運び屋
つい先日、87歳の父がついに運転免許の返納を決めた。田舎住まいなのでできるだけ長く頑張ってきたけれど、さすがにもう限界ということで・・・。高齢者の運転ミスからの痛ましい事故も多発するようになった今日この頃、娘としては内心安堵するものもあった。そんな時に鑑賞したのが、巨匠イーストウッド監督の最新作「運び屋」である。実在した90歳の麻薬カルテルの運び屋をモデルにした作品で、なんと88歳のイーストウッドが主人公のアールを演じた。父とほぼ同年代、米寿を迎えるイーストウッドがどこまでも続く道路を鼻歌を歌いながら運転する映像に「なんて元気なんだ!」とまず最初に驚いた。
この物語は、高齢の両親を持つわたしにとっては、しみじみと心に響く「終活映画」だった。そして88歳を迎えたイーストウッド監督にとっても集大成ともいえる最高傑作だと思った。麻薬カルテルの運び屋が主人公なのだから、もちろん緊迫したシーンもあり、主人公アールのものに動じない飄々とした個性と周囲とのやり取りはコミカルでもあったが、それでも観終わったあとにはあたたかく満ち足りた思いが迫ってきた。
家族も大切・・・。仕事もまた大切。それに加えて、好きなように生きる選択や自由も、時には必要なのかもしれない。人生の黄昏時、振り返って悔いのないようにバランスよく生きたいと願い、先に逝く運命の親たちにも、「いい人生だった」という思いを持たせてあげたいなと感じた。イーストウッド監督の作品には毎回唸らされるが、特にこの作品は、ストーリー、彼の演技、訴えてくるテーマすべてが素晴らしい。
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