シャネル&ストラヴィンスキー
今年はシャネルの伝記的な作品を3本も観たが,この作品が一番好きかな。(ちなみに一番イマイチに感じたのがオドレイ・トトゥのココ・アヴァン・シャネル)
それに比べればこの「シャネル&ストラヴィスキー」は,シャネルの生涯のうちでも,ストラヴィンスキーとの恋愛に焦点を絞って描かれていたので,その分人物描写が深まっていたように思える。
シャネルがストラヴィンスキーのパトロンであり愛人でもあったって,実際はどこまでほんとうなのか知らないけど,芸術家どうしの激しい大人の恋愛は,なかなか見ごたえがあった。
二人の関係やその顛末は,どこか昼メロっぽい展開だ。妻と愛人の間でオタオタと葛藤する男と,彼を振り回す気の強い女の物語。天下のシャネルとストラヴィンスキーの間に起きたことだからこそ,魅力的にも新鮮にも映るが,実はどこにでもありそうなありきたりの不倫物語なのかもしれない。
それに,二人を演じた役者がとてもいい。
シャネル役のアナ・ムグラリス。シャネルもの3作品の中ではダントツに美人で華がある。実際にシャネルのモデルでもある彼女の着こなすシャネルスーツやその歩き方(完全なモデル・ウォーク!)にうっとり。シャネルの誇り高く妥協しない雰囲気もよく出ていた。
そしてストラヴィンスキーを演じたマッツ・ミケルセン。やっぱりよいですね~,この方。マッチョな戦士役も,繊細な家庭人役も,なんでもソツなくこなすって感じで。
この作品の彼はどちらかというと弱気なキャラかもしれない。前述したように,糟糠の妻とかわいい子供たちのいる家庭と,シャネルへの愛(情愛っぽい?)との板挟みで悶々とする彼がちょっとかわいそうになってくる。シャネルは彼の才能を愛したのかもしれないが,彼のほうはシャネルに,妻にはない女性としての魅力を感じていたのかな?
・・・・しかし,「脱いだらスゴイんです」この方。運動不足なはずの音楽家が,なぜにあれほどマッチョなのか。それを言うならアナのスタイルも完璧すぎて,このお二人のベッドシーンは不自然なほど絵になりすぎ。
ストラヴィンスキーの妻を演じた女優さんも存在感があった。
家族がシャネルの屋敷で世話になっている手前,二人の情事を知りながらも耐える彼女の姿に,つい感情移入。(シャネルたちのほうが悪者に見えてしまった。)結局最後はストラヴィンスキーは,妻子を捨てることはなかったのだろうけれど。
全編に流れる不協和音に満ちた美しい音楽が,彼らの関係の危うさや緊張感をよく表していたように思う。
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