の渾身の一作。ゲイを差別するアメリカ社会の中で,「ゲイの公民権獲得」のために敢然と闘ったミルクたちの足跡を忠実に再現した,ドキュメンタリー・タッチのストーリーだ。
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日本人,それもノンケの自分は,ミルクという人の存在も,彼らの闘い(それもたった30年ほど前の話だ!)も,これまで全く知らなくて,少なからず衝撃を受けた。アメリカは特に,キリスト教との関係から,あそこまでゲイが排斥されたのだろうが,それにしても彼らを犯罪者や病人扱いして,公立学校の教職から追放しようとまでするとは!

こういった差別意識の行き着く先は,ゲイだけを対象とするには留まらず,女性や高齢者や障害者など,あらゆる弱者への差別へ繋がるものだというミルクたちの主張は,しごく当たり前のことだと感じた。凶弾に倒れたミルクの死後,彼の勇気や信念を受け継いだ闘いの火は,消えることなく燃え続けている。
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これは人権がテーマの映画だといってもよいだろう。それゆえ,伝わってくる感動は,まっすぐで真摯なものがあり,中盤からは膝を正して観ている自分に気がついた。しかし,内容にも感動したが,それ以上に「すごい!」と思ったのは,やはりオスカーを獲ったショーン・ペンの演技だ。

今まで,「アイ・アム・サム」などで,彼が全く別人のキャラになりきれる俳優であることは知っていたけれど,今回の役作りには,ほんとに舌を巻いた。いやまったく,本来はソフトなイメージとは程遠いショーンなのに,もの柔らかな表情や仕草や口調が,どこから見てもゲイにしか見えないのである!なんとも優しくて甘くて,そして可愛いのだ。(エンドロールのときにミルク本人の映像が流れたが,喋るときの癖や動作がショーンの演技とそっくりだった。)いやはや,これはオスカー獲るはずだわ。・・・・実はこの作品を観て,一番感動したツボは,このショーンのなりきりぶりに対してだったりした私・・・。
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あと,彼の仲間たちを演じた俳優さんがよかった。彼の仲間だから全員ゲイの役だけど,それぞれがみんな,とても自然でいい演技をしていた。イントゥ・ザ・ワイルドエミール・ハーシュくん,可愛かった。クルクルヘアとメガネでちょっと別人のような感じだったけど。

そしてこの作品では,政治家としてのミルクの強さとともに,恋人に対する彼の繊細さや愛情深さも描かれていて,恋人を愛するショーンの表情が,これまた切なくなるほど真に迫っていたりするのだが,無名の時からの女房役の恋人のスコットを演じたジェームズ・フランコがなんとも魅力的だった。・・・・こちらもキュート。これまで観た彼の作品(そんなに多くはないけど)の中で一番好きかな~,このスコット役が。
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ちょっとヒース・レジャーにも似てるような気が。

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ミッション

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約20年前の,古い作品だけどご存知だろうか。1986年製作。当時,カンヌでパルムドールを取った作品だ。作中で使われた,ガブリエルのオーボエという美しいモリコーネの曲と,冒頭の,十字架に磔にされた宣教師が滝壺にむかって落ちてゆく,衝撃的な映像が有名だ
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ミッションとは,この映画では,イエズス会が16世紀から18世紀の間に,南米に作った先住民のための伝道村のこと。これは,イグアスの滝の上流に住む,インディオのグァラニー族に対して命懸けの布教と啓蒙を行い,彼らを虐殺しようとしたスペイン・ポルトガル連合軍と闘って果てるイエズス会の修道士たちのお話で,史実(1753年に始まるグァラニー戦争のこと)に基づいている。

しかしテーマは宗教というよりはむしろ,南米の先住民たちへの,非人道的な植民地政策を告発した作品である。

今も残るグアラニーのイエズス会伝道所群down
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当時,スペインやポルトガルにとって,奴隷狩りの対象でしかなかった先住民のインディオたちに文明や学問の光をもたらし,作物を作ることを教え,立派に整備されたプランテーションともいえる見事な伝道村を,いくつも作ったイエズス会の活動は,彼ら支配層にとっては,利害が対立するゆえに,非常に疎ましいものとなっていた。

くわしい歴史背景は省略するが,そんなわけでガブリエル神父(ジェレミー・アイアンズ)がイグアスの滝の上流に築いた,地上の楽園のようなミッションは立ち退きを迫られ,イエズス会の本部からも「引き揚げよ」との命令が出されるのだが,グァラニー族を愛する伝道士たちは,彼らといっしょに抵抗する道を選ぶ。

対照的に描かれているのが,アイアンズが演じるガブリエル神父と,デ・ニーロが演じるメンドーサ。
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自分の部下(冒頭の滝壺のシーン)を殺したグァラニー族に伝道するために,単身イグアスの滝の絶壁をよじ登り,音楽で彼らの心を解きほぐす,愛と忍耐の化身のようなガブリエル神父。
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ジェレミーの慈愛にあふれる静かな表情には、最初から最後まで癒されっぱなしだった。


そして,もとは強欲な奴隷商人だったのに,決闘で実弟を殺してしまった罪の意識から改心し,イエズス会に入門したメンドーサ。
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改心する前は,冷血で凶暴な面構えだった彼が,改心してからグァラニーの子供たちに見せる笑顔の,何と温かで優しいこと!デ・ニーロの存在感の強烈さは,この作品でも健在だ。

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改心した奴隷商人
と聞くと,私はいつもアメイジング・グレイスという讃美歌を思い浮かべる。

アメイジング・グレイス(驚くばかりの恵み)
なんと甘美な調べ。
こんなにも汚れはてた私にさえも 注がれるとは。
かつて道に迷っていた私は 今は見出され
隠されていた真理を 今は見ている。


この有名な美しい讃美歌の作者は,もと奴隷商人で,船が遭難したことがきっかけで改心したジョン・ニュートンだ。のちに牧師となった彼が過去の罪を悔い,罪深い自分さえも救う神の恩寵を讃えた歌である。
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私の中でデ・ニーロの演じるメンドーサは,ついついこのニュートンと重なってしまう。特に,今まで自分が苦しめてきたグァラニー族から赦しを得た時の,彼の号泣する姿がアメイジング・グレイスの歌詞と重なってみえるのだ。

一転して神に仕える生活を送っていたメンドーサ。グァラニー族の危機を前にした時,傭兵の経験もある彼は服従の誓いを捨て,一度捨てたはずの剣を再び取る決心をする。

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そしてガブリエル以外の二人の神父(その中の一人はなんと若い時のリーアム・ニーソン!)もいっしょに闘う道を選ぶ。「殺すな」という神の教えには反するけれど,彼らはそうやってグァラニーの人々への愛を示した。それは,ある意味では,信仰」よりも尊いと聖書にしるされている「愛」の行動だったと思う。
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「神は愛なのだから」と最後までメンドーサの選択を諫めながらも,決して村を去ろうとはせず,無抵抗な女子供と一緒に讃美歌の中,十字架を掲げて静かに死んでいったガブリエル神父の,何ものにも動じない姿もまた強烈に心に残る。

先住民たちを蹂躙した侵略者たちの欲と非情さ。
そして,対極にある修道士たちの,愛と勇気の気高さ。
密林のしたたるような緑の中を,まるで空高く飛翔するように
ゆるやかに,のびやかに,
澄み切った音色で流れるオーボエの調べ。


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目を覆いたくなるような悲劇を描きながらも,なんと美しく,壮大な物語だろうと思う。・・・それはきっと,殉教したイエズス会の神父たちの愛や,彼らを慕うグァラニーの人々の心が見せる輝きであり,感動なのだろう。

いつまでも残るのは,
信仰と,希望と,愛。
その中で最も優れているのは,
愛です。(聖書より)

特典ディスクも見ごたえあり。
あの,「どこから見ても完璧なインディオ」に見えたグァラニーの人々を演じたのは,コロンビアの川辺の少数民族,ワナナ族のみなさんだそうだ。これまでの生涯で映画なぞ目にしたこともなかった彼らの出演のおかげで,作品はリアルさを増した。その雰囲気や表情からにじみ出る,純粋さや誇り高さは,彼らにしか絶対に出せなかったと思う。

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