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2015年8月 1日 (土)

めぐり逢わせのお弁当

O0434062013055348053マダム・マロリーの魔法のスパイスに続いて,インド料理が食べたくなる映画をもう一つ。こちらは従来のインド映画のイメージとは違って,とても繊細で静かなラブストーリーだ。お弁当に登場するインド料理が美味しそうなのは言うまでもなく,この映画の鑑賞後ももちろん,インド料理専門店に足を運んだし,映画に出てきたインドのお弁当箱も欲しくなった。DVDで鑑賞。お気に入りで何度も観ている作品だ。

この物語の背景には,インド特有のダッパーワーラーという弁当配達業の存在がある。

Title_2インドでは,三食をきちんと調理したあたたかい食べ物を食べるという文化があり,文化や宗教が入り交じっているインドでは,タブーとなる食べ物が人それぞれに違うことから,必然的に昼食は,外食ではなく家庭で調理した弁当を食べる労働者が大多数を占めるそうだ。お弁当は「ダッバー」と呼ばれる金属製の弁当箱に入れて,「ダッバーワーラー」と呼ばれる配達人に集められ,お昼に届けられる。下の画像はダッバーというお弁当箱。金属製のお椀にそれぞれ違うおかずが入れられて,汁ものも漏れない。これを保温機能のある袋に入れて届ける。
Dabba
ダッバーワーラーたちの届け間違いのミスは1600万回に1回、驚異の低エラー率なのだが,なんとこの物語は,このダッバーワーラーの届け間違いによって起こる設定になっているから面白い。ある日,妻イラの作ったお弁当が,全然違う見知らぬ男性のもとに間違って届けられる・・・・。イラの夫はそれまで妻の弁当に感想も感謝もなく,完食することもなかったのに,その日イラの手元に帰ってきたお弁当箱は綺麗に完食されていた。

はじめは夫がやっと完食してくれたのだと喜んだイラだが,帰宅した夫の話の食い違いから,食べたのは別の人だと気づく。普通はその地点で配達会社に苦情を入れ,翌日からは正確に夫に届くようにするものなのだが,イラはそうしなかった。かわりに「食べてくれてありがとう」という手紙を弁当箱にしのばせるのだ。こうして,夫に顧みられない寂しい人妻イラと,早期退職を目前にした男やもめのサージャンの間に,お弁当箱を介した手紙のやり取りが始まる・・・・。

10295731_729435773773903_5617187558顔も知らない相手とのお弁当箱を介しての不思議な文通。顔も知らない他人だからこそ打ち明けることができる,ささやかな悩みの数々。次第に生まれていく親愛の情。やがて互いに実際に会いたいと思うようになる二人。この設定は,手段こそ違えど,「ユー・ガット・メール」の二人のいきさつややり取りのようで・・・・。いや,こちらは「お弁当」を作ってあげてるぶん,実はもっと絆が深まっているのでは?と感じた。

毎日毎日,相手の顔や心情を思い浮かべながらお弁当を作り続けるって・・・やっぱり関心や好意を持っている相手にしかできないよね…普通。特にその相手が喜んで食べてくれるなら,余計に気持ちは深まっていくと思う。これって,食べてもらえる相手に対して思い入れや親愛の情がないとなかなかできない。(プロは別としてね。)

Img_cast02食べるほうもまた,赤の他人の手作りを毎日食べ続けるって,もちろん味がとても美味しかったのも理由の一つではあるかもしれないけど,作り手に対して気持ちがないとできないよね。両者の間に生まれた,プラトニックでありながら疑似夫婦のようなときめきは,妻を亡くして殺伐とした生活を送っていたサージャンの心に潤いを与え,夫に愛されないイラの生活にも張り合いを与えてくれるものだったに違いない。

Img_introで,いよいよ二人が「実際に会いましょう」という展開になって,これはプラトニックから一気に進展するのかしらと思ったら,サージャンの方が待ち合わせ場所まで出向きながらも,結局イラの前に姿を現すことなく帰ってしまう。彼を思い止まらせたのは,唐突に自覚した彼自身の「老い」による気後れ。それは,洗面所で気がついた祖父と同じ匂い(加齢臭?)や,電車の中で若者に席を譲られそうになった出来事など。若いイラの前に姿を現して失望させるのが怖くなったのだ。うーーーん,すごくなんだか・・・よくわかります。その気持ち。そして会うことがないままサージャンは転勤する。「良い夢を見させてくれてありがとう」という言葉をイラに残して。

物語はサージャンの部下の青年との,心温まるエピソードも盛り込みながら,インド映画には珍しく始終ゆっくりと静かに進んでいき,結局白黒つけないまま・・・というか,イラがはたしてサージャンの元へ行くのかどうかわからないまま,余韻を残して終わる。

O0600040013055348051イラは思いを綴った手紙を実際にサージャンに出せたのだろうか?行動に起こしたかどうかはともかく,それまで自分を顧みてくれない夫へ向けられていた彼女の心が,そんな寂しい呪縛から解放されたことだけは,確かだと思う。

心にじんわり沁み入るようなプラトニックラブのお話。それも大人のしっとりとした・・・・こういう作品大好きだ。花様年華恋におちてのような。

イラの手紙に書かれた,「人は間違った電車に乗っても正しい場所に着く」・・・・いい言葉だなぁ。運命とか宿命とかを感じさせる言葉。でも個人的には間違った電車に乗ったら別の場所に着いて,それもまた面白いというか受け入れて生きていくのも場合によってはありかも・・と思うのだけど。この言葉がこの物語の中でイラの口から語られると,サージャンへの確固たる愛のメッセージに思えてしまう。彼女のたどりつくその場所には,果たしてサージャンは居るのだろうか・・・。

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コメント

こんにちは。
この一作、「いつか観る!」リストに入れているのですが、途中からの展開は全く知らなかったのです。
・・・で、貴レヴューを読ませて頂いて最後の展開を知った今、「観たい度」がググーンとアップしました。

サージャンの切なさに寄り添える(寄り添いたくなる)年齢になった自分を感じます。
是非、来たる夏のお休みで鑑賞したいと思います。

>間違った電車に乗っても正しい場所に着く

例えば廻り道になったとしても、辿りつく執着駅は同じだったりするのでしょうか・・・。

『花様年華』の世界は私も大好きです。勿論、『恋におちて』も。(^^)
あ、ついでにスパイシーなインド料理も好きです~。(^^)

ななさん、こんにちは!
お弁当箱、インドの食事、興味ソソられますよねー。

私もいよいよか?って処で、会わずに立ち去った・・・自分の老いを感じて・・って処とか、とっても好きだったんだー。

この映画のラスト、どうなったかなあ・・・って色々考えてしまいますよね。

>イラの手紙に書かれた,「人は間違った電車に乗っても正しい場所に着く」・・・・いい言葉だなぁ。運命とか宿命とかを感じさせる言葉。でも個人的には間違った電車に乗ったら別の場所に着いて,それもまた面白いというか受け入れて生きていくのも場合によってはありかも・・と思うのだけど。

うん、うん!!そうだよね、しみじみ読んじゃったわ。

ぺろんぱさん  来てくれてありがとう!

この猛暑,いかがお過ごしですか
今年は格別ですね。体調管理,気をつけましょうね,お互いに。
これ,おすすめです。ぺろんぱさんの感想,ぜひお聞きしたい作品です。
>サージャンの切なさに寄り添える(寄り添いたくなる)年齢になった自分を感じます
うんうん,同じ同じ。わたしも加齢臭の切なさ・・・・わかる年になり,複雑な共感があります。

>例えば廻り道になったとしても、辿りつく執着駅は同じだったりするのでしょうか・・・。
↑これってとってもロマンチックなことですよね。
特に男女の関係でこのようなことが起こる相手はソウルメイトというか前世からの縁というか・・・・そんな感じ?イラとサージャンがそうだったかどうかはわからないけど,というか,結論は視聴者に委ねられているところがこの作品の心憎いところですね。

「花様年華」や「恋に落ちて」がお好きなら,この作品の雰囲気やストーリーも気に入ると思いますよ。ぜひぜひ。
インド料理ももちろんですが,インドのビールも美味しいですよね!


latifaさん こんにちは!

インド料理のお店,実際にインドの方が経営されてるところでお気に入りの店がちょうど映画館の前にあって,よく行きますね~~。で,この映画に出てきた4段重のようなお弁当箱,いいなぁと思ってしまいました。スープも入るしね。

>私もいよいよか?って処で、会わずに立ち去った・・・自分の老いを感じて・・って処とか、とっても好きだったんだー。
そうそう,あの流れでこの物語はぐっと深みを増しましたね。
身を引いたサージャンの諦観というか奥ゆかしさというか,初老だからこその思慮深さがじわじわ来ました。
それで終わりならまた違った印象の作品になるのでしょうが
イラが諦めきれない・・・というところもまた余韻を残して秀逸だと思いました。
今後どうなるのかな?っていつまでも視聴者を引っ張りますものね。

間違った電車に乗っても同じ駅に着くということもあるでしょうね。
そういうときはそれはそれで運命なんでしょうね。
でも間違った電車が違う駅に連れていってくれることもあるような・・・・
果たして今乗っている電車は間違っているのか正しいのかさえ,わからなくなってることもあるような。

観ました。
ダッバーワーラーたちに導かれて、いつか彼らが再び出逢えると信じます。
時間がかかっても。
ラストの、ダッバーワーラーたちに囲まれたサージャンの表情が素敵でした。
観てよかったです、ありがとうございました。

ぺろんぱさん  おはようございます

ごらんになったのですね。
>ダッバーワーラーたちに導かれて、いつか彼らが再び出逢えると信じます。
> 時間がかかっても。
そうですね。わたしもそう信じたいです。
そのときはサージャンとイラの身辺には今よりしがらみが少なくなっていることも祈りながら・・・・。
こういう稀有な出会いですもの,結ばれてほしいですよね。

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踊らないインド映画。4つ★ 全体的に、ちょっと物悲しく、哀愁漂う内容で好感は持てたのですが・・・ [続きを読む]

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