ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
近年のスウェーデン・ミステリはすごい。
ということで,これは原作を先に流し読みしていた。原作者はスティーグ・ラーソン。世界中で大ベストセラーとなった3部作のうちの1作目だ。劇場では見逃したので,DVDで鑑賞。もちろん期待を裏切らない,面白く完成度の高い作品になっていた。
あらすじ: ジャーナリストのミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)は、ある大物実業家の違法行為を暴露し、名誉棄損で有罪になる。そんな彼に目をつけた大企業の前会長が、40年前に疾走した自分の血縁にあたる少女についての調査を彼に依頼する。ミカエルは天才ハッカーでもある調査員リスベット(ノオミ・ラパス)と協力して、未解決事件の真相に迫る。(シネマトゥディ)
原作を読んだときにまず思ったことは,ヒロインのリスベットを映像化するのはけっこう大変だなぁ,ということ。既知のハリウッド女優さんの誰の顔も思い浮かばない,斬新にして魅力的,そして型破りなキャラクターのリスベット。
天才ハッカーであると同時に,後見人が必要なほどの,いわくつきの過去を持つ男性不信の権化のリスベット。
パンク・ファッションとでもいうのだろうか,登場シーンでの彼女のメイクに魅了される。似合わないのは百も承知だが,黒いアイシャドウ(これは持ってる)と黒いルージュ(これは持ってない)と皮ジャン,私も試してみたくなった。リスベットを演じた女優さんが黒いルージュがとても似合っていたので余計にそう思ったのかも。
ストーリーが面白いのは,もう原作で知っていたのだが,実際にスウェーデンの荒涼とした自然を背景にテンポよく進む物語からは,ハリウッドものにはない魅力を感じた。
陰惨なシーンも多く,テーマのひとつには,女性を対象にした性犯罪や虐待という重いものもあるのだが(スウェーデンではこの問題は他の国より深刻らしい),鑑賞後に感じる爽快感やカタルシスは,やはりヒロイン,リスベットの行動が痛快だからだろうか。心に深いトラウマを秘めながらも,「やられたらやりかえす」という強さや突き抜けぶりは,同じ女性としては観ていてとても気持ちがいいものがある。
三部作なので続編もとても楽しみだ。ちなみに原作の方は2作目以降はまだ未読。スウェーデン・ミステリの秀逸さは,他にも「スウェーデンのアガサ・クリスティ」と呼ばれるカミラ・レックベリの「氷姫」を読んだときも感じたが,どんどん映画化してほしい。(「氷姫」は映画化が決定しているそうだけど)その際にはぜひ,ハリウッドの手によるのではなく,スウェーデンを舞台にしてスウェーデンの俳優さんたちを使って。
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ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]2009年 スウェーデン
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ
原作:スティーグ・ラーソン
出演:ノオミ・ラパス
マイケル・ニクヴィスト
スヴェン・バーティル・トープ
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こんにちは♪
ななさん、原作読んでいたんですね。
映画のリスベットはイメージ通りでしたか?
あのファッションは良いですよね…
凄く小柄というのもポイント高いです。
酷い仕打ちを受けた相手への復讐、そして最後の変貌(変装?)、どちらもスカッとしました!
でもまだ二作目、三作目ともミカエルと絡むらしいので続編に期待です。
投稿: リュカ | 2010年6月 6日 (日) 05時13分
リュカさん こんばんは!
長いのでじっくりというより駆け足で読み飛ばしたのですが
原作読みましたよ~
リスベットのイメージは映画にかなり近かったですね。
映画の女優さんがちょっとだけ老けてるように感じたけど
でもファッション,雰囲気,立ち居振る舞い
見事なリスベットだったと思いますね。
ハリウッド女優さんなら・・・誰が似合うかなぁ
案外キーラ・ナイトレイなんかがパンクメイク似合いそう。
キーラは小柄じゃないけどね(笑)
続編今から楽しみです!
投稿: なな | 2010年6月 6日 (日) 21時36分
ななさん、こんにちは
リスベット、男からみてもとてもかっこいいヒーロー(ヒロイン?)でした。バイクに乗って疾走するシーンとか、実に様になっていて
ななさんもぜひリスベットスタイルに挑戦されてみてください。黒のルージュといえば、『アリス』でもアン・ハサウェイが使っていたかな。ちょっと使うのには勇気がいそうなアイテムですな。わたしはもちろん使ったことないです
原作は確か五部作構想だったのに途中で作者が死んでしまったそうで・・・ 「せめてもう少し長生きしてくれたら」と世界中のファンが思っていることでしょうね・・・
ミステリー原作の映画といえば、昨日港かなえさんの『告白』を見てきました。すごい傑作だと思いましたが、学校が舞台のドス黒い話なんで、ちょっとななさんには薦め辛かったりします
投稿: SGA屋伍一 | 2010年6月 7日 (月) 12時45分
SGAさん こんにちは!
リスベット,男性から見てもやっぱり素敵なんですね。
確かにバイク姿やゴルフスティックで犯人をぶったたくシーン
とってもカッコよかったですね。
胸があまりないのもこのキャラにはよく合っていました。
リスベットメイク,人前ではアレですから
夜中におうちでこっそり挑戦してみようかな~と。
やっつけたい男性のお顔など思い浮かべながら・・・ぐふふ。
傑作ミステリの作者はえてしてあまり作品を残さずにお亡くなりになったりするんですね。
5部作まで完成していたら・・・と悔やまれますね。
「告白」実は今日観てまいりました。
今日は参観日の繰り替え休日だったもので・・・。
で,大丈夫,めちゃくちゃ好みでした。
また記事をアップしたらお話しさせてくださいね。
投稿: なな | 2010年6月 7日 (月) 18時25分
こんばんは~♪
ななさんは先に原作を読んでいたんですね。
私は映画を観てから原作を読みました。
映画でストーリーは大体把握していても面白く読むことが出来ました。
でも、そんなに大絶賛するほどの小説かなぁ~って気もあったりして(笑)
まだ続きは読んでいませんが、また映画を観てから読もうかなぁ~
登場人物がメチャメチャ多いんだもん(笑)映画で内容を知っていた方がいい気もするわん(笑)
投稿: 由香 | 2010年6月 7日 (月) 21時51分
これ、ハリウッドでリメイクされるんですよね。
でもこれは絶対にリメイクしないでほしいですよ。
スウェーデンだからの素晴らしさを安易に壊さないでほしいですもん。
それくらい面白い映画でしたよ。
投稿: にゃむばなな | 2010年6月 8日 (火) 22時11分
由香さん こんばんは!
原作を読んだといっても
おっしゃるとおり,登場人物が多くてめんどくさいので
あらすじをささーっとなぞりながら
肝心の箇所だけ拾い読み,と言う感じですが
(腰を据えて読んでみたい気もしますね~)
たしかに映画を先に観てから読むほうが
ある意味正解かもしれません。
>でも、そんなに大絶賛するほどの小説かなぁ~って
うん,そうですね,オチやストーリーはそんなに斬新でもないような。
しかしヒロインのキャラクターがとにかく突出していて
それが最大の魅力になっている物語ですよね。
投稿: なな | 2010年6月 9日 (水) 21時15分
にゃむばななさん こんばんは
ハリウッドリメイクいらなんじゃ?と
私も思いますよ~
>スウェーデンだからの素晴らしさ
北欧特有の雰囲気(風土から来るものかな?)が
この物語の特徴でもあるので
ハリウッドでリメイクする意味はないんじゃないかなぁ~
投稿: なな | 2010年6月 9日 (水) 21時17分
こんばんわ!
ぜーーんぶ、読んでしまいました!!
超面白かったですよ。
これに限っては、本も映画も、どっちもそのうまさがひきたってて、どっちがどうの、という範疇ではないなあ・・と思いました。
ハリウッドの安易さには、ほとほとあきれますが、よっぽどねた不足なんでしょうかねえ。
告白もしかり・・・。
なんか、告白に関しては、あまり語りたくないもんで、ついこちらにお邪魔しました・・・。
でも、リスベットは誰がいいかな・・・なんてね。
クリスティーナ・リッチなんていかが?
一貫して、女性に対する尊敬の念と、女性への暴力への告発のようなもんが強く感じられて、とても好感を持ちました。なので、作者が亡くなってしまったのは、本当に惜しいでしたね。本当は5部作の予定だったとか。
投稿: sakurai | 2010年6月10日 (木) 22時37分
sakuraiさん こんばんは!
おおお,原作読破ですか!
長いのと登場人物が多いので
ついつい途中でめんどくさくなって読み飛ばしてますが
じっくり味わって読みたいですね~、私も。
>ハリウッドの安易さには、ほとほとあきれますが、
>よっぽどねた不足なんでしょうかねえ。
でしょうねぇ。ハリウッドオリジナルの傑作って減ってきましたね。
外国映画のちょっと変わったストーリーの物語なら
すぐに飛びついてリメイクしますよね。
しかし「告白」は舞台がアメリカでもなんとかなりそうな気もしますが
この「ミレニアム」はダメでしょう。スウェーデンじゃなきゃ。
キーとなるのはリスベットを誰が演じるか。
クリスティーナ・リッチは小柄だし,化けるのでなかなかいいかも。
新人女優さんを発掘してキャスティングするのも面白そう。
投稿: なな | 2010年6月11日 (金) 21時01分