サンザシの樹の下で
チャン・イーモウ監督の描く文革時代の男女の「最も清潔な」純愛物語。DVDで鑑賞。文革時代に実際にあった悲恋をもとに書かれた同名小説が原作だそうで。
文化大革命の嵐が吹き荒れる1970年初頭の中国。
都会の高校から農村実習にやってきた少女ジンチュウは,滞在先の農家の家族と親しくしている青年スンと出会う。ジンチュウに恋をしていろいろと彼女の世話を焼くスン。次第に彼に惹かれていくジンチュウ。彼女が都会に帰ってからも,スンの彼女への誠実なアプローチや細やかな援助は続き,二人は密かにつきあうようになるが,反政府分子として迫害される両親を持つジンチュウにとって,男女交際は到底許されないことだった・・・・。
いやもうなんと言うか・・・・
この二人の恋愛の,一途さ,無垢さ,そしてレトロさ・・・あまりにも今の自分の住んでいる世界の恋愛観と違いすぎて,それがまた新鮮で清々しくて・・・すっかりやられてしまいました。まったくのノーメイク,つるんとしたゆで卵のようなお肌に目じりの下がったお雛様のような初々しい幼な顔のヒロイン・・・
演じるチョウ・ドンユイは18歳だが,どうかするとまだ中学生にも見えるあどけなさ。スタッフが中国中の芸術学校を探して見つけた少女だ。その頼りなげな華奢な風情を見ていると,彼女を心から愛おしむスンの想いも頷けてしまう。健気ではかなげで,彼女の抱えている背景の苛酷さもあって,そりゃ,守ってあげたくてたまらなくなるだろうなぁ・・・・。
そしてスンを演じるショーン・ドウもまた,日本じゃお目にかかれないような(失礼)爽やか健全青年で。この彼が,まるで兄のように父親のようにジンチョウを見守り,至れり尽くせりの滅私奉公をする様には,ほんとに感動した。そしてまた,尽くされるジンチョウの方も,恋愛のなんたるかも知らないくらいに初心なので,驕ることも調子に乗ることもなく,戸惑いながらもいつしか彼を心から頼り,愛するようになる姿にまた感動。(なぜいちいち感動するかというと,これら一連の純真さがとにかく新鮮なのである!)
恋愛の障害となるのが文革・・・・。え~~,なんで逢っちゃいけないの?噂が立つとそんなに命取りなの?彼女には?なんてカルチャーショックも感じながら,そしてまたキスさえもしないスンの,彼女を大切に思うゆえの自制心も,それを求めることも知らないジンチュウの初心さも・・・これもいちいち新鮮で感動。
「晴れて一緒になれる年になるまでいつまでも待つよ,逢えなくても」・・・と誓ったスンが難病に倒れたとき,「韓国ドラマみたいな展開だ」と一瞬思ったが,そこはやっぱりチャン・イーモウ監督。韓ドラのベタな雰囲気は微塵も感じさせず,最後の病室での別れのシーンは,こらえ切れずにもう涙,涙・・・・。天井に貼られていた二人の記念写真にまた涙。
ものすごく清々しく,切ないラブストーリー。
久々に心が洗われるような気持ちがした。
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