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2011年1月16日 (日)

最後の忠臣蔵

Chushingura500
今年初めての劇場鑑賞作品がこれ。
硬派の作品かと思っていたら,途中には切ないロマンチックな味わいもあり,しかし最後はやはり重厚にまとめていて,なかなかに見ごたえのある作品だった。これを昨年度のランキングに入れてらっしゃる男性ブロガーさんが多かったのも頷ける。

ネタばれ記事ですので
 未見の方はご注意ください

誰もが知ってる赤穂浪士の,討ち入りの後日談のお話。大石内蔵助から重い使命を背負わされたがゆえに,仲間と一緒に散る道を選択することが許されずに生き残らざるを得なかった二人の浪士,寺坂吉右衛門(佐藤浩市)と瀬尾孫左衛門(役所広司)。
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寺坂吉右衛門の使命は,「討ち入りの生き証人として事実を後世に伝え,かつ浪士の遺族たちの生活を助ける」,というもの。そして瀬尾孫左衛門の使命は,「討ち入り前に出奔したと見せかけ,実は内蔵助の隠し子を密かに守り育てる」,というずっと苛酷なものだった。

討入りから16年間,それぞれの使命を果たすためだけに身を捧げてきた二人。吉右衛門は全国を旅して赤穂浪士の遺族を訪ね,遂に最後の一人に援助の金子を渡して使命を果たす。一方,素性を偽って生きてきた孫左衛門は,内蔵助の忘れ形見である可音(桜庭ななみ)を美しく気品のある娘に育て上げる。

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名誉の死を許されなかった二人の浪士,特に孫左衛門の方は,その使命を誰にも明かすことすらできず,「討ち入りから逃げ出した卑怯者」という汚名にも甘んじなければならなかった。

死んでいった浪士よりも生き残った者の方が苛酷・・・・そんなセリフを劇中で吉右衛門が口にするが,確かにこのような使命に身を捧げるには,すごく強靭でストイックな精神力を要すると思う。しかしこの大和の国には,忠誠心と信義のために徹底的に己を犠牲にできる,という並々ならぬ精神力を持った「武士たるもの」が生きていた時代が確かにあったのだねぇ・・・・。

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そしてそんな男たちのストイックな生き様と対照的に描かれている,女たちの心情。孫左衛門を助けて可音の教育に尽力した,花魁上がりのゆう(安田成美)が,「男はんは,使命とか面子とかに命を賭けはるけれど,女は男はんを好きになるのが人生のすべてどす」みたいな?意味のセリフを言うが,男女の価値観の違い(あの時代の)を言い得て妙だなと。

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成長するにつれて,保護者の孫左衛門を慕う気持ちに,恋心が芽生えてくる可音。そして孫左衛門の方もまた,「可音を無事に豪商に嫁がせる」という使命の最終段階を前にしながら,心が揺れる。

当時流行ったという人形浄瑠璃の「曽根崎心中」の舞台が劇中に何度も挿入されるので,「これはふたりの禁断の心中物語へと進むのか?」と期待?してしまった。

いやいやいや,それをしたら身もふたもないだろう,何のためにこれまで使命を守り通してきたんだ,と感じつつも,やはり私も「男はんへの愛を生きるよすが」とする♀の性なので,ラスト近く,やっぱり孫左衛門が立派に使命を果たし終えて,可音を祝言へ送り出したときは,・・・・なんだ心中しないのか・・・と不謹慎な思いを抱いてしまった。
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その点だけは,作者の意図に反して勝手に落胆した私だが(私と同じ感じを受けた女性観客って案外いたかも),やはり最後は哀しくても,ああでなくちゃいけなかったんだろうなぁ・・・・忠臣蔵だもんなぁ。武士だもんなぁ・・・(ぶつぶつ)

武士としての強さと人間としての弱さや優しさ・・・それらをすべて体現してみせた役所さんの細やかな目の表情の演技が秀逸。特に息絶える前に,幼いころからの可音の姿を思って慈愛に満ちた微笑みを浮かべる彼の表情が素晴らしかった。

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コメント

ななさんこんばんは

ななさんも感動できて良かったですね。
最後の切腹は、男性の僕もちょっと納得出来ませんでしたよ。僕なら、ゆう(安田成美)と幸せになる道を間違いなく選びますね。
まあ、それじゃ軽い映画になっちゃうので仕方ないのでしょうか・・・。軽くとも幸せが好きです(笑)

ななさん、こんにちは!

確かに男のロマンチックさというのが表れていたかもしれませんね。
心に密かに女性への想いを秘めながらも、義に殉じるというのはロマンそのものでもあります。
なかなかそう己の信義に忠実に生きる勇気はもてないなか、このような生き様に男はロマンを感じるのかもしれません。

こんばんは。

いやあ、さすがに
あのふたりが心中とは考えませんでした。
これは男、女の違いというより、
心中というのが嫌いだからでしょうね。

映画の『曽根崎心中』(傑作!)を見たとき、
とにかく、心中が怖かったです。

ななさん、こんにちは!
>人形浄瑠璃の「曽根崎心中」の舞台が劇中に何度も挿入されるので,「これはふたりの禁断の心中物語へと進むのか?」と期待?してしまった。

ですよね~^^
私も、曽根崎心中が何度も入るってことは、何かそれと関連が大な展開なんだろうな、って思ったのに、え???なんか違うよね? あまり何度も入れるほどには関係無いのでは?って思った一人よ。

多くの方が、この作品を絶賛されているものの、私はそこまでには感動出来なかったんですよ・・。
でも面白くないってわけじゃなくて、面白くは見たんですけれど・・・ごちゃごちゃ言ってスイマセン!

「曽根崎心中」を使うことに対しては
様々な意見があがっているようですね。
個人的な印象としては、直接つながりはしないけれど、
他の選択肢を許さない不器用な生き方というあたりに
共通項を見出せるのかなと思っています。

一般的に理解されづらい思考回路であり、
でもかつての日本人の強さの一つでもあったものだと思います。
現世であの生き方は無理にしても、
もう少し覚悟が欲しいところですね。

ケントさん こんばんは!

そうですか~,ケントさんは
孫左衛門とゆうさんを
ハッピーエンドにしてあげたかったのね~
わかりますよ~それも。
今まで苦労ばっかりだったから
余生はそれくらいの潤いがあってもいいよね・・・
ゆうの気持ちも切なかったですし。

>軽くとも幸せが好きです(笑)
そうですね。私も同感です。


はらやんさん こんばんは!

>心に密かに女性への想いを秘めながらも、
>義に殉じるというのはロマンそのものでもあります。
いやぁ,そういう的確な文にしていただけると
ましてや男性の方に表現していただけると
よーーくわかります,男のロマン。
確かにすごーく難しいことかもしれませんが
同時にとてもカッコよくって憧れる気持ちになりますね。
女のロマン・・・はちょっと方向が違いますが。

えいさん こんばんは!

そっか~,えいさんは心中そのものが
苦手でいらっしゃるのですね。
いや私も得意ではありませんが
女性は男性より
そういう時に腹がくくれる人が多いかも。

>映画の『曽根崎心中』(傑作!)を見たとき、
>とにかく、心中が怖かったです。
ほぉ,それはすごくリアルな心中ものだったのですね。
私が今まで観た心中映画って
「失楽園」・・・とか。
あれは美化しすぎで??でした。

latifaさん こんばんは!

曽根崎心中のシーンの挿入・・・
確かに思わせぶりすぎて
それもまた可音の心情描写っぽくて
ついつい期待・・・いや,予想してしまいましたよね。
心中しないから不満っていうのではないのだけど
後半急にバタバタと違う方向(実はそっちが本道)に
急展開された気がして
気持ちが切り替えられませんでした。
でも丁寧な作りと映像,そして役者さんの見事な演技と
感動するツボも結構あった作品ではあったです~。

クラムさん こんばんは!

>他の選択肢を許さない不器用な生き方というあたりに
>共通項を見出せるのかなと思っています。
ああ,そうですね!確かに・・・
そういう意図で象徴的に心中場面を入れたのかもしれません。
主人公の切腹場面とはつながりますよね。

>現世であの生き方は無理にしても、
>もう少し覚悟が欲しいところですね。
こういう作品を観ると
自分も含めて日本人もずいぶん精神力が弱ってきたなぁと感じます。
政界なんか見ると特に情けないですね・・・。

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