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カテゴリー「映画 は行」の81件の記事

2017年3月 9日 (木)

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

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1920年代のニューヨーク。敏腕編集者パーキンズ(コリン・ファース)は、F・スコット・フィッツジェラルドやアーネスト・ヘミングウェイらの名著を世に送り出してきた。あるとき、彼は偶然手にした無名の作家トマス・ウルフ(ジュード・ロウ)の原稿を読んでいち早くその才能に気付く。パーキンズはウルフの陰になり日向になり支え続け……。(シネマ・トゥディ)

キングスマンではキレッキレの英国スパイを演じたコリン・ファースが,実在した名編集者を演じる。実話に基づくこの作品の見どころは,コリンの演じるマックス・パーキンズの人柄の魅力と,天才作家ウルフとの親子にも似たあたたかな絆。地味だけど,しみじみと心に残る良い作品だった。

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1920年というアナログな時代,出版社の編集者の仕事って,持ち込まれた作家の原稿(もちろん紙媒体)に目を通し,筆記で添削するという手間のかかるもの(当たり前だが)。パーキンズは,まだ世に出る前の小説家の才能を見抜く目をもち,それまでの編集者とは違って,作品を丁寧に読み込んで助言をする編集者だった。

ジュード・ロウが演じたトマス・ウルフは,自伝的作家で,独創性に富んだ叙情的な文章で綴られた彼の作品は,1920年代後半から1940年代当時のアメリカ文化や風俗を鮮やかに反映している。現在では日本ではあまり知名度は高くないが、存命中は広く知られた作家だったらしい。

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めちゃくちゃな構成と膨大な量ゆえに,出版社をたらいまわしにされていた彼の原稿に天才のひらめきを感じたパーキンズは,大胆な削除も含めた編集作業を行い,処女作「天使よ故郷を見よ」を世に送り出す。ウルフは,登場人物の心情や動作を全て文章にするので,(つまり推敲が出来ないタイプ?)記述の分量などバランス感覚を,パーキンズの編集が補い、ウルフはその点を非常に感謝していたという。

ウルフ自身は周囲に理解されにくく,人を振り回すタイプだったようだ。パーキンズは家族ぐるみで彼を受け入れ,息子を持たないパーキンズと,父を亡くしたウルフの間には,父子にも似た絆が生まれていた。

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「パーキンズなしでは書けない」と言われるのが嫌で,一度はパーキンズの元を去るウルフと,引き留めることはせずに見守るパーキンズ。ウルフが脳腫瘍であんなにはやく命を落とさなかったら,彼は果たしてパーキンズの編集なしでも傑作を生み出し続けることができたのだろうか。

死の床でウルフはパーキンズに宛てて感謝の手紙を書く。彼の死後にそれをオフィスで読むパーキンズが,室内でも脱ぐことがなかった帽子を取る場面は胸があつくなった。

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コリンが演じたパーキンズの,公私に渡って作家の面倒も見る懐の深さと思慮深さがいい。穏やかで,それでいて信念も持っていて。彼を慕い,恩人と思う作家はたくさんいたのではないだろうか。彼がいなかったら,フィッツジェラルドの「グレート・ギヤツビー」や,ヘミングウェイの「日はまた昇る」「誰がために鐘は鳴る」などの名作は,おそらく世に出てなかったことだろう。そう思うと,偉大な業績をなした編集者だったんだなと改めて思った。

2015年1月28日 (水)

フューリー

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今年の1本目はこれ!年明けに,毎年恒例のリフレッシュ旅行先の新宿ピカデリーで鑑賞。

1945年,第二次世界大戦は終結前夜を迎えていた。
死に物狂いで最後の抵抗を繰り広げるドイツ軍を相手に,フューリー”(=激しい怒り)と命名された戦車で死を覚悟で戦った5人の米軍兵士たちがいた。
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フューリーの隊員は,ブラピが演じる指揮官のドンを筆頭に,それぞれ癖のある4人の部下たち。18歳の新米兵士ノーマンの戦場での成長物語も交えながら,彼らの間の熱い絆と,常に死と隣り合わせの戦場の緊迫感がリアルに描き出されている。

監督は,元軍人という異色の経歴を持つデヴィッド・エアー。それだけに,米軍のM4中戦車シャーマンとドイツ軍の最強戦車ティーガーが激突する戦車戦の圧倒的な臨場感や迫力はさすがだ。劇場の大画面で観て大正解だった。

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戦争ものはいくつも観てきたけれど,戦車戦を中心にしたものは初めてで,とても興味深かった。この時代,ドイツ軍保有の重戦車ティーガーは火力がすぐれた88mm砲搭載の頑強なもので,対する米軍のM4中戦車シャーマンは,機動力が自慢だったそうな。撮影に当たって監督は,なんとヨーロッパ中のコレクターから本物の戦車を借り受け,さらに英国ポービントン戦車博物館に所蔵されている世界で唯一走行するティーガー戦車を撮影に使用したというから驚きだ。

極限状態をともに生き抜く5人の乗員たち。車長のドン(ブラピ)は歴戦の勇者であり,部下からの信頼も篤い理想的なリーダーだ。
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戦車乗りとして,これまでいったいどれほどの修羅場をくぐり抜けてきたのか,彼の背中には一面にケロイド状になった火傷の跡がある。彼はどんな戦況でも,その燃えるような闘志と,冷静で的確かつ大胆な指示によって,これまで部下たちを守ってきた。

新兵のノーマンに対しても,ドンは厳しさと優しさを示す。「敵を殺したくない」と泣きべそをかいていたノーマン(戦場で,敵を殺したくないって,いったいアンタ何しに来たの?って誰でも思うけど)を,ある時は手厳しく叱責し教育もするが,その反面彼の心情をひそかに思いやることも忘れない。部下の前で決して弱みは見せないが,実は繊細で複雑な内面も抱えもっている・・・・・。
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シャイア・ラブーフが演じるのは,冷静沈着な砲手のボイド(通称バイブル)。信仰心が篤く,聖書の言葉を引用して,仲間の心を癒し,特に死を迎えた同胞を看取るときに,まるで牧師のような役割を果たす。しかし,クリスチャンとしての信念と戦士としての義務とは別物ときっちり割り切っているので,敵を「殺す」必要のあるときにはためらいがない。

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とにかく,フューリーの乗組員たちがそれぞれ強烈で魅力的なキャラが立っていて,彼らの間に生まれる緊迫感や信頼関係や,絆も色濃く描かれているので,戦闘シーンだけでなく様々な意味で見ごたえがあった。

見ているこちらまで閉所恐怖症になりそうなくらいリアルな戦車内部の映像。劇場ならではの大迫力の砲撃シーン。鑑賞中は,何度も何度も手に汗を握りっぱなしだった。

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フューリーが,なぜ勝ち目もないのに単独で,敵の精鋭部隊300人をたった5人で迎え撃つという暴挙に出てしまったのか・・・・・そこに戦う価値はあったのか?とつい思ってしまうのだけど,・・・・ラストシーン,動かなくなったフューリーの周囲のドイツ兵の死骸の山が,ゆっくりと俯瞰しながら映し出されたとき,彼らは確かに命を失ったかもしれないけれど,彼らが倒した敵の数の膨大さに言葉もなく,無条件で敬意を表したくなった。あのラストシーンは秀逸だと思う。戦車戦の迫力、、そしてそこに生きる兵士たちの思いや体験を,またひとつ知ることができてよかった。こういう良質な戦争映画は,戦争の悲惨さや悲しみも伝えてくれるので,ある意味,反戦映画なのかなとも思った。

2014年9月 7日 (日)

ペインテッド・ヴェール ある貴婦人の過ち

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2006年の作品。しかし日本では未公開で,DVDも今年リリースされたばかり。邦題からは,昼メロみたいな安っぽさが漂うのだが,サマセット・モームの原作の文芸映画で原題は「五彩のヴェール」。1934年に「彩られた女性」という題でグレダ・ガルボ主演で映画化されたもののリメイクだそうで。

何がいいって,主演がエドワード・ノートンナオミ・ワッツなこと!これがなければ絶対スルーしていた作品だ。サマセット・モームの小説もあまり読んでないしね。で,結論から言うと,これ,とってもよかった。たぶんみなさんほとんどご存じないと思うけど,あえて紹介させていただこうかと。
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舞台は1923年のロンドン。
上流階級の家の娘キティ(ワッツ)は、父親の勧めに従って,中流階級出身の医学博士ウォルター(ノートン)のプロポーズを受け入れ,彼の赴任先の上海へ同行する。しかし真面目で寡黙で仕事熱心なウォルターに不満を募らせた彼女は,イギリス副領事タウンゼント(リーヴ・シュレイバー)と関係を持ってしまう。

やがて妻の不貞に気づいたウォルターは,ある復讐策を実行する。キティに対し,コレラが蔓延している僻地医療現場へ自分と同行するか離婚か,どちらか選ぶようにと迫ったのだ。「なぜ私がそんなところに行かなきゃいけないの?」と抵抗するキティだが,不倫相手のタウンゼントがただの浮気男にすぎなかったことがわかったキティは,他に選択の余地もなく,冷え切った関係の夫と共に,中国の奥地へ向かう・・・。
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撮影時にまだ30代だったナオミ・ワッツが美しい。1920年代のファッションは,膝丈までの細身でフラットなドレスやボブカットのショートヘア,キャスケットタイプの帽子・・・などとても素敵なのだけれど(華麗なるギャツビーの時代よね)この映画のナオミの髪形もとても女らしく可愛らしい。

彼女は前半はとても嫌な女である。たとえ上流階級に生まれても,女性は適齢期になれば結婚するしか生きるすべがなかった時代,大して愛も尊敬も抱いていないウォルターと,ある意味「妥協して」結婚「してあげた」彼女は,面白味のない夫を裏切ったあげく,離婚されることだけは避けたくて,自分に復讐しようとする夫に怒りを覚えながら投げやりな気持ちで僻地に赴く。
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しかし,後半からの彼女は,シスターが経営する孤児院でのボランティアなどを通して,次第に変わっていく。ろくに口もきいてくれない夫と二人きりで,コレラの蔓延する不便な僻地に無為に閉じ込められる生活の中,キティは生きていくために,自分ができること,自分にしかできないことを模索し始める。それまで,親や夫の庇護のもと,深い考えもなく高慢に気ままに生きてきたに違いない彼女が,「自立」というものに目覚め始めたのかもしれない。こうなると持ち前の気丈さや負けん気がプラスに働くのか,彼女は次第にたくましく生彩を取り戻していくのだ。

そしてそれにしたがって,冷戦状態だったウォルターとの関係も少しずつ変化していく。夫に対し,謝罪や尊敬の気持ちが芽生え,新婚時には彼女の方には無かった夫への愛も生まれてくる。

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ノートンもまた,物静かで沈着で,しかしこうと決めたら譲らない頑固さも持つウォルターにぴったりの雰囲気だった。愛して結婚した妻に裏切られた大人しい夫の執念深い反撃・・・。キティへの愛情と復讐心の狭間で悩む不器用で生真面目なウォルター。この二人が演じたからこそ,この作品は珠玉の味わいにまで高められたと思う。

しかし,夫婦の間にやっと本当の愛や信頼が生まれ,子供も授かった矢先に,ウォルターがコレラに感染。この時代だから・・・・奇跡は起こらず,キティの懸命の看護も虚しく,点滴の生理食塩水が尽きたときに,彼は脱水症状を極めて逝ってしまう。最後に「(こんなところに連れてきて)赦してくれ。」と妻に言い残して。
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ここからは涙腺がゆるみっぱなし。

和解したとたんに夫が死んでしまうのも,小説や映画ならもちろんありがちな話の流れなのに,ナオミとノートンの演技に泣かされ,「ウォルター埋葬→キティ慟哭→キティがその地を去る」までの一連のシーンの背後に流されていたフランスの童謡「À la claire fontaine(清らかな泉のほとりで)」の,やさしい澄んだ調べとシンプルな愛の歌詞にまた泣かされ・・・・。この曲,どこかで聴いたことがあると思ったら,クリスティン・トーマス・スコット主演の,ずっとあなたを愛してるでも効果的に使われていた曲だった。曲の最後に繰り返される,(Il y a longtemps que je t'aime,Jamais je ne t'oublierai.=ずっとあなたを愛してた,決してあなたのことは忘れない)という歌詞があまりにもこの場面の哀しさや切なさにぴったりで心に残る。

美しい映画だった。ノートンやワッツのファンならぜひご覧ください。モームの原作がお好きという方にもおすすめ。

2014年9月 1日 (月)

プリズナーズ

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灼熱の魂ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品で,主演がヒュー・ジャックマンジェイク・ギレンホール。これだけ揃えば,どんな難解作でもマニアックな駄作でも観たい私だが,この作品,さすがあの灼熱~の監督の作品だけあって,とても見ごたえのある秀逸なサスペンスだった。二時間半という長尺にもかかわらず,非常によく練られた脚本のもと,計算しつくされたストーリー展開のせいで,緊張感は一時も途切れることも緩むこともなく,最初から最後まで惹きつけられ,かつ自在に振り回された。大好きなセブンと,ちょっとテーマや雰囲気が似てるかな?

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ストーリー
家族と過ごす感謝祭の日、平穏な田舎町で幼い少女が失踪(しっそう)する。手掛かりは微々たるもので、警察(ジェイク・ギレンホール)らの捜査は難航。父親(ヒュー・ジャックマン)は、証拠不十分で釈放された容疑者(ポール・ダノ)の証言に犯人であると確信し、自らがわが子を救出するためにある策を考えつくが……。(シネマトゥディ)

danger この先の感想には,軽いネタバレも含む記述もあるので,未見のかたはご注意ください。予備知識なしで鑑賞した方が絶対にお勧めの作品ですので・・・・

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ケラーを演じたヒュー・ジャックマン。彼が演じたのは,我が子を救いたいがために人として許されない罪の領域にまで踏み込んでしまう男だ。最愛の我が子を誘拐され,容疑者は10歳ほどの知能しかないという理由から釈放されてしまい,一刻も早く救出しないと手遅れになってしまう・・・という状況に置かれたら,親は誰しも彼と同じ狂気と苦悩に駆られるにちがいない。だからといって,誰もがケラーのような常軌を逸した行動を取りはしないけれど・・・。

しかし実際に行動に移すことはできなくても,それをやりたいという衝動は感じるかもしれない。どんな手段を使っても,たとえそれが法に触れるものであっても,我が子を救いたいという思いは。

ケラーの場合,彼の逆上型で一途な性格や,環境(監禁に適した空き家や,強靭な肉体や武器を持っていた等)が行動を可能にしたのだろう。日本では,国民性や環境のせいで,なかなかできない行動だ。・・・たとえしたくても。

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とにかくこんなにクレイジーなヒューも初めて観たし,こんなに暗いジェイクも初めて観た。両者とも今までに見たことも無い役柄で,白熱する演技合戦が凄かった。特にジェイク。彼はゾディアックでも迷宮入りの連続殺人犯を追いかける役ではあったが,あちらでは飄々としたオタクっぽい漫画家青年だったのに比べてこちらは敏腕刑事という役どころ。彼が演じるロキ刑事は,今まで捜査した事件ではすべての犯人を検挙してきたという実績を持つ優秀な刑事だ。

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ロキ刑事の生い立ちや背景ははっきりとは語られないが,「少年院にいたこともある」という彼自身の台詞や,友や家族とも縁がなさそうな雰囲気や,フリーメイソンの指輪・・・などなどから,孤独で寡黙で一筋縄ではいかない感じが伝わってくる。頼りにならない上司の下で,捜査は常に単独。彼は聞き込みや被害者家族とのやり取りや,職場の同僚との会話は常にテンション低めで,感情的にならないのに,容疑者を取り押さえる時や追跡するときには別人のようにハイテンションに豹変する。

そう,このロキ刑事,複雑でなかなかカッコいいキャラクターである。頭脳明晰で冷静沈着なのだけど暗い影を背負っている感じ?一人の時に疲れ切った表情で小声で悪態をつくところが面白い・・・・・しかしこんな複雑な役なのに,ジェイク,上手い。
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この作品,被害者父の暴走だけで2時間半を引っ張るのではなく,並行して真犯人らしい新しい容疑者の出現とか,いわくありげな神父と教会の地下室のミイラ化した死体とか,過去に起こっていた幼児失踪事件とか,さまざまな謎や手がかりを上手く小出しに散りばめてくれ,終盤にはそれらが一気に収束して,真犯人とその動機などの謎の解明に辿りつくようになっている。

まるで緻密なパズルのようによく考えられたストーリーであり,ゾディアックのような「真相はわからずじまい」という消化不良感もない。また,人間の暗部や罪,暴力描写や狂気がじっくりと描かれているにもかかわらず,終盤の救出劇(ジェイクがめちゃカッコいいです)から爽快なカタルシスを感じることができるし,結局のところ,真犯人も捕まり(というかロキ刑事の銃弾に倒れるのだが)被害者で命を落とす者は誰もいない・・・ので,後味は悪くないのだ。むしろ,秀逸なラストシーンには,「ああよかった」と心から安堵を覚えた。
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ヒューマンドラマとしても見ごたえあるし,サスペンスとしても一級品の作品だと思う。「灼熱~」のような「驚愕の真相」も,存在する。「灼熱~」ほどではないけれど,想定外の真相が終盤に明らかにされ,「えー!そうだったの」と・・・・。

そして,これは「セブン」同様,宗教的な色合いも濃い物語だ。神VS悪魔というテーマ。ケラーはクリスチャン。そして犯人はもちろん悪魔の象徴である。詳しく言うと,犯人は神に対する失望が理由で神の陣営から悪魔の陣営に移り,同じように神の陣営にいる人間を堕落させようと目論む人間である。事実,容疑者を拉致して拷問するケラーは,悪魔の陣営に片足を突っ込んでいたようだ。

神に失望した人間の神への逆恨みは根深いものがある。また,人間は神の側にも悪魔の側にも立てるし,罪と信仰との狭間を行ったり来たり,いや,両立すら可能な存在でもあるのかもしれない。ケラーの様に祈りつつ拷問もできてしまう・・・・そういう状況に置かれたら。恐ろしいことだ。
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ロキ刑事の立ち位置は,神でも悪魔でもなく,「異教徒」を象徴している・・らしい(フリーメイソンの指輪とか彼の名前から)。事実,事件解決には冷静で客観的な判断を持つ彼の奔走が役立つのだ。

神と悪魔の戦い・・・信仰と罪の戦い。「セブン」では罪=悪魔が勝利を収めたような結末が衝撃的だった。しかし本作は一応神の勝利で終わっているから,後味が悪くないのだろう。しかし人間とは,神の陣営にいると自覚しているものでさえ,きっかけさえあれば,罪に手を染め,やすやすと境界を超えてしまう弱さや危うさを持っているのだとしみじみ思った。

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ケラーはもちろんのこと,あの神父や,ケラーの拷問に手は貸さないけど止めはしなかったナンシーなど・・・人間は,条件が揃えば罪に囚われてしまう弱さを持っている。たとえ本意でなくとも。エデンの園で蛇の誘惑に負けたとき以来,人は常にサタンからの誘惑に晒され続け,サタンは何とかして人間をに自分の陣営に引き込もうと手を変え品を変え近づいてくる。事件は解決されても,多くの人の心の中には深い傷が残ったことだろう。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督・・・その力量おそるべし。今後も注目していきたい監督さんだ。

2012年9月25日 (火)

50/50 フィフティ・フィフティ

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DVDで鑑賞。ジョゼフ・ゴードン・レヴィットが好きということもあり・・・・そのわりにはリリースされてからなかなかレンタルしなかったけど。

ある日突然ガン宣告され,手術の成功は50%だと言われてしまった青年の,等身大の闘病物語・・・・なんだけど。主役のジョゼフは最近は,ノーラン監督のもと,インセプションダークナイト・ライジングでアクション俳優づいてもいるけど,「500日のサマー」やこの作品のような,どこにでもいそうでちょっとシャイな好青年という役も,とても魅力的でハマってる・・・とも思う。こういう役柄だと華奢で童顔に見えてしまうから不思議。

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命を脅かす病気になったとき,人はどんな受け止め方をして,その後の日々をどんなふうに過ごすのか?そしてまた周囲の家族や友人,知人たちもまた,どんな反応をし,どんな関わり方をするのか・・・
それはもちろん人それぞれで,本人の価値観や年齢,置かれた環境や人間関係の違いで十人十色というべきものなのだろう。

タッチはあくまでも軽くて深刻な描き方ではないのだけど,もし自分がガンになったら,どこに心の持ちようを見出すのか?また自分の大切な人がガンになったら,自分はどんな風に支えたらいいのか?そんなことも折々の場面で考えさせられる作品だった。

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この作品の主人公アダム(ジョゼフ・G・レヴィット)は若く,平凡な青年。彼にとって突然のガン告知はまさに青天の霹靂。しばしの茫然自失状態から覚めた後の彼は,健気にも明るく淡々とガンとの闘病に向かおうとする・・・・のだが。

彼を取り巻く人々のそれぞれの反応や順応。最初は支えると誓ったのに全うできずに去っていく恋人レイチェル。ガンを吹き飛ばせとばかりにナンパや遊びを進めてくる一見「お気楽」な親友カイル(セス・ローゲン)。オーバーに悲しみ心配する過干渉の母親と,彼が息子であることもわからなくなっている認知症の父親。そして,彼のメンタル面を担当した,まだまだ新米のカウンセラー,キャサリン(アナ・ケンドリック)。
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アダムは彼らとの関わりややり取りの中で,その過剰反応に引いてしまったり,自分を励まそうとする相手に合せて明るく振舞ってみたり,反対に「誰も自分のことをわかってくれない。」と僻んでしまったり・・・・そしてやはり病状が進むにつれ,死への恐怖や虚無感から,穏やかな彼もどうしようもなく自暴自棄に陥る日もあったりして・・・・

さまざまな揺れを体験しながら,でも最後にはアダムは,両親との絆を再確認し,武骨な親友の秘めた愛情にホロリとし,キャサリンには恋心を抱くようになっていく。そう,ガンのような病気と直面したとき,誰でも自分の周囲の人間関係を見直したり整理したり新しい絆を芽生えさせたり・・・するのだろう。
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飄々とユーモアを交えてあくまでも軽いタッチで爽やかに描かれているけれど,この作品のテーマは決して軽くないし,あたたかい感動が鑑賞後にじんわりと沁みてくる・・・・いい作品だ。

最後に私事を打ち明けると,先日の人間ドックの結果,とある「ガンの疑いあり」ということで,要精密検査になりました。そして精密検査では,針生検とやらまでしたのだけど,十分な量の細胞が取れず,いぜんとしてグレーのまま,今は数か月の経過観察状態。12月に再び再検査の予定。そんな私にとって,この作品はある意味他人事ではないのだけど,それだからこそ心に感じるものがたくさんあったのかもしれないです。今までも大病や手術をしたことはあるけれど,怖いな・・・と感じた病気は初めてかも。でも今から心配してもしようがないから,今は考えないようにすべて委ねて,淡々と楽しくこれまでと変わりなくを心がけて日々を過ごしています。さすがに生活や食習慣は以前より気をつけるようにしていますね・・・・。

2012年3月13日 (火)

HEAVEN

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たとえすべてを失っても,あなたを愛す。

2002年の作品。監督は「ラン・ローラ・ラン」やパフュームある人殺しの物語トム・ティクヴァ監督。ケイト・ブランシェットジョヴァンニ・リビジの,犯罪者と刑務官の許されぬ愛の物語。

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とてもリアルには起こりそうにない,まるで寓話のようなピュアなラブスト―リーだ。人物設定も,ストーリーの進行も。それなのに,なぜだろう・・・・ヒロインのケイトの魅力や演技力なのか,監督の描く映像や世界観の静謐な美しさゆえか,「こんな愛もありかも・・・」と純粋に感動できてしまう美しい作品である。…大好き。
Cap002
舞台はイタリアのトリノ。英国人で教師のフィリッパ(ケイト)は,夫と教え子の命を奪う元になった麻薬の売人に復讐をするために,彼のオフィスに爆薬を仕掛け,間違って関係のない人間を4人も爆死させてしまう。テロリスト疑惑を受けてイタリア警察に逮捕されたフィリッパの尋問に通訳として立ち会った若い刑務官のフィリッポ(リビジ)は,彼女に恋をし,二人は無謀で先のない逃避行を決行する・・・・。

Cap068
フィリッパとフィリッポ。
まるで対のような名前のふたり。
惹かれあう運命に定められていたかのよう。
年齢も,国籍も,それまで辿ってきた人生も
何一つ共通点などないはずなのに。


それでもフィリッポは唐突にフィリッパに恋をしたのだ。己の立場からしてみれば,決して恋などしてはならない相手に。目の前に横たわるフィリッパの涙を見たときに、フィリッポの心は一瞬にして恋に落ちた。そして考えられないほどの危険を冒して彼女の逃亡を助ける決心をする。
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逃避行を開始するときにはじめて名乗りあった二人。互いのことを何一つ知らないというのに,人はこんなにも深い愛に囚われることがあるのだろうか…?そんなこともきっとあるに違いないと思ってしまうほど,彼女を見つめるフィリッポの瞳は純真で,彼を受け入れるフィリッパの涙は美しい。

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逃避行するふたりの姿は,ともに飾り気のない白いTシャツとジーンズ姿で剃髪・・・これ以上ないくらい余計なものを削ぎ落としたシンプルさは,現世には何の未練も執着もない二人の心境を現しているかのようだ。互いへの愛だけを持って,この先どんな希望があるかもわからず・・・。ただ,二人で生きる世界へと,そう,二人にとっての天国(HEAVEN)に向かって。

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冒頭から時折現れる,まるでカメラが天上から俯瞰するかのようなショットや,BGMに流れる,ベートーヴェンの「月光」に雰囲気の似た透明感と静けさに満ちたピアノ音楽・・・・・。そしてラストの,どこまでもどこまでも高く上昇していくヘリコプター。

現世を捨てて,しがらみを捨てて,昇華していく愛。このまま逃げ切れるのだろうか,二人は・・・・・でもそんなこと,どうでもよくなるほど不思議な癒しに満ちたラストシーンだった。
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混ざりけのない100%の愛・・・・そんな愛を誰かに抱いたひとは,きっとこのフィリッポのようなまなざしで,愛する相手を見つめるのだろう。すべてを捨てて尽くし,受け入れる愛。その一途さは,痛々しいほどだ。彼の父も弟も,ひとことも彼を諌めることも反対することもなく,彼の決断を受け入れ協力したのは,その一途さを理解したためだろう。

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他のすべてを無くしたとしても,愛だけで,ひとは生きていけるものだろうか・・・・私にはわからないけれど,実際にはなかなかできないことだからこそ,この物語はHEAVENという題なのかな?とも思った。

2012年3月 3日 (土)

ボディガード

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去る2月11日(日本時間12日),ホイットニー・ヒューストンさんが急逝されましたね。彼女のパワフルで美しい歌声,大好きでした。とは言え,洋楽に明るくない私は,彼女の曲はこの「ボディガード」の主題歌くらいしかじっくり聴いたことはないのですが…。それでも一度聴いたら忘れられない歌声ですよね。追悼の心を込めて,大好きなこの作品を再見してみました。

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これ,封切り時に劇場で観たような記憶が…。話題作だったし。サスペンスやアクションものとしても,極上のラブストーリーとしても,最高の作品で,ケビン・コスナーのカッコよさと,ホイットニーの歌声がいつまでも心に残ったのを覚えている。その後も,何度も何度もビデオやDVDをレンタルして定期的に観ている作品だ。

ストイックで強くて,寡黙なボディガード,フランク(コスナー)。彼と,依頼人の歌手レイチェル(ホイットニー)とは,最初反発しあいながらも,だんだん互いに惹かれあい,愛し合うように。しかしそれは,職務上許されない恋だと煩悶するフランクに,レイチェルは苛立ちもするが・・・・。
Cap039
有名な作品なので,詳しい説明は不要だけど,私はやっぱり何度観ても,フランクみたいな捨て身でどこまでも自分を守ってくれる存在って・・・・いいなぁ,と憧れてしまう。フランクの場合はお仕事でもあったのだけど,後半からは彼は仕事というよりは愛する女性を守る男の表情にもなっていた。それと,フランクとレイチェルが,愛し合いながらも結局は別れを選ぶところも,切なくて・・・・。
Cap047
ラストシーンの飛行場での情熱的な抱擁・・・・結局別れたの?どっちなの?と初見時に思ったが,エンドロールのホイットニーの歌う「Always Love You」を聴いて,ああやっぱり別れたんだ,と理解した。(ちなみに一番の歌詞と和訳は以下の通り。)

If I should stay
I would only be in your way
So I'll go
But I know
I'll think of you every step of the way

And I will always love you
Will always love you

You, my darling, you
Bittersweet memories
That is all
I'm taking with me
So goodbye,
Please don't cry
We both know I'm not
What you need


これ以上一緒にいても
私はあなたの邪魔になるだけ。
だから私は行くわ。
でも分かっているの どんなときも
私はあなたを思い続けるでしょう。

いつまでも あなたを愛しているわ。
いつまでも あなたを愛しているわ。

私の愛しいひと
ほろ苦い 思い出
それだけが私の道連れ
さようなら どうか泣かないで
お互いに分かっているはず。
あなたに必要なのは私ではない。
Cap045
フランクもレイチェルも,どちらも厳しいプロの世界に生きる人間。愛し合っていても,ともに生きることはできない。だから相手を想いつつも,別れに向かって決然と歩き出す。変わらぬ想いと相手の幸福を願う気持ちを心に抱いて。なんと毅然とした,同時に深く強い愛情のこもった別れの歌だろう。ホイットニーの声でこの歌を聴くときにいつも胸が締め付けられる。

ホイットニー・ヒューストン,享年48歳
心からご冥福をお祈りいたします。

2011年12月 2日 (金)

不滅の恋/ベートーヴェン

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1994年の作品・・・・ご存じだろうか?
耳が不自由という致命的なハンディにもかかわらず,その才能によって「楽聖」と呼ばれるほどの偉業を後世に残した音楽家ベートーヴェン。情熱的で恋も多かったが,生涯を独身で通した彼の死後に,見つかった三通の恋文。それは,ベートーヴェンから,名前の明かされていない「不滅の恋人」に宛てたものだった。この女性が一体誰だったのか,今なお世界中の研究者たちが論争を繰り広げているという。

Cap093
この作品は,そんなベートーヴェンの秘められた恋について,大胆な仮説をもとに製作された芸術の香り高いミステリー・ロマン。天才でありながら,その反面,不運で孤独でもあったベートーヴェンの生涯を回想しつつ,彼の不滅の恋人とはいったい誰だったのかという謎解きの面白さも盛り込んだ作品だ。ベートーヴェンを演じたのは,レオンダークナイトゲイリー・オールドマン。

登場する主な女性たちは三人だ。ベートーヴェンにピアノを教授され,婚約の話まで出ていたという貴族の令嬢ジュリエッタ(ヴァレリア・ゴリノ)と,ベートーヴェンのパトロンの役割も果たしたエルデーティー伯爵夫人(イザベラ・ロッセリーニ)。そしてベートーヴェンの弟の妻のヨハンナ(ヨハンナ・テア・スーグ)
Cap083
ベートーヴェンの死後に見つかった遺書には「すべての財産を我が不滅の恋人に譲る」と書かれていた。彼の弟子のアントン・シンドラーは,残された恋文を手に,「不滅の恋人は誰だったのか」と調査を開始する。

シンドラーの調査が進むにつれて,ベートーヴェンの恋愛遍歴が明らかになるともに,彼の歩んだ波乱の人生もまた少しずつ露わにになっていく。難聴のハンディに苦しみ,様々な確執を抱えた肉親に対し,屈折した愛情を抱いていたベートーヴェン。時に正直すぎ,時に情熱的すぎるゆえに,その傲慢不遜さが敵を作り,人々から疎まれることもあったベートーヴェン。彼の不器用な生き様が,数々の名曲をバックに次第に浮き彫りにされてくる・・・・。
Cap071
恋文が書かれたとき,恋人はボヘミア地方の温泉地カールスバードのホテルで,ベートーヴェンと忍び逢う約束をして彼の到着を待っている状態だったらしい。悪路のために到着が遅れたベートーヴェンが手紙でホテルの恋人に,「待っていてほしい」と切々と訴えているのだが,その文面からは,二人が道ならぬ関係にあり,恋の成就のためには何らかの障害を抱えていたことがわかる。以下に少し抜粋してみる。(本文はもっともっと長い。)

私の天使,私のすべて,私自身よ。――きょうはほんの一筆だけ,しかも鉛筆で(あなたの鉛筆で)――明日までは,私の居場所ははっきり決まらないのです。こんなことで,なんという時間の無駄づかい――やむをえないこととはいえ,この深い悲しみはなぜなのでしょう――私たちの愛は,犠牲によってしか、すべてを求めないことでしか,成り立たないのでしょうか。あなたが完全に私のものでなく,私が完全にあなたのものでないことを,あなたは変えられるのですか。

Cap049
もし私たちが完全に結ばれていれば,あなたも私もこうした苦しみを,それほど感じなくてすんだでしょう。・・・・(中略)・・・私たちはまもなく会えるのです。きょうもまた,この二,三日,自分の生活について考えたことをあなたにお伝えできない――私たちの心がいつも互いに緊密であれば,そんなことはどうでもいいのですが。胸がいっぱいです。あなたに話すことがありすぎて――ああ――ことばなど何の役にも立たないと思うときがあります――元気を出して――私の忠実な唯一の宝,私のすべてでいてください,あなたにとって私がそうであるように。

Cap050
あなたがどんなに私を愛していようと――でも私はそれ以上にあなたを愛している――私からけっして逃げないで――おやすみ――私も湯治客らしく寝に行かねばなりません――ああ神よ――こんなにも親密で!こんなにも遠い!私たちの愛こそは,天の殿堂そのものではないだろうか――そしてまた,天の砦のように堅固ではないだろうか。――

わが不滅の恋人よ,運命が私たちの願いをかなえてくれるのを待ちながら,心は喜びにみたされたり,また悲しみに沈んだりしています――完全にあなたといっしょか,あるいはまったくそうでないか,いずれかでしか私は生きられない。・・・・(中略)・・・・おお神よ,これほど愛しているのに,なぜ離れていなければならないのでしょう。

Cap072
天使よ,いま郵便が毎日出ることを知りました――この手紙をあなたが早く受け取れるように,封をしなければなりません――心をしずめてください,いっしょに暮らすという私たちの目的は,私たちの現状をよく考えることによってしか遂げられないのです――心をしずめてください――愛してほしい――きょうも――きのうも――どんなにあなたへの憧れに涙したことか――あなたを――あなたを――私のいのち――私のすべて――お元気で――おお――私を愛し続けてください――あなたの恋人の忠実な心を,けっして誤解しないで。
『ベートーヴェン不滅の恋人』青山やよひ(河出文庫)より

Cap110
なんという,切なく情熱的な文面。
こんな手紙が書ける人だったのか,ベートーヴェンは。
そしてまた,こんなにも狂おしい想いを
その胸に秘めることができる人間だったのか。


彼の作曲する音楽は,当時の社会では「官能的すぎて不道徳」だという理由で,未成年には聴かせないように,とさえ言われていたそうだ。今聞くと「どこがそんなに不道徳?」と思うけれど,爽やかな宮廷音楽に慣れた当時の人々の耳には,彼の曲の中に迸る激しい感情が,とても刺激的だったのか?ベートーヴェンは決してハンサムではなかったけれど,たいそう表情豊かな男性だったらしい。武骨な容貌とは裏腹に,女性を虜にするような,激しいパッションを持つタイプだったのだろう。

Cap103
終盤になって,ようやく観客にも明かされる恋人の正体。
彼ら二人は,なぜ結ばれなかったのか。
なぜあの恋文は,ベートーヴェンの手元に戻ってきていたのか。
そしてベートーヴェンがなぜあんなにも,
甥のカールに激しく執着し,深く溺愛したのか。


明らかになった真相は,あまりにも切ない。
運命のいたずらとしか思えない「すれ違い」や「思い込み」ゆえに,互いに「見捨てられた」と勘違いしてしまった恋人たち。そしておそらく,どちらも激しい気性とプライドの持ち主だったために,誤解を解くきっかけも求めないまま,恋人たちの愛は憎しみに形を変えて生き続け,それでもベートーヴェンの方は,やはり終生彼女を忘れることができなかったのだろう・・・・。
Cap101
演じたゲイリー・オールドマンの芸達者ぶりには,今更ながら脱帽させられる。どんな役にも全身全霊でなりきれるし,キレた悪役もこなせる人だが,彼はピアノも弾けるのだ。(もちろんベートーヴェンの曲を弾くのだから,特訓はしたらしい) 若き日のベートーヴェンの情熱と愛,失望や怒り,老いたベートーヴェンの孤独や後見人となった甥のカールへの慈しみと哀しみ・・・・様々な感情をゲイリーは見事に演じていた。

Cap130
古い作品だ。DVDもレンタル店にはあまり見かけないと思う。でも音楽好き,オールドマン好き,悲恋もの好きな私にはツボにはまる作品。ちなみにこの作品中に出てくるベートーヴェンの曲の中で一番私が好きなのは,交響曲第7番の第2楽章落下の王国の主題曲にもなった舞踏の権化ともよばれる曲)である。あの旋律の規則正しい重厚さ,込められた哀しみと,そこはかとなく漂う不穏さ・・・が何とも言えず好き。

2011年11月24日 (木)

ひまわり

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まだ映画ファンでなかった思春期の頃に,テレビの洋画劇場で観た。大人の恋愛の機微も戦争の悲哀も何も知らなかったにもかかわらず,なぜか号泣してしまった作品。人生の深みも痛みも,狂おしい恋も未体験の青少年をも,泣かせてしまうこの名画の魅力は,確かにただものではない・・・。
Cap001
 

戦争によって引き裂かれたイタリアの夫婦の哀しい物語。

ナポリの海岸で激しい恋に落ちた配管工のアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)とお針子のジョヴァンナ(ソフィア・ローレン)。第二次世界大戦が勃発し,12日間の新婚休暇後,狂人のふりをして兵役を逃れようとしたアントニオの努力も虚しく,彼はロシア戦線に駆り出されてしまう。
Cap007

終戦後も戦場から帰らず,消息を絶ったアントニオの生存を信じて,ジョヴァンナははるばるロシアまで赴く。しかしようやく探し当てた夫は,酷寒の戦場で生死の境をさまよう体験で記憶を無くし,命の恩人のロシア娘と結婚し,可愛い子供までもうけていた。傷心を抱えて逃げるようにイタリアに帰ったジョヴァンナのもとに,数年後に今度は記憶を取り戻したアントニオが訪れるが,ジョヴァンナには既に新しいパートナーと子供がいた…。
Cap015

当時初めて観たときは,マストロヤンニはただのおっさんに見えたし,ソフィア・ローレンは,すぐにけんか腰に怒鳴る,こわいオバサンにしか見えなかった。その上,お話が半分しか記憶に無く,後半の,アントニオがジョヴァンナに逢いに行くシーンからエンドロールまでは,全く覚えていない。この作品は,ロシアの田舎駅での別離のシーンで完結していたと,長い間記憶違いをしていた私は、残りの場面は眠っていたのだろうか?

Cap013
・・・・それはさておき,そんな浅い理解力しかなかった小娘の私でも,あのドラマティックで哀愁溢れるテーマソングを背景に,駅で二人が別れるシーンでは涙が止まらなかった。そしてあの,風に揺らぐ地平線まで続く一面のひまわり畑。愛し合っているのに添い遂げられなかったアントニオとジョヴァンナ,ふたりの運命を根こそぎ変えてしまった戦争,彼らを縛る現在の家族としがらみ・・・・・
Cap031
誰が悪いわけでもなく,すべての幸せを破壊したのは戦争。どんなに理不尽で苦しくても,どうしようもないことってあるのだな・・・と,私に初めて教えてくれた恋愛映画が,これだったような気がする。嵐の夜のジョヴァンナのアパートでの再会シーンで,彼からの新婚のプレゼントだったイヤリングをつけて迎えるジョヴァンナと,遅すぎたロシア土産の襟巻を渡すアントニオの,口には出せないそれぞれの想いが切なかった。

口に出せない思いを残して二人が駅で別れていくシーンは二つある。ひとつはロシアの片田舎の駅,そしてもうひとつはミラノ駅。
Cap040
汽車で去っていくのは,ロシアの場面ではジョヴァンナで,ミラノ駅ではアントニオだ。いたたまれない気持ちで汽車に飛び乗るジョヴァンナを,アントニオが唖然と見つめるロシアのシーンも,胸がつぶれそうな思いになったが,ラストのミラノ駅で,万感の思いを秘めつつも静かに別れていくシーンは,これが本当にふたりの生涯の別れとなると思うだけにやるせなさは言いようもない。
Cap045
汽車の窓からジョヴァンナを見つめるアントニオの痛切な表情。二人の視線はしっかりと絡み合ったまま,やがて汽車が動き出すと同時に感極まったように号泣するジョヴァンナに,こちらもいつ観ても号泣してしまう。
Cap048

※卵24個を使って作るスパニッシュ風のオムレツのシーンも初見時から覚えていた。え~,あんな作り方のオムレツもあるんだ!と印象的だったから。今では私も時々このオムレツを作る。卵は6個くらいしか使わないが・・・中にポテトや玉ねぎ,ベーコンなども入れて。映画と同じようにフライパンにお皿でふたをしてひっくり返す。食べるたびにこの映画を思い出す・・・・。
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2011年6月18日 (土)

パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉

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観てまいりました,久々にジャック・スパロウ船長を。実は1作目と2作目は劇場で観たけど,3作目は世間の評判があまりよろしくないと聞いてスルーして,DVDになっても観てなかった・・・ので,お話がわからなかったらどうしよう?とか心配しながら観たけど,素直に面白かった~!!!

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1作目も面白かったけど,その次くらいにこの4作目が好きかな・・・・?お話や登場人物の背景や事情が分かりやすく,あまり考えずにテンポよく楽しめた感じ。前作までは回を重ねるごとになんか雰囲気がドロドロとグロテスクになっちゃって,「登場人物,敵も味方も風呂に入ってから出直してくれ~」と思ったものだけど,今作は全体のトーンが明るく観やすくなったような・・・なるほど,監督さん変わったんだ。

例によって下調べ皆無で観たので,始まってしばらくして,「あれ?オーリーもキーラも出てないのね?」なんて頓珍漢な独り言を心の中で呟きながら・・・・
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でも,その今作のヒロインのアンジェリカを演じたペネロペ・クルスがカッコ良くて,美しくて!ふ~~~ん,ジャックの元恋人,そして今は一応敵・・・みたいなキャラ設定なのね。このふたりの駆け引きがまた面白い。

今回のジャック船長の冒険のターゲットは,寿命を延ばす「生命の泉」。言い伝えの聖杯(インディ・ジョーンズみたい)に泉の水を入れ,人魚の涙を加えてで奇跡を起こす・・・というもの。

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だからもちろん今回登場する異形のものは,人魚!妖しく美しく船乗りたちを誘惑するけれど,実は人間を海の底に引きずりこんで食らう,というモンスター。彼女たちが乗組員たちを襲うシーンはこの作品の売り場面のひとつですね。ジャックたちに同行していた宣教師青年が美しい人魚シレーネに恋をして,最後にゃ海の底に「駆け落ち(心中か?)」しちゃう場面も個人的には好き。

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そしてジョニーの演じるジャック・スパロウの魅力はやはりバリバリ健在で。いろんなコスチュームキャラがどれもハマるジョニーだけど,やっぱりこのジャック・スパロウの衣装をまとい,しなやかで俊敏な身ごなしで,食えないキャラクターを飄々と演じているジョニーが一番好きだなぁ。
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似合いすぎ~~~。

今回はちょこっと「恋心(屈折しているが)」まで見せてくれるジャック船長,なんか今までの彼とちがってかわゆいなぁ~とも思ってしまった。

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ジャック船長の宿敵バルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)は,今作では悪役というより「善い役」の匂いが・・・。最後にはジャックと手を携えて共通の敵「黒ひげ」を倒したりして,なかなかカッコいいではないかい。でもやっぱりジェフリー・ラッシュの存在感はすごいなぁ・・・。

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前作を観てない人も,観たけど詳細を忘れてしまった人も,「あまり難しいことを考えずに」最初から最後まで楽しく観ることができるアトラクション映画に仕上がっていた。

もちろんこの作品に「テーマ」や「深み」は微塵も期待せず,ただただジャック船長とドキドキハラハラの船旅に出かけたかっただけの私には,大満足の作品だった。仕事帰りのレイトショー鑑賞だったので,少しでも退屈な場面があると睡魔につかまってしまうのは避けられなかったのに,最後まで眠くならずに楽しめましたよ。アトラクションと割り切って楽しむことをお勧めします!

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