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2023年2月27日 (月)

PLAN 75

Origin
アマゾンプライムで鑑賞。

プラン75とは75歳以上の高齢者に対して自らの生死の権利を保障し、支援する制度。この制度を利用することによって75歳以上の高齢者は望めば自分で死を選べる。 それが良いことか悪いことか、一概に判断できなくなったと感じざるを得ない超高齢化社会の問題が重くのしかかるこの国において、安楽死問題を真っ向から描いた物語。

やるせなさと、哀しさと、どこへぶつけたらいいのかわからない怒りに満たされる作品だった。それでも、90歳を越える両親を持ち、自身は独り身で老後は頼る身内が限られている私には、到底他人事の物語ではなく、3度も繰り返し観てしまった。

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この物語では、「プラン75」を申し込む二人の高齢者が描かれる。一人はホテルの客室清掃員をしている78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)。冒頭の彼女は、同年代の同僚3人と時にはカラオケに行ったりして慎ましくも平穏に暮らしている。78歳でまだ働かなければいけない彼女の境遇に驚くが、実際に国民年金だけでは暮らせない現状が今の日本だから、この設定に違和感がないことが既に恐ろしい。しかし
友人の一人が仕事中に倒れたことをきっかけに、年齢を理由に仲間と共に解雇された彼女は収入を絶たれ、友とも疎遠になり(そのうちの一人はなんと孤独死)住んでいた公団住宅も立ち退きを迫られる。78歳の彼女を雇ってくれる職場も貸してくれる住まいもなく、次第に八方塞がりに陥り「プラン75」への申し込みを検討し始める。

もう一人は75歳になったその日に、待ちかねたように市役所の「プラン75」申請窓口を訪れた岡部幸夫(たかお鷹)。その表情やたたずまいから、長年孤独と貧困の中で暮らしてきたのだろうことが伺える。
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しかし、なんと彼の目の前に担当職員として現れたのは、20年間も疎遠だった甥のヒロム(磯村勇斗)だった。3親等になるので幸夫の担当は外れたものの、ヒロムはその後さりげなく幸夫のアパートを訪ね、長らく音信不通だった叔父と肉親としての親交を再開させる。自分で死を決めた叔父のそばにせめて寄り添うために。

この作品では、「プラン25」の運営側の人間の心の機微についても細やかに描写される。ヒロムを通して、「自分の親族が顧客?となったらどういう心境になるか。そして何をしてやれるのか」が描かれている。そして「プラン75」のコールセンタースタッフでミチの担当になった瑤子(河合優実)を通して、担当した相手にまるで祖母に対するような情が芽生えてしまった場合の切なさも描かれている。他にも淡々と遺品整理業務をこなすスタッフの飄々とした割り切り方にも考えさせられるものがある。

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このような作品を通して問題提示がされる日本という国は、もはや「幸福」でも「安心安全」でもない国になってしまったのかもしれない。高齢者が「はやく死にたい」と願う社会。生きたくても住む場所も生きる糧も与えられなくなる社会。そして若い世代が高齢者を養いきれない社会。どんどん周囲が暗くなって闇に閉ざされていくような、そんな絶望感に押しつぶされる。老々介護の果ての家庭内殺人や認知症介護に疲弊して崩壊する家庭。施設にも入れないとなっては、もはや生きていくことは無理なのに、寿命はまだ尽きないとしたら・・・・。自分で死を選べて楽に死なせてくれるなら、こんなありがたいことはない・・と感じる人はきっと私だけではないはずだ。

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ミチは結局最後に思いとどまり、生きていく決心をする。一方、幸夫は決心を翻すことなく静かに旅立っていく。思いとどまったミチが朝日を浴びて小さな声で「リンゴの木の下で」を口ずさむ場面で映画は幕を閉じる。彼女は最終手段の生活保護に頼ってこれから生きていくのかもしれない。しかしそこに希望はあるかどうか保証はできない。天寿を全うすることが苦痛でない社会に、何とかしてならないものかと切に思った。

心情を説明するセリフはほとんどなく、BGMもなく、俳優さんたちの繊細な表情や声音や、秀逸なカメラワークだけで登場人物の葛藤や諦めや悲哀が手に取るように伝わる作品だった。

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コメント

倍賞千恵子さん、素晴らしかったですね。
私も自分のこととしてこの映画を観ました。
10年後には後期高齢者になる身としては、切実です。
本当に、余計なBGMも説明も一切なく、観るものの心に迫ってくるいい映画でした。

ダリアさん コメントありがとうございます。

わたしも同じような年齢です。
実際にこのプランがあったら、利用するかもしれません。
親を介護中ですが夫も子もいないので
自分を介護してくれる身内はいません。
孤独死や闘病するくらいなら自分で人生に幕を下ろしたいです。
年金制度も崩壊するだろうし、国の財源のためにもこのプランはいいと思いました。
そしてそんな気持ちにさせる社会にも悲しさと怒りを感じましたけど・・・。

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