« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »

2012年2月の記事

2012年2月18日 (土)

ダメージ


Cap030
1992年の作品だが,何度も見直している好きな作品だ。
今より断然若いジェレミー・アイアンズが素敵。

監督は,「恋人たち」のルイ・マル。主人公は大臣の椅子を約束されていた英国下院議員スティーブン(アイアンズ)。愛する家族に囲まれ,上流階級社会で何一つ不満もなく幸せに暮らす彼の前に,突然現れたミステリアスな女性アンナ(ジュリエット・ビノシュ)。ひと目見たときからアンナに強く惹かれたスティーヴンは,彼女の誘いを受け,言葉を交わすのも惜しむように激しく愛し合う。しかし彼女はあろうことか,スティーヴンの息子マーティンのフィアンセだった。
Cap011
不倫の恋に陥った初老の男の悲劇を描いた作品だ。それも失うものが大きい立場であるにも関わらず,究極の背徳の罪を犯してしまう男の物語。分別盛りの年齢で,それまで自分の人生をソツなく完璧にコントロールしてきたはずの彼が,抗いようのない理屈抜きの情念に翻弄されてしまう。人生の秋に差し掛かってから体験する本気の恋が,いかに中年男の理性も分別も狂わせるか・・・・ある意味,恐ろしほど切なく苦い物語である。

Cap005
主演のジェレミーがたまらなくいい。

冒頭の,いかにも上流階級の紳士然とした彼も,アンナの虜になって取り乱したり苦悩したりする彼も,ラストのすべてを失ってなお,後悔していないようにさえ見える悟りきったような静かな表情の彼も・・・・・。一人の人間の中に住んでいる,思いもよらないもう一つの自分。そして自分でも制御のできない感情の苦しさ・・・そんな難しい感情を表情の演技で上手く表していた。

Cap017_2
スノッブで冷静なたたずまいの彼が,恋に苦しむ青年のように切なく辛そうな眼差しを垣間見せる表情が素晴らしい。そして,やっぱり感じたことは,このひとのスタイルのよさ,姿勢の良さ。仕立ての良いスーツやコートはもちろんのこと,上質なセーターやジャケットも,何を着ても素敵だけれど,とくに肩や背中のラインが洗練された彫像のように完璧なのだ。
Cap006_2
息子や妻を裏切ってまでも彼を激情の虜にしたファム・ファタールを演じているのはジュリエット・ビノシュ。彼女が演じたアンナという女性は,同性の私から見ても,危険で理解不能なキャラクターだ。

彼女はいったい誰を本当に愛しているのか?そもそも本気で誰かを愛せる女性なのか?すべてを受け入れるようでいて,決して自分の心の奥深くへは誰も入れないような・・・そんな矛盾した魅力を持つアンナ。愛に対して貪欲でそのくせ冷めていて・・・愛する相手を破滅させるか傷つけるか・・・たとえ望まなくても,アンナはそのどちらしかできないタイプの女性なのかもしれない。
Cap021_2
スティーヴンはなぜ,悲劇が起こるまで,立ち止まることも引き返すこともできなかったのか?その理由は,きっと彼本人にも説明がつかなかっただろう。彼にとってこの恋は,まるで熱病に冒されたような,あるいは避けられない天災に見舞われたようなものだったのかもしれない。

ひたむきな彼の眼差しを冷静に見つめ返すアンナの「こんなこと,(あなたにとっては)初めてなのね。」という台詞や,発覚の悲劇の後に,妻のイングリットから発せられた,「なぜ関係ができたときに死ななかったのよ?」という台詞が印象的だった。

結局はこの上ないほどのダメージを受けて,地位も家庭もすべてを失ったスティーヴン。そしてアンナは,彼女を受け入れ庇護する幼馴染の男性の元へと去る。

Cap031
ラスト,侘しい一人住まいの部屋で,アンナと息子と自分の写真を眺めるスティーヴン。「あれから一度だけ彼女を見かけた・・・・ごく普通の女だった。」という独白。彼にとって,当時の彼女の魔力はもうすでに色褪せたのだろうか。それでも,パネルの彼女の顔を見つめるスティーヴンの眼差しには,まだアンナへの愛情が存在しているように思えた。

愛に翻弄される人間の愚かしさと,このような愛の持つ破壊力の大きさを,容赦なく描いた物語だ。それでもどうしようもなく愛してしまい,後悔もできないのが・・・弱い人間の性なのかもしれない。

2012年2月 7日 (火)

アジョシ

20110930001717
もうもう,悶絶するくらい超カッコいいハードボイルドなウォンビンに会えます!

あらすじ: 過去の出来事が原因で心に闇を抱え、街の片隅で質屋を営んで生きる男テシク(ウォンビン)。隣に住む孤独な少女ソミ(キム・セロン)は、テシクをただ一人の友達として慕っていたが、ある日、ソミが麻薬中毒の母親共々犯罪に巻き込まれ、組織に誘拐されてしまう。ソミを救い出すため、立ち上がったテシクは…… 。(シネマトゥディ)

最初からずっと痺れっぱなしだった・・・・。
Cap303
韓国版レオン
ですね,これ。大好きです,こういう設定。
孤独な殺し屋・・・じゃなくて,元特殊工作員の男と,同じく孤独な少女の愛と絆の物語であるのかも。ただし,レオンのジャン・レノより,ウォンビンは若くてカッコいいし,ナタリー・ポートマンより,少女役のキム・セロンちゃんは幼くてあどけないけれど。

しかし美しい男だ・・・・ウォンビン。
Cap283_2
とくにこの作品の彼は美しい。これまで私が観た彼の作品は,秋の童話ブラザー・フッドマイ・ブラザーと,母なる証明だが,彼はどちらかというと,瞳が小鹿系なので,役柄や髪型によっては可愛らしく見えることもあったし,役柄も弟キャラが多かったのだが,今作ではかなり体を引き締め,身体を張った本格的なアクションも自らこなし,何ともワイルドに美しい。
Cap262
冒頭,前身を隠すために,ひっそりと根暗な質屋をやっている姿もかっこよくて,「隣のおじさん(アジョシ)」という呼び名には,めちゃくちゃ勿体無いぞ。どこがオジサン? どう見てもお兄さんでしょ。

Cap256

ヤク中の母親を持ち,世間からも冷たい目で見られていたソミと,工作員時代に,お腹の子もろとも愛妻を目の前で失ったトラウマから,その瞳に消えることのない暗い哀しみを湛えてひっそりと生きていたテシク。
Cap263
二人の間に絆を芽生えさせたのは,互いの抱える深い孤独だったのだろう。事件に巻き込まれ,ソミの命が危うくなったときに,再び「守るべき存在」を得たテシクが生ける屍から従来の超一流の殺人マシーンとして蘇る・・・・。

このウォンビン演じるテシクの変貌はすごい。無気力で哀しげで,影をまとったような表情の彼が、単身で敵方に乗り込んでいくときには別人のように猛々しく精悍に。根暗な彼も獰猛な彼も,どっちもまあ,ふるいつきたいくらい男前ではあるけれど。
Cap288
身体能力も戦闘スキルももちろんだけど,ソミ救出への執念というか,愛の一念のなせる技は向かうところ敵なし。特にソミが殺されたと思い込んで復讐を成し遂げるシーンの,テシクの表情のすさまじさは鳥肌が立つほどだ。アクションシーンは,銃撃戦もだが,彼の目にも留まらぬナイフさばきの鮮やかさは見どころだ。
Cap292
しかしこの作品,敵の残酷さや手ごわさ,卑劣さがこれまた桁外れにすごい。日本ではとても考えられないような犯罪・・・子どもの臓器売買を生業とする連中が相手なのだから。これ,実際に韓国や中国の闇社会で行われていたら怖いな,とも思った。韓国映画独特の一切手抜きなしの残酷描写が苦手な人には,いくらウォンビンが素敵でもお勧めはしないかな。
Cap294
Cap298_2
悪役も「レオン」並みにぶっ飛んでいていて,怖いのだけど妙に魅力的なキャラが揃っていた。こういう突き抜けた恐ろしさと不気味な個性を表現させたら,脇役さんも含めて韓国映画ってほんとに上手いと思う。
Cap290
今作で一番光っていた悪役は,ラム・ロワン役のタナヨン・ウォンタラクン。なんとタイの役者さんだそうで。テシクとの一騎打ちで殺されちゃうし,殺されるしかないとは思うけど,実はこの彼,純粋に悪党だとは言えないような「あること」をテシクのためにやってくれているので,殺されちゃってちょっと残念。

ソミ役のキム・セロンちゃんは,さびしげな顔立ちが薄幸そうで利発そうだ。もちろん大人顔負けの演技力には唸ってしまった。ラスト,おそらくこれから警察に収監されるテシクが,ソミに雑貨屋でたくさんのお菓子を買い与え,「一人で生きろ。」と言う場面は泣けた。
Cap307
そして「一度だけ抱きしめさせてくれ。」とソミに懇願するテシク。無邪気に広げたソミの腕がテシクに回される・・・・。心に焼き付く切なくも温かい抱擁シーン。この時のテシクは,自分が守りきれず,この世に生を受けられなかった我が子にも思いを馳せていたのではないか?と思った。

Cap310
そしておそらくソミは,テシクとの約束を守って独りで気丈に生きていきながらも,もし叶うならば何年でもテシクの帰りを待つのではないだろうか・・・どういう形でも,この二人を再び逢わせてあげたい,と私的には願ってしまうラストだった。

2012年2月 3日 (金)

猫の認知症?

009

失礼なっ!

と,本人(本猫)が聞いたら怒りそうですが・・・・。
うちのななちゃんも,もう15歳を超えたハズ・・(拾い猫なので正確な年齢は知らない)なのですが,この半年ばかり前から,ひとつだけ行動がおかしくなりました。

010

それは,一日に何回も吠えるような喚き鳴きをするようになったのです。ウワァ~~オ,ウワァ~~~~オ,と,家じゅうに響き渡るようなイラついた声で。発情期のような声ではなく・・・ほんとに全身を振り絞って悪態をついてる・・・というような感じの声です。「何の不満があるのかちゃんと日本語で言えよ!」と突っ込みたくなるような感じの悪さです。

2011111622410000_2
イライライライラ・・・・

どこか悪いわけでもなさそうだし,いつどこで鳴くかも決まっていないのですが,ちょっと心配になるような声の大きさと雰囲気です。ご近所の人に聞かれたら,ウチが猫を虐待しているのでは?と誤解されそうな声なんです。j実際に,電話の相手に聞かれちゃって,「今のは何?」とビックリされたことも何度も。それまでは滅多に鳴かない無口な猫だったのに何なんでしょう,この何かに取りつかれたかのような変貌ぶりは。

老猫はこんな鳴き方をすることがあって「認知症」の一種だと,某掲示板のトピックスにありました。本当かな?まあ,認知症が出ても不思議ではない年なんですけどね。
002
おいおい,着物から降りろって・・・・

そのほかにも,やたら甘えん坊にはなりました。確かにもうすぐお迎えも近いのかも・・・というわけで,これまで以上に家族に甘やかされています。父親は完全に猫の「しもべ」状態だし,夜も一晩中私がギュッとハグしてやらないと寝ません。今のところ健康に問題はないみたいだけど。
2011110920050000
う~~ん,一日でも多く長生きしてね。お願いだから(家族一同より)

« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »

フォト

BBM関連写真集

  • 自分の中の感情に・・・
    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。
無料ブログはココログ