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2010年9月28日 (火)

霜花店(サンファジョム)

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だいぶ前にレンタルして観たのだが,感想が今頃になってしまった。王様と親衛隊長の美青年と王妃との間に繰り広げられる三角関係の愛憎劇だが,かなり濃厚なエロスと同性愛の要素を色濃く盛り込んだ,もうひとつの王の男の物語とも言えるかも。

舞台は高麗時代の朝鮮王朝。この時代の韓国は,元の国の属国のような立場だったらしい。王妃は元から嫁いできていたが,女性を愛せない王(チュ・ジンモ)王妃(ソン・ジヒョ)の間には肉体関係はなく,王の寵愛はひとえに,少年の時から手塩にかけてきた親衛隊長のホンニム(チョ・インソン)に注がれていた。

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しかし王妃との間に世継ぎが生まれないと,元につけ入られて王自身の立場が危うくなるという問題が起こり,王はホンニムに王妃の相手をするように命じる。

「なぜわたくしにそのような」と苦悩するホンニムに王は「そなたしか信じられぬし,王妃から生まれてくる子がそなたに似てほしい」と答えるが,生まれて初めて女性を抱いたホンニムと,それまで男性を知らなかった王妃は,密かに愛し合う仲になってしまう・・・。

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長身でポニーテール風長髪の目元涼しいホンニムも,豪華な衣装に身を包んだ王も,ともに凛々しく美しい。そんな麗しい彼らが,自責の念に懊悩したり,嫉妬心に苛まれたりする様子は見ごたえがあった。

端正な王の瞳の奥に燃え上がる嫉妬の炎や,身を切られるような苦悩の表情には感情移入せずにはいられなかったし,本妻を裏切っているかのようなホンニムの後ろめたそうな哀しげな表情もまたいい。凛とした気丈な王妃が,恋敵だったホンニムを愛してしまい,まるて少女のように彼のために贈り物を渡す場面も切ない。
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ちなみに霜花店の霜花とは,元の国で愛する相手に贈る霜花餅のこと。バレンタインチョコみたいな意味があるものかな?劇中では王妃が密会に来たホンニムのためにこの餅を作り,また宴会の席で,王が「霜花店」という,道ならぬ恋をうたった高麗民謡を披露する場面もある。(これがまた美声!)
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昼ドラのような,ベタベタでドロドロな物語でエロもグロも過剰気味だが,三人の主人公たちの大胆で繊細な演技には否応なしに惹き付けられる。特に後半の,王もホンニムも,どちらも相手が「可愛さ余って憎さ百倍」の存在になるあたりは圧巻。

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最後には本気で剣を交える二人だが,死の間際に王は,ある問いをホンニムに投げかけ,ホンニムはそれに答える。王を深く傷つけたあの答えは,ホンニムの本心だったのかな?と鑑賞後に考えてしまった。

エンドロールの二人の幸せそうな表情の狩りの場面を観ていると,やはりホンニムの王への愛想尽かしは本心ではなく,二人の間には確かに想い想われる愛情が存在していたのだと信じたい。そうでないと王様が可哀想すぎ…。と,やはり王に一番肩入れしてしまう物語だった。

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しかしこのようなケースの情愛とは,つくづく厄介なものだ。至福のときをもたらしてくれるが,こじれたときの破壊力もまたすさまじい。切なくも濃厚な愛の物語を堪能したいときにオススメ。

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映画 さ行」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
先日、レンタルDVDで二度目の鑑賞をしました。
吹き替えで観たので、劇場で字幕で観たときよりも理解度が深まったように思います。

これは非常に個人的な考えなのですが、この作品を観ていると、異性愛は「ともに生きる未来」を見ていて、同性愛は「ともに死ぬいま」を見ている、という気がしてなりません。

「私は一度でもおまえに愛されたことがあったか」
「一度たりともございません」

という王とホンニムの最期の問答は、私もやはり本心とは裏腹である信じます。
エンドロールのあの幸福な狩りの情景もそうですし、ホンニムが王妃ではなく、死んだ王のほうにわざわざ顔を向けて、死んだ王をうっとりとみつめながら自らも事切れることを選ぶ場面で、それがまざまざと伝わってきました。
シナリオの勉強をしていたとき、
「台詞は嘘を吐く」
ということを最初に教えられましたが、上記の会話はまさにそれだ!と思います(笑)。

うーん、やっぱりDVD買っちゃおうかなこれ……。
メイキングも観たくなってしまいました。(レンタルには入ってないので)

レッドさん こんばんは

私もこの感想を書くために2度目の鑑賞をしましたが
やはり1度目よりは深い物語に思えましたね。
同性愛がらみの三角関係の物語ですが
バイセクシャル(?)のホンニムが愛した王と王妃
どちらの関係に肩入れするかと聞かれれば
あくまでも自分の好みにこだわらせてもらえれば
やはり王との関係を応援したいです。
王妃とホンニムの関係も切なくて命懸けってところが
それはそれでそそられるのですが・・・。

>異性愛は「ともに生きる未来」を見ていて、同性愛は「ともに死ぬいま」を見ている、という気がしてなりません。
言い得て妙ですね~
生み出すものも,将来の展望もないのが同性愛なのですが
それでも惹かれあうというところが,刹那的でたまりませんわ。
「ブロークバック」も「藍宇」もそんな感じですね。

>王とホンニムの最期の問答は、私もやはり本心とは裏腹である信じます。
やはり,そうですよね~
王妃が生きていたと知った時のホンニムのあの表情と
自分が息を引き取る間際に王に向けられたまなざし。
そしてエンドロールのあの幸せそうな恋人たちが
ホンニムと王だった・・・ということが
すべてを語っていると思います。

DVD買うのおすすめしますよ~
韓国映画の特典って結構豪華なことが多いですから。
私も買おうかな~

こんにちは。
これ、面白かったですよねえ。
わたし見るまでは、これほどきちんと歴史的な背景のもとに描かれているとは思わず、ありがちな宮廷の中のどろどろかなあ・・と、軽く見ていたのですが、大間違いでした。
いやーーーー、よく出来てた。。お見事。
時代背景から、元と高麗の関係から、そこに愛憎取り混ぜて、うまいなああ、とつい見入ってしまいました。
別の面からも、つい見入ってしまいましたが・・・。
あーー、また見たくなってきました。
なかなか強烈な物語でしたが、キチンと描いているんだというのが伝わってくるもので、見ごたえありましたよ。

sakuraiさん こんばんは!

これをsakuraiさんがご覧になっていたとは
ちょっと意外な気もしますが
そっか~,歴史的な興味からもご覧になったのですね!
時代考証も歴史的事実も結構忠実に描かれていたのですね。
愛憎劇と陰謀劇,どちらも過不足なく織り込んで
たしかに見事な作品でした。
エログロ面ばかり取沙汰されるには勿体ない作品です。

>強烈な物語でしたが、キチンと描いているんだというのが伝わってくるもので、見ごたえありましたよ。
強烈な物語をキチンと描ける,というのは
韓国映画のいいところかもしれませんね。

こんばんは~。
東方神起を好きになって、それまで観たことがなかった韓国映画を初めてスクリーンで観た。それがこれです!
お初韓国映画には、あまりにも凄すぎた?(笑)

でも、私は好きなんです。
こういう濃厚な愛の物語(『ラストコーション』とか)
全編通して切なさ、MAX。
王が本当に切ない~~~。ラストの2人に涙です。
ステキな作品でした・・・

マリーさん,こんにちは!

おお,初の韓国映画がこれとは,なんて刺激的な!胸焼けもせず,お気に召したようで安心しました!いいでしょお,この濃さと切なさ。韓国映画ってとことんやってくれるから好きですわ。
王の表情は切なかったですね。ついつい応援したくなりますよね,気の毒で。これを契機にマリーさんも韓国映画の濃厚な世界に足を踏み入れてみてくださいな。この作品がお気に召したなら,きっと大丈夫,他にもツボにはまる作品が沢山あること請け合いです。

ななさん、こんにちは!
全く期待してなかったのに、予想以上に面白い映画でした。去年の暮れに見ていれば、昨年のベスト10に私も入れたのになぁ~。

そして、私もななさんと同じ^^ 王がインソン君に最後に質問した答え、あれは本心だったと思いたくないです。あれは本心じゃないと勝手に思っています。

latifaさん こんにちは!

おお,これをご覧になったのですね。
期待せずに・・・というのもわかりますわ。
>予想以上に面白い映画でした。
思ったより真面目にそして史実に忠実に作ってあるし
韓国映画特有のドロドロした人間模様も飽きない展開になっていて
俳優さんたちの演技も真摯で質が高く
確かに食わず嫌いは勿体ない作品ですよね。

>あれは本心じゃないと勝手に思っています。
やっぱりそうですよね。
あの最後の本心とは裏腹のセリフのやりとりがあったから
この作品には切ない余韻が生まれたと思います。

こんにちは♪
またまた観賞したくなりましたよ!!
観賞者が共感する登場人物はそれぞれでしょうが、その違いで
作品への印象がかなり変わってくるのではないかと思いました。
お気を悪くされたらごめんなさいね~
私はホンニムばかり追っていたので(笑)、自然に彼を応援するような
目線になっていました。
これ、劇場で観賞したらどういう気持ちになっていただろう、とふと思いました。
そうそう、王の男も観ました。だいぶ前なので多くを語ることはできませんが、
切なさをかきたてられたのは覚えています。
歴史ものをみるといつも、王様、横暴過ぎ!と、権力者に対する嫌悪感が
湧いてしまう私です。

孔雀の森さん こんばんは!

再鑑賞したくなりますね~
わたしも,これは結局DVD買わなかったので
レンタルするしか再鑑賞の手はないのですが
またまたレンタルしたくなりました。
そうですね、誰に肩入れするかでまったく印象の違う作品になるかも。
3人とも役者も演技もすばらしく,またそれぞれの事情も共感できるので
その時々で肩入れする人物が違ってくる場合もありますよね。

ホンニムがきっと3人の中では主人公の位置にあったと思うので
わたしも彼の気持ちからも目は離せませんでしたが
王様の中盤からの「叶わぬ想い」や「可愛さ余って憎さ百倍」という濃い感情の方に
余計に心を持っていかれたのかもしれません。

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