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カテゴリー「映画 あ行」の83件の記事

2017年1月29日 (日)

ある天文学者の恋文

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年末に駆け込みで観ることができた。ジュゼッペ・トルナトーレ監督のラブ・サスペンス?ストーリー。音楽はもちろんエンリコ・モリコーネ。そして主演はオルガ・キュリレンコジェレミー・アイアンズ。

あらすじ
天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と、教え子のエイミー(オルガ・キュリレンコ)は、愛し合っていた。だが、エイミーのもとにエドが亡くなったという知らせが飛び込む。悲しみと混乱の中、死んだはずのエドからのメール、手紙、プレゼントが次々と届く。不思議に思ったエイミーは、その謎を解くためにエドの暮らしていたエディンバラや、二人の思い出の地サン・ジュリオ島などを訪れる。やがて、エドが彼女の秘めた過去を秘密裏に調べていたことがわかり……。 (シネマトゥディ)

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親子ほどの年の差のある,秘められた不倫の恋。

初老の天文学の教授エドと,若くて美しい彼の教え子エイミー。しかし,物語のほぼ全編を占めるのは,彼の死後の物語だ。突然別れも告げずに病でこの世を去った恋人。それなのに彼から届き続けるメールと手紙の数々。そして導かれる異国の別荘やDVDから語りかけてくる彼の映像。

本人がこの世にもういないのに,次々と指示が出される「謎解き宝探しのゲーム」みたいなこんなことが,いったいどうやって出来たのだろう。周到な準備のためには,財力や人脈はもちろんのこと,恋人の気質についての深い理解と,,彼女の反応や行動を先読みする力が必要だ。なんとめんどくさく,手の込んだことを考え付き,実行に移したのか,エドには半ばあきれつつも感心する。

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エイミーは恋人の死によるショックに浸る間もなく,エドの仕掛けた道すじ通りに,時間差で届く彼からの手紙やメールを頼りに,彼の故郷や思い出の別荘へと足を運び,彼からのメッセージを受け取り続ける。受け取るばかりで返信のできないやり取りに悲しみや痛みやもどかしさを感じながら。

次はどんなメッセージに導かれるのか,最終的にはどこに着地するのか,けっこうハラハラする点はミステリーの味わいもあり,そして何より,ヒロインのオルガが美しく魅力的だ。トルナトーレ監督の作品は,けっこうさらりとさりげなくヒロインが脱ぐシーンがあるが,この作品も例外ではなく,それもラブシーンではない箇所で,オルガが美しい肢体を披露してくれている・・・・。

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また,若い愛人を持つ教授という役柄に,ジェレミー・アイアンズはまさにハマり役。(ダメージとかもそうだっけ。あの作品の彼は教授ではなく,政治家だったけど。)いくつになってもダンディでセクシーだ。

いつまで続けるのか?
これは彼からの究極の愛なのか?それとも執着なのか?
エドが死後も彼女に求めているのは,束縛なのかそれとも・・・・・・

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物語がすすむにつれて,自分の余命を熟知していたエドが,「自分の亡き後に最愛のエイミーに贈りたかったもの」が次第に見えてくる。それは,時間のない彼がやり残したこと。エイミーが抱えている重いトラウマから彼女を解放し,癒すこと・・・だった。エイミーに対する切ないまでの包容力は,やはり彼が父親のような年齢だからこそなのか。

あの星はもう存在しないが,光は君に届いている。

いかにも天文学者のエドらしい思い。しかし,存在が消滅したあとも届き続ける星の光も,いつかは完全に届かなくなる日が来る。その時,残された恋人は新たな道へと確かな足取りで踏み出していってほしい・・・・どこまでも行き届いた愛の姿。最後のビデオメッセージは,画面に背を向けたエドの姿だった。そしてラストは,エイミーに新しい恋が芽生えるような予感も感じさせるほのぼのとした終わり方。

感じ方は人さまざまだろうけれど、こんなふうに愛されたら,どんなにか女冥利に尽きるだろう・・・と思わされる一作。実際にはなかなかあり得ない設定やキャラなので,おとぎ話に近いのかもしれないけれど。

2016年2月25日 (木)

あの日のように抱きしめて

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アウシュヴィッツから生還した妻と, 変貌した妻に気づかない夫。
奇しくも再会を果たしたふたりは, 再び愛を取り戻すことができるのか――。

これは,めっちゃ好きな設定の物語・・・・。ということでDVDリリースとともに鑑賞。

1945年6月ベルリン。顔に大怪我を負いながらも,強制収容所から奇跡的な生還を果たした元歌手のネリー。資産家の彼女の一族はホロコーストにより全滅し,彼女は親友のレネの庇護を受けながら,顔の再建手術を受ける。「違う顔にしたら身元を隠せますよ。」という医師の勧めを断って,ネリーは元の顔に戻してほしいと希望する。ピアニストだった夫のジョニーを探し出すことだけが彼女の願いだったから。

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レネは「ジョニーはあなたを裏切ったのよ」と告げるが,ネリーは夫がいそうな酒場を捜し歩き,ついにジョニーと再会するが,彼は妻だと気づいてくれない。それどころか,「死んだ妻に似ているから」という理由で,「収容所で亡くなった妻になりすましてくれ。妻の遺産を山分けしよう。」と持ちかける。「夫は本当に自分を愛していたのか、それとも裏切ったのか?」その答えを知りたいがために彼の提案を受け入れ,ネリーは自分自身の偽物を演じるが・・・。

監督は『東ベルリンから来た女』でベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)に輝いたクリスティアン・ペッツォルト。主演のニーナ・ホスも,相手役のロナルト・ツェアフェルも「東ベルリン~」の主演コンビだ。物語のキーとなる歌に,亡命作曲家クルト・ヴァイルの名曲「スピーク・ロウ」が使われ,「収容所のその後」を舞台にしたサスペンスフルな物語だ。
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ストーリーは少し無理がある。たとえば,一番変なのは,顔を再建したネリーに,夫以外の知り合いはみんなすぐにネリーだと気付くのに,なぜ一番親密だった夫がまったく気付かないのか?一番先に気づきそうなものだが,普通なら。それに,ネリーのほうも,夫が自分を密告していないと信じたいのはわかるとしても,「死んだ妻になりすまして遺産をだまし取ろう」なんて持ち掛けられた地点で,夫に愛想が尽きると思うけれど。

しかし,(後でわかるように)実際にユダヤ人である妻を密告した夫にとっては,生還した本物の妻とは会いたくなかったのだと思う。だって,自分が死の収容所に送り込んだ相手に会わす顔など,今さら無いに決まっているから。妻がまだ自分のことを愛して信じていればなおさらのこと。「妻は死んだ」と信じ込みたい彼の潜在意識が,実際のネリーを前にしても「これはネリーであるはずがない」と思わせたのかもしれない。
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計画の準備を着々と進めながらも,彼がネリーに対して不機嫌だったり苦々しい態度を取ったりしたのは,「妻に似ている」彼女を見たり思い出を探られたりするたびに,自分の罪を思い起こさせられて嫌だったのだろう。

戦争が起こる前,夫は妻を愛していたかもしれないけど・・・・
でもユダヤ人の妻を自分の命と引き換えにしてまで守り抜くことはできなかったのだ。
それは同情に値する。しかし,妻に似た女性が目の前に現れたら,遺産を狙う道具に使おうなどと考えつくところは全く同情の余地がない。本当に妻を愛していたけれど仕方なく裏切ってしまったのなら,絶対にそんな発想にはならないと思うから。こういう話を持ちかけられた地点で夫の不誠実さに気づけよ~と思うのだが,ネリーは夫との再会だけを生きがいに収容所生活も耐え抜いたわけで・・・・恋は盲目とはこのことだ。

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自分に気づいてほしい,それが無理ならせめて新しく愛してほしいと,縋るような思いで彼の申し出をすべて実行しようとするネリーが歯がゆい。友人たちの前での生還シーンを演出するために,夫は新しい赤いドレスとパリの靴を用意する。「収容所帰りの服装じゃないわ」と異を唱えるネリー。収容所の体験がどんなに苛酷なものだったか,少しも想像しようとしてくれない彼に苛立ったのだと思う。(ここでも,夫の愛のなさに気づけよ~と思った)

彼女を支えてきた親友のレネの自殺。そりゃ,同じユダヤ人のレネにとってはやりきれなかっただろう。彼女の自殺は,ホロコーストに対する怒りや祖国の再建よりも,裏切り者のドイツ人の夫との愛を取り戻すことを選んだネリーに対する抗議だったのか。レネが残した遺書によって,逮捕時には夫にすでに離婚されていた事実を知ったネリーは,初めて目がさめたのかもしれない。

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計画通りにうまく運んだ友人たちを交えての駅での生還シーン。
妻の生還を友人たちにうまく立証できて安堵の表情を浮かべる夫とは裏腹に,ネリーの顔には笑顔はない。そしてささやかな祝宴の後,彼女は夫に「伴奏して」と頼む。「スピーク・ロウを」・・・・・。戸惑いを隠せないままピアノに向かう夫。そりゃそうだろう。彼は自分が妻に仕立て上げた(と思っている)女が,まさか歌まで元歌手の妻と同じように歌えるとは思っていなかったのだと思う。

ここからが圧巻だ。
ネリーの歌声は最初はおずおずと弱々しく始まる。まるで独り言のつぶやきのように。夫の顔はますます心配そうになる。偽物であることが友人たちにバレるのでは,と思ったのかもしれない。ところが中盤にさしかかると,彼女の歌声は豹変する。力がみなぎり,高音が美しく響く。本来の歌声を取り戻したかのように。同時に表情までが,がらりと変わる。自信に満ち,もはやおどおどと,夫の心を探っていた彼女ではない。そしてドレスの腕を少したくし上げて,伴奏している夫の目に自分の収容所番号が触れるようにする。「私はネリー自身なのよ。」と彼女は歌声とその行動で告げたのだ。

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妻が生きていたこと,そして自分の裏切りも卑劣さも,すでに妻に露呈していることに気づいた夫は茫然自失の表情で固まる。妻は歌い終わると無言で立ち去る。今度こそ,永久に彼の元を去るために・・・だろう。切ないけれどカタルシスも感じるシーンだ。そうそう,こんな男のことは忘れて,人生を強く生きていってほしい。戦争さえなければ,壊れることのない愛だったかもしれないけれど,もはや元には戻るはずもない。

邦題がテーマと合ってない・・・「あの日のように抱きしめて」だなんて,そんなセンチな物語ではなかった。原題は「フェニックス」つまり「不死鳥」だ。これはネリーが夫を見つけた酒場の名前でもあるが,ラストシーン,裏切り者の夫から決然と去っていくネリー自身が「不死鳥」なのではないかと感じた。

2015年7月28日 (火)

あの日の声を探して

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第84回アカデミー賞受賞作アーティストミシェル・アザナビシウス監督が、チェチェンの紛争で両親と声を失った少年とEU職員の女性との交流を通して,戦争の悲惨さや人間の絆を描いたヒューマンドラマ。劇場で鑑賞。

チェチェン紛争とは,ロシア連邦内の一つの共和国チェチェンの分離独立運動のこと。独立を求めるチェチェンと,認めまいと鎮圧しようとするロシア側の紛争はチェチェン武装グループのテロ活動やロシアによるチェチェンへの空爆や民間人の虐殺を生み凄惨を極めた。この作品は1999年の第二次チェチェン紛争のさなかの物語である。

O05000223133200435451999年のチェチェン。ロシア兵に両親が銃殺される場面を目撃したショックで声を失った9歳の少年ハジ。彼は逃げる途中に赤ん坊の弟を見知らぬ人の家の前に捨て,放浪するうちにフランスから調査に来たEU職員のキャロルに拾われる。 キャロルは、EUの人権委員会の仕事で,チェチェンの悲惨な実態を調査しているが,どのように声をあげて訴えようとも,彼女の努力は事態の実際の解決には結びつかない。
Sub5_large_2はじめは心を開かないハジに手を焼くキャロル。しかし,紛争の中で自身の無力さを痛感するキャロルは,自分にできることを模索するうちに,せめて自分に託されたハジだけでも守ろうと決意し,ハジもそんなキャロルに少しずつ心を開いていく。

キャロルを演じるのは「アーティスト」のヒロイン,ベレニス・ベジョ。ハジを演じたアブドゥル・カリム・ママツイエフと彼と生き別れた姉ライッサを演じたズフラ・ドゥイシュヴィリは,オーディションで選ばれた、撮影当時10歳と17歳のチェチェンの素人の子供たちだという。O0550036613287169194彼らの飾り気のない自然な演技,特にアマツイエフ少年の,悲しみをいっぱいたたえた素朴な表情には,何度も涙を誘われた。

想像を絶する残虐な行いが,幼い子供の運命までも翻弄するチェチェン紛争。やりきれない怒りや悲しみと共に,そんななかでもあきらめることなく肉親を捜し続ける子どもたちや,手を差し伸べる人とのあたたかい絆に救いを見いだそうとする人々の強さ。地上から,このような非道な行いが無くなることはないにしても,そんな中でもハジのように懸命に生きている命があり,非力であっても自分にできる精一杯のことをしようとするキャロルのような存在もいる・・・。
News_header_anohino_20150426_01_2この作品が秀逸なのは、チェチェン側のストーリーだけを描くのではなく、サイドストーリーに,ロシアの若者コーリャが,強制入隊によって冷酷な兵士に変えられていく悲劇をも並行して描いていることだ。

軽犯罪で警察に逮捕されたコーリャは,強制的に軍隊に送り込まれ,最初は辛い遺体処理の仕事をさせられる。先輩兵士や上官による暴力やいじめを受けるうち,ごくごく普通の若者にすぎなかった彼は良心や感性が麻痺していき,他の兵士同様に次第に「狂気の兵士」に変貌する。犯罪者を起用したロシアの傭兵たちの,チェチェンの民間人への行いは特に非道を極めたそうだが,そんな傭兵たちの残虐さがどのようにして作られていったのか,コーリャの物語を観ていると納得できてしまう。なんとも恐ろしいことだ。
D0098286_19473590コーリャを演じたマキシム・エメリヤノフは,どこにでもいるようなありふれた風貌の,どちらかというと内気な雰囲気の若者。その彼が殺伐として暴力的な軍隊生活の中で,徐々に殺人マシーンへと変貌していく過程を,新人とは思えない演技で力強く演じている。

ラストでは,なぜコーリャの物語がハジやキャロルの物語と並行して語られているのか,その理由が明らかになる衝撃のシーンが用意されており,それまで親しみや共感を覚えながら見守っていたコーリャに対して,一気に冷水を浴びせられたような気持ちになった。いやはや,感動もさることながら,計算しつくされたすごい作品でもある。 

2013年11月 5日 (火)

王になった男

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大好きなイ・ビョンホン主演の韓国時代劇映画!やっとDVDで鑑賞~~heart02

若いころから大好きだったビョン様が,少しも劣化せずあいかわらず若いままで,一人二役の王様を演じているのだもの,作品の出来不出来に関わらず絶対観ようと思っていたが,観てみるとなんとも素晴らしい作品だった。彼のファンでなくとも十分に楽しめ,かつ感動もドキドキもできる見事なエンタメ作品だった。

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暴君と言われた朝鮮王朝第15代王,光海君と,彼の影武者を務めた道化師ハソンの物語。どちらもビョンホンが演じているし,どちらの役の時も王様の衣装のことが多かったので,王様かハソンか見分けがつくかな~と案じたが,そこはやはりビョンホンの演技力。クーデターや暗殺を恐れて疑心暗鬼になっている陰鬱な王様と,優しくて剽軽な道化師ハソンのキャラの違いを雰囲気や表情で,とても上手く演じ分けてくれていた。
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とにかく,王様の身代わりを務めているハソンを演じる時のビョンホンの表情がお茶目で可愛らしくって・・・・・

そう,この作品,王朝ものだというからもっとシリアスな大河ドラマ風なものかと思っていたら,案外コミカルで笑えるシーンがたっぷりなのだ。暗殺されかかって身を隠した王の代わりに,図らずも影武者を務めることになったハソンは賤しい身分の道化師であり,王に瓜ふたつだという理由だけで有無を言わさず宮廷に連れて来られた立場だ。王が入れ替わったことを知っているのは大臣のような立場の都承旨ホギョンと,王の身辺に仕える宦官のチョ内官の二人だけ。
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他の宮廷の誰ひとりとして真実を知らされていない中で,初めての宮廷生活・・・それも王としての・・・を演じなければならないハソンの,クスクス笑えるエピソードやじーんと心に来るエピソードの数々に笑ったり涙ぐんだりハラハラしたり。本来温かい心を持ち,人を笑わせることを生業としているハソンの優しさや,一般人民ゆえの民や使用人への,勇気と温情ある判断には,やがて真のリーダーとしての風格までもが身についてきて・・・・
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ハソンが演じる王が痛快で愛おしく,彼の突飛で型破りにも思える行動に驚いたり癒されたり慰められたりする宮廷の人々を観るのも楽しくて・・・・いつまでも彼がこのまま王位に就いて,本当に入れ替わってくれたらなぁ・・・いやいや,とにかくこの物語,面白すぎていつまでも終わってほしくないなぁ・・・と思いつつ,やっぱりいつかはハソン退場の時は来るよね,一体どんなふうにこの物語は締めくくられるのだろう,と気になって気になって。
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そうこうしているうちに,政治の改革を始めたハソンを苦々しく思う逆臣たちの手によって,王が偽物であることが露見しそうになり,本物の王も快復して王宮に戻れそうになる・・・賤しい身分で王座に座ったハソンは,「お役御免」とばかりに暗殺されそうになる。このとき,身代わりのハソンを慕う宮廷の人々の取った行動に泣かされた。ハソンから,本物の王には無い「情け」をかけてもらった毒見役の少女サウォルや,身辺警護のト武将は,命を捨ててもハソンを守ろうとする。この二つのシーンは感動ものだ。
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ラストはどうなって,ハソンの運命はどうなったかは触れないが,とにかく爽やかな感動に包まれた・・・。笑って,泣いて,すがすがしく温かい前向きな気持ちになれる,そんなとても素敵な作品だ。観てない方には大声でお勧めしたい。韓国映画嫌いの方もぜひ食わず嫌いをせずに観ていただきたいな。

2013年6月15日 (土)

オブリビオン

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トム・クルーズ
主演のSFアクション大作。
監督は,トロン:レガシージョセフ・コジンスキー監督

舞台は2070年代の地球。
攻撃してきたエイリアンとの戦いには勝利したものの,地球は放射能汚染により壊滅状態になり,生き残った人類は,土星の衛星タイタンへと移住を余儀なくされていた。そんななか,ジャック・ハーパー(トム・クルーズ)は,相棒で恋人でもあるヴィクトリア(アンドレア・ライズボロー)と地球に残って,監視任務に就いていた。
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ある日,ジャックは,墜落した謎の宇宙船の中で眠っている女性ジュリア(オルガ・キュリレンコ)を発見し,彼女を助けて監視基地に連れ帰る。ジャックはなぜが夢の中で彼女を何度も見た覚えがあり,目覚めたジュリアも彼を「ジャック」と呼ぶ。

大破した飛行船のフライトレコーダー回収のためにジュリアを伴って墜落地点に行ったジャックは,ビーチ(モーガン・フリーマン)と名乗る男に捕らわれてしまう。ビーチからジャックに告げられた事実は驚くべきものだった・・・・・。

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なかなか面白かった!すっかり更新をサボってたわたしが久々に感想をアップしようと思ったくらいだから。物語中盤に大きなどんでん返しがあり,そこから一気に面白くなるし,ストーリーも加速する。ネタバレになるから書かないけど,つまりジャックはとある壮大な嘘をつかれていたわけで,謎の女性ジュリアや敵のように思えたビーチの正体もわかり,ジャックはそれまでと一転して「本当に」地球を救うためのミッションに取り掛かる・・・というお話だ。

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アクションだけでなく,ミステリーの謎解きや夫婦愛の切なさも盛り込まれたバランスの良いSF
だと思う。映像もスタイリッシュで綺麗だし,洗練されている。謎解きの部分も分かりにくそうに思えて,観終わったあとはきちんと伏線も回収されているのですっきりするし,全体の雰囲気がしっとりして,そこはかとない哀しみさえ漂う・・・・哀しみというか郷愁というか。好きだな~~これ。

近未来のどんなクローン技術の洗礼を受けても,記憶を消されても,人間の根底に流れる愛や望郷の思いはやっぱり完全には消えず,本能のように蘇ってくるものなんだ・・・・・。なんだか嬉しいような切ないような。

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ついでにいえば,ハッピーエンドでなければもっとよかったかな。個人的な好みとしては。ラストのあんな形の再会も・・・・無い方がよかったかな…忘れ形見を一人で育てるヒロインという図の方が・・・余韻がね。いや単に好みの問題なんだけど。

ヒロインのジュリアは終わるまでキャサリン・ゼタ=ジョーンズだとばかり思っていた。後で調べたら,オルガ・キュウリ蓮根・・いやキュリレンコ・・・007/慰めの報酬の女優さんだったのね。お顔が細面に変わってて気がつかなかった。
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クローンめいた美しさのヴィクトリアを演じた女優さん・・・誰だろう?と思ったら,「ウォリスとエドワード英国王冠をかけた恋」でシンプソン夫人を演じた人だったのね。最近DVD観たばかり。

それにしても,トムちん,今作でもまだまだ若いね。もう50越えてるとはとてもとても見えないし,最近の出演作はどれもみんないい出来で。・・・・嬉しいなぁ。

ちなみに「オブリビオン」という言葉の意味は「忘却」とか「人事不省」「大赦」とかいうそうな。どれもみなそれぞれがこの物語の内容に当たってる・・・ような。

2013年3月12日 (火)

あの日、あの時、愛の記憶

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いとしい声が,私を呼んだ・・・・

ポーランドの強制収容所内で恋に落ち,一緒に脱獄を果たしたものの,その後生き別れとなった恋人たちが,30年以上もたって奇跡の再会をする物語。邦題はもっとヒネリが欲しいところだけれど,これは驚愕のホロコースト実話ものであり,そして切ないラブストーリーでもある・・・・DVDで鑑賞。ドイツ作品。
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最近はホロコーストの悲劇について,シンドラーのリストのような直球ものとは一味違ったもの,たとえば,ヒトラーの贋札ミケランジェロの暗号サラの鍵等,実に多様な切り口の作品が製作されていて,そのどれもが秀逸なので,この作品も当然見逃せなかった。

しかし実話だなんて到底信じられない設定の話である・・・・収容される前から恋人だったのならわかるが,収容所内(しかもアウシュヴィッツ!)で知り合ってから恋仲になるって可能?・・・・男女別に収容され,ナチス親衛隊の厳格な監視の元にあるのに,なんと妊娠まで!しちゃうなんて。おまけに二人で手に手を取ってアウシュヴィッツを脱獄だなんて・・・・できないでしょ,それは,いくらなんでも。
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しかしお話が始まってみるとヒロインのハンナはユダヤ女性だが,彼氏のトマシュはポーランド人であり,政治犯として収容されていて,彼は収容所内でもいろんな役得や恩恵を受けることができる立場にあったことがわかった。それゆえわずかではあっても看守の目を盗んだ逢引の機会も持てたし,彼はナチス親衛隊の制服を手に入れてドイツ兵になりすまし,ハンナを連れて無事に収容所のゲートを通過する。

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もともと,政治犯のトマシュは,収容所の告発写真のネガを,抵抗運動の有志たちに届けるために脱獄を計画するのだが,その際に愛するハンナも一緒に連れて逃げたわけである。トマシュが単身で逃げるのに比べると,格段にリスクが増す計画だ。

親衛隊になりすまし,偽の指令書を持っていたとはいえ,囚人服のハンナを連れたトマシュに,ゲートの警備員が少しでも不審を抱いたら,計画は成功してなかっただろうし,差し向けた追っ手に捕まって拷問や処刑を受けた可能性も大きい。彼らが逃げおおせたのは信じられないくらい強運だったのかもしれないのだ。いずれにしても,トマシュはまさに命懸けで愛する女性を助け出したのである。
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追っ手に捕まることもなく,何とか無事にトマシュの生家にたどり着いたのに,二人はその後運命のいたずらで,なんと生き別れになってしまう。あんなに命懸けで脱獄し,堅く将来を誓い合ったのになぜ?と,この点も不思議だったが,ハンナを置いて抵抗運動に身を投じなければならなかったトマシュの事情や,ハンナを受け入れなかったトマシュの母の選択や,あの動乱と混乱の時代背景を考えると,互いに相手を「死んだもの」と思ってしまったのも仕方なかったのか・・・・。
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相手がこの世にいないなら,どんなに恋しくても悲しくても,思い出ばかりに浸って嘆いて生きていくわけにもいかない。ハンナはアメリカに渡って今の夫と出会い結婚し,娘をもうけ,過去は封印して(きっとトマシュの死があまりにも辛かったから)生きてきた。晩餐会用のテーブルクロスを受け取りに訪れたクリーニング店のTVから,懐かしいトマシュの声を聴くまでは・・・・・。

トマシュが生きていてポーランドにいるらしいと知ったハンナは,30年前トマシュの「推定死亡」という捜索結果を受けた赤十字社に再び電話をかけ,トマシュの電話番号を調べてもらうことに成功する。
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死んだものと思っていた最愛の人が生きていた・・・・それを知ったのは30年もの年月の隔たりのあと。すでに両者とも家庭があり,30年築いてきた別々の人生があった。この状況で再会すべきか否か・・・この物語は,収容所で愛を育み,脱獄したということも異色だけれど,30年ぶりの再会とそのときの恋人たちや家族の心情などにも心が揺さぶられた。

内心に複雑な思いを抱えていたに違いないのに,妻に「逢っておいで」と勧めるハンナの夫。母の過去を静かに受け入れる娘。彼らにとってトマシュは,ハンナの過去の恋人というだけでなく,「命の恩人」でもあったからなのか
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多くを語りすぎない秀逸な余韻の再会シーンもよかったが,私はハンナがトマシュに電話して,生存を告げた場面が好きだ。二人とも,この時どんな思いがこみ上げてきただろうと思う。まさに万感胸に迫る思いだったに違いない。

再び声を聴けた・・・愛しいひとが生きていた・・・という喜びと同時に,取り返しのつかない喪失の歳月に対するやるせなさも感じたことだろう。時は二度と巻き戻せない。再会したあと,二人はどうするのだろうかと,それが気になって気になって,実話だというからには,モデルになった二人はどうしたのか?といろいろネットで調べてみた。

※モデルとなった二人について書かれたニューヨークタイムズの記事によると,再会後の二人は,生涯よき友人を通した、とあります。再会したとき,トマシュ(実名イエジ・ビレッキ)はハンナ(実名シーラ・シバルスカ)に,39本のバラの花を捧げました。それは彼らが逢えなかった39年の歳月を現していたそうです・・・。

2012年5月 4日 (金)

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第84回アカデミー賞作品賞・監督賞・主演男優賞の3部門を受賞した作品。

とっても素敵!新鮮!そしてオシャレでハートウォーミングな作品。そして,なんといってもサイレント映画への敬愛に満ちた作品だ。たしかに従来の3Dやなにやらを駆使したハリウッド作品の中では,この作品はシンプルさと凝りようが「異色」なので,かえって目立つだろうな~,よい意味で。
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主演男優のジャン・デュジャルダンさん,よく知らない・・・・と思ったら,フランスのコメディアン俳優さんだそうで。「風と共に去りぬ」のレット・バトラーをお人好しにしたような雰囲気なんだけど,コメディアン俳優だけあって,笑顔がとっても人懐っこくて素敵。

サイレント映画全盛時代の大スターだった彼が,トーキー映画の時代になって没落してゆき,その反対に一躍売れっ子となっていく女優との恋に,煩悶や葛藤を覚える物語。最後はハッピーエンドなんだけど,途中はなかなか切ない展開もあり・・・・。
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ヒロインの女優役のベレネス・ベジョは,アルゼンチン生まれの女優さん。この作品の監督の奥さんだそうで・・・・。明るくて可愛くて,ポジティヴで,そして主人公の男優を一途に愛する姿がとてもチャーミングなキャラだ。

この映画自体がサイレント映画のつくりになっているので,最初はやはり「見慣れない」違和感があり「俳優さんたち,しゃべってよ~」と思わないでもなかったが,すぐに慣れた,というか,絶え間ないBGMや,時にはパントマイムっぽい仕草の役者の演技や,時折入る字幕だけでも十分にストーリーがわかることに驚き,いやむしろそれだけで楽しめる「サイレント映画」というものに「凄いなぁ」と素直に感動し,ぐいぐいと作品の魅力にひきこまれていった。
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特にお気に入りは,この,ヒロインの,タキシードとの独り芝居の場面。とってもロマンチックでそれでいてヒロインの自分の腰に回した片手が,男性の手にしか見えなくてドキドキ・・・。ヒロインの慕情もとても切なく伝わってきて,何度でも観たいシーンだ。

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個人的には主人公の愛犬役のこのワンちゃんに,演技賞あげたいかな。すごくかわいくて健気で。ピストルで死んだ真似とか可愛すぎ。ご主人の命が危うくなったときの活躍ぶりもいじらしくて,ワンちゃん好きにはたまらないキャラ?だ。
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さすがアカデミー作品賞だけの魅力は満載の作品です。私は大好き。とても面白かった。この「面白さ」は,ストーリーの面白さではなく,「サイレント映画ってこんなんだったんだ~!すごい}という面白さなのかもしれないけど。ラストの二人の見事なタップダンスも必見です。元気で優しい気持ちになれる素敵な作品でした。

2012年2月 7日 (火)

アジョシ

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もうもう,悶絶するくらい超カッコいいハードボイルドなウォンビンに会えます!

あらすじ: 過去の出来事が原因で心に闇を抱え、街の片隅で質屋を営んで生きる男テシク(ウォンビン)。隣に住む孤独な少女ソミ(キム・セロン)は、テシクをただ一人の友達として慕っていたが、ある日、ソミが麻薬中毒の母親共々犯罪に巻き込まれ、組織に誘拐されてしまう。ソミを救い出すため、立ち上がったテシクは…… 。(シネマトゥディ)

最初からずっと痺れっぱなしだった・・・・。
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ですね,これ。大好きです,こういう設定。
孤独な殺し屋・・・じゃなくて,元特殊工作員の男と,同じく孤独な少女の愛と絆の物語であるのかも。ただし,レオンのジャン・レノより,ウォンビンは若くてカッコいいし,ナタリー・ポートマンより,少女役のキム・セロンちゃんは幼くてあどけないけれど。

しかし美しい男だ・・・・ウォンビン。
Cap283_2
とくにこの作品の彼は美しい。これまで私が観た彼の作品は,秋の童話ブラザー・フッドマイ・ブラザーと,母なる証明だが,彼はどちらかというと,瞳が小鹿系heart04なので,役柄や髪型によっては可愛らしく見えることもあったし,役柄も弟キャラが多かったのだが,今作ではかなり体を引き締め,身体を張った本格的なアクションも自らこなし,何ともワイルドに美しい。
Cap262
冒頭,前身を隠すために,ひっそりと根暗な質屋をやっている姿もかっこよくて,「隣のおじさん(アジョシ)」という呼び名には,めちゃくちゃ勿体無いぞ。どこがオジサン? どう見てもお兄さんでしょ。

Cap256

ヤク中の母親を持ち,世間からも冷たい目で見られていたソミと,工作員時代に,お腹の子もろとも愛妻を目の前で失ったトラウマから,その瞳に消えることのない暗い哀しみを湛えてひっそりと生きていたテシク。
Cap263
二人の間に絆を芽生えさせたのは,互いの抱える深い孤独だったのだろう。事件に巻き込まれ,ソミの命が危うくなったときに,再び「守るべき存在」を得たテシクが生ける屍から従来の超一流の殺人マシーンとして蘇る・・・・。

このウォンビン演じるテシクの変貌はすごい。無気力で哀しげで,影をまとったような表情の彼が、単身で敵方に乗り込んでいくときには別人のように猛々しく精悍に。根暗な彼も獰猛な彼も,どっちもまあ,ふるいつきたいくらい男前ではあるけれど。
Cap288
身体能力も戦闘スキルももちろんだけど,ソミ救出への執念というか,愛の一念のなせる技は向かうところ敵なし。特にソミが殺されたと思い込んで復讐を成し遂げるシーンの,テシクの表情のすさまじさは鳥肌が立つほどだ。アクションシーンは,銃撃戦もだが,彼の目にも留まらぬナイフさばきの鮮やかさは見どころだ。
Cap292
しかしこの作品,敵の残酷さや手ごわさ,卑劣さがこれまた桁外れにすごい。日本ではとても考えられないような犯罪・・・子どもの臓器売買を生業とする連中が相手なのだから。これ,実際に韓国や中国の闇社会で行われていたら怖いな,とも思った。韓国映画独特の一切手抜きなしの残酷描写が苦手な人には,いくらウォンビンが素敵でもお勧めはしないかな。
Cap294
Cap298_2
悪役も「レオン」並みにぶっ飛んでいていて,怖いのだけど妙に魅力的なキャラが揃っていた。こういう突き抜けた恐ろしさと不気味な個性を表現させたら,脇役さんも含めて韓国映画ってほんとに上手いと思う。
Cap290
今作で一番光っていた悪役は,ラム・ロワン役のタナヨン・ウォンタラクン。なんとタイの役者さんだそうで。テシクとの一騎打ちで殺されちゃうし,殺されるしかないとは思うけど,実はこの彼,純粋に悪党だとは言えないような「あること」をテシクのためにやってくれているので,殺されちゃってちょっと残念。

ソミ役のキム・セロンちゃんは,さびしげな顔立ちが薄幸そうで利発そうだ。もちろん大人顔負けの演技力には唸ってしまった。ラスト,おそらくこれから警察に収監されるテシクが,ソミに雑貨屋でたくさんのお菓子を買い与え,「一人で生きろ。」と言う場面は泣けた。
Cap307
そして「一度だけ抱きしめさせてくれ。」とソミに懇願するテシク。無邪気に広げたソミの腕がテシクに回される・・・・。心に焼き付く切なくも温かい抱擁シーン。この時のテシクは,自分が守りきれず,この世に生を受けられなかった我が子にも思いを馳せていたのではないか?と思った。

Cap310
そしておそらくソミは,テシクとの約束を守って独りで気丈に生きていきながらも,もし叶うならば何年でもテシクの帰りを待つのではないだろうか・・・どういう形でも,この二人を再び逢わせてあげたい,と私的には願ってしまうラストだった。

2011年11月 8日 (火)

言えない秘密

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DVDで鑑賞,もう数年前の作品だそうだけど,リリースがかなり遅れたみたい。「言えない秘密」という邦題に,ミステリアスな魅力を感じて借りてみた。監督も脚本も主演も音楽も担当しているジェイ・チョウの,その才能と感性の並々ならぬ豊かさにまず驚く。
Jey
ピアニストとして作曲家として,また歌手として,これほどまでに素晴らしいとは。特にピアノの演奏は神業だ。ピアノ対決の場面のジェイの演奏は何度観ても鳥肌もの。

舞台はノスタルジックな建物の音楽学校。ある日,ピアノの音色に惹かれて旧校舎を訪れたシャンルン(ジェイ・チョウ)は,謎めいた美少女シャオユー(グイ・ルンメイ)と出会う。
Cap039
惹かれあう二人・・・彼らの恋を見ていると,自分の体験してきた,思春期のピュアなときめきや切なさを思い出す。恋人たちの自転車の二人乗りのシーンは,大学時代の自分の恋の思い出とリンクする部分もあって。

爽やかに軽やかに,恋物語は進行するが,幸せそうなのにその陰に哀しみを宿しているシャオユーの表情がずっと気がかりで,「言えない秘密」っていったいなんなんだろう?と思っていると,中盤を過ぎたころに一気に物語はミステリアスな急展開に。
Cap062
どんな秘密かはネタバレになるので言わないけれど,そんなに予測不可能なものではなかった…私には。それでも秘密が明らかになるにつれて,それまでの不可解なシーンがみんな見事に辻褄が合っていくし,やはり一緒には生きることができない運命の恋人たち,という点はとても切なくて,けっこう他にも似たようなラブストーリーはあるのだけれど,キーとなるのが,「あるピアノ曲の演奏」だったりするところなどが独創的で素敵だ。

Cap057

「愛してる・・・・あなたは私を愛してる?」という文字。
そしてすべてを理解したシャンルンが
シャオユーのために取ったラストの行動。

ファンタジーではあるけれど,
これは,とても素敵な切ないラブストーリー。

Cap047
挿入されている音楽がクラシック風のも,現代風のもみんな素敵だ。(ほとんどジェイの作曲?)
彼の作品は王妃の紋章グリーン・ホーネットしか見てなくて,もっぱらスポーツ万能の面しか知らなかったのだけど,こんなにも繊細で芸術豊かな彼の才能の一面に,また感動した。世の中には天からニ物も三物も,いやもっともっとたくさんの賜物を与えられている人がいるんだね。

音楽とラブストーリーの好きな方に特にお勧めの,
珠玉のような愛すべき作品。

2011年9月20日 (火)

悪魔を見た

1
箪笥」や「甘い人生」「グッド・バッド・ウィアード」のキム・ジウン監督作品。そしてイ・ビョンホンチェ・ミンシクが主演と聞けば,どんなにグロい壮絶な復讐劇でもやはり観たくなる・・・・。しかし予想をはるかに凌駕する残酷映像のオンパレードで,(甘い人生の十倍くらい)これは劇場で観なくてよかったな,と。DVDなのでところどころ早回ししたり音を消したりしながら,それでも最後まで観た。
Cap006
自分の子供を妊娠していた最愛の恋人を,猟奇殺人鬼ギョンチョル(チェ・ミンシク)に惨殺された捜査官スヒョン(イ・ビョンホン)の壮絶な復讐譚。比較的シンプルなストーリー展開の中で,なんといっても見どころは,殺人鬼を演じたチェ・ミンシクの卓越した演技力。(もちろんビョンホンも負けてはいないけれど)。親切なクムジャさんでも,彼は血も涙もない殺人鬼を演じたが,今回の役はそれをもっと上回っていた。
Cap005
良心などひとかけらも持ち合わせていない,まさに「悪魔の生まれ変わり」としか言いようのないギョンチョルの不気味さと憎々しさ。一見平静に見える時の彼もまた,ふてぶてしくて気持ちが悪いのだけど,獲物に向かって突如牙をむくときの彼の恐ろしさといったら・・・・。彼の手中に陥ったら最後,助かる望みなど皆無ではないか・・・そんな戦慄すべき「絶対悪」を見事に体現しているモンスターキャラだった。よくここまでなりきれるもんだ・・・,驚愕。
Cap014
そしてそんな彼に,単身で復讐に挑むスヒョン。こちらもまた,冷徹な復讐の鬼と化し,ギョンチョルを追い詰めては重傷を負わせ,それでも決して息の根を一気には止めずに再び相手を野に放つ,ということを繰り返す。ギョンチョルの仲間の殺人鬼の言葉を借りれば,「狩りと同じ。痛めつけては逃がし,再び追い詰めてはさらに痛めつけて獲物をいたぶる。」ようなやり方だ。

「覚悟しておけ,だんだん残酷になるぞ。」とギョンチョルの耳元でささやくスヒョンの表情にはすでに静かな狂気が滲んでいる。
Cap037
一息に殺すのは惜しい・・・恋人が死の間際に味わったものと同じ恐怖や苦しみに悶えさせながら殺してやりたい・・・・その執念に取りつかれるスヒョンと,「面白くなってきたじゃねえか」とばかりに,スヒョンの挑戦を受けて立つ不敵なギョンチョル。この二人の血みどろの一騎打ちは,途中にあわれな巻き添えの死者を出しながらも,延々と続く・・・・。

Cap016
とにかく誰がいきなり死ぬかわからないし,凄惨な殺戮シーンも予告なしに全開されるし,ハリウッドや日本の映画ではお約束のように「助かる」はずのキャラクターもバンバン殺されてしまう・・・韓国映画の,とくに犯罪ものや復讐ものの,容赦ない世界には,タブーなどという生易しいものは存在しない。その,地獄の底までも行ってしまう容赦なさも結構好きな私だけれど,さすがにこの作品は・・・いやはやかなり疲れました。

Cap031
ギョンチョルが拉致した女性被害者を、生きたまま切断する残酷シーンは,精神的にはもっとも目を覆いたくなる場面だけれど,ギリギリまで見せつつも肝心のシーンはさっと切り替えてくれることが多かったので,まだ観れた。しかしスヒョンがギョンチョルを痛めつけるシーンはあまりカットがなく,リアルに焼いたり切ったり突き刺したり・・・という場面を見せられるので,心臓の弱い人やバイオレンス描写が苦手な人には非常にキツイと思う。

この監督さんの作品のイ・ビョンホンは,甘い人生などもそうだったけど,精悍で美しい。痛みや哀しみを内に秘めた「手負いの一匹狼」のような悲壮感の漂うキャラである。

Cap019
恋人の死に直面したときの手放しで嘆き悲しむ表情,ギョンチョルと初めて対面した時の憎しみの表情,そして鉄の意志を持って復讐を遂げていくときの,瞳の奥に暗く冷たい炎が燃えているような表情・・・ビョンホンの演技が素晴らしい。生来は善人であったはずの彼が,深い憎しみを持ってギョンチョルと対決することにより,次第にギョンチョルに負けないほどの「悪魔」へと変貌していくのだ。

悪魔と互角に渡り合うには
自らも悪魔になる必要があるのかもしれない。

Cap028
しかし,その闘いに終わりは来るのか…救いは,達成感はあるのか?どんなに痛めつけようと「俺は苦しみなんて感じないんだ。」とうそぶくギョンチョルに対して,最後にスヒョンが取った究極の選択。そしてすべてが終わったあとの,スヒョンのラストシーンの声なき慟哭。

観客の我々もまた,冒頭にスヒョンの怒りや悲しみに強烈に感情移入させられるため,彼とともに,どんどん「悪魔」の心境になっていく・・・人間の心の闇をたっぷりと見せつけられる恐ろしい作品である。残酷描写が苦手でなければ,お勧めの作品。

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