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2011年1月の記事

2011年1月24日 (月)

モーリス

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以前に,DVD化,もしくは再版してほしい作品という記事の中で取り上げたこの作品,先頃,手の届く価格でHDニューマスター判が再版されて,ようやく念願の購入を果たした。二十世紀初頭の,伝統と階級に縛られた英国で,自らのセクシャリティーに苦悩する,上流階級の若者たちの物語。

いや~,もう10年ぶりくらいですね,これ観たの。
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ハマっていたころは,なんというか,ヒュー・グラントをはじめとする英国美青年たちの美しさと,舞台となるケンブリッジ大学やマナーハウスの醸し出す,格調高くスノッブな雰囲気にひたすら酔っていた記憶が・・・・。でも観返してみると,なかなかに深いヒューマンドラマで,主人公たちが己のセクシャリティーに苦悩するさまからは,花蓮の夏の切なさもまた思い出したりして。

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原作者のE・M・フォースターもまたケンブリッジ大学出身で,彼の小説は,「階級を越えて理解し合おうとする人物たち」を描いたヒューマニックなものが多く,また彼自身も同性愛者であったため,セクシャリティーも重要なテーマとなっている。

同性愛者は逮捕され,投獄された時代の英国。それは同時に,「階級制度」が強固に人々を支配していた時代でもあった。

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上流階級の子弟のモーリス(ジェームズ・ウィルビー)とクライヴ(ヒュー・グラント)は,ケンブリッジ大学の学生寮で出会い,互いに惹かれ合うようになり,社会に出てからも世間や家族には親友と偽ってプラトニックな恋人同士の絆を保ち続ける。

しかし弁護士を志し,着実に上流階級の花道を歩んでいたクライヴは,同窓生のリズリー子爵が,同性愛者として社会的制裁を受けるのを目の当たりにして怖じ気づき,モーリスとの関係を終わらせようと決断,平凡な女性と結婚し政治家になる道を選ぶ。

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一方,クライヴから一方的に別れを告げられたモーリスは悩み苦しみ,自分の性癖は病気ではないかと医師の催眠治療を受け,ボクシングに打ち込んで苦悩を紛らわせる。その後,クライブの屋敷の狩猟番の青年スカダー(ルパート・グレイブス)に性癖を見抜かれたモーリスは,彼と関係を持ち,タブーも階級をも越えてスカダーと共に生きる決心をする。
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当時の社会からは受け入れられないセクシャリティーを,共に抱えていたモーリスとクライヴ。愛し合いながらも,彼らがそれぞれに選択した道は正反対のものだった。

片方は世間と妥協し地位や名誉を守る道を選択し,
もう一方はすべてを捨てて「本来の自分らしく」生きる道を選択する。

クライヴが保身の道を選んだ,というか「選べた」のは,彼が女性との性生活も可能なバイセクシャルだったからかもしれない。それに彼の方が,モーリスよりも社会的地位も高く,失うものが多かったせいもあって,保身の道を選ばざるを得なかったのだろう。

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一方,労働者階級の恋人と同性愛を貫く決心をしたモーリスは,世間から見たら敗者かもしれない。しかし,鑑賞後はなぜか,モーリスではなく成功者としての人生を歩んだクライヴの方に同情したくなった。

ラストシーン,別れを告げて庭園の夜の闇の中に消えていったモーリスを思うクライヴに,妻は「誰と話してるの?」と言葉をかける。その時のクライブの複雑な表情・・・そこに込められた,ケンブリッジ時代を懐かしみ,自分は選び取らなかったものに憧れるかのような寂しげなまなざしが切ない。

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今ではすっかり,ラブコメキングの異名を取って久しいヒュー・グラントが,この作品では正統派美青年として輝くばかりに美しい魅力を放っている。(私はこれで彼のファンになったっけ)

2011年1月16日 (日)

最後の忠臣蔵

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今年初めての劇場鑑賞作品がこれ。
硬派の作品かと思っていたら,途中には切ないロマンチックな味わいもあり,しかし最後はやはり重厚にまとめていて,なかなかに見ごたえのある作品だった。これを昨年度のランキングに入れてらっしゃる男性ブロガーさんが多かったのも頷ける。

ネタばれ記事ですので
 未見の方はご注意ください

誰もが知ってる赤穂浪士の,討ち入りの後日談のお話。大石内蔵助から重い使命を背負わされたがゆえに,仲間と一緒に散る道を選択することが許されずに生き残らざるを得なかった二人の浪士,寺坂吉右衛門(佐藤浩市)と瀬尾孫左衛門(役所広司)。
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寺坂吉右衛門の使命は,「討ち入りの生き証人として事実を後世に伝え,かつ浪士の遺族たちの生活を助ける」,というもの。そして瀬尾孫左衛門の使命は,「討ち入り前に出奔したと見せかけ,実は内蔵助の隠し子を密かに守り育てる」,というずっと苛酷なものだった。

討入りから16年間,それぞれの使命を果たすためだけに身を捧げてきた二人。吉右衛門は全国を旅して赤穂浪士の遺族を訪ね,遂に最後の一人に援助の金子を渡して使命を果たす。一方,素性を偽って生きてきた孫左衛門は,内蔵助の忘れ形見である可音(桜庭ななみ)を美しく気品のある娘に育て上げる。

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名誉の死を許されなかった二人の浪士,特に孫左衛門の方は,その使命を誰にも明かすことすらできず,「討ち入りから逃げ出した卑怯者」という汚名にも甘んじなければならなかった。

死んでいった浪士よりも生き残った者の方が苛酷・・・・そんなセリフを劇中で吉右衛門が口にするが,確かにこのような使命に身を捧げるには,すごく強靭でストイックな精神力を要すると思う。しかしこの大和の国には,忠誠心と信義のために徹底的に己を犠牲にできる,という並々ならぬ精神力を持った「武士たるもの」が生きていた時代が確かにあったのだねぇ・・・・。

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そしてそんな男たちのストイックな生き様と対照的に描かれている,女たちの心情。孫左衛門を助けて可音の教育に尽力した,花魁上がりのゆう(安田成美)が,「男はんは,使命とか面子とかに命を賭けはるけれど,女は男はんを好きになるのが人生のすべてどす」みたいな?意味のセリフを言うが,男女の価値観の違い(あの時代の)を言い得て妙だなと。

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成長するにつれて,保護者の孫左衛門を慕う気持ちに,恋心が芽生えてくる可音。そして孫左衛門の方もまた,「可音を無事に豪商に嫁がせる」という使命の最終段階を前にしながら,心が揺れる。

当時流行ったという人形浄瑠璃の「曽根崎心中」の舞台が劇中に何度も挿入されるので,「これはふたりの禁断の心中物語へと進むのか?」と期待?してしまった。

いやいやいや,それをしたら身もふたもないだろう,何のためにこれまで使命を守り通してきたんだ,と感じつつも,やはり私も「男はんへの愛を生きるよすが」とする♀の性なので,ラスト近く,やっぱり孫左衛門が立派に使命を果たし終えて,可音を祝言へ送り出したときは,・・・・なんだ心中しないのか・・・と不謹慎な思いを抱いてしまった。
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その点だけは,作者の意図に反して勝手に落胆した私だが(私と同じ感じを受けた女性観客って案外いたかも),やはり最後は哀しくても,ああでなくちゃいけなかったんだろうなぁ・・・・忠臣蔵だもんなぁ。武士だもんなぁ・・・(ぶつぶつ)

武士としての強さと人間としての弱さや優しさ・・・それらをすべて体現してみせた役所さんの細やかな目の表情の演技が秀逸。特に息絶える前に,幼いころからの可音の姿を思って慈愛に満ちた微笑みを浮かべる彼の表情が素晴らしかった。

2011年1月 9日 (日)

小さな村の小さなダンサー

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実は昨年のクリスマスに隣県のミニシアターで鑑賞していた作品。記事のアップが今頃になってしまった・・・。文化大革命の時代にアメリカに亡命し活躍したバレエダンサー,リー・ツンシンの実話の映画化である。

邦題から勝手にリトルダンサーの中国版っぽい話かしら,と想像していたのだけど,主人公の少年時代のシーンはそんなに多くなく,むしろ青年期になってからの場面が中心だったのにはちょっと面食らった。「小さな村出身のダンサー」という邦題の方が正しいかも。しかし,主人公の波乱万丈の人生そのものが,実話の重みも手伝って面白く,ラストの両親との再会シーンや,長年の夢だった帰郷のシーンでは胸がいっぱいに。
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主人公のリーを演じるのは,子役も含めて三人。

山東省の貧しい村で視察団に見初められ,北京でバレエの英才教育を受けることになる少年時代,厳しい稽古に耐え,挫折を体験しつつも,徐々に頭角を現してくる青年時代,そしてアメリカのバレエ団に招かれて渡米してからの成人の時代・・・・三人とももちろん,ダンスシーンは見事で,これは役者ではなくほんもののダンサーが演じているなぁと感じたが,やっぱり三人ともプロの役者ではなく,お芝居は初めてというから驚き。(お芝居も上手かったので)

少年時代を演じたホァン・ウェンビン君は北京の体育学校出身だそうで。その身体能力の高さを買われて今回の役に抜擢。利発そうな眼差しが印象的な少年だ。
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青年時代のリーを演じたグオ・チャンウは将来を嘱望されているオーストラリア・バレエ団のメンバーの一人。2006年のローザンヌ国際バレエコンクールで賞を獲得した実績を持つ。いや,この人の筋肉の綺麗なことといったらもう・・・。
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そして成人してからのリーを演じたツァオ・チーは,英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパル。今回見事な映画デビューを果たしたが,演技力もなかなかのもの。お顔は,ちょっと一昔前の子供向けアクション・ヒーロー(ウルトラマンとか)系の「古臭い男前」である。この人自身,古典バレエを得意とするらしいが,劇中でも披露される「白鳥の湖」などでの華麗なダンスシーンは圧巻である。

ツァオやグオのダンスシーンを堪能するだけでも,バレエ好きな人にはたまらない作品だと思う。また,文革の嵐に翻弄された時代に,自由な表現を求めて,また愛する女性との人生を選択して亡命を決意した主人公の内面の葛藤や故国の家族を思う気持ち,同じく,異国で活躍する我が子を想い続ける親の気持ちにも心を打たれる。
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愛情深く芯の強いリーの母親役を,ラスト・コーションでトニーの妻を演じたジョアン・チェンが演じ,リーの亡命のために尽力するフォスター弁護士を,ヒドゥンカイル・マクラクラン(懐かしい!)が演じていた。

傑作というのとは違うかもしれないが,私はこれ大好きな作品。2010年度のベストテンにも滑り込みセーフで入れさせてもらった。何より「実話」というのがよかったのかも。それに男前の華麗なダンスにも弱いので・・・・。

2011年1月 1日 (土)

あけましておめでとうございます

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本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

正月寒波のせいで,四国は今年は雪のお正月です。おかげで元旦のお出かけ予定は取りやめに・・・・。それでも南国育ちの性ゆえか,雪が降ると物珍しさから,心はなぜかはしゃいでしまう私です。
さて,過ぎ去った2010年は,私にとって,いろいろと変化の多い年で,平常心でいることが少なかったように思います。そのせいで時には放置気味になっていた拙ブログにも,昨年も皆様からたくさんのコメントをいただき,ありがとうございました。2011年は,一日一日を大切に,平穏に過ごしていけたらなぁと,そんな無欲無心な年にしたいです。

今年一年,皆様にとっても
幸多い年となりますように。

おしまいに,我が家のおせち料理の画像と,今年も相変わらず飼い主と不毛なバトルを繰り広げている猫の画像を・・・・。

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喉元に攻撃をしかける飼い主の手に爪をたてつつ,目はしっかりカメラ目線のななちゃんでした・・・。

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