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2013年11月の記事

2013年11月 5日 (火)

王になった男

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大好きなイ・ビョンホン主演の韓国時代劇映画!やっとDVDで鑑賞~~

若いころから大好きだったビョン様が,少しも劣化せずあいかわらず若いままで,一人二役の王様を演じているのだもの,作品の出来不出来に関わらず絶対観ようと思っていたが,観てみるとなんとも素晴らしい作品だった。彼のファンでなくとも十分に楽しめ,かつ感動もドキドキもできる見事なエンタメ作品だった。

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暴君と言われた朝鮮王朝第15代王,光海君と,彼の影武者を務めた道化師ハソンの物語。どちらもビョンホンが演じているし,どちらの役の時も王様の衣装のことが多かったので,王様かハソンか見分けがつくかな~と案じたが,そこはやはりビョンホンの演技力。クーデターや暗殺を恐れて疑心暗鬼になっている陰鬱な王様と,優しくて剽軽な道化師ハソンのキャラの違いを雰囲気や表情で,とても上手く演じ分けてくれていた。
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とにかく,王様の身代わりを務めているハソンを演じる時のビョンホンの表情がお茶目で可愛らしくって・・・・・

そう,この作品,王朝ものだというからもっとシリアスな大河ドラマ風なものかと思っていたら,案外コミカルで笑えるシーンがたっぷりなのだ。暗殺されかかって身を隠した王の代わりに,図らずも影武者を務めることになったハソンは賤しい身分の道化師であり,王に瓜ふたつだという理由だけで有無を言わさず宮廷に連れて来られた立場だ。王が入れ替わったことを知っているのは大臣のような立場の都承旨ホギョンと,王の身辺に仕える宦官のチョ内官の二人だけ。
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他の宮廷の誰ひとりとして真実を知らされていない中で,初めての宮廷生活・・・それも王としての・・・を演じなければならないハソンの,クスクス笑えるエピソードやじーんと心に来るエピソードの数々に笑ったり涙ぐんだりハラハラしたり。本来温かい心を持ち,人を笑わせることを生業としているハソンの優しさや,一般人民ゆえの民や使用人への,勇気と温情ある判断には,やがて真のリーダーとしての風格までもが身についてきて・・・・
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ハソンが演じる王が痛快で愛おしく,彼の突飛で型破りにも思える行動に驚いたり癒されたり慰められたりする宮廷の人々を観るのも楽しくて・・・・いつまでも彼がこのまま王位に就いて,本当に入れ替わってくれたらなぁ・・・いやいや,とにかくこの物語,面白すぎていつまでも終わってほしくないなぁ・・・と思いつつ,やっぱりいつかはハソン退場の時は来るよね,一体どんなふうにこの物語は締めくくられるのだろう,と気になって気になって。
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そうこうしているうちに,政治の改革を始めたハソンを苦々しく思う逆臣たちの手によって,王が偽物であることが露見しそうになり,本物の王も快復して王宮に戻れそうになる・・・賤しい身分で王座に座ったハソンは,「お役御免」とばかりに暗殺されそうになる。このとき,身代わりのハソンを慕う宮廷の人々の取った行動に泣かされた。ハソンから,本物の王には無い「情け」をかけてもらった毒見役の少女サウォルや,身辺警護のト武将は,命を捨ててもハソンを守ろうとする。この二つのシーンは感動ものだ。
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ラストはどうなって,ハソンの運命はどうなったかは触れないが,とにかく爽やかな感動に包まれた・・・。笑って,泣いて,すがすがしく温かい前向きな気持ちになれる,そんなとても素敵な作品だ。観てない方には大声でお勧めしたい。韓国映画嫌いの方もぜひ食わず嫌いをせずに観ていただきたいな。

2013年11月 4日 (月)

凶悪

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この作品の原作は,去年,九州の旅先で,新幹線の待ち時間に,キオスクの書店で買って読もうとした・・・・が,胸が悪くなるような殺人の描写と,おまけにこれが実話だという衝撃からか,最後まで読まずに放り出してしまっていた。

この原作がまさかの映画化?おまけにこれがかなりの傑作だという。あの「先生」役に,「そして父になる」ではなんとも人の好い父親役を演じたのを観たばかりのリリー・フランキーを持ってくるとは!これは観なければ・・・と遅ればせながらまだやっている劇場へ。ミニシアターはメンズデーだったせいか,それともこの作品の性質上か,男性(それも中年以降の)のお客さんが大半でもちろんカップル客などは皆無。まあ,当たり前か。
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あらすじ: ある日、ジャーナリストの藤井(山田孝之)は、死刑囚の須藤(ピエール瀧)が書いた手紙を持って刑務所に面会に訪れる。須藤の話の内容は、自らの余罪を告白すると同時に、仲間内では先生と呼ばれていた全ての事件の首謀者である男(リリー・フランキー)の罪を告発する衝撃的なものだった。藤井は上司の忠告も無視して事件にのめり込み始め……。(シネマトゥディ)

冒頭からぶつけられる残酷な殺人場面にはやくも緊迫感が・・・・。まるで韓国映画のような骨太な残虐さ・・・・日常生活の延長にあるようなシーンも多いのでリアルさにかえって血の凍る思いがする。2時間を超える鑑賞時間,全編を通してたっぷりと,人間のさまざまな罪や悪を見せつけれた気がする・・・・・繰り広げられる犯罪や人間の脆さや邪悪さにぞっとしつつ,呆れつつ,そしてそれでもなお,観るべき作品なのかもしれないな・・・と思った。
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まるで狂犬のような獰猛さでなんの迷いもなく人を殺す須藤と,そんな須藤を利用して土地持ちの孤独な老人や借金まみれで家族からも厄介者扱いされている老人をいとも簡単に殺す計画を立て,殺害の場面では嬉々として最後の仕上げに加わる「先生」こと,不動産ブローカーの木村孝雄。もちろん,このふたりの恐ろしさ,罪深さは言うまでもない。

この二人は,生まれつき良心などひとかけらも持ち合わせていないように見える。しかし彼らの恐ろしいところは,殺人をしていない時は普通の感情を持つ人間にも見えるところだ。ヤクザの須藤の方が,一見逆上型の危険人物に見えるが,穏やかそうな表情の木村の方が,金儲けのためだけではなく,殺人そのものを楽しんでいる分,心底恐ろしい悪魔に感じた。こんな悪魔が普段は普通の顔をして私たちの隣に生活していたら・・・・いや,これは紛れもなく実話なのだと思うと,なんとも肝が冷える思いがする。
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しかし,この作品は,この二人以外にも,「殺意」という魔物に魅入られてしまう,それこそ「ごく普通の人々の心に潜む悪」をも描いている。電気屋の老人の殺人を依頼する家族や,義母の介護と夫への苛立ちに疲れ果て「死んだひとなんてどうでもいい。」「お義母さんが死ねばいいと思う」という台詞を夫にぶつける藤井の妻(池脇千鶴)や,ひいてはその妻に「(この事件の追跡は)楽しかったんでしょ?」と言われて何も言い返せなかった藤井自身の心の闇など・・・・

極悪人ではないにしても,人間誰もが,弱さや自己中心的な「他人はどうなってもいい」という思いを持ち,それはある意味生存本能のようなもので,ひとつ歯車が狂えば,あるいはひとつスイッチが入ってしまえば・・・・誰もが邪魔な他者に「殺意」を持ってしまう可能性はあり・・・・機会と必要性と需要と…その他もろもろの条件が揃えば,実際に殺人を犯す可能性はあるということだ。
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藤井の記事による告発で,保険金目当ての殺人事件だけでも立件され,逮捕された先生は一生檻の中から出られない。藤井はこれからも先生の余罪を調査し続けていくと宣言する・・・悪魔のような危険な人物はもう社会に放たれることはない。しかし,なんだろう,このカタルシスの無さ,重苦しさ・・・・軽い吐き気を覚えるほどの救いのなさは。

従犯とはいえ,何人もの人を虫けらのように殺した須藤が,告発記事を書かせた動機は復讐だけではなく,自分の罪状を軽くするためだったこと,そしてそんな須藤が「キリスト教に入信したから罪を償って生きたい」と法廷でのうのうと宣言したことや,藤井に面会した先生が,藤井に・・・いやあれは観客に向かってなのか,「あんたにも殺意はあるだろう」という意味の台詞を吐いたこと・・・すべてが不快であり,それでもどうしようもないことであり,なんの解決も望めないことだからかもしれない。


リリー・フランキーさんは多才なマルチタレント,ピエール瀧さんはミュージシャンが本業でおふたりとも役者は本業ではない。それなのに何なんだ,この鬼気迫る名演技は。いわゆる「折り紙つきの悪役俳優」ではなく,全く普通のむしろ善人の風貌を持つこの二人を起用したことで,この作品は余計にリアリティが増したような気がする。

強烈に後味は悪く,気分は重くなるが,傑作だ。人間の持つ「原罪」のようなものを感じさせられた。恐ろしい・・・・

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