シャッターアイランド
スコセッシ&ディカプリオがタッグを組んだ作品は,正直これまでのものはどれも,私的にはイマイチだった。(「ディパーテッド」しかり,「ギャング・オブ・ニューヨークしかり,「アビエイター」しかり)
だからあまり期待もせずに観たのだが,これはいろんな意味で素晴らしく,近年のレオの代表作にもなる1本だと思った。脳みそはおおいに混乱したが,満足度は非常に高いものとなった。
あらすじ: 精神を病んだ犯罪者の収容施設がある孤島、シャッター アイランド。厳重に管理された施設から、一人の女性患者が謎のメッセージを残して姿を消す。孤島で起きた不可解な失踪(しっそう)事件の担当になった連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は、この孤島の怪しさに気付き始める……。(シネマ・トゥディ)
キャッチコピーで「謎解きに参加せよ」と煽り倒したわりには,凡庸なオチだなぁ,と最初は思ったが,最後まで観て,これって2通りの解釈ができることに気づいた。どちらの解釈も可能で,観客が好きな方を選べるようにあえて仕組んでいるのなら,まさに恐るべき脚本である。原作未読なので,どちらの解釈が合っているのかは知らないけど。
以下,ややネタばれ気味ですので,
未見の方は決して読まないでくださいませ。
一つ目の解釈は,早い段階で予想がついた通りのオチで納得するもの。つまり,終盤に灯台部屋で院長から明かされる,テディは実は●●だった・・・・という話を真実だとするものだ。この場合は病院側は芝居は打っているのだが,あくまでもその目的は善である。
二つ目の解釈は,オチの裏を深読みするもので,テディは本当に調査に来た連邦捜査官で ,島の人体実験の真実を知ってしまったために,すでに1度目のロボトミー施術も施され,それプラス薬物の投与で,次第に記憶を改ざんされ,洗脳されてしまった・・・というもの。(あのおでこの絆創膏がどうしても気になって・・・。それに洞窟のレイチェルの話も真に迫り過ぎていたし)この解釈だと,病院側はとんでもない犯罪集団だということになる。
まぁ,きっとどちらの解釈でも,細かいことを言えば,どこかつじつまの合わない,スッキリしない点はあるような気がするし,私は中盤(テディがC棟に潜入するあたり)にトイレに立って,そこでまた待たされたりして中座の時間があったので,見逃している伏線が多々あるかもしれない。
しかしどちらの解釈でも,レオが演じた主人公の運命は哀しく,救いがない。妄想であれ,洗脳であれ,彼の感じた絶望や疲弊感はあまりにも深く,そして閉ざされた島から出るすべもなく,ラストの彼の台詞は,実は正気の彼が発した辞世の句であることは間違いがないと思う。
個人的には,ひねりがなくても,一つ目の素直な解釈の方が好きだ。その方がより切なく,そしてまた人間の善意も感じられるから。テディの妻のエピソードなど,あまりにも哀れなのだが,あれが洗脳の賜物であるとは思いたくはない。
シャッターアイランド=閉ざされた島。
絶海の孤島であるその島はおそらく,我々の脳を例えたものだろう。そこは条件さえそろえば,妄想も洗脳も十分に起こりうる場所だ。なぜなら我々は真実よりも,欲するものを信じてしまう性を持った生き物であるから・・・・。監督はそう訴えたかったのだろうか。
この作品のレオの演技は凄い。とても難しい役だったと思うが,見事に千差万別の表情を演じ切っていた。他にも,キングスレーやマーク・ラファロ,エミリー・モーティマー,ミシェル・ウィリアムズ,ジャッキー・アール・ヘイリー,マックス・フォン・シドー,パトリシア・クラークソン等,演技派の俳優がテンコ盛り。不穏で陰鬱なのに耽美的な映像世界も魅力的だ。
今回は「超吹き替え」とやらで鑑賞したが,DVDになったら字幕で再見したい。レオの肉声でぜひもう一度本作を楽しみたいものだ。マーク・ラファロの声も何気に好きなので。どちらにしても,何度も見返して悶々としてみたい作品である。
最近のコメント