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2017年10月 9日 (月)

哭声/コクソン

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チェイサー』や『哀しき獣』の ナ・ホンジン監督の最新作。

韓国の静かな山あいの村「谷城(コクソン)」で起こった連続猟奇殺人事件に翻弄される警官や村人たちと、謎の日本人や村の女などの訳ありげな登場人物たちが織りなす物語。

実はこれ、DVDで3回も観てしまった・・・・・。最初は監督の名にひかれて、純粋な興味から。二度目はあまりにも強烈な後味に打ちのめされて即再見。クリスチャンのホンジン監督がこの作品でいったい何を訴えたかったのか・・・・・。回収されずに放置された伏線の意味が気になって気になって。

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三度目は、いろいろ映画評などもググってから再々見。それでもなお、モヤモヤがつのる後味は変わらない。結局、この作品、最終的には観客に判断を委ねていることは間違いない。

寒村で起こる猟奇殺人事件といえば「殺人の追憶」みたいな感じかと思いきや、謎解きサスペンスではない。犯人は人間だけど、原因はどうも「悪魔」「悪霊」らしい。ならば闇の勢力VS神を描いた宗教的なメッセージが込められた作品かと思えば、純粋にそうとも言いきれない。そもそも、誰が悪魔で誰が善の側なのか、途中でわからなくなる展開になってくるので混乱する。そしてエクソシストっぽい展開からいきなりゾンビ映画ぽくなったりして、いったいこの作品はどこに向かっていくのか予想がまったくつかないまま、最後に國村さんの衝撃映像で唐突に幕が下される・・・。
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一般的な解釈としては、悪魔は謎の日本人(國村さん)で、ファン・ジョンミンが演じた祈祷師も悪魔の崇拝者で、謎の女は実は悪魔に敵対する側(=神とは限らないが)だった・・・と、わたしも思う。最後に國村さんがあんなド迫力の変身を見せてくれたから、それがすべての答えになったような感じだけどね。

ここからはクリスチャンとしての感想になるけれど。
宗教がテーマのひとつになっている作品の中でも、パッションベン・ハーヤコブへの手紙などは、神の存在や救いや信仰の在り方を描いた作品だと言えるだろう。しかし、キリスト教をテーマにしていても、神そのものよりも、悪魔の恐ろしさや人間の弱さや罪や教会の無力さなどに焦点を当てて描く監督さんもいて、韓国の監督さんには、この傾向が多いような気もする。(ホンジン監督の「チェイサー」の救いのなさなどを思いだしてほしい。)終末の世だからこそ、悪の支配や勝利を描き、人間の危機感のなさに対して警鐘を鳴らす作品なのではないかとも思う。
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聖書には、悪魔について警告する言葉がいくつも出てくる。

悪魔の策略に対して立ち向かうことができるために、神のすべての武具を身につけなさい。わたしたちの格闘は、血肉に対するものではなく、主権、力、この暗やみの世界の支配者たち、また天にいるもろもろの悪霊に対するものです。 (エペソ人への手紙6.11~12)

身を慎み、目をさましていなさい。あなたがたの敵である悪魔が、ほえたける獅子のように、食い尽くすべきものを探し求めながら歩き回っています。 (ペテロの手紙第一5.8)

悪魔は世の終わりまでの限られた期間、少しでも多くの人間を自分の側に引き入れて滅ぼそうとしている。手あたり次第、まさに餌に食いついてくるなら誰でもいいのである。その手段は誘惑すること、偽ること、惑わすこと・・・時には善人の姿をして、いや、聖職者の姿をして近づいてくることもある。
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惑わされるな
餌を飲み込んだな、バカな奴だ

・・・・などなど、悪魔の本質を鋭く表現するセリフはこの作品中にもみられる。悪魔が偽る者であり、罠を仕掛けたり、人の弱みにつけこんで言葉巧みに誘惑する存在であることを、よく表していると思う。

そして、人間は、自分が見たいと思ったものを見てしまう存在であることも、よく描かれていたと思う。誰を信じ、誰を敵と見なすのか、一歩間違えれば中世の魔女狩りのような悲劇も起こりかねない。

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人の力を超越したものに翻弄される世界…悪魔や悪霊といったものの凄まじいパワーと破壊力をこの作品から感じた。人間の力や知性や感情ではまるで太刀打ちできない。劇中で、老いた神父が「教会ができることはありません。」としれっと語るシーンも「おいおい」と思ったが、虫の息の主人公ジョングが、「大丈夫だ、(警官の)父さんがすべて解決するから・・・」と言いつつ画面が暗闇に包まれていくラストシーンには心が冷えた。

とにかく強烈。そして難解。なのにすごく惹きつけられる作品だった。ただ、その難解さから賛否両論を巻き起こす作品であることは間違いない。國村さんは凄かった。世界に誇れる名優だ。邦画でも、好々爺も演じれば悪役も演じれるカメレオン俳優さんだが、この作品の國村さんの不気味さと存在感は際立っていた。彼を見るだけでも一見の価値はあるかも。

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コメント

こんにちは。
クリスチャンの方には、きっと別の解釈の仕方もあるのでしょうね…そもそも、悪魔の概念などをもっと深く捉えられてらっしゃるのだと思います。
本作、解釈が様々にできたので、その辺りも面白かったです。通り一遍な作品を作らないのが流石ナ・ホンジン監督、といったところでしょうか。

ここなつさん

>クリスチャンの方には、きっと別の解釈の仕方もあるのでしょうね…
>そもそも、悪魔の概念などをもっと深く捉えられてらっしゃるのだと思います。

クリスチャンもさまざまなので、価値観や信仰の持ちようで
人それぞれの解釈になるのですが
確かに悪魔や悪霊に関しては聖書でもお馴染みなので
深い知識というかそんな感じはありますね、きっと。
私はこの手の作品はとても興味深く観ますが
この手をまるで「冒涜」のように感じる信者もいるかも。

ホンジン監督は様々な解釈をしてほしかったのでしょうね。


お邪魔します~~
お忙しい中、感想UPありがとうございます。
楽しみにしていました。
私はチェイサーも未見でしたし、監督さんがクリスチャンということも知らなくって
ただただ、國村さん影響で手に取っただけでしたので、こんな展開とは・・・・と
衝撃大きかったです・・
ななさんが、聖書を引用してくださりとても参考になりました
悪魔の解釈が聖書ではどうとらえられているのか興味深かったです。
知識として知っていらっしゃると、物語みながら、各シーンの
意味合いのとらえ方が、他の人とは違ったものになりますよね。
日本では悪魔という存在はなかなかピンとこない気もしますし、改めて考えても
難しいだけで・・・。
<人間は、自分が見たいと思ったものを見てしまう存在>
ここの部分は同感です。皆がそうだと言えば、そうであるみたいな
思い込みの怖さにもつながりますよね。國村さんのラストの言葉が
いつまでも心に残りますよ・・・それにしても怖い・・・笑

↑みみこです。忘れました~~

みみこさん 

>悪魔の解釈が聖書ではどうとらえられているのか興味深かったです。
> 知識として知っていらっしゃると、物語みながら、各シーンの
>意味合いのとらえ方が、他の人とは違ったものになりますよね。
そうですね。悪魔はボスで悪霊はその手下というか
新約聖書にはイエスの時代に悪霊に憑かれた人とかたくさん出てきますね。
この作品のいろんな場面で重なって観てしまいました。

<人間は、自分が見たいと思ったものを見てしまう存在>
視覚というのが脳の働きでもあることを考えると
当たり前といえばそうなんですが
願望とか思い込みとかで真実を歪めて見てしまうことってありますよね。

國村さんのラストのお顔は
悪魔というより悪鬼そのもので
いや~~、すごくハマってるなって失礼ながら思ってしまいました。

ななさん、こんにちは!
ずいぶん朝晩寒くなりましたねー。
これ、私も今更ですが先日見ました。
やっぱりクリスチャンのななさんが見ると、視点が鋭いわー。

>悪魔の恐ろしさや人間の弱さや罪や教会の無力さなどに焦点を当てて描く監督さんもいて、韓国の監督さんには、この傾向が多いような気もする。
これ、言えてるわーって思いました。

先日「マザー!」って映画を見たのだけれど、すごく宗教的な映画でした。
ななさんなら、どうご覧になられるのかなーって思いました。

latifaさん ほんと一気に秋が深まりましたね。

この作品、結構ハマってしまって
見直すたびに新しい発見や推測があったりして。
われわれクリスチャンには悪霊はリアルな問題なので
たいへん興味深かったです。

韓国の監督さんはキリスト教をテーマに描いても
信仰礼賛ではなく、罪や悪魔を好んで描くことが多いような気がします。
神に敵対する側を描くことによって、
かえって神の存在を強調したりしているような気もするのです。
監督がクリスチャンならなおさら。

マザー!は未見です。
宗教的な作品なのですか~。
それはぜひ見てみたいですね。(*'▽')

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