ホテル・ムンバイ
2008年にムンバイで起きた同時多発テロ事件。テロリストに占拠されたタージマハル・ホテルで、従業員たちが命をかけて宿泊客を守った実話に基づく作品。主演はスラムドック$ミリオネアやLION/ライオン~25年目のただいま~のデヴ・パデル。この人が出てる作品は間違いないクオリティだと信じて鑑賞。
客たちの皆殺しをもくろむ訓練を受けたテロリストに対して、戦闘に関しては全く何のスキルもないホテルマンたち。5つ星ホテルの矜持にかけて彼らが守り抜こうとしたものは「お客様は神様」という信念。ホテル内を知り尽くしている彼らは、必死で客たちをテロリストから隠し、脱出させようと試みる。陣頭指揮を執ったヘマント・オベロイ料理長は実在の人物で、世界中のVIPを顧客に持つ超一流の有名シェフ。一方、パデルの演じた従業員アルジュンは、実在した複数の従業員を合わせて作られた架空のキャラクターらしい。
この作品はサスペンスとアクションとヒューマンドラマの性質を持つ。いきなり響き渡る銃声や、情け容赦なく虫けらのように瞬殺される人々。どこから敵が現れるかわからない中を、手探り状態で客を誘導する従業員たち。観ているこちらもその場にいるような気持に襲われ、閉塞感や恐怖感が半端ない。また、有名俳優さんが重要な役で出演していて、いくらなんでもこの人は殺されないだろう、と思っていたのに、まさかの処刑シーンとか、救いのない場面には戦慄と衝撃を禁じえなかった。しかし、立ち去ることもできたのに、あえてホテル内に留まる決断をしたホテルマンたちの決意のシーンや、最終戦で銃撃の中でもしんがりに踏みとどまって客たちを誘導するアルジュンたちの勇気ある行動には胸が熱くなった。
テロ殲滅部隊が到着するまでの数日間を持ちこたえ、500人以上もの人が巻き込まれ、命を危険にさらされながらも、32人しか死者が出なかったタージマハル・ホテル。それは、アルジュンたちホテルマンたちの勇敢で機転の利いた命がけの誘導によって成し遂げられた奇跡だった。絶望や恐怖をたっぷり味わいながら、その中で人種や職業を超えて団結し最後まで希望を捨てない人々の姿から希望を感じることができた。同じような状況に置かれたとき、自分だったらどう行動するのか、問いかけながら映画館を後にした。
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この映画は物凄く緊張を強いられました。
終わってホ~ッ!という感じでした。
しかし、よくできた映画でしたね。
インドでは、行く先々で物乞いに囲まれたり、お店では10倍に吹っかけられたり、あまりいいイメージがなかったのですが
自分の命を捨ててお客の命を守る、こんな人たちもいたのだと感動しました。
投稿: zooey | 2019年11月15日 (金) 18時53分
zooeyさん
ほんとに「早く終わってくれ~~」とチラッと思ったくらい
緊張感が凄くて怖かったなぁ。
次何が起こるかわからないお化け屋敷に近い怖さもあったわ。
インドはわたしも同じようなイメージを持っていたけど
さすが5つ星ホテルの矜持だったのでしょうか。
主人公のアルジュンも、自分の生活そのものは貧しくて。
それでも心映えは高貴でしたね。
投稿: なな | 2019年11月17日 (日) 13時49分