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2012年10月22日 (月)

ラビット・ホール

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大きな岩のような悲しみは
やがてポケットの小石に変わる・・・

ピューリッツァー賞受賞の戯曲をベースに,劇作家のデヴィッド・リンゼイ=アベアー脚本,ジョン・キャメロン・ミッチェル監督の作品。ニコール・キッドマン主演。DVDで鑑賞。

あらすじ: 郊外に暮らすベッカ(ニコール・キッドマン)とハウィー(アーロン・エッカート)夫妻は、愛する息子を交通事故で失った悲しみから立ち直れず、夫婦の関係もぎこちなくなっていた。そんなある日、ベッカは息子の命を奪ったティーンエイジャーの少年と遭遇し、たびたび会うようになる。(シネマトゥディ)
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突然の事故で子どもを失った夫婦が,その悲劇や喪失感をどのように受け入れ,再生への道を歩き出すか…そんな過程を繊細に丁寧に綴った物語だ。

この作品を観て,「喜びは似ているが,悲しみは千差万別」だという意味の言葉を思い出した。そして,悲しみの乗り越えかたも人によって様々で,決してマニュアルはないし,自分のやり方を押し付けてもいけないのだなあとも思った。

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ベッカとハウイー夫妻は,息子を亡くしたという悲しみや痛みは同じ筈で,だからこそ傍目には,二人は共に手を取り合って悲しみを癒し合えるのではないかと思うのだけど,それがそう簡単ではなく,男女の違いか,はたまた互いの性格や価値観の違いか,二人は互いのやり方にそれぞれが違和感と不満を持ち,気持ちは次第にすれ違っていく。

どちらかと言えば,一般的には夫のハウイーの方が普通の反応に見える。彼は亡くした息子の思い出の詰まった部屋や持ち物を大切にし,夜更けに息子のビデオテープを見て涙を流し,子を亡くした親たちのセラピーに参加して他人と悲しみを共有し,妻との間に新しい子どもを授かりたいとも願う。
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そんな彼に比べて,妻のベッカは,息子の遺品から極力目を背け,セラピーでは神の癒しについて語る他の親に毒舌を吐き,寄り添おうとする実母や妹に時には高飛車な態度を取ったりする。そして挙げ句のはてには,息子の命を奪った加害者の少年と交流したり・・・。ハウイーにとってそんな妻の言動は,なかなか共感できるものではなかった。
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わたしもベッカの言動には「なんで?」と思うこともあったけれど,やはり悲しみとの折り合いの付け方は人によって違うから,頑なで八つ当たりのように見えたとしても,彼女は今はああするしかないのだろうな・・・と切なく思いながら観た。特に遺品や思い出を封印したくなる気持ちはわかるような気がする。私だってもし彼女の立場に立ったら,遺品の処分は出来ないけど,見たら思い出して辛くて耐えられないかもしれないから。

ベッカはまだ受け入れられないのだ・・・たぶん。息子を亡くしたことを。そしてまた,それによって不幸になった自分をも彼女は受け入れられなくて苦しんでいたのかもしれない。
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結婚して家庭に入るまではキャリアウーマンだったベッカ。美しく,家事も堪能で裕福で…そんな彼女なら,息子を亡くしたことで他人に憐れまれたくないというプライドもあるだろうし,「麻薬の過剰摂取で死んだ兄と自分の息子を同列にしてほしくない」と実母にくってかかる気持ちもわかる。夫や肉親の慰めの手を素直に受けることができずに自らを孤独に追いやっている彼女は,もちろん痛々しくはあるのだが。
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そんなベッカの慰めになったのが,加害者の少年との触れ合いだったのは意外だった。これが犯罪ならもちろん加害者との交流などあり得ないのだが,不慮の事故であり,少年もまた痛みを抱えていたこともあって,ベッカは彼と共鳴したのだろうか。

少年の描いたSFコミックに登場する無数のパラレルワールド。世界はひとつだけでなく,別の世界では息子も自分たち夫婦も,何一つ失わず幸せに笑っているのかもしれない。この発想がベッカに不思議な慰めを与える。
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もはや取り返しのつかない悲劇や喪失。でも,もしかしたらそれらが起こっていない別の世界があるのかもしれない。そこで愛する息子は幸せに生きているのかもしれない。自分たちは彼の傍らでこれからもその成長を見守っていけるのかもしれない・・・・。

ベッカもハウイーも,いさかいやすれ違いの危機を体験しながら,それでもいつしか少しずつ同じ方向を向いて再生への道をゆっくりと歩き始める。人生はやはり続くのだから・・・どんな方法でも,人は悲しみのなかに立ち止ることなく,歩き出さなければ生きていけない。そう,人それぞれの方法でなんとか悲しみと共存しながら。
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和解した実母からの言葉,「悲しみは消えないけど変化していく。重さが変わっていく・・・岩のような大きさだったのがポケットの中の小石のようになる。時には忘れてしまうときもあるほどに。それでも消えることはなく依然としてそこにあるのだけれど。」 という意味の言葉が印象的だった。

失ったものは戻りはしない。後悔しても時は巻き戻せない。
悲しみは完全に消えはしない。
それもまた自分の一部であると受け入れながら悲しみと共に生きていくほかはないのだ。やがてその重みをほとんど感じなくなり,時には慈しむこともできる日が来ると信じて。

それにしても。
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ニコール・キッドマンの美しさ。不惑をとっくに過ぎてもこのひとの美しさは少しも色褪せない。髪形によってはまだまだ少女のように見えることも。まとめ髪にするとそれはそれで熟女の魅力も漂うし。あらすじを追いつつもニコールの出る作品は,やはりこのひとの容姿に見とれてしまう・・・・。

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