ドライヴ
第64回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作品。DVDで鑑賞。
シンプルだけど最高にクールな作品!
私はライアン・ゴズリングの寡黙なカッコよさにハマってしまったけど,作品自体は,絶対男性受けするだろうな~~~,と思った。というか,この作品の醍醐味はやっぱり男性にしかわからんのじゃなかろうか?女性でもフィルム・ノワール色の濃いバイオレンスやサスペンスが好きなら(=それはわたし)ハマるかも。
ジェイムズ・サリスの原作を,デンマーク出身の新鋭ニコラス・ウィンディング・レフン監督が映画化。天才的なドライヴィング・テクニックを持ち,昼は自動車修理工と映画のスタント,夜は強盗の逃がし屋をしている主人公(ゴズリング)。
この主人公,名前すらなく,役名は「ドライヴァー」なのだが,とにかく寡黙。家族も友人もなく,もの静かでとても他人に害など与えそうもない,そして感情の高揚も乱れもまったく起こりそうもない・・・そんな表情の彼なのだが,冒頭の「逃がし」のカーチェイスの場面から,もうすでに「コイツ,ただものではない」と雰囲気が。派手な場面ではないのだが,無駄がなく,何が起こっても冷静で的確な判断と行動をする彼からは,静かで確かな凄味が感じられて・・・「なんなの?このひと・・・」と画面に釘付け。
そんな彼が,同じアパートに住む服役中の夫を持つ人妻アイリーン(キャリー・マリガン)に恋をした時から,歯車が狂っていく・・・いや,本来の彼の別の面が出てきた,というべきか。アイリーンやその息子に対する彼の接し方は,あくまでもプラトニックでシャイで優しく,他の人には決してみせない笑顔さえみせる。しかし,アイリーンの夫が巻き込まれたマフィアとのトラブルから,彼女と息子にも危害が及びそうになったとき,ドライヴァーは驚愕の変貌をとげる。
いや,寡黙で静謐・・・というのはそんなに変わらない。その「寡黙さ」「冷静さ」を依然として保ったまま,顔色一つ変えずに敵をつぎつぎと情け容赦なく倒していく様子が異様に凄いのだ。
いくら愛するひとを守るために,とはいえ,その徹底ぶり,迷いのなさをみると,もともと壊れている人間なんじゃないだろうか?眠っていた彼のサディスティックでバイオレンスを好む本能が覚醒されただけでは?とすら思ってしまう。後半の殺戮シーンはかなりグロイのでそっちが苦手な人は注意が必要。
エレベーターの中のシーン・・・・ アイリーンをかばい,口づけするときのドライヴァーの仕草のなんと優しく繊細なこと。そして次の瞬間に彼は同じエレベーター内の敵を無残に蹴り殺すのだが・・・とても同一人物とは思えないこの落差には,アイリーンでなくても誰でもショックを受けるだろう。
それでも,なんだろうな・・・やはり主人公に対して抱く,憐みのような,エールを送りたくなるような不思議な肩入れの気持ちは。本来は善人であるのに,感情面で人とは違う病んだものを抱えている主人公の孤独さと,そんな彼の一途な恋心が切なくて,心惹かれてしまうのだろうか。
ライアン・ゴズリングの作品はラースと、その彼女くらいしかじっくり観ていない。ハンサムだと思ったことは今までなかったけど,この作品の彼はとても素敵です。まさにカメレオン俳優で,ちょっと,いや,かなーり変わった主人公を演じさせたらピカイチだと思う。
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