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2011年10月30日 (日)

八日目の蟬

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優しかったお母さんは
私を誘拐した人でした。

先に原作を読んでいた…やりきれないほどに重く哀しく,それなのに心を惹き付けられてやまない物語。母性を持っている私たち女性にとってこの作品は,やはり心深く訴えられるものがあるのかもしれない。

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不実な愛人の秋山との子供を堕胎したことが原因で,不妊となってしまったヒロインの野々宮希和子。同時期に夫の子を身籠っていた秋山の妻から,「子供を堕ろしたあんたなんか,空っぽのがらんどう」と侮辱された彼女は,秋山夫婦の赤ちゃんを一目見たさに留守宅に忍び込み,衝動的に赤ん坊を誘拐してしまう。希和子は子供に「薫」と名付け,自分の子供として育てながら4年間の逃避行を続けるのだけれど・・・・。

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愛人に捨てられ,その妻に罵倒され,不妊の哀しみを抱えて罪を犯した希和子・・・実の両親の「敵」とも言える人間を母と慕って4歳まで育てられたのちに唐突に両親のもとに返された恵理菜(薫)・・・・そしてこの世で一番憎い女に幼少期を育てられた我が子との関係構築に苦しむ秋山の妻…

それぞれの「抱えた」というか「与え合った」とも言える心の傷は,どれも癒されようもないくらい複雑で深い。特に希和子と成長した恵理菜の心情は,原作に詳しく綴られていて,どうしようもなくやるせない思いになる。

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逃亡劇のさなか,希和子が味わい続けた不安と願い・・・それは「一日でも多くこの子の母として生きられますように」というものだった。誘拐という彼女の犯した犯罪は,もちろん弁護の余地のないものであるのに,エンジェルホームや小豆島で「薫」の母として懸命に生きる彼女や,屈託なく彼女を慕う「薫」の姿を見ると,ついつい「このまま逃げ切って・・・」という気持ちが起こってくる。

別れを覚悟して島の写真館で親子の写真を撮るシーンや,フェリーでの希和子と薫の別れのシーンは,永作博美さんの名演のせいでもあるけれど,泣けて泣けて・・・・。
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誘拐犯の元から返ってきた我が子を迎える父母と,それまで母と思っていた人や慣れ親しんだ世界から突然引き離された子供が,新しく築く家庭の難しさ・・・・

特に誘拐犯が夫の愛人だったなんて,実の母親からすれば,どんなにか苦しかっただろうし,なかなか自分になつこうとしない我が子や「諸悪の元凶の」夫に,ヒステリックな怒りをぶつけたくもなるだろう。

家族の誰もがお互いにわだかまりを抱き,心から打ち解けることも甘えることもできなかったに違いない。元通りになるにはあまりにも深い痛手を希和子はこの家庭に与えたわけだけど,元はと言えばやはり愛人を作った夫が一番悪いのかもしれない。
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そんな家庭で少女期から育った恵理菜(井上真央)は,実の母の苦しみやいらだちに自分が責められているかのような思いを抱き,希和子への過去の慕情を,憎しみや無関心に変換して封印することで,自分を保つようになったのだろうか。

誰にも心を開かず誰にも真意を言わず・・・,そんな恵理菜が自分も妻子のある男性との子供を産もうと決心し「母」になるために過去とちゃんと向き合おうとするところから,少しずつ「再生」への光が差してくる・・・・。
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同じくエンジェルホームで育ったためにトラウマを抱えている千草(小池栄子=彼女の演技も素晴らしい!)と一緒に向かうホーム跡や小豆島。蘇る幼少期の思い出と,母と慕っていた希和子の顔や仕草の数々。原作には書かれてない島の写真館でのエピソードが感動的だった。封印していた心を解き放ち,両親や希和子への思いを素直に口に出せた恵理菜の姿に,かすかな救いや癒しの光を感じることができた。

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八日目の蟬…印象的なタイトルである。

仲間と一緒に七日目に死ぬことが叶わず,生き残ってしまった孤独な蟬。つまり,何らかの理由で,世間から逸脱してしまった哀しみを持つ存在。それでも,「八日目の蟬は,確かに哀しいけれど,他の蝉が見れなかったものが見れる,そしてそれは,そんなに悪いものではないかもしれない」という言葉に,トラウマや孤独の中でも,しっかりと生きていこうとする女性の強さのようなものを見たような気がした。哀しみや弱さを抱えつつも,やはり「生む」性ゆえのしなやかな強さなのだろうか。

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映画 や行」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
ここまで「女性」に寄り添った映画は
久しぶりに観た気がします。
人間の根底にある「性」というものを
真正面から見据えた
迫力ある作品だったと思います。

ななさん、こんにちは。
女性陣の演技が冴え渡った作品でしたね。
わたしも永作さんの演技に泣けて泣けて……。
あの写真館のシーンは原作になかったんですね。
ちょっとびっくりです。

小池栄子もあのキャラにぴったりの所作が素晴らしい。
そしてわたしは今まであまり良いと思ったことのなかった井上真央にやられてしまいました。
こんな演技もできる子なんだなあ…って。
みんな容姿がよくて演技もできるなんて凄いです(って女優さんに言う言葉じゃないか……笑)。

>哀しみや弱さを抱えつつも,やはり「生む」性ゆえのしなやかな強さなのだろうか。

良い表現ですね!
母性を強く感じた映画でした。

えいさん こんばんは

>ここまで「女性」に寄り添った映画は
>久しぶりに観た気がします。

原作者が女性というのもあるかもしれませんが
「母性神話」というか「母は強し」というか。
血のつながりがなくても「母」になれるし
「母」になるためにはトラウマをも克服しようとする
そんな女性の強さが感じられた物語でした。
その分,恵理菜の父とか愛人とか,男性が情けなく書かれていたかな。
あ,でもあの写真屋の親父さんはよかったな・・・。

リュカさん こんばんは

いやー,女優さんみなさん素晴らしかったですね。
永作さんはもちろんのこと,井上さんも小池さんも・・・
風吹ジュンさんもいい味でした。
実は美人の小池さんの,あの「猫背で早口,オドオドした仕草」は
千草のキャラにピッタリで驚きました。

>あの写真館のシーンは原作になかったんですね。
>ちょっとびっくりです。
映画ではあの写真屋さんの存在が大きな役目を果たしていましたね。
上手く作ったな~と感心しました。
原作も映画もそれぞれの持ち味があって素晴らしいですが
ラストは映画の方が好きです。
途中の切なさは原作の方がより詳しいですけどね。

女は辛いね・・・でも強いねって思わされました。
何があっても生きていかなくちゃ・・・愛していかなくちゃ、だって「母」だから・・・ってね。


こんにちはー^^

凄い映画でしたねー><。

希和子には最初同情出来ないって思っていたけど、見ている間にすっかり感情移入してました。
でも、被害者の母の気持ちも痛いほどわかるし(一番可愛いさかりを獲られちゃったんだもんね><。)

一番の被害者は恵理菜なんだよね。
強く生きていって欲しいって思いました。

みすずさん こんばんは

女性陣はみんな誰が悪いってわけでもなくて・・・と
切ない気持ちになる物語でした。
一番悪いのは,やっぱり恵理菜の父親なんでしょうね。

>被害者の母の気持ちも痛いほどわかるし(一番可愛いさかりを獲られちゃったんだもんね><。)
やっと取り戻せた我が子が,憎い愛人を母と慕う思い出を持っていたら
それはどんなにか屈辱的な苦しみでもあっただろうかと
そんな点でもあのお母さんも可哀そうですよね。

そう,一番の被害者は恵理菜なんでしょう。
自分のトラウマやルーツから逃げないで,強く生きていってほしいよね。

ななさん、こんにちは!
そうそう、脇役で出演している女優さん、吹雪さんも、なんとかミカコさん(痩せて目のぎょろっとして口の大きいモデル出身の)も、ぴったりでした。

私は角田光代さんのファンなのですが、もしかしたら彼女の小説で一番好きというか、凄い作品だと思っているのが、八日目の蝉かもしれません。対岸の彼女も好きですが。

latifaさん こんばんは

そうそう,風吹ジュンさんも優しくて素朴な役で
とてもよかったですね。
女性陣が魅力的な作品でした。

角田光代さんの本,私はこの作品をきっかけに
何冊か読んでみました。
「森に眠る魚」とか面白かったですが
やっぱりこの「八日目の蟬」が私も一番好きだなぁ。

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