いま,再びイニス/ブロークバックマウンテン番外編6
いつごろからだろう・・・・?BBMを鑑賞するたびに,以前と違ってジャック・ツイストより,イニス・デルマーの方に感情移入するようになったのは。それはやはり,ヒースの死がきっかけだろうか。
もともとこの物語は,イニスが主人公の物語なのだけど,ジャックのほうが可哀想に思えて,ついついイニスに関しては醒めた目で見ていたのに,今となってはイニスが可哀想でたまらない思いに襲われる。
ジャックの一生とイニスの一生・・・・どちらが可哀想かなんて,比べられるものではもちろんないと思うけれど。それでも叶わぬ夢と,望んだ形では報われなかった愛情を抱えて死んでしまったジャックのほうが,それまではいじらしくって,いとおしくってたまらなかった。でも,考えてみれば,自分のセクシャリティを長年受け入れられずに,暗闇の中でもがいていたイニスの人生もまた,なんと可哀想なことか。
彼がその人生を通して,
少しずつ,そして確実に失っていったもの・・・・
平穏な結婚生活,世間からの信用,
仕事,収入,ガールフレンドとの関係。
それらを失ったからといって,その見返りに,ジャックとの生活を得たわけでもなく。そして,自分でもなぜこうなったかわからないままに,気がついたら最愛のジャックから「いっそ別れられたらいいのに」と愛想づかしめいたことを言われて逆上し,「お前のせいで俺の人生,ドツボだよ」とヤツあたりのように泣いたイニス。
ジャックを思いきることも,居直って一緒に生きることもできなかったイニスの人生は,中途半端の極みで,どんなにか辛かったろうと思う。そしてようやく一番大切なものに気づいた時には,それはもはや思い出となっていた,という悲劇。
冒頭からラストに至るまでの
イニスの表情の変化,ただよう雰囲気の変化。
不器用で無骨な感じは,若い頃から一貫して変わらないが,年を経るに従って,悩みのせいか,どんどんみじめでくたびれた感じになってゆく。彼の全身から,「後悔」や「葛藤」や「引け目」がにじみ出ているような哀れさに胸が詰まる。そして終盤になって,ジャックへの愛を自認してからのイニスは,ようやく悟りの境地に達したかのように,一種の枯れた雰囲気を漂わせる。
・・・・こんなイニスを,いったいヒース以外の誰が,こんなふうにしみじみと,演じられるというのだろう。本当に,ヒースの演じたイニスのように,心に訴えてやまない演技を他の誰ができるというのか。
BBMの地点で,ヒースにオスカーをあげてほしかった。
もし今年,ダークナイトのジョーカー役でオスカーを受賞したとしても,もらって一番うれしい本人は,もうこの世にいないんだもの。とは言え,やはりヒースのジョーカーの素晴らしさが世界的に評価されるのは,なんと喜ばしいことか。・・・・・ジョーカーとの出会いが初ヒースという方は,これをきっかけに,ジョーカーの名演技に勝るとも劣らない,BBMのイニスの演技もぜひご覧になっていただきたい・・・・。
| 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)















































最近のコメント