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2011年10月17日 (月)

再会の食卓


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設定も舞台もまったく違うのに,なぜかテニスン作のイノック・アーデンを少し思い出した・・・何年かぶりに夫が帰郷を果たしてみたら,妻は他の男性と幸せな家庭を築いていた,というところが被ったのか?戦争で台湾に渡った夫と生き別れ,上海で新しい夫や家族と平穏に暮らしていた妻の元に,40年以上の時を経て、元夫が帰ってくる物語。中国の歴史には疎いけれど,こんな風に長い年月,中国と台湾に引き裂かれた夫婦や家族がいたんだ,とまず驚いた。

祖国を捨てて台湾人となった国民党兵士たちの望郷の念と,台湾で築いた新たな生活や絆の数々・・・祖国の地を踏んだ時の感慨はどんなものだったのだろう・・・そしてこの物語のように,残してきた家族が妻子であって,今は新しい夫と幸せに暮らしていたとしたら?帰郷した元夫の気持ち,妻の気持ち,そして現夫や子供たちの気持ち・・・そのどれもが私にはちょっと想像がつかないまま物語がスタートした。

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生き別れた夫の燕生(イェンション)と,上海で慎ましく新家庭を営んでいた妻の玉娥(ユィアー)と現在の夫の善民(シャンミン)。長男の建国(ジュングオ)は生き別れたときに玉娥のお腹に宿っていた燕生の息子である。

そのほかに現夫との二人の娘とその婿,孫娘・・・・登場人物の誰もが,燕生の帰郷に関して一方ならぬ複雑な思いを抱えつつも,最初の顔合わせの食卓では一応和やかに歓迎の意を表する。

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「台湾の妻が死んだからお母さんを思い出して帰ってきたんでしょ?今更なによ・・・」と警戒する現夫との娘たちと,「あの人と自分は何の関係もない」と実の父を頑なに黙殺する長男。「償いとしてお金を」という娘婿。唯一飄々とした中立の立場を取ることのできるドライな孫娘。

そして,新婚の一年間しか一緒に過ごしていないにも関わらず,心の中では何十年も元夫だけを深く愛し続けていた玉娥と,その妻を台湾に連れ帰りたいという願いを持っている燕生。
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観ていて一番気になった現在の夫,善民の気持ち。
この現夫がまた,「善民」という名前がまことにぴったりな,人の好さと素朴さを絵に描いたような顔立ちで,真心こめて妻の元夫をもてなす様子に,,「無理してない?」とついその表情の裏を探ろうとしてしまった。

「玉娥を台湾に連れ帰らせてくれ,彼女も同意している」と燕生から打ち明けられた時も,彼は少しも異を唱えることなく快く承諾した。家族会議で娘たちから非難と反対を受けたときも「母さんの好きにさせてやれ,母さんは苦労してきたから幸せになってほしい」という善民があまりにもいい人過ぎて,その不自然なまでの上機嫌ぶりも,やっぱり「無理してるんだろうな・・・この人」としか見えなくて切ない。
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離婚するために一張羅で役場に赴いた善民と玉娥。しかし事実婚だった二人は,離婚するにはまず結婚した証拠の結婚証明書がなくては無理,と言われ、夫婦はその足で結婚写真をとりに行く羽目に。すぐに離婚する事情を知らない写真屋から「熟年結婚ですか?もっと笑って寄り添って」と要求された善民が,ぎこちなく笑顔を作る場面はほろ苦い可笑しさがあった。

元国民党員の妻をめとったために出世からも外され,血の繋がらない健国を我が子同様に育ててきた善民の真意。何十年も連れ添った妻から,「感謝はしてるけど愛はない」と言われるのは,実はどんなにかやりきれなかったと思う。妻への愛と本来の人のよさ…それにいまさら,我慢強い善人役をやめるわけにもいかないし…という思いが善民にはあったのだろうか。
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しかし,やはりいつまでも無理はできないもので,祝いの席で酒を過ごして饒舌になった善民は,「自分は貧乏くじの人生」と本音を漏らし,客と喧嘩して軽い脳梗塞で倒れてしまう。善民の本音を聞いたことと,彼が体を壊してしまったことがきっかけになって,燕生は玉娥を台湾に連れ帰ることを諦める。

あちらを立てればこちらが立たず…というやるせなさ。関係者がみな悪人ではないため,そしてそれぞれが,それまで十分苦労してきているため,誰に肩入れすることもできなくて。やはり家族を引き裂いた戦争を恨むしかないのだろうか…。

それでも、私は誰か一人選べと言われれば,やはり,何十年も連れ添った妻に去られそうになった善民に一番肩入れしたくなると思う。彼が燕生を歓待し,去ろうとする妻を引き留めたり,恩を売ったりしなかったから,余計に不憫で。

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しかし,燕生が単身で台湾に戻る日,埠頭で名残を惜しむ玉娥の涙と,「もう二度と会えないかも・・・。」「体には気をつけて長生きするんだよ。」と互いに言い交わす台詞には,やはり胸が詰まった。この元夫婦にも,言葉に表せないほどの未練や辛い想いがあったにちがいない。残された歳月はもう長くない,晩年くらいは愛する人と暮らしたいと願う玉娥の気持ちも痛いほどよくわかる。それでも善民や娘たちを残して去れば,それはそれで彼女は自責の念に責められたのではないだろうか。「早くお帰り。」と振り向きながら手を振って船に向かって歩き出す燕生とそんな彼をじっと見送る玉娥の表情が切ない。

考えてみれば,非常に重い話なのに,淡々とした語り口と,最後まで三人の間では修羅場も責め合いもなかったせいか,観賞後の後味は優しかった。歴史に翻弄された中国の人々の,それゆえの忍耐強さや芯の強さをも改めて感じた作品だ。

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コメント

こんばんは♪
今、ななさんがアップされた写真を拝見して、
脳裏にストーリーがよみがえってきました。
遠来の客をもてなす、という善民の気持ちが、
観ているこちらにも温かく伝わってきました。
おっしゃるように、やはり私も善民に肩入れして
しまいます。
あれほどできた人はいないでしょ!と何度つぶやいたことか。(笑)
善民は愛する妻の元夫がどんな人物なのか、
ずっと興味を持ち続けてきたことでしょう。
会ってみたら、思っていた以上にいい奴だった、ということかも。
周囲の反応も興味深かったです。
>歴史に翻弄された中国の人々の,それゆえの忍耐強さや芯の強さ
三者それぞれからそれが伝わってきましたが、
やはり一番苦労しているのは善民かな、と
ここでも肩入れしてしまいます。

こんにちは!
きっと感動するんだろうなあ。涙でぐちゃぐちゃになるのかも・・・などという勝手な思いで臨んだもんで、あまりに淡々としたつくりに、ギャップを感じたのを思い出しました。
笑うに笑えないコメディのような題材を、逆にシニカルに笑ったのかもしれませんが、見たいほうの気持ちと、見せるほうの思いがちょっと違ったかなって。
でも、こういうことがあったんだ!ということを改めて知った面もあって、まだまだ勉強不足っす。

孔雀の森さん こんばんは!

やっぱり善民に肩入れしてしまいますよねぇ。
>あれほどできた人はいないでしょ!と何度つぶやいたことか。(笑)
そうそう・・・多少無理をしてたにしても
それでも演技でもできるものじゃないです,あんないい人ぶり。
それでも奥さんが結局去らないという決断をしたとき
彼はやっぱり嬉しかったでしょうね。
本音はとても安堵したんじゃないかしら。
中国の俳優さんには、この善民さん役の方のような
「素朴な優しさ」がにじみ出ているような風貌の方がけっこういらっしゃいますよね。

燕生も善民も玉娥も,大変な時代を生き抜いてきたからこその
温かさや忍耐強さが感じられたけれど,それとは対照的に
親世代ほどの苦労をしてないせいなのか
彼らの子供世代のドライぶりにも考えらせられましたわ。


sakuraiさん こんばんは

>あまりに淡々としたつくりに、ギャップを感じたのを思い出しました。

そうですね~,私もそれは感じました。
重いお話なのにところどころにユーモアも盛り込まれてて
「笑うに笑えない・・・のだけど」と思いつつ
あの写真撮影の場面はやはりクスッと笑ってしまいました。
中国と台湾の歴史は多少は知っていても
生き別れの家族の悲劇なんかは
この作品を観なければ全く知らなかっただろうなぁ・・・

ななさん、こんにちは!
>テニスン作のイノック・アーデン
これ、知らなかったです。
こういうストーリーに興味があるので、是非後で検索してみます!

いやぁ~ ななさんの感想、全く私と同じ風に思って見られたんだなあ・・・って、またまたこの映画の事感慨深く、思い出しています。

そーなんですよね、無理してない?絶対無理してるよね、、って思いつつ見てて、ぶちまけて、倒れ~の展開。
良かったな・・と思ったところに、波止場の別れで、元旦那とお婆さんの2人を見て、アウアウ!!(T_T)と切なくなり・・・。

はぁ~~~。あまり世間でそれほど評判良くない感じですが、私は、とっても色々考えさせられる良い映画でした。

latifaさん こんばんは!

テニスンのイノック・アーデンは私も小学校の時に
子供向けに書き直された簡単なものを読んだだけなのですが
たしか船乗りのイノックが新婚の奥さんを置いて遭難してしまい(無人島?)
10年後くらいに帰ってきたときは,死んだと思われてて
奥さんは新しい旦那さんと子供もできて幸せに暮らしていて
名乗り出ようと思ったイノックは奥さんの幸せそうな様子を見て
そのまま黙って去る・・・というお話でした。
小学生だったのに強烈に覚えているストーリーで
「誰も悪くないのに不幸が起こる」ということはあるんだなあ・・・と。
悲運…という言葉を初めて知ったかな。そのときに。

現夫の押さえた気持ちが一番気になったけど
元夫との二度目の別れも切なくて・・・
ほんとうに「誰も悪くないのにね」と目頭が熱くなりました。
誰も悪くないからこそ,余計に辛いってこともあるのよねぇ・・・。
いろいろ引きずってしまいましたわ。

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