ジェイン・オースティン 秘められた恋
オースティンがその生涯で,ただ一人愛した人だという,トーマス・ルフロイとの悲恋物語。彼は実在した人物だそうだが,映画はたぶんフィクションの部分も多いような。オースティンの小説を地で行っているような雰囲気の作品だった。
実はオースティンの小説もその映画化も,そんなに好みではないので,純粋に役者に惹かれて観た作品。そしてストーリーよりは最後まで役者の演技や美しさに魅了されて退屈せずに観れた作品だ,私にとっては。
どちらかというとコメディエンヌの印象の強いアン・ハサウェイ。「プラダを着た悪魔」で「おお,スタイルいいんだなぁ,彼女」と見直し,レイチェルの結婚で「おお,なかなか演技派ではないの」と見直し,この「ジェイン・オースティン」役の彼女を観てつくづく「美人だなぁ~」と再度見直した。
この時代の女性の衣装って,着る人によっては寝巻みたいにしか見えない場合もあるのだが,長身のハサウェイは綺麗に着こなしていて,結いあげた髪形やすんなりと伸びた首筋がとても美しい。
子だくさんの田舎牧師の娘の彼女は,文学の才能に恵まれ,自立の精神を旺盛に持っているにもかかわらず,貧しい生活から抜け出るために,お金持ちの男性との縁組を周囲から勧められる。 しかしそんな彼女が愛した相手は,同じくパトロンの伯父に牛耳られている,貧しい法律家の青年ルフロイだった。
物語はとりたてて珍しい展開ではなく,駆け落ちまがいのことまでした恋人たちが,やはり先行きの希望のなさ(=経済力の不安定さ)が原因で一緒になるのを思いとどまってそれぞれ別々の人生を歩む・・・という薄味の悲恋ものだ。同じ恋愛ものでも,刺激の強いストーリーに慣れた身としては,やや物足りないかも。
しかし,ハサウェイの美しさと,マカヴォイのキュートさに魅せられて,最後までうっとりと鑑賞できた。この時代の衣装その他の雰囲気も,脇を固める名優(マギー・スミスとか)もとってもよかったし。
衣装と言えば,マカヴォイもこの時代の帽子やコート類がとってもよく似合う。小柄なのでちょっと可愛らしい弟キャラなのだけど,クルクルとした髪形も,あだっぽい流し眼も,とっても素敵。ぺネロピのときのマカヴォイと同じくらい魅力的だった。
古き良き時代の英国の,いろんなしがらみに縛られた中での,節度をわきまえた男女の間のちょっと哀しい恋物語。出演陣に惹かれなければ決して観ないタイプの作品だけど,たまにはこういう作品もいいかも。ゆったりと優しく,しかもちょっとノーブルな気分になれるから。
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ななさん、こんばんは。
マカヴォイ目当てとキッパリ言いきってるところが潔いですわ(笑)。
この作品って、もっと早く公開されるはずだったのに、配給会社が潰れた影響か、なかなか公開されなかったんですよね。公開されてホント良かった・・・。
で、思ったんですが、マカヴォイ、クラシカルな衣装も似合ってるんですが、もうちょっと身長が欲しかったなあ・・・と。「ぺネロピ」の頃はクリスティーナ・リッチが小柄だからあまり感じなかったんですが、これ観たら、背が小さいなあ・・・と。惜しいわ~。
投稿: mayumi | 2010年4月11日 (日) 02時50分
mayumiさん こんばんは
そっか~,これ,製作はもっと前の作品なんですね。
公開されてDVD化もされて,日の目を見れてほんとよかったわ。
>マカヴォイ、クラシカルな衣装も似合ってるんですが、
>もうちょっと身長が欲しかったなあ・・・と
そうですよね~,特に今回は
のっぽのアンと並んで歩いたり
向き合って会話するシーンが多かったから
余計にそう感じましたね。
山高帽をかぶってアンと同じ身長になる・・・というのはちょっと。
「ペネロピ」はどちらも小柄で童顔のカップルだったので
とっても似合っていましたが
今作では精神的にはリードもする役柄だったのに
どうしてもアンの弟に見えてしまったわん。
投稿: なな | 2010年4月11日 (日) 22時31分
おはようございます!
始まりましたねぇ。
なんだかんだと忙しいのですが、それはすべて入学者が二人ってことですわ。
いやーーー、書いた書類の数!
3人入学入園のときに比べれば、たいしたことないですが、やっと落ちつきました。またどうぞよろしく!
やっぱマカヴォイ君ですよねえ。
「あだっぽい流し眼」ですか!色っぽいこといいますね。なははは。
あたしは結構オースティンもの好きです。
パターンとしては、そうそう変哲はないのですが、静かなカタルシスがあるのが好きですわ。
アンちゃんは、めきめきいいですよね。出る役、出る役、違うキャラが多いですが、どれもお見事。
これ見て、どうしても「いつか晴れた日に」を再見したくて、(所有のビデオテープはぼろぼろで・・)DVD買ってしまいました!
堪能してしまいましたよぉ。
投稿: sakurai | 2010年4月12日 (月) 11時15分
sakuraiさん こんばんは
始まりましたねぇ。
こちらはまだまだ戦争です。
今年は結構大変な年になりそうで
ゴールデンウィークあたりに寝込みそうな予感が。
>やっぱマカヴォイ君ですよねえ。
はいはい,やっぱ彼にホの字です
だってかわゆいんだもん・・・・。
ジェインたちを伯父の屋敷に呼んだときに
舞い上がって階段を滑り降りてくるシーンなぞ大好き。
ハサウェイもとっても綺麗で
たしかにどんな役でもこなせる大女優に成長しつつありますね。
オースティンものはわたしはイマイチ感動が薄いんですが
「静かなカタルシス」ですか・・・なるほど!
でも,「いつか晴れた日に」は大好きな作品です。
投稿: なな | 2010年4月13日 (火) 20時21分
こんにちは。
可愛かったですね、マカヴォイ君。
私はオースティンもの好きなので
満足★でしたよ。
この時代特有のダンスシーンが沢山で
うれしかったのよね~~。相変わらず
会話しながらのダンス。すごいよね・・・。
まるっきり、女性向けの映画で
最近では珍しい、ロマンチックさだと
思ったけれど。
うん・・・薄味の恋愛ものって、上手い言い方だと思うわ・・・笑
予想できる範囲内のお話だったものね。
まあ・・たまにはこういう映画も良し・・という
ことで。出演者に免じてねぇ~~~~。
それにしても弟キャラである彼は
何しても許せちゃうから得よね・・・・・。
投稿: みみこ | 2010年4月21日 (水) 15時39分
みみこさん こんばんは
>この時代特有のダンスシーン・・・・
女性のドレスとか
お辞儀しながらのダンスとか
とっても優雅ですよね~
ハサウェイは首が長いから
ギリシア風のこの時代の結いあげた髪も
とってもよく似合っていたわ。
>まるっきり、女性向けの映画で
>最近では珍しい、ロマンチックさ・・・
これも,オースティン・ワールドだからこそ似合う味わいでしたね。
たまにはこういうのも癒されますよね。
そして母性本能をくすぐるマカヴォイ君に免じて
どんな作品でも心地よく観れてしまう私です。
投稿: なな | 2010年4月22日 (木) 20時33分
ななさん、こんにちは!
僕はアン・ハサウェイ目当てでした〜。
彼女は最近とても芸の幅が広くなってきて女優として開花してきてますよね。
美人だし・・・。
マカヴォイくんも「ウォンテッド」みたいなのより、やはりこういうクラッシックな映画の方が似合いますよね。
投稿: はらやん | 2010年4月29日 (木) 07時31分
はらやんさんは,ハサウェイ目当てでしたか~
>彼女は最近とても芸の幅が広くなってきて女優として開花してきてますよね。
確かにコメディ・シリアス・現代もの・文芸ものと
あらゆるジャンルをこなしていますね。
あっと,スパイ・アクションものもありましたね。
美貌と才能に恵まれている大型女優だと思います。
マカヴォイはアクションもその意外性がよかったのですが
やはりルックスから言うとこういう作品の方がハマりますね。
投稿: なな | 2010年5月 3日 (月) 10時19分
こんにちは~♪
私もマカヴォイ君目当てに観ました(笑)
可愛かったですよね~ペネロピと同じような魅力があったので、この映画を観た後についペネロピも観ちゃいました(笑)
本来悲恋物はあまり好きではないのですが、この映画は良かったわ~チョイ胸キュン(照)
節度をわきまえた男女の恋にドキドキしました(柄にもなく・笑)アンとマカヴォイ君が上手かったせいもあるなぁ~
投稿: 由香 | 2010年6月 2日 (水) 11時18分
由香さん こんばんは!
あら,これ御覧になったのね~
そうそう,このマカヴォイ君と
ぺネロぺのマカヴォイ君はちょっと似たキャラですね。
いやキャラは似てないけど
ヴィジュアル的に雰囲気が似てます。
キュートなんですよね・・・・
>節度をわきまえた男女の恋にドキドキしました
刺激の強いハリウッドの恋愛ものに慣れてると
こういう上品で奥ゆかしい恋物語も
たまにはいいですよね~,心洗われる感じ?
薄味すぎて味気なくなりそうなストーリーですが
主演のお二人の魅力と演技力で感動させていましたね。
投稿: なな | 2010年6月 2日 (水) 23時18分