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  • 自分の中の感情に・・・
    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。

カテゴリー「映画 さ行」の76件の記事

2017年3月11日 (土)

ザ・ギフト

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『パラノーマル・アクティビティ』シリーズのジェイソン・ブラム製作,俳優のジョエル・エドガートンが監督を務めたサイコスリラー。DVDで鑑賞。なかなか良くできた作品でした。サスペンスお好きならお勧めです。       

転居先で幸せな生活を送っている夫婦サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)の前に、サイモンの高校時代の同級生だというゴード(ジョエル・エドガートン)が現れる。再会を祝いゴードは1本のワインをプレゼントし、その後もたびたび二人を訪ねては贈り物をし続ける。次第にその内容がエスカレートしていき、二人が違和感を抱くようになると、周囲で異変が生じ……。(シネマトゥディ)

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ジョエル・エドガートンといえば,武骨で男らしい兵士や騎士,といったキャラクターが私の中で定着している大物脇役俳優さんだけど,今回彼が初監督したのは,なかなか凝った上質のサスペンス。ほ~,こんな才能があったのかと改めて感心。

そして彼自身も,主人公夫妻にギフトを贈り続けるストーカーめいた重要な役で出演している。これがまた,これまでの彼のイメージと違って,根暗で冴えない雰囲気のキャラクター。たいしたカメレオン俳優さんだ。

で,この作品,かなり面白かった。題からして,裕福な若い夫婦に勝手に執着してストーカーまがいのことを続け,最後はその家庭を乗っ取ってしまう・・・・・というありがちなストーリーかと思ったら(それはそれで興味深いが),被害者だとばかり思っていた夫が,実は悪いやつで,これは復讐ものの一種だと気づいてから,ますます面白くなった。

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この物語,心理的にかなり怖いのだけど,流血騒ぎは一切ない。エドガートンの演じるゴードは,旧友夫妻にひたすら贈り物をするだけなのだ。最初はワイン,次に頼んでもないのに池の鯉・・・・というように頼んでもいないのにエスカレートしていく。そして,彼の真意が次第にわかってくるにつれて,次はどういう展開になるのか,その不穏さに目が離せなくなる。過去に二人の間にどんな因縁があったのか,徐々に明らかになっていく過程も面白い。

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なにも知らない美しい妻をレベッカ・ホールが演じている。彼女はなかなか美しく,好きな女優さんだ。プレステージや「暮れ逢い」などでクラシカルな衣装に身を包んだ彼女も美しいが,今作ではショートヘアにしていてそれもよく似合っていた。ゴードと夫の過去が明らかになるにつれて,どんどん夫への猜疑心や不信感を募らせていく役柄だ。

この作品,観終わってみたら,なんだか既視感が。なんだろう・・・と考えたら,あの衝撃的な韓国のパク・チャヌク監督の映画オールドボーイに少し似てるのだ。「オールドボーイ」をかなりソフトにした感じ。あそこまで驚愕のストーリーではないけれど,嘘には嘘を・・・というところや,復讐の手段が,相手の肉体ではなく精神にダメージを与え,しかもその苦しみは未来永劫続く・・・といった残酷なところも。

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ま,復讐された夫の方が,「自業自得」と思えるような人物で,何十年たっても,その性質は変わってなかったんだから,そこは「仕方ないじゃん」と思ったけれど,何の罪もない妻が可哀想かな・・・・巻き込まれて。

しかし,なんで「猿」なんでしょうか?置きものとかでもよく登場していたし,あの猿のお面。なにか意味があるんでしょうね。ゴードの言いたいことが。

初監督のエドガートン,天晴れでした!次回作にも期待したくなっちゃいました。

2016年8月 8日 (月)

シン・ゴジラ

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怪獣映画にもゴジラシリーズにも,実はなんの思い入れも予備知識もない私である。(ただ、ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』だけは観た)
本作品は邦画としては久々のゴジラであり,評価もめちゃ高く長谷川博己さんも大好きな俳優さん (お顔が好み)なので観に行った。これが大正解! ゴジラ初心者にもすごく面白かったしストーリーといい迫力といい,完成度の素晴らしい傑作だった。

あらすじはこちらdown
東京湾アクアトンネルが崩落する事故が発生。首相官邸での緊急会議で内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)が、海中に潜む謎の生物が事故を起こした可能性を指摘する。その後、海上に巨大不明生物が出現。さらには鎌倉に上陸し、街を破壊しながら突進していく。政府の緊急対策本部は自衛隊に対し防衛出動命令を下し、“ゴジラ”と名付けられた巨大不明生物に立ち向かうが……。(シネマトゥディ)

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この作品,登場人物の人間関係や背景に関してはほとんど描かれず,ヒューマンドラマの味付けはきれいさっぱり排除して,純粋にゴジラの脅威とその対策について焦点を絞っている。それがすごくよかった。現代の東京にゴジラが現れたら実際にどういう騒動が起き,政府はどんな対応を取るのか。様々な立場の人たちが最善を尽くし知恵を絞って死闘を繰り広げるなか,問題は国連にまで広がってゆき,東京が核兵器の攻撃にさらされるという事態にまで発展していく。
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想定外の未曽有の有事に対する危機管理能力に関して,今の日本政府が抱えているであろう弱点(埒のあかない会議や手続きの際の融通のきかなさとか,米国に強く出ることができない事情とか)への風刺も効いているし,そんな中でも,問題に真摯に対処しようとする日本人特有の粘り強い頑張りも,後半では描かれていたように感じた。 
CGで作られたゴジラの進化や自衛隊が全面協力したという戦闘シーンは素晴らしかった。一番最初に登場した金魚目玉の巨大ぬいぐるみのような怪物には「これがゴジラ?coldsweats02」とぎょっとしたけど,それが進化して立ち上がり、ゴジラになったときは,思わず おおーと拍手したくなった。都心の高層ビル群のかなた,仁王立ちのゴジラのなんと絵になることか。個人的にはゴジラの背中からのレーザービーム光線のシーンや無人運転の列車爆弾のシーンがお気に入り。戦闘シーンのちょっぴりレトロなBGMもよかった。

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怪獣映画の凄さや面白さがぎっしりと詰まった作品。大画面で観れてよかった!
世代を問わず,筋金入りのゴジラファンもゴジラ初心者も,ともに大満足を得られるこの夏イチオシの作品です!

2016年6月12日 (日)

さざなみ

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妻の心はめざめ、夫は、眠りつづける・・・・・

神話的大女優シャーロット・ランプリングが,本年度アカデミー賞主演女優賞ノミネートをはじめ,様々な賞に輝いたヒューマンドラマ。原題は「45years」。結婚45周年を迎え,穏やかな日常を送っていた夫婦に突如訪れた出来事とは・・・・。

舞台は英国の片田舎。熟年夫婦のジェフとケイトが結婚45周年の祝賀パーティーを週末に控えた月曜日の朝,夫のジェフに一通の手紙が届く。それは,アルプスの氷河の中から,50年前に行方不明になったジェフの元恋人の遺体が発見されたという知らせだった。

何の手紙か訊ねる妻に,やや放心状態の夫は悪びれることも躊躇することもなく,さらりと内容を告げてしまう。(あまりに驚いてしまって思考が停止していたのかも)50年前の恋人とのアルプスへの旅と彼女の遭難。当時のジェフは恋人と,夫婦として現地の宿に宿泊していたため,遺体発見の通知が,年月を隔てても彼のところに来たのだ。

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驚きつつも最初は平静を装うケイト。「遺体の確認に行くの?」「まさか,こんなに老いぼれて山歩きなんか今さらできるわけがない。行かないよ。」その朝の会話はそこで終了するのだけど。

これってすごい設定だ。
まず起こりそうもないくらい皮肉で残酷な設定。妻は45年間,夫との生活は平穏で幸せだったと信じていた。あと5年で金婚式を迎える夫婦。まさに半世紀近く連れ添ってきた夫婦なのだ。もちろん,夫が不倫をしたのでもなく,結婚前に二股をかけていたのでもない。恋人のカチャの存在もその不幸な死も,すべてはケイトがジェフと知り合う前の出来事なのだから,ケイトに対する裏切りではない。だからこそ,ケイトは初めは,内心の動揺を隠して普段の通りにふるまい,記念のパーティの準備も予定通りにこなそうとする。

しかし・・・・ケイトの心の中に刺さった棘の痛みはボディブローのように後からじわじわと効いてくる・・・・。どんな女性だったのか?彼女が生きていたら夫は私と結婚していなかったのか?自分は夫の人生にとって二番手の選択にすぎなかったのか?

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これって,彼女が結婚前に夫の元恋人の死の事実を知って納得済みで結婚したのなら,全然違っただろう。それでも平穏な心に多少のさざなみはたったかもしれないが。ケイトの場合は,45年もたって初めて知らされ,おまけに恋人の遺体は氷河によって若い時のまま冷凍保存されているのだ。自分はすでに初老の域に達しているというのに・・・。ただでさえ死者の思い出には生者は敵わないというのに,これでは初めから全く勝負にならないじゃないか。

そして無神経なジェフの言動が,さらに彼女を刺激する。「彼女が死ななかったら私ではなく彼女と結婚していた?」という妻の問いに,「イエス」と答え,アルプスに遺体を確認しに行かないと言いつつも妻に内緒で旅行社に行ってみたり,(バレバレ),氷河に関する専門書を調べてみたり,妻が寝た後の夜中に,元恋人の写真やスライドを収納している屋根裏に籠ってみたり・・・。
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男女がもし逆の設定だったら?とも思った。
妻の方が元恋人の遺体発見の手紙を受け取ったら,きっとジェフのように即座に伴侶に正直に告げたりはしないのではないか。告げて自分の感情を共有してもらうか,それとも告げずに自分だけの胸にしまい続けるか・・・それはもしかしたら伴侶の性格を考慮して決めるかもしれないけれど,告げない場合は,相手に衝撃を与えたくない,長年培ってきた穏やかな夫婦関係に余計な波風を立てたくないという思慮深さゆえなのだ。そしてそういう秘密を墓場まで持っていけるのは,やはり女性の方が得意のような気もする(もちろん人によるかもしれないけど)。

観ていて,ジェフに対して「なんでそこでそれを正直に言うかな~」ともどかしく思ったことが何度もあった。嘘をつくのも優しさになる場合だってあるのに。長年連れ添った妻に対する甘えがそこにはあったのか?母親のように何でも受け入れてくれると勘違いしたのか?そうじゃない。妻は母ではないから信頼は些細なことで揺らぐこともあるのに。

そして元恋人のスライドや写真やなんか,結婚後も保管しておくなよ~とも思った。女性は元恋人のものを保管したまま結婚したりはしない人が多いと思う。これは別れた相手に対して上書き保存ができる女性と,別フォルダに保存してしまう男性の違いなのかも。

ジェフの無意識で無神経な言動のせいで,最初はさざなみだった動揺が,次第にケイトの中で暴風雨にまで発展していく・・・・。
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ケイトが一番ショックを受けたのは,元恋人とのスライドから,彼女が夫の子供を妊娠したまま死んだ事実を知った時だった。自分は夫の子供を授からなかった。だのに,夫にとって初めての,そして唯一の子供が,恋人のお腹に中に彼女と一緒に氷河の底に今も眠っている。それを知ったときの夫の思いはどんなだろうか。自分のこれまでの人生はなんだったのか?これはキツイ…きつすぎる。さざなみが一挙にハリケーンになって当然だ。

ジェフにとって,記念のパーティでケイトに捧げた「君との結婚が人生で最良の選択だったよ」という言葉はもちろん嘘ではないと思う。それはそれで彼にとっては真実なのだ。結婚するはずだった相手を不本意ながら亡くし,その次の選択だったとしても,彼にとってはそれも運命であり,その条件下でのケイトとの結婚は,その地点で最良の選択だったし,彼の妻への愛情も偽りではないだろう。

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しかし,ケイトは「白々しい」と思ったのではないだろうか。この1週間のうちに夫の心に鮮やかに蘇ったに違いない元恋人の存在と,自分が傷ついたことに対してあまりにも無理解で鈍感な夫の言動はもはやケイトの許容を超えていたのだろう。

彼女の心境を語るセリフは多くない。しかし,結婚記念日のために買うつもりだったジェフへのプレゼントを最後まで迷って結局買わなかったことや,ラストシーンのダンスの後,夫の手を思い切り振り払った仕草が・・・・ケイトの気持ちを雄弁に語っていた。

さざなみはやがて凪ぐ時が来るのだろうか?
それともケイトが45年間夫に対して抱いてきた信頼や愛情は,
壊れたカップのようにもう二度と元には戻らないのだろうか・・・・

エンドロールを眺めながら,「私も無理だな」とつぶやいてしまった。過去は仕方がない。それでもこだわってはしまうだろうけれど,元恋人の存在よりも,私も夫の無神経さが悲しいかな。妻の傷ついた心を伝えても完全には理解してもらえないところがやりきれない。45年間も連れ添ってきたとしても,残りの歳月を共に過ごす自信はないかも。

2015年8月20日 (木)

ジュラシック・ワールド

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こちらも観てまいりました~~。

あらすじ:世界的な恐竜のテーマパーク、ジュラシック・ワールド。恐竜の飼育員オーウェン(クリス・プラット)が警告したにもかかわらず、パークの責任者であるクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は遺伝子操作によって新種の恐竜インドミナス・レックスを誕生させる。知能も高い上に共食いもする凶暴なインドミナス。そんな凶暴なインドミナスが脱走してしまい……。(シネマトゥディ)

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ヒロインはパークの管理責任者で,意欲的な野心家のクレア(ブライス・ダラス・ハワード)。ヒーローは恐竜行動学のエキスパートで元軍人のオーウェン(クリス・プラット)。飼育係でもある彼は,ヴェロキラプトル4姉妹を飼育・調教している。

今作で一番のお気に入りがこのラプトルたち。ブルー・チャーリー・デルタ・エコーという名前で,訓練者であるオーウェンの指示を聞き分けることができる。その優れた戦闘能力ゆえに,兵器として軍事利用の画策をするとんでもないやつ(のちにラプトルに食われてしまうが)も出現する。インドミナスを追跡するために放たれるが,インドミナスと意志疎通してしまい,寝返って人間を襲おうとしたり,土壇場でやっぱりオーウェンに従ったりと,なかなか人間臭い行動を取るのが面白い。
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凶暴だけどカワイイup

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そして,ジュラシック・ワールドの後援者で億万長者のサイモン・マスラニ(イルファン・カーン)。おお,めぐり逢わせのお弁当サージャンがこんなところに。彼は残念なことに,脱走したインドミナスを追ってヘリを自ら操縦し,翼竜のドームに突っ込んで死んでしまうのだけどね。サージャンとは全く違う気骨のある役だ。

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このシリーズには欠かせない少年たち。今回はクレアの甥の,16歳のザック(ニック・ロビンソン)と11歳のグレイ(タイ・シンプキンス)の兄弟。お兄ちゃんはなかなか頼もしく,弟のほうは恐竜に詳しい。パークが閉園される際に脱出するのが遅れてインドミナスに追われる体験も。

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そしてこれが,史上初の遺伝子組み換えによって秘密裏に誕生した大型恐竜インドミナス・レックス。15mというティラノサウルスを上回る巨体で,高い知能と残忍性を持つという設定。いくら集客のためとはいえ,こんなもんを生態も行動もわからないまま作るってどうよ?でも人間にこの愚かさがあるからこそ,この作品のストーリーは成立するのだけどね。人間ではとても歯が立たないこの恐竜を最後にどうやって仕留めるが・・・それは観てのお楽しみだけど,やっぱり人間の力ではなかった・・・。

久々に製作されたジュラシック・パークのシリーズ。3作目から10年以上のブランクを経ての製作なので,かえって新鮮で,予想をはるかに上回る面白さだった。テーマパークでアトラクションを立て続けに楽しんでいるような興奮を味わえる作品だ。大人から子供まで楽しめるし,もちろん恐竜好きな方にはたまらないだろうね。恐竜に何の思い入れもない私でも十分楽しめたくらいだから。

ラスト,パークは閉鎖レベルのダメージを受けて幕を閉じるけど,遺伝子組み換えに携わった学者は恐竜の胚を持って脱出してるから,また続編が作られそうな感じだね。

2013年9月28日 (土)

最愛の大地

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ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争によって,敵味方に分かれてしまった恋人たちを通して,内戦による女性への性的な暴力や,国際的な介入の不足などの問題提起を投げかけてくる作品。国連の親善大使も務めるアンジェリーナ・ジョリーの初監督・脚本作品。ミニシアターで鑑賞。

戦時中の悲恋ものかしらと期待して観にいったのだが,甘ったるいラブストーリーなんて生易しいものではなかった・・・・・どこまでも重く,残酷で,ラストの一瞬の場面の衝撃で,それまでの物語の印象ががらりと変わってしまった作品。
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1992年に勃発したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争。
史上最悪と言われたこの内戦は,敵対する宗教を持つ異民族が,昔からの遺恨や確執を抱えつつ共存していた旧ユーゴの土地では,避けられないものだったのだろう。セルビア人(ギリシア正教)とムスリム人(イスラム教)とクロアチア人(カトリック)が,独立を巡って対立し,自分たち以外の民族を武力で制圧し排除しようとしたおぞましい戦い。この映画はその中でも,セルビア軍によるムスリム人女性への非道な行いに焦点を当てて描かれている。

それまで仲良く暮らしていたはずの隣人や知人がいきなり敵になる・・・・街を歩いていただけで突然射殺され,住み家や財産を奪われる。女性は拉致されて集められ,民族浄化のためにレイプされ異民族の子供を強制出産させられる。これほどまでに非道な人権蹂躙があったからこそ,この内戦は「史上最悪」とまで言われたのだろう。
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そんな戦火の中で敵となってしまった二人の男女。
セルビア人のダニエルは将軍の息子で軍を率いる立場。平和な時代には彼の恋人だったムスリム人のアイラは,紛争が起こると,他のムスリム人の女性たちと一緒にセルビア軍宿舎に連れ去られてしまう。彼女が囚われてきたことを知ったダニエルは,部下たちに,アイラを「自分のものだ」と宣言し,彼女を集団レイプから守る。

しかし時には彼に抱かれながらも,アイラの表情は完全に和らぐことはない。それはそうだろう。彼は,かつては恋人(しかも恋は始まったばかりの段階でしかなかった)だったが,今は,自分の同胞をあれだけ手酷く痛めつけ,抹殺しようとしているセルビア軍の将校なのだから。日常的に繰り返される,自分や同胞の女性たちに対するセルビア軍の仕打ちを考えると,彼の庇護を無邪気に享受する気持ちなどには到底なれなかったと思う。
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ダニエルの父であるセルビアの将軍は,息子がムスリムの女を囲っていると知って,「彼女を信用するな」と忠告するが,その背景には,過去に母や兄弟をムスリムに殺害されたという遺恨がある。

この父将軍役を演じていたのが,同じような「民族間の確執と復讐の連鎖」をテーマにした「ビフォア・ザ・レイン」に出演していた,クロアチア出身の俳優さん(レイド・セルベッジア)だった。その他にも,出演陣の多くはこの紛争の地出身で,実際にこの悲惨な内戦を体験した俳優さんもいるという。アンジーはあえて彼らを起用したそうだ。

ダニエルの異動後に脱走に成功したアイラは,身を隠していた姉や同胞の元に辿りつくが,そこで我が子のように可愛がっていた幼い甥の死を知らされる。その後再び彼女はダニエルの元につれ戻され,彼の専属画家として,庇護という名のもとの軟禁生活を送ることになる・・・・。

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二人の間に存在しているように見えた愛情や信頼は,実はどれくらいの温度差があったのだろう。
ダニエルのアイラへの愛は本物だったろう。しかしアイラにとって彼は,いつ殺されるかわからない世界の中で自分を守ってもくれるが,同時に自分を支配し生殺与奪の権利を握っている存在でもあったから。ダニエルの心もまた,長引く紛争の中で疲弊し,アイラに対して暴君的な態度を取ったり,発作的に不信感に襲われたりもする。


所詮,支配者と被支配者の間に愛が存続するはずはないのだろう・・・特に,このような,あまりにも惨い争いの最中では。男女が当たり前のように愛し合い,互いに信頼し合うためには,平和な世界が背景にないと難しいのだろう。彼らが敵と味方の立場なら,なおさら・・・・・。支配者と被支配者の間の互いに信頼しきれない愛・・・という点では,ラスト、コーションを思い出した。大胆な性描写も共通するものがあるかも。

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戦争は,人の心の大切なものを,とことんまで破壊する
ことを,この作品を観て思い知った。なんという哀れな結末。これは,どんな逆境にも屈せずに愛を貫く恋人たちの物語かもしれないと,最後まで願いながら観ていたのに,全くそうではなかった。

「ごめんなさい・・・」とつぶやいたアイラの心の中を覗いてみたかった。彼女の葛藤や逡巡や恐怖の数々は想像できても,ダニエルに対する愛情は・・・どれくらい存在していたのか,またどのように変化していったのか,聞いてみたかった。こうするしかなかった彼女も,またおそらく結果的には,彼女よりももっと生き地獄を見ることになっただろうダニエルも,平和な時代に生きていれば,きっと幸せな恋人どうしでいられたはずなのに。

2013年2月20日 (水)

ゼロ・ダーク・サーティ

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ハート・ロッカー
キャスリン・ビグロー監督が,米国特殊部隊によるアルカイダの指導者オサマ・ビン・ラディン殺害の真相と,その作戦の陰の中心人物だったCIAの女性分析官を描いたサスペンス映画。劇場で鑑賞。

「ハート・ロッカー」同様,ビグロー監督らしい,骨太でドキュメンタリータッチのズッシリとした味わいの作品だが,描かれている内容が内容だから,話題性は前作を凌ぐものがあるに違いない。私個人は,ビンラディン氏の死の真相・・・・恥ずかしながらちっとも知らなかった。彼が米国によって殺害されたのは知っていたが,その報道を聞いて「彼を捕まえないことにはアメリカは気が済まないだろうけど,それでもまた第2,第3のビンラディンが現れてきて報復合戦になるよね」と思ったくらいだろうか・・・・。

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今作を観てはじめて,困難な追跡の裏事情や,CIAイスラマバード支局のビンラディン追跡チームに所属する女性情報分析官マヤの執念や活躍を知った。また,トップシークレットでもあるこの事件について,ビグロー監督がどのようにして正確な情報を入手したのか,そもそも映画に描かれているのは100%事実なのか,事実だとしても,ここまで暴露してしまったことに対して政府筋から抗議や非難は無かったのか…いろいろと考えさせられた。

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ヒロインのマヤを演じたジェシカ・チャスティンツリー・オブ・ライフで貞淑で敬虔な古風な母親を演じていた彼女は,華奢で色白,繊細な容貌の美人だが,この作品では色気も生活感も微塵も感じさせない男性顔負けの行動力を持った仕事の鬼のようなハンサム・ウーマンを演じている。過酷な拷問や尋問にも立ち合い,ビンラディンの連絡員を勤める重要人物を執拗に追い,確たる証拠がないというリスクも恐れることなく、ビンラディンが潜伏していると思われるアジトに夜襲をかける作戦をゆるぎない信念を持って執拗に主張する。

その一途な執念は何かに取りつかれたかのようで,もし彼女がいなかったら,成果の上がらない長年の追跡に疲弊して弱腰になっていた追跡チームは,もしかしたらあの賭けのような夜襲作戦を強行できなかったのではないかとさえ思える。彼女をあそこまで突き動かしたのは何なのか,信念なのか意地なのか・・・・?ひとたび足を踏み入れたら途中で降りることのできない中毒のようなパワーに支配されていたのか・・・・。

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クライマックスのアジトの屋敷の奇襲シーンは生々しくて固唾をのんで画面に釘付け…思わず劇場の椅子の上で背筋を伸ばして食い入るように見入っていた。どうなるのか?本当にビンラディンは居るのか?と。

彼を殺害できたことは,あの同時多発テロの被害者やアメリカにとっては大勝利なのだろうか・・・神と祖国のために?神はキリスト教の神だけではなく,彼らアルカイダの信じる神もまた彼らにとっては唯一無二の神なのだ・・・・。しかしこの作品はアメリカ礼賛のための映画ではなく,米国のことを決して美化したり擁護したりはしていない。アルカイダに報復するために非道な尋問を行ったこともはっきりと描いているし,あの成功した奇襲作戦そのものも,まるで押し込み強盗のような有無を言わさぬ殺戮にも見え・・・

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すべてが終わった後ひとり涙を流すマヤ。
彼女の胸には万感迫る思いがあったのか?それともそれまでの緊張感や使命感から解き放たれたゆえの反動的な涙だったのか?鑑賞後に感じた,爽快感や達成感とはかけ離れた疲労感・・・・これはいったいなんなのだろう。まだ闘いは終わっていない。これからも報復合戦は続くという予感。しかしいろいろな意味で必見の作品であることは間違いない。

2012年12月18日 (火)

少年は残酷な弓を射る

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これはまた凄い・・・・なんという重苦しい・・・・痛い作品。でも,まぎれもなく傑作には違いない。受けたのは感動というよりは衝撃なのだけど,どんな感情であれ,この作品の余韻は,今もずっと強烈に心に残って離れないのだから。原作は2003年に発表され,ベストセラーになったというたライオネル・シュライバーの小説。
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自分を拒絶する息子を愛そうと苦しんできた母親の物語?いや・・・そんな簡単なものではなく,これって悪魔を生んでしまったある母親の物語なんじゃないだろうか?とさえ思いたくなるくらい,ある意味,ホラー並みの戦慄を覚える物語だった。欧米で社会問題にもなっている青少年の凶悪犯罪・・・・そしてその家族の物語でもある。

冒頭,トマトまみれの祭りの中で,全身を真紅に染めて恍惚とした表情で微笑むエヴァ。彼女が現在住んでいるさびれた家の外壁にぶちまけられた真っ赤なペンキ。そして回想の中でもたびたび登場する血のりのようなトマトケチャップを挟んだサンド・・・・。この作品の中には毒々しい「赤」がまるでテーマカラーのように繰り返し登場する。ラストで明らかにされるケヴィンの恐ろしい犯罪を予兆するかのように・・・。
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ヒロインのエヴァがなぜ世間の目におびえたような生活をし,町の人々はなぜあんなに彼女に冷たい視線を浴びせ,時には罵倒すらするのか?彼女の夫はどこにいるのか?彼女はいったい誰に面会するために刑務所に通っているのか?現在の彼女と過去の彼女を交互に描くことによって,最初は謎だった彼女の過去や背景が徐々に観客に明らかにされてゆき,最後まで緊張が途切れることなく,ラストの惨劇に向かってストーリーが収束されていく様は実に見事である。
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この作品は今までの固定観念…母性神話・・・それらを覆す物語でもある。エヴァとケヴィンの場合は,母親は無条件に子供を愛し,子供もまた母親の愛を求めて応えるものだという常識を完全に否定している。特に理解不能なのは息子ケヴィンの母親に対する根強い憎悪。あれは嫌悪とかいうレベルのものじゃない。彼の瞳に宿るのは明らかに冷たい憎悪である。

まだ乳飲み子の時から,幼年期も,少年期も…青年期も一貫して,幼子とは思えないほどに念のいった嫌がらせを母に対してのみ行うケヴィン。最後に彼が行った血も凍るようなあの犯罪すら,母親を苦しめ,世間から断罪させるためだったのではないかと思えるほどだ。
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そんなに息子に疎まれるどんなことをエヴァはやったというのか?

彼女は懸命に息子に向き合おうとする普通の母親にも見えるのに・・・。しかし,ケヴィンを妊娠したときの彼女に,あまり笑顔が見られなかったことや,華々しい経歴のキャリアウーマンの彼女が,出産と育児によってキャリアを捨てたことを内心後悔していたことなど・・・ケヴィンは胎内にいるときから本能的に嗅ぎつけていたのでは?それゆえに憎悪や嫌がらせで母親の気を引き,母の忍耐や愛情をを試していたのでは?とも思った。

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いやそれとも,やはりケヴィンは,生まれつき愛情が決定的に欠けた,邪悪な人間だったのか?母親がどう接しても結果は同じだったのだろうか?幼少期のケヴィンの,子供とは思えない冷ややかな表情,そして美青年に成長したケヴィンの,食事の際の咀嚼する口もとのアップの映像には,なぜか思わず生理的な嫌悪感を抱きたくなるような,そんな不気味な雰囲気が漂う。
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母親への憎悪や嫌がらせも,彼なりの歪んだ愛や執着の裏返しであって,
彼はああいう方法でしか母親に愛を示すことができなかったのかもしれない。なぜなら彼は生まれつき「病んで」「壊れて」いた人間だったから。あれほど憎んでいたかのように見えた母親だけを生かし,慕っていたように見えた父親を殺したケヴィン。彼が本当に独占したかったのは母親だったのだろうか?あんな恐ろしい方法で。

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ケヴィンの取るどんな行動も場面も,「あり得ない」「こんな親子がいるはずはない」と思いつつ観るしかなく,同様の悲劇が「自分たちの身の回りに起こらなかったことを感謝」するとしか言いようのない衝撃的な物語だった。ラストの抱擁・・・・いったいこの母子にほんのわずかでも救いや再生はあるのか?それもわからないまま物語は幕を閉じた。

製作総指揮も手掛け,渾身の演技でエヴァを演じたティルダ・スウィントン。そしてそれぞれの年代のケヴィンを演じた子役たちの怪演ときたら,オーメンばりだ。母親の立場の人には重いしキツイ内容の物語かもしれないが・・・・・。

2012年12月17日 (月)

ジェーン・エア

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ジェーン・エアは,小学校の図書館で借りて初めて読んで以来,大好きな小説。何度も映像化はされているみたいで,実際わたしもシャルロット・ゲンスブールがヒロインを演じた映画を観たこともあるけど,それよりも本作の方がキャストが好きかも。

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特にジェーンを演じたミア・ワシコウスカが,原作のジェーンの雰囲気に最高にピッタリだと思う。この物語の魅力の一つにもなっている,ジェーンの個性的なキャラクター。不遇な生い立ちや美しくない容姿にも関わらず,いや,それだからこそと言うべきか,彼女は聡明で確固たる意志を持ち,困難をも孤独をも恐れず,教師として自立を目指す。そんな彼女の性格や生き様は,同じ女性としてとても魅力的だ。

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財産と地位を持つロチェスター氏が、身分違いで美しくもない小娘のジェーンに対して抱く愛。華やかな社交界に身を置き,秘めた暗い過去も持つ彼は,儚そうに見えて実は誰よりも強靭な芯の強さを持つジェーンの内面に惹かれたのだろうか。

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原作では,決して美男子ではなく,武骨な容貌だと書かれているロチェスターを演じたのは,正統派イケメンのマイケル・ファスベンダー。しかし,顎鬚と陰鬱な表情と演技力で,彼もまた原作通りの申し分ないロチェスターだったと思う。

ミアが演じたジェーンは初々しく,頑ななまでの純粋で一途で,そしてマイケルの扮したロチェスターは,偏屈で傲岸で,同時にセクシーで魅力的で,この物語はもちろんジェーンの波乱万丈の半生記であるのだけど,情熱的で切ないラブストーリーの一面も十分に味わうことができた。

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わたしが原作でも一番好きな場面・・・それは,ロチェスターに隠された狂人の妻がいることを知ったジェーンが,中止になった婚礼の夜,必死で引きとめるロチェスターを置き去りにして館を後にする場面だ。ロチェスターの狂おしいまでの嘆きや懇願,そしてそれを心の中で号泣しつつも敢然と振り切って去るジェーンの葛藤と哀しみ・・・この場面の原作の描写はふたりの心理が手に取るように切なく激しく伝わってくる秀逸なものだけど,映画のこの場面のミアとマイケルの演技も素晴らしかった。

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そして館を逃げ出したジェーンが辿りついた牧師館の主であるセント・ジョン・リバースを大好きなリトル・ダンサージェイミー・ベルが演じている。生真面目でストイックで理想に生きる青年牧師。彼はジェーンを愛しているわけではないが,宣教師の伴侶として最適な彼女の資質を見込んでジェーンに求婚する。リトル・ダンサーで可愛かった彼ももうすっかり,演技派のいい俳優さんになったなぁ。この作品ではちょっと報われない地味な役だけど・・・・。

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この作品は84回アカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされただけあって,この時代の衣装や調度品などの雰囲気も楽しめる。

2012年10月30日 (火)

最強のふたり

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フランス映画だったのね~,これ。ハリウッドの好きそうなテーマだけど。実話というのがまたなんとも幸せな気持ちにさせてくれる,確かに最強のハートフル映画だった。

あらすじ: 不慮の事故で全身麻痺(まひ)になってしまった大富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、新しい介護者を探していた。スラム出身の黒人青年ドリス(オマール・シー)は生活保護の申請に必要な不採用通知を目当てに面接にきた不届き者だったが、フィリップは彼を採用することに。すべてが異なる二人はぶつかり合いながらも、次第に友情をはぐくんでいき……。(シネマ・トゥディ)

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フランスのコメディってあまり観たことがなく,出ている役者さんも知らない人ばかり。実話だと知らずに観たなら,まるでありえないくらい可笑しくて優しくてハッピーエンドなお話。障害を持った富豪と,天真爛漫なスラム青年の・・・・これは主従の関係ではなく友情の物語なのだ。

育った環境も嗜好も性格もまったく違う二人。もともとドリスはフィリップに雇ってもらうつもりはさらさらなく,介護人としての心構えもやる気も知識もまったく無い。しかしそんなドリスの言動や性格がフィリップには新鮮で・・・何よりもドリスが自分の障害を少しも気の毒だとも特別だとも思わず接することがフィリップには有り難くて・・・・。
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無理もない。オマール・シーの演じるドリスは,ほんとうに魅力的なキャラなのだ。まっすぐであたたかくて面白くてポジティヴ・・・もちろんその生育の背景には貧困層ならではの複雑な苦労もあるのだが,それゆえの強さや明るさや優しさが感じられるのだ。

ドリスはフィリップを,そしてフィリップはドリスを,正反対ともいえる互いの個性や環境を面白がり,特にフィリップはまったく自分を「病人扱いしない」ドリスと行動することによって,それまで諦めていた人生がにわかに色づいてくるかのような楽しさを味わう。

最初から最後まで楽しくて観ているこっちもクスクス笑いっぱなし。特にフィリップの誕生会で楽団の演奏するクラシックの曲に,ドリスが好き放題に自己流の感想を述べるシーンは爆笑もの。ヴィヴァルディの「四季」は「職業安定所」のBGMで,たしかコルサコフの「熊蜂の飛行」(かな?)は「トムとジェリー」だなんて・・・面白すぎ。

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全編を優しい笑いで包みながらも,ほろりと来るシーンも程よく盛り込まれていて,そして最後の最後までハッピーエンドで幕を閉じ,エンドロールではご本人たちの写真も見せてくれて,「ああ,こんなにあたたかいお話がほんとうに実話なんだ」と改めて感動。素敵な作品だった。落ち込んだ時・・・疲れたとき・・・特にお勧めの作品かな。

2012年10月 9日 (火)

シェイム

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愛なら毎晩 
ティッシュにくるんで捨てている

ゴールデン・グローブ賞 主演男優賞ノミネート,ヴェネチア国際映画祭男優賞受賞の衝撃作・・・・DVDで鑑賞。やり手のビジネスマンで実はセックス依存症の男ブランドンと,一途に愛を求める依存型の妹シシーの物語。

セックス依存症が主人公って・・・・あらすじを見ただけで「これって面白いの?」と素朴な疑問が。しかし「今年最も打ちのめされ、感じさせられた映画。鋭く五感に突き刺さる稀代の大傑作!(!リチャード・ローパー!)」とか,「こんなにも強烈な映画を他に知らない。言葉など意味をなさない。圧倒的で、情熱的で、完璧。(アンドリュー・オヒーハー)」とか,各評論家が絶賛の嵐。これは観るしかない!と観始めて・・・すぐに一気に虜になってしまった。
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ストーリーはあってないようなもの。大きな山場もなく展開もなく。この作品はストーリーではなく主人公ブランドンそのものを描いた作品なんだな・・・と気づいた。

表の顔はクールなビジネスマンなのに,行きずりの相手や娼婦とのセックスやアダルトサイト閲覧やマスタベーションなしでは日も夜も暮れないブランドン。彼は,愛の伴わない,快楽と排泄のみが目的のセックスしかできない男。本当に好意をもって進展したいと願っているガールフレンドとのセックスでは萎えてしまう男・・・・・そして,彼に愛情と怒りと自己嫌悪を抱かせる妹のシシーの存在。
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互に求め合いつつも激しく拒み合っているようにも見えるこの兄妹の間には,過去に何かがあり,そのことがお互いを苦しめ,特にブランドンにとっては彼の本当のシェイム(恥部)となっている。・・・・真相ははっきりとは語られていないが,そんな背景を十分に予想させる場面やセリフのやり取りが作品のそこここに散りばめられている。

過激な描写も呆れるような主人公の言動も,流れるようなBGMと美しい役者の体当たりの演技のせいか,場面によっては絵画のように美しく,それほど抵抗なく見入ってしまった。舞台がスタイリッシュな大都会だというのもこの作品の美しさのひとつになっている。

セックスしか語られていないのに,なぜこんなに心を切なく締め付けられるのか・・・愚かで孤独で痛々しいブランドン。抜け出したくても自分で自分をどうすることもできない呪縛にがんじがらめのブランドン・・・心情を語る台詞は皆無なのに,彼の苦悩や葛藤や隠された恥部がひしひしと伝わってくるこの物語は凄い。そしてそんなブランドンを演じたマイケル・ファスベンダーがとにかく素晴らしい。その渾身の演技も鍛え上げられた美しい肢体も。
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一途さと危うさを兼ね備えたシシー役のキャリー・マリガンも見事だった。派手な演出も面白いストーリー展開もCGも気の利いた台詞もなくても,こんなに心を打つ作品が撮れるのだと,感嘆した。

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