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2013年11月 4日 (月)

凶悪

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この作品の原作は,去年,九州の旅先で,新幹線の待ち時間に,キオスクの書店で買って読もうとした・・・・が,胸が悪くなるような殺人の描写と,おまけにこれが実話だという衝撃からか,最後まで読まずに放り出してしまっていた。

この原作がまさかの映画化?おまけにこれがかなりの傑作だという。あの「先生」役に,「そして父になる」ではなんとも人の好い父親役を演じたのを観たばかりのリリー・フランキーを持ってくるとは!これは観なければ・・・と遅ればせながらまだやっている劇場へ。ミニシアターはメンズデーだったせいか,それともこの作品の性質上か,男性(それも中年以降の)のお客さんが大半でもちろんカップル客などは皆無。まあ,当たり前か。
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あらすじ: ある日、ジャーナリストの藤井(山田孝之)は、死刑囚の須藤(ピエール瀧)が書いた手紙を持って刑務所に面会に訪れる。須藤の話の内容は、自らの余罪を告白すると同時に、仲間内では先生と呼ばれていた全ての事件の首謀者である男(リリー・フランキー)の罪を告発する衝撃的なものだった。藤井は上司の忠告も無視して事件にのめり込み始め……。(シネマトゥディ)

冒頭からぶつけられる残酷な殺人場面にはやくも緊迫感が・・・・。まるで韓国映画のような骨太な残虐さ・・・・日常生活の延長にあるようなシーンも多いのでリアルさにかえって血の凍る思いがする。2時間を超える鑑賞時間,全編を通してたっぷりと,人間のさまざまな罪や悪を見せつけれた気がする・・・・・繰り広げられる犯罪や人間の脆さや邪悪さにぞっとしつつ,呆れつつ,そしてそれでもなお,観るべき作品なのかもしれないな・・・と思った。
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まるで狂犬のような獰猛さでなんの迷いもなく人を殺す須藤と,そんな須藤を利用して土地持ちの孤独な老人や借金まみれで家族からも厄介者扱いされている老人をいとも簡単に殺す計画を立て,殺害の場面では嬉々として最後の仕上げに加わる「先生」こと,不動産ブローカーの木村孝雄。もちろん,このふたりの恐ろしさ,罪深さは言うまでもない。

この二人は,生まれつき良心などひとかけらも持ち合わせていないように見える。しかし彼らの恐ろしいところは,殺人をしていない時は普通の感情を持つ人間にも見えるところだ。ヤクザの須藤の方が,一見逆上型の危険人物に見えるが,穏やかそうな表情の木村の方が,金儲けのためだけではなく,殺人そのものを楽しんでいる分,心底恐ろしい悪魔に感じた。こんな悪魔が普段は普通の顔をして私たちの隣に生活していたら・・・・いや,これは紛れもなく実話なのだと思うと,なんとも肝が冷える思いがする。
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しかし,この作品は,この二人以外にも,「殺意」という魔物に魅入られてしまう,それこそ「ごく普通の人々の心に潜む悪」をも描いている。電気屋の老人の殺人を依頼する家族や,義母の介護と夫への苛立ちに疲れ果て「死んだひとなんてどうでもいい。」「お義母さんが死ねばいいと思う」という台詞を夫にぶつける藤井の妻(池脇千鶴)や,ひいてはその妻に「(この事件の追跡は)楽しかったんでしょ?」と言われて何も言い返せなかった藤井自身の心の闇など・・・・

極悪人ではないにしても,人間誰もが,弱さや自己中心的な「他人はどうなってもいい」という思いを持ち,それはある意味生存本能のようなもので,ひとつ歯車が狂えば,あるいはひとつスイッチが入ってしまえば・・・・誰もが邪魔な他者に「殺意」を持ってしまう可能性はあり・・・・機会と必要性と需要と…その他もろもろの条件が揃えば,実際に殺人を犯す可能性はあるということだ。
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藤井の記事による告発で,保険金目当ての殺人事件だけでも立件され,逮捕された先生は一生檻の中から出られない。藤井はこれからも先生の余罪を調査し続けていくと宣言する・・・悪魔のような危険な人物はもう社会に放たれることはない。しかし,なんだろう,このカタルシスの無さ,重苦しさ・・・・軽い吐き気を覚えるほどの救いのなさは。

従犯とはいえ,何人もの人を虫けらのように殺した須藤が,告発記事を書かせた動機は復讐だけではなく,自分の罪状を軽くするためだったこと,そしてそんな須藤が「キリスト教に入信したから罪を償って生きたい」と法廷でのうのうと宣言したことや,藤井に面会した先生が,藤井に・・・いやあれは観客に向かってなのか,「あんたにも殺意はあるだろう」という意味の台詞を吐いたこと・・・すべてが不快であり,それでもどうしようもないことであり,なんの解決も望めないことだからかもしれない。


リリー・フランキーさんは多才なマルチタレント,ピエール瀧さんはミュージシャンが本業でおふたりとも役者は本業ではない。それなのに何なんだ,この鬼気迫る名演技は。いわゆる「折り紙つきの悪役俳優」ではなく,全く普通のむしろ善人の風貌を持つこの二人を起用したことで,この作品は余計にリアリティが増したような気がする。

強烈に後味は悪く,気分は重くなるが,傑作だ。人間の持つ「原罪」のようなものを感じさせられた。恐ろしい・・・・

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コメント

ななさん、こんにちは♪ コメント&TBありがとうございました。
ご訪問が遅れてごめんなさいね。

この映画かなり好評のようで、大阪では劇場を変えながらしばらく上映されていました。
シネコンでもかかりましたし、こういうタイプの映画(ミニシアター向け?)では珍しいですよね。

私も、須藤が「神様が・・・」うんぬん、と言う場面で「またか・・・」と思いました。
『シークレット・サンシャイン』でもヒロインが衝撃を受けていましたが、キリスト教徒の方はどう感じられるのだろう?と思います。
私なんか不信心だから、ムカつくんですけど・・・(汗)。

ピエールさんもリリーさんも、オヤジだけどなんか味があって、好きだなぁ。

真紅さん こんばんは!

観るのに勇気がいったのですが
それでもやっぱり高評価ですよね,これ。
原作はドキュメンタリーなので事件の残酷さだけが心に残っただけだったのに
こうやって映画にしてくれるとぐいぐい引き込まれてしまいました。
俳優さんたちの熱演や脚本の上手さもありますよね。
リリー・フランキーさん,「そして父になる」を観たばかりだったので
余計にその演技の幅の広さに感嘆!です。

>須藤が「神様が・・・」うんぬん、と言う場面で「またか・・・」と思いました。
キリスト教徒の私でもちょっと胸糞悪かったですよ。
だってほんとうに悔い改めてないし,たとえ神が赦しても
人からは赦されない大罪ですからそこんとこ開き直るなよって。

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» ある死刑囚の告発~『凶悪』 [真紅のthinkingdays]
 スクープ誌 『明潮24』 編集部宛てに、死刑判決を受けて最高裁に上告中の 須藤純次(ピエール瀧)という元ヤクザから手紙が届く。自分には殺人の余罪が あり、主犯である 「先生」 と呼ばれていた人物・木村(リリー・フランキー)の罪 を告発したい、という内容だった。記者の藤井(山田孝之)は須藤と面会し、真実 かどうかも定かでない事件にのめり込んでゆく・・・。  実在の事件を題材...... [続きを読む]

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