LION/ライオン ~25年目のただいま~
DVDで観賞。今年のアカデミー賞で、作品賞を含む6部門にノミネートされた作品。
25年間迷子だった男が、Google Earthを使って故郷を見つけたという驚きの実話を映画化した感動作品。その昔、ティモシー・ハットン主演の、ロングウェイホームという、生き別れた弟と妹を探す兄描いた映画をちょっと思い出したが、「ライオン~」の物語の方がよりアメイジングで、あり得ない実話かもしれない。
なにしろ、主人公は、故郷の町の名前すらあやふやな5歳のときの記憶だけを頼りに、Google Earthからの風景を根気強く検索し続けて、遠く海を隔てた異国から生家にたどり着いたのだから。
インドの貧しい農村に生まれたサルー。
5歳の時、兄グドゥの夜の仕事についていった彼は、兄の帰りを待つうちに間違って乗った回送列車の中で眠ってしまい、目覚めると1600キロも離れた都市コルカタに運ばれてしまっていた・・・・。そこでは故郷の言葉は通じず、駅で住んでいる町の名前「ガネストレイ」を伝えてみても、誰も反応もしてくれない。途方に暮れたサルーは、やむなく路上生活へ。
人買いから、からくも逃げ出すという試練も体験しながら、保護されて劣悪な環境の孤児院へ。そこで彼は幸運にも慈善団体の世話で、オーストラリアの里親ブライアリー夫妻の家庭へと貰われていく。夫妻はまるで我が子に対するようにサルーに愛情を注ぐ。
養父母のもとで幸せに暮らし、ホテルマンを目指して勉強に励むサルー。しかし、幼いころ兄にねだった「揚げ菓子」の記憶が蘇ったことから、彼は自分が25年間迷子だったことを思い出す。本当の家族を探したいという思いに突き動かされるサルー。兄とはぐれた駅はどこだったのか。記憶にある故郷の町「ガネストレイ」ははたして実在しているのか?
サルーは当時の回送列車の速度と運行時間を手掛かりに、コルカタから自分が列車に乗った駅までの距離を割り出し、駅の近くには大きな給水塔があったという記憶だけを頼りに、該当する距離の駅をしらみつぶしにGoogle Earthでチェックしていく。養父母、特に養母に対する気遣いや葛藤などもあり、何度も諦めかけながら、ついにサルーは故郷の町の名を見つけ出すのだ。
故郷へ向かう道すがら、フラッシュバックする思い出の数々。母や兄の笑顔や懐かしい風景。クライマックスのサルーの帰郷シーンは、まさに感無量としか言いようがなかった。老いた母カムラがずっと希望を捨てずに待っていたことも。なんていいお話!文句のつけようがないほど素直に感動が押し寄せてくる。兄のグドゥがもうこの世にいなかったことだけが残念だけど。
いや、この作品から感じるものは、再会を果たした家族に対する感動だけではない。光の陰には必ず闇が存在するように、治安の不安定な国で、迷子や行方不明になる子供の多さや、ストリートチルドレンの苛酷な現状も知ることができる作品である。そして、それを助けたいと願って実際に行動している里親の存在なども。
サルーにとって第二の母となった養母のスー・ブライアリーを、ニコール・キッドマンが好演している。スー本人のヘアスタイルやファッションに似せていても、やはり美しいキッドマンだけど、さすがオスカー女優だけあって、内面的な演技も光る。恋人役にはルーニー・マーラ。そしてサルー役はスラムドッグ$ミリオネアのデヴ・パテル。
なんで作品の題が「ライオン」なんだろうとずっと思っていたら、エンドロールでその謎がとけてまた少し感動した。
様々な事情で生き別れになっている親子や兄弟・・・・
この広い地球の上で、いったいどれだけの家族が、涙と祈りの中で、今も再会の日を待ち続けているのだろうか。どうか一人でも多く、このような奇跡が起こりますように。そしてなにより、愛する家族から引き離されるような悲しい出来事そのものが、この地球上から少しでも減りますように・・・・・。そんなことを切に願ってやまない。
最近のコメント