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2014年6月22日 (日)

ノア 約束の舟

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旧約聖書の中でも有名な「ノアの箱船」(聖書では『はこぶね』の『はこ』は,こちらの漢字を使っている)の映画化,そして主演はラッセル・クロウ。ノアの物語の絵画化としては1966年製作の「天地創造」も観たが,こちらはひたすら聖書に忠実な映画だったと記憶している。今回はかなりハリウッド的な味付けがなされていると聞いてそれも楽しみに鑑賞した。監督さんは,ブラック・スワンで有名なダーレン・アロノフスキーだと聞き,どちらにしても一筋縄ではいかない作品になってるだろうなぁと期待を高めつつ。

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ノアの物語は,地味に聖書に忠実に再現したとしても,十分面白いストーリーだと思う。箱舟建設のスケールや,ひとつがいずつの動物たちを避難させるところや,洪水のシーンやあれこれ・・・・どれもダイナミックだし絵になるし・・・・聖書通りにファンタジー作品として作っても,見ごたえのあるストーリーなのだ。しかしそこはさすがアロノフスキー監督。聖書にはない、ノア一家の争い(特にノア対妻と子供たち)や,トバルカインというノアの宿敵の存在を付け加え,暗くドロドロした人間味の濃い物語に仕上げていた。

そう,これはノアの苦悩の物語。
そして戦うノアの物語。


神に選ばれ,従った信仰の偉人ノアの物語ではなく,神から重い使命を与えられたゆえに迷いや孤独に苦しんだ人間ノアの生々しい物語だったように思う。聖書の記述とこの作品のストーリー設定の違いはいくつもあるが,特にノアの家族についてと,敵役のトバル・カインに関してはかなり違っていたので,以下,参考までに相違点をあげてみる。

ノアの家族について
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聖書では,箱船に乗り込んだ時は,すでにノアの三人の息子セム・ハム・ヤペテは成人してそれぞれ妻帯していた。大洪水のあと,新しい天地で,この三組の夫婦から生まれ出た子孫が全世界に広がっていった。セムの子孫はアジアの,ハムはアフリカの,そしてヤペテの子孫は現在のヨーロッパの国々の民族の始祖となった。

映画の中でセムの妻となった養女イラが船内で双子の女の子を出産し,その子がノアに殺されそうになる・・・という映画の一番の見せ場のシーンは,映画オリジナルのエピソード。神に従い使命を全うするか,人情と家族愛を選ぶか・・・そういう葛藤を見せたかったのだろうか。(聖書では,神はもともと,ノアの子孫まで絶滅させようとは目論んでいなかったのだが。)
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また,映画では,ノアに反抗しトバルカインを匿った二男のハムだが,もちろん聖書の中では彼はそんなことはしていない。しかし,洪水後にワインで泥酔して醜態をさらしたノアの姿を見つけたハムが正しくない振る舞いをしたため,ノアにその子孫を呪われるという出来事は聖書に記されている。(ハムの子孫カナン人はのちにセムの子孫イスラエルの部族に征服されるという歴史を持つ。ちなみの長男セムの子孫からは,アブラハムやダビデ王やイエス・キリストが生まれている。)どちらにせよ,二男のハムは,ノアの息子の中ではもともと異端児でアウトローの役割を担っていたようだ。

トバルカインについて
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聖書では,トバルカインという人物は,弟アベルを殺したカインの子孫で,武具を鋳造する鍛冶屋を生業とする部族の始祖という記述しかない。映画でレイ・ウィンストンが演じたトバルカインは悪や罪の象徴として,ノアを脅かし挑んでくる存在として描かれ,箱船の中にまでしぶとく乗り込んで,ハムの心に芽生えた父への反抗や復讐心につけ入ろうとする。彼は,まさに神の陣営にまで隠れ潜んで誘惑するサタンの化身のような役どころなのかもしれない。

ノアについて
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ノアといえば,聖書の「ノアは正しい人であって,その時代にあっても全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。」(創世記6-9)とか「ノアはすべて神に命じられたとおりにし,そのように行った。」(創世記6-22)という記述から,不動の信仰を持った穏やかなお爺さん・・・というキャラクターが私たちの間では定着していて,「天地創造」の映画のノアもそんな風貌のキャラだった。

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しかし,この映画のラッセルの演じるノア
悩みまくるし暗いし,何よりめっちゃ戦いが強い。
ラッセルが演じたから特に,ノアでなくて老いたグラディエーターに見えてしまう。なので動きやすいことも考慮してかどうなのか,その時代ではありえないような衣装(みなさんジーンズみたいなボトムを穿いてらっしゃる)で,背景もなんとなく旧約聖書の時代というよりは近未来のようで。CGを駆使した大迫力の映像はSFスペクタクル映画みたいで,それはそれで斬新で楽しかった。

シェムハザをリーダーにしたウォッチャーという堕天使たちは,トランスフォーマーの泥バージョンみたいでなかなかよかった。彼らについては,聖書ではなく旧約聖書の偽典「エノク書」に書かれているそうだ。

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旧約聖書の神は新約聖書の神と違ってよく語り,人間に干渉した神である。目に見えるスケールの大きい奇跡も行った神なのだ。
そして旧約聖書で神に選ばれ使命を果たした人物は,誰もが使命を果たすにあたって辛酸を舐め,孤独を味わい,忍耐の月日を背負い,そして時には自分の行いの是非を自問し信仰が揺らぐ危機も味わう。彼らもまた弱さや愚かさも持った人間だから。アブラハムも,モーセも,ダビデ王も預言者たちも。ノアもかなり大変だったと思うけれど,個人的には忍耐の歳月の長さや率いる人間の多さなどから一番大変だったのは出エジプトのモーセだったと思う・・・・。

聖書に忠実な映画ではない。
だから,信者でない方でキリスト教に関心のある方には,この映画のストーリーを鵜呑みにしてもらいたくはない。しかしそんなことはどうでもよくて,単純にドキドキハラハラの骨太な冒険映画を楽しむつもりで鑑賞するなら,とても面白いお勧めの作品である。私はクリスチャンなので,どうしても聖書と比較しながら鑑賞してしまうが,宗教のメッセージはあまり考えなくてもいい作品だ。私は,「人間は誰もが罪人であって,救済の陣営であるはずの箱船の中までも,悪魔の誘惑や諍いは忍び込んでくる」というメッセージを個人的に受け取った。

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それにしても・・・なんど滅ぼされようがリセットされようが,地に悪の満ちるのの早いこと・・・・。しかし神が人間を意のままに操れるロボットのような存在には作らず,自由意思と選択権を与えたのもまた神の愛のなせるわざだと・・・クリスチャンは思っている。

重めのヒューマンドラマとしても見ごたえはあるが,何よりグラディエーターやスター・ウォーズやキング・アーサーやタイタンの戦いなどがお好きな方はおおいに楽しめると思う。

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コメント

ななさん、こんにちは。猛暑が続いてますがお元気でしょうか
詳しい解説、興味深く読ませていただきました。ノアの箱舟の話って二時間のエンターテイメントにするのは難しいのでは…とあまり期待してなかったのですが、観ている間見事に引き込まれてしまいました
ちょっとわかりにくかったのは蛇に関するくだりですね。エデンの園で悪魔であった蛇の皮が、どうしてノアの家族に受け継がれていくのか。もしそれが罪の象徴であるのだとしたら、この映画、ちょっぴりバッドエンドのような気も
文中で少し触れられている『天地創造』、なつかしいですね。運びこまれる動物のうち、亀が雨が降ってきてもまだ外でのろのろ歩いてて、ノアが大慌てで抱えていくシーンを覚えています

SGAさん こんばんは

いきなり暑くなりましたね~
今日はプチ熱中症になりかかりました。
SGAさんもご自愛くださいね。

>エデンの園で悪魔であった蛇の皮が、どうしてノアの家族に受け継がれていくのか。もしそれが罪の象徴であるのだとしたら、この映画、ちょっぴりバッドエンドのような気も
あの蛇の皮は聖書にも出てこないので「なんだろ?」と不思議でした。
罪はどちらにしても受け継がれていっているというか
人間そのものが罪と共存して生きていく運命なのかもしれません。
そのことも肝に銘じるという点で代々蛇の皮を受け継いでいるのかも。
(・・・という話は聖書のどこにも書かれてはいませんが。)私的解釈です。

>運びこまれる動物のうち、亀が雨が降ってきてもまだ外でのろのろ歩いてて、ノアが大慌てで抱えていくシーンを覚えています
そうそう!あのシーンとても印象深くてユーモラスで
わたしもよく覚えています。懐かしいな~また観たくなりました。
私的にはあの「ノア」の方が好きですね。
ラッセルのノアはまた別物として面白かったですが。


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