フューリー
今年の1本目はこれ!年明けに,毎年恒例のリフレッシュ旅行先の新宿ピカデリーで鑑賞。
1945年,第二次世界大戦は終結前夜を迎えていた。
死に物狂いで最後の抵抗を繰り広げるドイツ軍を相手に,フューリー”(=激しい怒り)と命名された戦車で死を覚悟で戦った5人の米軍兵士たちがいた。
フューリーの隊員は,ブラピが演じる指揮官のドンを筆頭に,それぞれ癖のある4人の部下たち。18歳の新米兵士ノーマンの戦場での成長物語も交えながら,彼らの間の熱い絆と,常に死と隣り合わせの戦場の緊迫感がリアルに描き出されている。
監督は,元軍人という異色の経歴を持つデヴィッド・エアー。それだけに,米軍のM4中戦車シャーマンとドイツ軍の最強戦車ティーガーが激突する戦車戦の圧倒的な臨場感や迫力はさすがだ。劇場の大画面で観て大正解だった。
戦争ものはいくつも観てきたけれど,戦車戦を中心にしたものは初めてで,とても興味深かった。この時代,ドイツ軍保有の重戦車ティーガーは火力がすぐれた88mm砲搭載の頑強なもので,対する米軍のM4中戦車シャーマンは,機動力が自慢だったそうな。撮影に当たって監督は,なんとヨーロッパ中のコレクターから本物の戦車を借り受け,さらに英国ポービントン戦車博物館に所蔵されている世界で唯一走行するティーガー戦車を撮影に使用したというから驚きだ。
極限状態をともに生き抜く5人の乗員たち。車長のドン(ブラピ)は歴戦の勇者であり,部下からの信頼も篤い理想的なリーダーだ。
戦車乗りとして,これまでいったいどれほどの修羅場をくぐり抜けてきたのか,彼の背中には一面にケロイド状になった火傷の跡がある。彼はどんな戦況でも,その燃えるような闘志と,冷静で的確かつ大胆な指示によって,これまで部下たちを守ってきた。
新兵のノーマンに対しても,ドンは厳しさと優しさを示す。「敵を殺したくない」と泣きべそをかいていたノーマン(戦場で,敵を殺したくないって,いったいアンタ何しに来たの?って誰でも思うけど)を,ある時は手厳しく叱責し教育もするが,その反面彼の心情をひそかに思いやることも忘れない。部下の前で決して弱みは見せないが,実は繊細で複雑な内面も抱えもっている・・・・・。
シャイア・ラブーフが演じるのは,冷静沈着な砲手のボイド(通称バイブル)。信仰心が篤く,聖書の言葉を引用して,仲間の心を癒し,特に死を迎えた同胞を看取るときに,まるで牧師のような役割を果たす。しかし,クリスチャンとしての信念と戦士としての義務とは別物ときっちり割り切っているので,敵を「殺す」必要のあるときにはためらいがない。
とにかく,フューリーの乗組員たちがそれぞれ強烈で魅力的なキャラが立っていて,彼らの間に生まれる緊迫感や信頼関係や,絆も色濃く描かれているので,戦闘シーンだけでなく様々な意味で見ごたえがあった。
見ているこちらまで閉所恐怖症になりそうなくらいリアルな戦車内部の映像。劇場ならではの大迫力の砲撃シーン。鑑賞中は,何度も何度も手に汗を握りっぱなしだった。
フューリーが,なぜ勝ち目もないのに単独で,敵の精鋭部隊300人をたった5人で迎え撃つという暴挙に出てしまったのか・・・・・そこに戦う価値はあったのか?とつい思ってしまうのだけど,・・・・ラストシーン,動かなくなったフューリーの周囲のドイツ兵の死骸の山が,ゆっくりと俯瞰しながら映し出されたとき,彼らは確かに命を失ったかもしれないけれど,彼らが倒した敵の数の膨大さに言葉もなく,無条件で敬意を表したくなった。あのラストシーンは秀逸だと思う。戦車戦の迫力、、そしてそこに生きる兵士たちの思いや体験を,またひとつ知ることができてよかった。こういう良質な戦争映画は,戦争の悲惨さや悲しみも伝えてくれるので,ある意味,反戦映画なのかなとも思った。
最近のコメント