MY FAVORITE BLOG

BBM関連写真集

  • 自分の中の感情に・・・
    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。

« 新感染 ファイナル・エクスプレス | トップページ | 芽キャベツと椎茸 »

2018年2月14日 (水)

スリー・ビルボード

Threebillboardsoutsideebbingmissour
アメリカの片田舎の3枚の看板に、ある日突然、現れた真っ赤な広告。それは、地元で尊敬されている警察署長への抗議のメッセージだった──。

本年度アカデミー賞最有力とされている本作。劇場で鑑賞。

ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め……。 (シネマトゥディ)
Maxresdefault
クライム・サスペンスというよりは、重厚で深い、見事なヒューマンドラマだ。ひとつの怒りの感情から起こした抗議が、関係者のさらなる怒りや憎しみを生み、暴力や放火などの過激な報復騒動を引き起こすという、絵に描いたような「負の連鎖」。

些細なことから生じた怒りが、八つ当たりも含めた連鎖を経てどんどん大きく発展し、多くの関係ない人たちまで巻きこみながら、しまいには収集がつかなくなってしまうことって、こういうことなんだな、と思う。もちろん、娘を殺されたことは些細なことではないけれど。一石を投じたことで水面に生まれたさざなみが、次第に大きな波紋や奔流になっていく様子にも似ているかもしれない。
Threebillboardsoutsideebbingmissour
憎しみに対して憎しみで応じることは何の解決にもならず、さらに大きな憎しみを生むだけだということが、この作品の前半からリアルに伝わってくる。

看板のことで息子が学校で虐められようが、神父から説得されようが、ターゲットの署長がガンで余命わずかであろうが、一歩も引かないミルドレッドを純粋に応援する気にもなれないが、警察もウィロビー署長以外は誠実な仕事ぶりにも見えないし、広告代理店を経営する青年レッドも何か頼りなさそうだし、極めつけは、人種差別発言の酷い暴力警官のディクソン(サム・ロックウェル)の悪行の数々。前半は、誰にも感情移入できないような殺伐とした場面が続く。

ウィロビー署長の自殺、ディクソンによるレッドへの暴行、ミルドレッドへの住民からの嫌がらせ、看板への放火、警察署に火炎瓶攻撃を仕掛けるミルドレッド・・・と事件はいっそう深刻に過激になっていき、まさに「目には目を」とばかり、負の連鎖は頂点に達する。
Threebillboardsoutsideebbingmissour
しかし、まさにその最中、それまでの流れが180度転換する出来事が起こるのだ。受けた憎しみを、愛や優しさで返す、という行為をした人物が二人いたことによって。

こう来たか~と思った。
こういうテーマの物語だったのか。とも。

憎しみは憎しみを呼び、反対に愛は愛を生む・・・・誰でも頭ではわかっていることだけど、実践は非常に難しい。憎しみの連鎖を愛の連鎖に変えるには、まず誰かがどこかで受けた憎しみを愛の行為で返さねばならない。これができないと奇跡は起こらない。

署長から、ディクソンへ宛てた最後の忠告と励ましを綴った遺書。そして病室で、自分が痛めつけたレッドから差し出しされるオレンジジュース。これらが、ディクソンのまさかの改心を生み、広告費を払ってくれたのが署長だと知ったミルドレッドの頑なな心にも、変化が表れる。
Threebillboaards12
そう、一気に雪解けが来たのだ。

憎むべき犯人は、結局明らかにはならなかったけれど、暴力と憎しみと怒りの連鎖は終わった。ラストシーン、ミルドレッドとディクソンは真犯人ではないけどレイプ犯には違いないあの男を殺しに行くのだろうか?いや、たぶん途中で取りやめるだろうな、そうしてほしいと願わずにはいられなかった。哀しみと緊迫感をもって始まった物語が、穏やかな終わり方をしたことに、安堵を覚えた。

人の心の弱さや恐ろしさは、まるで底知れぬ闇を覗くようだ。どこまで拡がっていくのか見当もつかない。しかし同時に、人の心の優しさや寛容さも、限りない可能性を秘めて、あらゆる希望へとつながっていく力を持つ。そしてその二つは表裏一体となって、同じ人物に宿ることもあり、人から人へと拡がっていくのだと思った。

いつまでも心に残る素晴らしい作品だった。

« 新感染 ファイナル・エクスプレス | トップページ | 芽キャベツと椎茸 »

映画 さ行」カテゴリの記事

コメント

ななさん、こんにちは。
まさに「こう来たか」という意外性のある作品でした。

最初は一通の手紙で人って変われるものかしら?と思いましたが
ふりかえってみれば私自身も、小さなひとことに支えられたり
背中を押されたりすることがあるのですよね。
言霊といいますが、ことばには不思議な力が宿っているのでしょうね。

ディクソンがああ見えて、ことばや善意を素直に受け止める
純粋さを持っていた・・・ということも大きいかもしれません。^^

セレンさん こんばんは

>最初は一通の手紙で人って変われるものかしら?と思いましたが
誰もが変われるわけではないと思いますが
この場合はきっと、短気で暴力的なディクソンの根っ子に
「善人」の資質を見抜いていた署長の見立てが正しかったのでしょう。
それに敬愛していた上司から、
「お前は本当はいいやつだ、期待してるぞ」なんて言い残されたら
それまで嫌われ者だっただけに、感動は大きかったでしょう。
あのオレンジジュースも、あのタイミングとあの状況で差し出されたら
もう・・・悔い改めて泣くしかないですよ・・・・。

サム・ロックウェルのように、悪役も善人役もこなせる名優だからこそ、ハマっていましたよね。

こちらにも。
面白かったですね、この映画。
今までにないタイプのように感じて
最後まで楽しめました。
予想できる展開が多い中、まったく考えられないような方向に
向かっていきましたよね。すごいな~~~って。
なにせ、署長があんな形で途中退場するなんて
思いもしなかったです。
病院でのオレンジジュース。2人が遭遇してしまうという点で可笑しさも
ほんのり与えつつ、同時に泣けるようなエピソードを加える演出が
もう憎い・・。
サム・ロックウェル・・・私にはお久~~でしたが今回も良かったわ。
流れる音楽も素敵でお気にいりです。賞に絡んでくるかな~~

これ、展開が全く読めませんでしたね。
前半、確かに人間の悪意ばかりが取り上げられて
プアホワイトのこれでもか!という汚い言葉が連呼されて
観続けるのが辛いように思いました。
しかし後半、救われましたね。

こんばんは。
>クライム・サスペンスというよりは、重厚で深い、見事なヒューマンドラマだ..
同感ですね。
秀逸と言って良いくらいのヒューマンドラマだったと思います。
相当ズレてましたが、まるで二人がロードトリップに出かけようなノリのラストが素敵でした。
そして何と言っても曲者揃いの出演者が秀逸でした!
4文字言葉炸裂のドラマはオスカーをゲットできるのでしょうか?


みみこさん こちらにもありがとう。

予想のつかない展開で前半と後半の色がまったく変わりましたね。
なにやら道徳の教材のようにも思えてしまう物語でした。
悪の連鎖を断ち切るには途中で善を投入すればいいんですよね。無理やりに。
でも実際にはなかなかそんなことできないのが実情です。
署長の死は驚きでしたが、余命をわかっていたからこその覚悟の自殺で
でもそれを悲嘆することなく周囲の人を思いやる手紙を・・・
本当に「善い人」だったんですね。

あの、オレンジジュースの青年も、まるで天使のようでした。
そんな人だと思わずに観ていたからびっくり。
あの二人を同室にしたのは、ディクソンに対する病院の陰謀か!と思ってしまったけど
結果的にあんな感動的なことに。

音楽はちょっと「ブロークバックマウンテン」の時のような切ない心地よさを感じました。

zooeyさん

>展開が全く読めませんでしたね。
アホな私はレビューを読んだりしてあらすじを予習していったので
予習なしに観た方が絶対途中からの感動が大きかったよな、とちょっと後悔です。
人種差別や 警察の暴力など、嫌な面も十分に味わえて
前半は予想以上の醜悪さでしたが
その分後半の救いがよかったです。

margot2005さん

>秀逸と言って良いくらいのヒューマンドラマだったと思います。
ですよね~。人間の深いところを描いていて
実は誰にも起こりうる感情が増幅されて描かれているので
共感できる物語でした。
救いが感じられるというのもいいですね。

そっか、言葉が汚いので・・・オスカーは無理かしらね?
でも獲ってほしいなぁ。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/447026/72904334

この記事へのトラックバック一覧です: スリー・ビルボード:

» スリー・ビルボード [ちょっとお話]
スリー・ビルボード(2017) THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI 上映時間 116分 製作国 イギリス/アメリカ 監督: マーティン・マクドナー 製作: グレアム・ブロードベント ピート・チャーニン マーティン・マクドナー 製作総指揮: バーゲン・スワンソン ダーモット・マキヨン ローズ...... [続きを読む]

« 新感染 ファイナル・エクスプレス | トップページ | 芽キャベツと椎茸 »