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2010年5月11日 (火)

カティンの森

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2007年製作のポーランド映画。「灰とダイヤモンド」のアンジェイ・ワイダ監督が,第二次世界大戦下に実際に起きた,「カティンの森事件」を題材に撮った作品であり,2008年度アカデミー賞では,外国語映画賞にノミネートされている。日本公開は2009年。

カティンの森事件;第二次世界大戦中に,ソ連のグニェズドヴォ近郊の森で,約4400人のポーランド軍将校,国境警備隊員,警官,一般官吏,聖職者が,ソ連の内務人民委員部(NKVD)によって銃殺された事件。「カティンの森の虐殺」などとも表記する。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
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第二次大戦中のポーランドは,ドイツとソ連の両国に挟まれ,どちらの国からも蹂躙されたという痛ましい歴史を持つ。その中でも,つい最近まで事実が隠蔽されていたという点でも赦しがたい「犯罪」が,このカティンの森事件であるという。関係国の間でも真実を語るのがタブーであったこの事件を,われわれ異国のものたちは,無論これまで知るはずもなく・・・・。

ナチスの悪行の陰に隠され,今まで葬られてきた,おぞましい事件を目にして,衝撃のあまり鑑賞後はしばし固まってしまった。特にラストに淡々と描写される,ポーランド将校たちが虐殺されるシーン・・・・
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一人ずつ軍用トラックから降ろされ,巨大な穴の前で後ろ手に縛られ,背後から頭部を撃ち抜かれる将校たち。この時のソ連兵たちの,事務的で流れ作業のような手際に背筋が寒くなった。恐怖の中で将校たちが口にする「主の祈り」。まるでゴミを埋めるように,折り重なった彼らの遺体の上に土をかけてゆくブルドーザー。

カティンの森で殺されたポーランド人は職業軍人だけでなく,教師や技師や聖職者たちといった,社会のリーダーとなるエリートたちだった。彼らの死によるポーランドの損失は大きく,戦後,ポーランドの復興は大きく遅れたという。そしてそれこそが,ソ連の狙いの一つだったのだろう。
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そして戦争終結後,冷戦中にポーランドを支配した共産主義政権はソ連の影響下にあったため,誰も真実を明るみに出すことができなかった。罪をナチスの仕業だとするソ連の嘘を,ポーランドの国民たちは知っていたが,異を唱えることはできなかった。

遺族の視点で淡々と語られる物語は,最愛の夫や息子や兄を殺され,そのうえ真犯人を告発することもできなかったポーランドの女性たちの,静かな哀しみと怒りに満ちている。

没年が1940年(=事件のあった場所が,ドイツではなくソ連の占領下にあった年)と刻んだ墓石を建てようとして逮捕される女性や,己の無力さに絶望して自殺する軍人・・・・ポーランドの人々にとって,どんなにか長く苦しい屈辱の年月だったろうと思う。そしておそらく,遺族たちにとっては,これらの無念の思いは今現在も続いているのだろうと思う。

冷戦終結後,ようやく真実が明るみに出され,2009年にロシアのプーチン首相はポーランド訪問の際,カティン事件を「犯罪」と呼び,翌2010年の現地での追悼式では,スターリン体制が行った虐殺を,「正当化できない」と批判したが,「ロシア国民に罪をかぶせるのは間違っている」とも主張し,謝罪はしなかったという。
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アンジェイ・ワイダ監督は,このカティンの森事件で,自らの父親を失ったという。そんな監督の思いが籠った渾身の一本であり,目を背けてはいけない作品だと思う。

殺された兵士たちが無残に葬られるラストシーンの後,一瞬真っ暗になる画面に流れる,重厚で陰鬱なレクイエムの調べ。そして続く無音のエンドロール・・・・。目を疑うほどに酷すぎる事実の前に誰もが言葉を失う。そんな思いがよく現れているエンドロールだった。

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コメント

おはようございます。
なんだかいつまでもスッキリしない天気で、変な気候ですね。
うちの新中学生は、朝から宿泊研修の場所まで約20キロの行程の歩きに出発しました。
いやーー、ヨーやるわ。
もちろん、先生も一緒に歩きですからね。ご苦労さまです。

さて、「カティン」。
ポーランドの大統領飛行機が墜落したりと、将校たちから呼ばれたのかなあ・・・などと思ったり。(不謹慎でした)
ぜひ、多くの人に知ってもらいたい事実が、あまりうれしくない状況で知られた・・・というのも、皮肉ですね。
ワイダ監督の映画を撮る姿勢には、いつも居住まいを正して見なければならない!という思いにさせられます。
さまざまな人間の所業を見てきた彼の目、そこから生まれる映像に対して、われわれがどうのということなどはばかられるような気もします。
見るべき映画でしたね。

sakuraiさん,こんばんは!
ほんと,急に暑くなったと思いきや
やっぱり寒さが戻ってきたりと
体調には,はなはだよろしくない気候が続きますね。

>うちの新中学生は、朝から宿泊研修の場所まで約20キロの行程の歩きに出発しました。
えええ~wobbly20キロですかぁ~~!
そんな距離を人間が歩けるなんて,信じられません!
・・・・なんともご苦労様です。しかし大変ですね。

で,映画の話ですが,
>ポーランドの大統領飛行機が墜落したりと・・・
そうでしたね。追悼式に参加するためだったのに,なんとも皮肉というか,因縁めいたものも感じてしまう・・・この事件に,ますます痛ましさを加えてしまうような事故でしたね。

ワイダ監督の「灰とダイヤモンド」ずいぶん昔にTVで観た覚えがあるんですが,ポーランドの悲史について無知だったため,よく理解できませんでした。彼の作品は,ほんと襟を正して観るべき重さと深さがありますね。戦争について,人間の愚かさや醜さ,弱さについて,深く考えさせられる作品でした。

こんばんは。

>謝罪はしなかった

国と国との間の歴史、「事件」と「謝罪」を考えるに、この「謝罪」の有無、そのあり方ほど難しいものはないのかもしれませんね。

この事件に被害者としてかかわった人たちは、先ず事件で悲劇を味わい、その後の事実の隠ぺいと虚偽の報告によって長い間の悲劇に見舞われ、そして謝罪なき今に至って尚も苦しめられ続けている、いわば3重の苦渋を味わっていることになるのですね。

今後はどうなっていくのでしょうか。
非力な自分を感じつつ、行く末の「より良き方向」への進歩を願わずにはいられません。


ななさん、こんばんは!
TB&コメントありがとうございます!
沈黙するかのような、真っ暗なエンディングはこの映画のスゴさを物語っておりました。
戦争の悲劇って計り知れない哀しみがあるでしょうね。経験していないことに感謝すべきかと思います。
この映画を観た後wowowで放映されたアンジェイ・ワイダ作品を見ようと試みたのですが、どれも暗くて途中挫折してしまいました。そのうち最後まで見てみたいものですわ。
ポーランド首脳陣が乗った飛行事故はホントに驚きでした。

ぺろんぱさん こんばんは

>「謝罪」の有無、そのあり方ほど難しいものはないのかもしれませんね

そうですね,1国を代表して謝罪するということは
ある意味とても重大な責任もあって
なかなかできることではないのかもしれませんが・・・。
「認めたのなら謝罪しろよ~」と
外野は思ってしまうのですが
ロシア側としては「あれはスターリンがやったこと」という
思いもあるのかもしれませんね。
ロシア国民すべてに責任を負わせたくないと。
ググってみたら確かに
スターリンは自国の民にも鬼畜なことやってますし。
しかし被害者の遺族としては
謝罪がないのはやはり納得できないことだと思います。

ほんとに今後どうなっていくかわかりませんが
亡くなった将校たちの冥福と
遺族たちの心が少しでも慰めを得るように
非力ながら祈りたい気持ちでいっぱいです。

margotさん こんばんは

沈黙するかのような唐突なエンディング・・・
それまで終始淡々と綴られていた物語が
あのエンディングで一気に悲劇性を帯びて
すごい余韻でした・・・・。
監督の訴えたかった怒りや悲しみが
怒涛のように押し寄せてきましたよ。

ワイダ監督作品,
TVで「灰とダイヤモンド」だけは観たのですが
なにせ子供のころのことで
内容少しも覚えてないんです。
「戦争の悲劇を描いてたなぁ」と言う印象くらいで。
ポーランドの辿ってきた茨の道のことなんか
全く知らなかったですし。
これからもっと勉強しなくちゃと思いました。

ななさん、こんにちは。
この作品、もうDVDになっているのですね!
映画上映中に行こう行こうと思っておきながら、
『灰とダイアモンド』のイメージのため、
ついつい行かず仕舞いになってしまったのがこの作品です。
ななさんは割と面白くご覧になられたようでしょうか。

とらねこさん こんばんは!

この作品未見ですか~
とってもよかった・・・というか
この事件の遺族でもある監督の深い思いが
すべての遺族の気持ちを代弁しているようで
襟を正して観た作品でした。
(連続2日,2度観ました)
DVDまだ新作扱いですが
ぜひご覧になって,また感想を聞かせてほしいです。

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