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2012年1月の記事

2012年1月22日 (日)

サンザシの樹の下で

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たとえ何が起きても
君をずっと待ち続ける・・・・。

チャン・イーモウ監督の描く文革時代の男女の「最も清潔な」純愛物語。DVDで鑑賞。文革時代に実際にあった悲恋をもとに書かれた同名小説が原作だそうで。
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文化大革命の嵐が吹き荒れる1970年初頭の中国。
都会の高校から農村実習にやってきた少女ジンチュウは,滞在先の農家の家族と親しくしている青年スンと出会う。ジンチュウに恋をしていろいろと彼女の世話を焼くスン。次第に彼に惹かれていくジンチュウ。彼女が都会に帰ってからも,スンの彼女への誠実なアプローチや細やかな援助は続き,二人は密かにつきあうようになるが,反政府分子として迫害される両親を持つジンチュウにとって,男女交際は到底許されないことだった・・・・
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いやもうなんと言うか・・・・  

この二人の恋愛の,一途さ,無垢さ,そしてレトロさ・・・あまりにも今の自分の住んでいる世界の恋愛観と違いすぎて,それがまた新鮮で清々しくて・・・すっかりやられてしまいました。まったくのノーメイク,つるんとしたゆで卵のようなお肌に目じりの下がったお雛様のような初々しい幼な顔のヒロイン・・・

演じるチョウ・ドンユイは18歳だが,どうかするとまだ中学生にも見えるあどけなさ。スタッフが中国中の芸術学校を探して見つけた少女だ。その頼りなげな華奢な風情を見ていると,彼女を心から愛おしむスンの想いも頷けてしまう。健気ではかなげで,彼女の抱えている背景の苛酷さもあって,そりゃ,守ってあげたくてたまらなくなるだろうなぁ・・・・。
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そしてスンを演じるショーン・ドウもまた,日本じゃお目にかかれないような(失礼)爽やか健全青年で。この彼が,まるで兄のように父親のようにジンチョウを見守り,至れり尽くせりの滅私奉公をする様には,ほんとに感動した。そしてまた,尽くされるジンチョウの方も,恋愛のなんたるかも知らないくらいに初心なので,驕ることも調子に乗ることもなく,戸惑いながらもいつしか彼を心から頼り,愛するようになる姿にまた感動。(なぜいちいち感動するかというと,これら一連の純真さがとにかく新鮮なのである!)
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恋愛の障害となるのが文革・・・・。え~~,なんで逢っちゃいけないの?噂が立つとそんなに命取りなの?彼女には?なんてカルチャーショックも感じながら,そしてまたキスさえもしないスンの,彼女を大切に思うゆえの自制心も,それを求めることも知らないジンチュウの初心さも・・・これもいちいち新鮮で感動。

「晴れて一緒になれる年になるまでいつまでも待つよ,逢えなくても」・・・と誓ったスンが難病に倒れたとき,「韓国ドラマみたいな展開だ」と一瞬思ったが,そこはやっぱりチャン・イーモウ監督。韓ドラのベタな雰囲気は微塵も感じさせず,最後の病室での別れのシーンは,こらえ切れずにもう涙,涙・・・・。天井に貼られていた二人の記念写真にまた涙。

ものすごく清々しく,切ないラブストーリー。
久々に心が洗われるような気持ちがした。

2012年1月19日 (木)

サラの鍵

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少女は弟を納戸に隠して鍵をかけた。
すぐに戻れると信じて・・・・。
1942年,パリ。ユダヤ人一斉検挙の朝。

黄色い星の子供たちで取り上げられていたヴェル・ディヴ事件を,サラという少女の悲劇を通して描いたドラマ。原作はタチアナ・ド・ロネの同名小説。新宿武蔵野館で鑑賞。
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パリに住んでいたユダヤ人たちが一斉検挙されて自転車競技場(ヴェル・ディヴ)に集められ,その後彼らの大多数が収容所に送られて命を奪われたという,この事件。わずか数日間だけの間だと信じて,とっさの機転で弟を子供部屋の納戸に隠して鍵をかけてしまった少女サラ・・・。その後の自分たち家族の待つ運命も知らずに。ストーリーのこの部分を聞いただけでも,なんてむごい話だろうとチリチリと痛む心で観た。

私の好きなクリスティン・スコット・トーマスが主演なのだが,この作品での彼女は,あくまでも語り部の位置づけ。彼女が演じるのはフランス人の夫を持つ英国人ジャーナリストのジュリア。彼女が,夫の祖父母から譲り受けたアパートが,サラたち一家がかつて住んでいた部屋だったことがきっかけになり,ジュリアは今まで多くを語られなかったヴェル・ディヴ事件の真相とサラの苦悩の物語を辿ることになるのだが・・・・。

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観る前は,閉じ込められた弟が,助かるにせよ悲劇に終わるにせよ,どちらにしてもそこで終わる物語なのだと何となく思っていた。しかし,この物語はむしろ,その後のサラの人生と顛末をもじっくりと追い,その痛みを受け継いでゆこうと決心する遺族の思いや,真実を葬り去らせまいとするジュリアのようなジャーナリストの姿勢を描いた作品だった。

あまりにも大きすぎる痛みを負ったとき,人は時に痛みの過去を葬り去りたいと願う。全く別の人生に生きて,癒えることの決してない傷に関しては永久に口をつぐみたいと願うこともあるだろう。
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納戸の中に弟の遺体を見つけたときに壊れてしまったサラの心。たとえどんなに強靭な心の持ち主でも,確かにあれだけの痛みは耐えられまい。納戸で命を落とさなくても,弟はいずれ収容所で殺されてしまったかもしれないけれど,それでも,自分のせいで弟が苦しみと孤独の中で死んでいったことへの自責の念から,サラは一生解放されなかったのだ。心を病んで自ら死を選ぶほどに。

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それでも命は次世代へと受け継がれ,どんなに痛みを伴うものであっても,忘れ去ってはいけない悲劇もある。

サラの弟は,なぜ納戸で死ななければならなかったのか?
その死の本当の原因となった,
許されるべきではない史実。
どれほど多くの,罪のない人々が
サラと同じような大きな傷を受けたのだろう…。

ジュリアに告げられるまでは,母親の過去について何一つ知らされていなかったサラの息子が,あらためて母親の辿った悲劇や悲しみについて知ったときの深い感慨。サラの残した納戸の鍵に込められた,想いや痛みを彼が受け止め,受け継いでいくだろうラストのシーンには,しみじみとした感動を覚えた。

2012年1月15日 (日)

リアル・スティール


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2012年の初鑑賞映画
はこれ!
すっごくエキサイティングで感動的で,そして前向きにもなれる素晴らしい作品だった!昨年観てたら絶対ベストに入れてたなぁ。・・・・まぁいいか,来年のベストに入れるのはすでに私の中で決定。

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何がいいかってこれね,世代や性別や嗜好を越えて,ほぼ万人が楽しめるよく出来たエンタメなのだと思う。ほんの少し近未来のロボット・ボクシング界で起死回生のチャレンジをする,父と息子の物語なのだけど。

登場するロボットたちの迫力満点のリングシーンや格闘技ロボットの驚くべき性能などは,ロボットオタクの男性にとってはおそらくたまらないだろうし,「シービスケット」や「シンデレラマン」のような不可能を可能にする不撓不屈のサクセスストーリーとしても万人の感動を呼ぶ。

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そしてそれまで互に面識がなかった父と息子が,反発しあいながらも次第に絆を強めていくあたり・・・・特に,冒頭はまるで父親の自覚ゼロで,行き当たりばったりの人生観を持つ主人公チャーリーが,次第に「父親」として成長していく過程は・・・・これは子役のダコタ君の上手さや魅力も手伝って,かなり心にグッとくる。

個人的に私はヒュー・ジャックマンの「まるで人造人間のよう」な完璧なマッスルボディに感動したけど。いや~~,あの胸板,腕の筋肉,そして脚の長さ!素晴らしい・・・

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そしてみょーに嬉しかったのが最初に出てきた日本製のロボット「超悪男子」のボディ全面に燦然と輝くインパクトの強い漢字熟語。なんかもう,劇場でひとりニヤニヤしてしまった・・・。この漢字たちには。

後半は父チャーリー,息子マックス,そしてロボットのアトムの三者の心の絆というか根性に渾身で応援したくなる。素朴な外見とハートを持つ「人間のような動き」で敵に立ち向かうアトムが愛おしくなってきて。何度ノックアウトされてもマックスの声で立ち上がるアトム。そうそう,まさにダビデとゴリアテの闘いだ。終盤近くの感動はシンデレラマンの終盤に感じたそれに似てるかな。
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ヒュー・ジャックマンはカッコよくて,運動神経抜群でダンスもできて,身体を駆使する役柄も素晴らしいのだけど,今作の,身体はマッチョで強いけど精神面はいい加減でヘタレという情けないけど味のあるキャラもとても上手かった。前半には,まだまだ父親の自覚がなく,小学生の息子と対等に口げんかしたりしていた彼が,息子から「ダディ」と呼んでもらえるまでの道のり・・・そして心の中で父に期待し,父を慕ってきたマックスのラストの幸せいっぱいの笑顔。

いや~~,実に爽快で元気になる作品で一年がスタートできて嬉しい。

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