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2010年12月 4日 (土)

息もできない

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二人の時だけ,泣けた・・・。

漢江、その岸辺。引き寄せあう二人の魂に涙が堪えきれない。偶然の出会い、それは最低最悪の出会い。でも、そこから運命が動きはじめた…。(公式サイトの作品解説より)

ラブストーリーの分野でも,クライムサスペンスやヒューマンドラマの分野でも,「そこまで描くか?」と呆れるくらい,軽々と「一線を越え」てみせる韓国映画に,また一つ傑作が誕生していた。韓国って,高度な演技力を持つ俳優や,実力派で個性的な監督が無尽蔵な国なんだなぁと,改めて感嘆した。
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少年時に父の暴力によって母と妹を失い,自らも高利貸しの取り立て屋となって,日々暴力に明け暮れるサンフン。彼は暴力と口汚い言葉でしか,他者とコミュニケーションを取れない人間で,心の奥底には常に父親への激しい憎しみや,母や妹を守れなかった自分への怒りや哀しみを抱えている。

サンフンが出会った高校生のヨニ。彼女もまた,母親の死によって家庭が崩壊し,妄想と暴力に取りつかれた父親と,同じく暴力の連鎖に逆らえない兄に苦しめられながらも,一人気丈に振る舞っている少女である。
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陰惨な家庭内暴力と,それでもなお
断ち切れない家族のしがらみ。

同じような傷を持つ二人は無意識に共鳴し,相手を「チンピラ」「クソアマ」と呼びつつも親しくなっていくが,互いの傷を見せ合うことはしない。気安く口にできないくらい,それぞれの傷は深い。サンフンがなぜチンピラになったのか,なぜ人を殴るのか,その背景を彼は語らないし,ヨニはヨニで,自分を両親の揃った幸せな家の娘だとサンフンに思わせている。

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どんなときも無表情のサンフンが,たった一度だけヨニに見せた笑顔と涙。たった一度だけ,というのがかえって鮮烈だ。特に,二人ともがそれぞれの理由でとても辛かったあの晩に,漢江の岸辺で理由も言わずに二人で泣いたあのシーン

泣く理由など説明しあう必要はなかった。抱えている傷が我慢できないくらい痛む,という共通点だけで十分だったんだろう。同類であるがゆえに,彼らは二人でなら泣くことができたのだ。 

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そのことをきっかけに,サンフンの凍てついた心にも少しずつ変化が見えるようになる。憎んでも憎み足りないと思っていた父親への情・・・甥をいとおしむ思い・・・・暴力に明け暮れる生活から足を洗う決心・・・

しかし,やはり物語は容赦なく悲劇へと向かう。
「暴力の連鎖」という現実からは最後まで逃げられないのだ。サンフンの心が,少しでも希望の光を見出していた,ということだけが救いなのかもしれない。

全編にわたってリアルかつ執拗な暴力シーンの連続。
役者たちの自然な演技は,フィクションであることを忘れるほどの臨場感を醸し出す。製作,監督,脚本,編集,そして主演と5役をつとめたヤン・イクチュンは,この映画製作のために家を売り払うほどの熱意をもって「自分の抱えている問題をすべてを吐き出したかった」そうだ。そのねらい通り,彼のメッセージや情熱が痛いくらいパワフルにそしてダイレクトに伝わってくる快作だ。

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コメント

ななさん、こんばんは。お邪魔するのが遅れてすいません
自分はあちらの自主制作ものはこれが初めての鑑賞です。そのせいか効果や技術よりも、人や暴力のみずみずしさ、生々しさなどが印象に残りました
漢江のシーンもよかったですね。ただ漢江というとつい「グエムルが出てきたりして・・・」などとぶちこわしなことを思い出してしまうワタシ(^^;

ちなみに今日やはり韓国の『国家代表!?』という映画見てきました。いやー、これベタベタながらもよかったです。そしてこちらでも例の「シ○ラマー!」という品の良い言葉が連発されてました

SGAさん こんばんは

お忙しいみたいですね。
年末でもあることですし,お互い上手に時間をやりくりしながら
仕事と趣味に明け暮れましょうね。

>ただ漢江というとつい「グエムルが出てきたりして・・・」
あ!私も・・・
同じことを考えてしまいましたよ。
漢江=グエムルでインプットされてるもんだからつい・・・

>例の「シ○ラマー!」という品の良い言葉
私もこの作品ですっかり覚えてしまいました。
「シ○ラマ!」「サラゲヨ」と同じくらいインパクトありますね。


ななさん、こんにちは!
私ね、見る前は、あの主役のおにーさんが、監督・脚本も手がけてるって知らなかったの。それだけに、解った時の衝撃たるや・・・。

あの2人のシーンは、切なかったよねぇ~、見てる私ももらい泣きよー^^
レオス・カラックス「ポンヌフの 恋人」を、ちょっと思い出したな・・・。細かい処は忘れちゃっているけれど、どこか似た処を感じたのね。川沿いだったし。

次回作、凄く楽しみだな。
また作って欲しいよね♪

latifaさん,こんばんは!

そっか~,予備知識なしに見たら
主演の彼ってとても監督さんには見えないよね。
それに新人だのに製作も脚本も監督も主演も
みんなやってしまえるなんて驚きだよね!
韓国ってこんな才能のある「映画人」まだまだ
たくさんいるような気がする・・・

「ポン・ヌフの恋人」!なつかしい。
>細かい処は忘れちゃっているけれど、どこか似た処を感じたのね。
ジュリエット・ビノシュだったかな?ヒロイン。
ずいぶん昔に観たから私も忘れてるけど
惨めさと切なさが似た雰囲気があるわね~。

こんばんは!
これ重かったけど・・・めっちゃよかったですー
今年もまた凄すぎる韓国映画に出会ってしまった、って感じ。
そろそろベストを決める時期ですが、たぶん入ります。

私も主演の彼が監督脚本そのほかもろもろ全部自分でやってるって知らなくて、
観たあと知って混乱してしまいました。
だってサンフンはサンフンにしか見えないんだもの。
ヨニ役の子もよかったですね〜

韓国映画と言えば、地元ではあさってから公開される
『義兄弟』も気になってます。

kenkoさん こんばんは!

>今年もまた凄すぎる韓国映画に出会ってしまった
ほんと今年もまた・・・ですよね。
昨年は,「母なる証明」や「チェイサー」に唸りましたが
今年はこれと「牛の鈴音」かなぁ・・・。
有名俳優が出てない韓国映画も侮れませんよね。

>サンフンはサンフンにしか見えないんだもの。
そうですね,あの地味な(失礼)お顔と
演技とはとても思えないすさんだ無表情。
あの方が監督さんだなんて,ねぇ。

「義兄弟」よさそうですね。
残念ながらうちの県では上映されないのですが
DVDになったら観たいなぁ。


こんばんは。
お伺いするのが遅くなってしまい、
申し訳ございません。
>漢江の岸辺で理由も言わずに二人で泣いたあのシーン。
ぼくはこれぞ、映画ならではの、映画にしか表現できない
映画の魅力だと思っています。
こういうシーンを内包する映画に、
来年もまた出会えることを祈ってやみません。

えいさん こんばんは!

>映画ならではの、映画にしか表現できない
映画の魅力・・・
漢江でのあのシーンは
そこに至るのまでの緊迫した悲しみや苦悩が
あの場面で飽和状態になって
台詞がないにもかかわらず,俳優さんの表情と演技だけで
ずっしりと伝わってくるものがありましたね。
確かに文章で表現する小説では真似のできない
映画ならではの表現による感動だったと思います。

家庭内暴力や子どもへの虐待が増えている昨今。
なぜにこのような秀作を全国的に大規模公開しないのか。
そう思えるほどに素晴らしい映画でした。
いやはや、韓国映画界は本当に凄い!

にゃむばななさん こんばんは!

>家庭内暴力や子どもへの虐待が増えている昨今。
この映画ほどではないにせよ
今の日本社会も家庭内暴力やネグレクト(放置)は
とても問題になっていますよね。
強烈ではあるけれど
多くの人に観てもらいたい作品だと思います。
韓国映画のオブラートに包まない「情け容赦のない描き方」
日本じゃ真似のできない凄いところですよね。


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