11人の賊軍
あらすじ:868年、鳥羽・伏見の戦いをきっかけに、薩摩藩・長州藩を中心とする新政府軍と、旧幕府軍による戊辰戦争が勃発する。そんな中、新政府に対抗するため、奥羽越列藩同盟が結成。その同盟にやむなく加わった新潟の小国・新発田(しばた)藩は、官軍の進撃を食い止める起死回生の一手として、藩に捕らえられていた死罪になるべき11人の罪人たちを、決死隊として砦を守る任に就かせる。(シネマトゥディ)
劇場で2回鑑賞!
いやぁ、面白くて面白くて。爆破シーンや美しく迫力満点の殺陣にエキサイトし、個性的な役者陣のハマり具合と名演技に酔いしれた。最後は大団円でもなく勧善懲悪でもなく、いつの世も弱者はお上の犠牲や捨て駒になるという何ともやるせないメッセージも込められている本作品。
死罪を待つばかりだった罪人たちが、藩の都合で砦を官軍から守るという決死隊に任ぜられ、ラストはほぼ「そして誰もいなくなった」状態というカタルシスの無さなのに、久々に骨のある時代劇を見せてもらった心地よさを感じた。
罪人の数は10人。それがなぜ11人というタイトルになるのかは、終盤近くの場面で明らかになるので観てのお楽しみだ。10人の罪状はほんとに様々で、強盗殺人、姦通、密航、火付け、一家心中、賭博詐欺、辻斬などなど。この時代ならではの罪状もあり、配役が絶妙でそれぞれ魅力的だ。
彼らを率いる剣豪・鷲尾兵士郎を演じる仲野太賀さんがとにかくカッコいい。
殺陣は初めてらしいけど、とてもそう見えない見事な姿勢と剣さばき。そしてみなぎる殺気と気迫が凄い。これまでも「泣き」の演技などすごく上手くって、好きな俳優さんだったけど、時代劇もイケる!役者としてほんとに才能のある人なんだなぁとファンになった。主演が予定されている大河ドラマも楽しみになってきた。
このお爺さんもめちゃめちゃ強くて痺れました。なにより殺陣が芸術的な美しさだった。本山力さんという俳優さんで、聞くところによると、東映剣会及び一般社団法人武士道剣会所属で、時代劇の殺陣の専門家のような人らしく、そりゃカッコよくて当たり前だよなと。腰の入れ方、槍や剣の構え方など他とは一線を画する見事さ。
女犯の罪状を持つ生臭坊主を演じた千原せいじさんも飄々としたいい味出してたし、賭博詐欺師を演じた歌舞伎役者の尾上右近さんは二枚目のヴィジュアルで演じる三枚目の役どころが楽しい。焚火の周りで盆踊りをするシーンではさすがに歌舞伎役者!という美しい手の動きについつい目が行ってしまった。
家老の婿で決死隊の隊長・入江数馬を演じた野村周平さんも、昔から応援している好きな俳優さんだ。れっきとした正統派イケメンだけど、主演を支えるバイプレイヤーの役のことが多い。今作でも重要な、そして悲運な役どころだ。
罪人の中では紅一点のなつを演じた鞘師里保さん。元モー娘というから驚きだった。自然な演技がとても上手かった。彼女が政をいさめるシーンで語られる達観した人生観としなやかな強い生き方はとても魅力的だった。
そしてどう見ても善人顏なのに、極悪人も演じることのできる阿部サダヲが演じるご家老・溝口内匠(実在の人物)。いくら新発田藩のためとはいえ、弱者を餌で釣って騙すのはやはり許せない。彼の卑劣さは終盤まで明らかにされないし、それまでは、幼君を支えて藩政に苦悩する物腰柔らかな名家老にしか見えなかったので、彼の切腹が中断したシーンでは安堵したのだけど、仲野太賀さんと対決するシーンでの卑劣な行いを観たら「こいつやっぱりあの時切腹してたらよかったのに(-_-)」と思った。
爆破で肉片が飛び散ったり切断された指が転がったりと、グロいシーンもあるし、そういうのが苦手な人にはお勧めできないけど、本格的な殺陣や容赦のない戦闘シーンが見たければ絶対一押しだ。様々なバックボーンと個性がぶつかり、当初はバラバラだった罪人たちが、官軍と命を懸けて闘い、新発田藩の陰謀に気づいてからは一致団結し互いに絆も生まれるシーンは感動する。それぞれにストーリーがあり、得意技もあり、戦いでの個々の散り様も哀しくも見事だったと思う。
山田孝之さん演じた政が、新発田藩への怒りや恨みから最初は脱走ばかり企てていたのが、ラストには仲間を想い、戦いの場に帰って華々しく散るさまにも、生還したなつとノロが、「めでたい、めでたい」と連呼する歌の流れる平和な城下を駆けてゆくふくらはぎを後ろから大写しにしたラストシーンにも、重い余韻が残った。
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