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2017年11月 7日 (火)

ハクソー・リッジ

Hacksawridge
第二次世界大戦の激戦地ハクソー・リッジで、武器を持たずにたった一人で75人の命を救った兵士の実話から生まれた感動作。

主人公は、良心的兵役拒否者としてはアメリカ史上初めて名誉勲章(メダル・オブ・オナー)を授けられたデズモンド・トーマス・ドス
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ドスを演じるのは、沈黙ーサイレンスーといい、この作品といい、信心深い役がここのところ続いているアンドリュー・ガーフィールド。監督は、パッションでイエス・キリストの壮絶な十字架刑を描いたメル・ギブソン。

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再臨派の敬虔なクリスチャンのドスは、「殺人は罪である。」という信念のもと、衛生兵として陸軍に志願し、文字通り「一人も殺さなかった」が、自らの命を掛けて多くの仲間の命を救った。彼の勇気と功績を称えた名誉勲章は、米軍の勲章の中では最高のものである。

映画の前半は、ドスがなぜ「武器を持たない」という信念を持つに至ったか、彼の生い立ちや家族との関係が描かれる。
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少年の日に喧嘩のはずみで、兄を殴り殺しそうになった体験。敬虔な再臨派の信者の母と、第一次大戦で心に深い傷を負った父親。母に暴力を振るう父親に銃口を向けたこと。「絶対に殺さない」という信念で戦場に赴いたドスが、本当に癒したかったのは、戦場で仲間を殺された父の心の傷だったのかもしれない。

ドスが異色だったのは、良心的兵役拒否者なのに志願し、入隊したこと。そして入隊したにも関わらず、ライフルの訓練で「触れません。」上官の命令を拒否し、除隊の勧めも断って、非武装での従軍というスタイルを貫いたことだ。実際、入隊したなら武器を持って戦えよ、と同じ仲間なら彼にドン引きして当然だと思う。場違いもいいところだ。全体の士気も下がる。
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しかし、ドスは、仲間から軟弱者、臆病者と蔑まれて嫌がらせやリンチを受けても、軍法会議にかけられても、決して信念を曲げることはなかった。彼は、自らを「良心的協力者」と称し、「皆は殺すが、僕は助けたい。人と人が殺し合う中で、一人くらい助ける者がいてもいい。」と主張し、軍隊を去らなかった。

しかし、そんなドスへの仲間の評価は、軽蔑から尊敬へ、足手まといから、「お前なしでは戦えない」と指揮官に言わしめるほど頼れる存在へと180度変容する。それは、熾烈を極めた「ハクソー・リッジの戦い」で、ドスが「殺さずに助ける」という信念を実際に行動で示したからだ。
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ハクソー・リッジとは、沖縄の浦添城跡一帯にある丘陵地帯の断崖絶壁前田断崖の別名。ここで米軍と日本軍は、前後11回にわたる激しい争奪戦、攻防戦を約3週間の間繰り広げた。

仲間が崖の下に退却した後も断崖の上に残り、傷ついた兵士の手当をしてロープで断崖の下に降ろす作業を繰り返すドス。一人救う度に「主よ、あと一人救わせてください。」と祈り続け・・・・なんと75人もの仲間を救いだしたのだ。敵の日本兵の手当てすら彼は行った。
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キリスト者がみな、ドスのように戦場で「殺さない」という信念を持っているわけではないし、持たねばならないとも思わない。「汝、殺すなかれ。」という教えは確かに重要な掟だけど、旧約の時代から、「聖戦」というものはしょっちゅうだったし、それに「敵を倒す」ことで味方を守る信念もまた正しい。現に、フューリーで登場した信仰篤い兵士バイブルは、信仰と戦闘で敵を殺すことは別物と、きっちりと割り切っていた。

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「何を信じ、どう行動するか」は人それぞれだ。「敵を殺さずに助けるだけ」の戦い方が、普通の戦い方より素晴らしいというわけではない。「愛する者を守るために武器を取って戦う。」者も無くてはならない存在だ。多くの兵士たちが捨て身で戦ったからこそ守られた祖国がある。ドス本人も、熾烈な戦闘の最中では、「武器で敵を殺す」仲間たちの援護を受け、命を助けられているのだから。

ただ、ドスの凄さは、困難にも迫害にも負けず、自分の信念を貫き、不可能な状況でそれを実行してみせたことだと思う。

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百戦錬磨の兵士でも身のすくむようなあの戦場で、丸腰で仲間を救い続ける・・・それはとてつもなく勇敢な行為であり、助け出した人数が75人もに登ったことを思えば、やはり信念を貫き通す人間の崇高さと、それが他者に与える希望や力に、感動を覚えずにはいられない。特に普段の彼が、控えめで謙虚で争いを好まない人物であったからこそ。「信念」と「信仰」と、それと「彼の信ずる神」の力によって、彼はあれほどの行動を取ることができたのだ。

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この作品での、ガーフィールドの演技は素晴らしい。ドスって本当にこんな若者だったんだろうな、と思わせる爽やかなオーラを醸し出し、その瞳からはピュアな精神がのぞいでいるかのようだ。「沈黙~」のロドリゴ神父の時に比べると、この作品の彼は、繊細で柔和な表情が清々しい。彼はとても知的な俳優さんで、しっかりとリサーチし、役作りを徹底してから撮影に臨んだそうだ。

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そして、この作品のもう一つの大きな見どころは、9割が実写という戦闘シーンのリアルさ。戦争映画はわりと好きでたくさん観ているけれど、これは今までに観た数々の戦闘シーンの中でも、群を抜いて恐ろしい戦場シーンだった。硝煙の中、どこにいるかわからない敵から浴びせられる砲弾の雨。火炎放射器で焼き払われる敵兵たち。足元にはネズミが群がる死骸の山。千切れた四肢やまき散らされたはらわたなどなど・・・。まさに地獄の光景。

箱爆弾とかいう、60㎝の至近距離で爆発しても危険のない爆弾を使った撮影で、ワイヤーやスタントマンは使っているけれど、CGはほとんどなしというこだわりの実写。そのせいで臨場感が半端ない迫力のある戦闘シーンに仕上がっている。戦闘シーンはメル・ギブソン監督は得意だけれど、この作品は本当に素晴らしい。おぞましく恐ろしい場面であるばずなのに、ハクソーが陥落する間際のスローモーションを多用した映像は、美しさすら感じる。

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この地獄のような戦場で、一人残って救出活動を続けたドス。強靭な意志とともに、体力も気力も、運も、すべて必要だったろう。ゆるぎない信念に支えられ、人はここまで強く優しくなれるものなのか、とただただ感動。救出を終えて崖を降りてきた彼を迎える仲間たちの驚きと称賛と畏怖すら混じったまなざし。誰もできないことを彼はやり遂げたのだ。

若者も疲れ、たゆみ、
若い男もつまずき倒れる。
しかし、主を待ち望むものは新しく力を得、
鷲のように翼をかって上ることができる。
走ってもたゆまず、歩いても疲れない。 (イザヤ書 40章30・31節)

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コメント

ななさん、こんにちは。
ドスは信仰を守るために、兵役を拒否することもできたのに
あえて苦難の道を選んだところがすごいですね。
あの繊細で心優しい青年を、勇気ある行動へと突き動かしたのもまた
愛国心であり、信仰の力だったのだと思います。
そしてまた信仰心があっても違う形で(戦うことで)奉仕した
兵士たちの存在も忘れてはならないと思いました。

戦争映画といえば先の『ダンケルク』もありますけど、同じ第二次大戦を題材にしてもずいぶん切り口の違う二作でした。どちらかといえば日本になじみの薄い『ダンケルク』の方がこちらでヒットしたのが不思議です。

戦争のトラウマから人が変わってしまったお父さんが哀しかったですね。今までで一番いいヒューゴ・ウィービングだったと思います。わたしの祖父も気性の激しい人だったそうですが、やはり従軍によるPTSDからなのか、根っからそうだったのかは謎です

セレンさん こんばんは
「殺すなかれ」という教えを守り兵役を拒否するか
信仰とは別物と割り切って戦場では武器を取るか
普通はそのどちらかだと思うのに
従軍して武器を取らないなんて
きっとドスだけだったと思います。これからもこんな人出てこない・・・。
戦場で丸腰ってすごく怖いし勇気があるなぁと思います。
おっしゃるように、戦場の場面では彼も多くの仲間に援護されていましたね。
武器を取った仲間に・・・。
そこは「役割分担」というか、忘れてはいけないですよね。

SGAさん

>戦争映画といえば先の『ダンケルク』もありますけど、
この作品はダンケルクに比べるとグロイ描写も多いし
信仰云々はキリスト教になじみの薄い日本では
ちょっと万人受けしなかったのでしょうか。
私は戦争映画はどんなグロイのもOKで
「フューリー」も「プライベート・ライアン」も大好きです。
でもこのハクソーの戦闘シーンの凄さは格別でしたね。
さすがそこいらはメルギブさんです。

>わたしの祖父も気性の激しい人だったそうですが、やはり従軍によるPTSDからなのか、根っからそうだったのかは謎です
従軍体験のある方の根性というか雄々しさは、戦争を知らない世代には
想像もつかないものがありそうですね。


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