ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ
大昔にビデオで観た記憶があるのだが・・・・その時は若くて,一応感動らしきものはしたし,凄く印象に残ってるシーンも多々あるのだけど,きっと完全にはこの作品を理解できてなかったように思う。今回,デ・ニーロ祭りで気合を入れて再見。
いや驚いた~,実は物語の中でも特に大事な,後半の記憶が全く飛んでたが,(それだけ前半の少年時代の場面の方が強烈だったのか,それとも後半は当時の私には難解だったのか?)・・・・・こんな深いお話だったのね。
今回あらためてその,練りに練られた脚本や,描かれた哀切きわまる物語に感銘。純文学のような芸術性の香り高い,紛れもない大傑作のひとつである。作品全体に漂う哀愁と情感は,もしかしたらゴッドファーザーより上かもしれない。
禁酒法時代のアメリカを舞台に描かれる,ユダヤ系マフィアの若者たちの一大叙事詩。物語は,ゲットーで過ごした「少年時代」,彼らがマフィアとして一旗あげるのに成功してゆく「壮年時代」,そして真実が明かされる「現代」の三つの時代を,行ったり来たりしながら進んでいく。
この作品,映像が,とにかく信じがたく美しいのだが,特に少年時代のクラシックなセビア色の街並みの美しさといったら!初見時も,上の画像の,巨大なブリッジを遠景に歩いてゆく彼らの映像とか,下の画像の,少女時代のデボラがバレエ・レッスンをする映像とかが,強烈に心に焼きついたものだ。
そして物語と一体になった,ノスタルジックで切ないモリコーネの音楽。パンフルートという葦笛の一種の楽器の枯れた調べや,オーケストラが奏でるアマポーラのメロディー。まさに,映像,音楽,俳優たちの演技,すべてが芸術品のような品格の輝きを放つ作品といえるだろう。
この物語のテーマは友情と裏切り。
デ・ニーロ演じるヌードルスと,ジェームズ・ウッズ演じるマックスの間の,少年時代から続く堅い絆。しかし,価値観と欲するものの違いから,二人の思いが徐々にズレてゆき,友として互いに慈しみあいながらも,悲劇的なラストへと繋がる哀しさ。
どちらがどちらを裏切ったのか,そしてその結果,裏切った方と,裏切られた方は,その後,どのような選択をしたのか,これはぜひ,ご自分の目で確かめてほしい。ラストは,ほんとうに何度観ても泣けてしまう。
このときのデ・ニーロ41歳。ギャングだからもちろん粗暴な面も持ちながら,懐の深い,なんとも魅力的な主人公を演じている。特に老け役の時の彼の自然さは特筆もの。なんでも,生え際の髪の毛を抜いてリアルさを出したとか。さすが,ここにもデ・ニーロ・アプローチが!)
そして,デ・ニーロ以上に難役だったかもしれないマックス役を演じた,ジェームズ・ウッズの繊細で的確な演技には唸った。彼の野望,彼の怒り,そして彼の哀しみ・・・・ヌードルスに見せる彼の複雑な感情・・・・それらを見事に演じていた。いやいや,マフィア姿のウッズってとってもカッコいい
もう一人,役者の中で忘れてはならないのが,ヌードルズの恋人デボラの少女時代を演じたジェニファー・コネリー。ストーリーは忘れても,当時の彼女の美しさだけは鮮明に覚えている。今のジェニファーももちろん十分美しいのだが,この作品の彼女は,まるで無垢で高慢な天使のような美しさだった。
4時間という長尺,そして最後まで観るやいなや,もう一度細部まで確認したくなって,再見したくなる作品。だから,時間と体力に余裕のある時にしかオススメできないが,これは映画界に燦然と輝く傑作だと太鼓判を捺したい。
本作が遺作となったレオーネ監督,まさにこれまでの彼の集大成とも呼ぶべき作品で,有終の美を飾ったと言えるだろう。
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Once Upon a Time in America/1984年/アメリカ・イタリア1920年代初期、1930年代初期、1968年の3つの時代を行き来する構成になっています。ややこしいので年代別に分けます。ネタバレは避けました。... [続きを読む]
ななさん、こんばんは☆
待ってました~♪♪
わが青春のギャング映画…(笑)
ですよねですよね、私、15の時はジェームズ・ウッズに肩入れしまくりましてねぇ…
彼のために涙しました…
うわぁ、こうして見るとデニーロさんも若いですね!
セルジオ・レオーネの集大成、まったく見事な叙事詩ですよね。
子ども時代、仲間の一人のあの緑色?の大きな目の坊やがケーキをちょっとずつ食べてしまうシーンもえらく泣けたのを覚えています。
ノスタルジックで残酷で美しくて、とびきりの音楽…
懐かしいです。
ななさんのおかげで、ぜひとも再見したくなりました☆
投稿: 武田 | 2010年2月24日 (水) 19時43分
武田さん こんばんは
いーですねぇ,これ。
あらためて観なおしてみて,なんて傑作なんだ~って。
初見時は印象的なシーンのみしか頭に入ってなくて
深い意味なんか頭の中をスルーしていたのですが・・・・
そういう意味では,これは大人の映画ですよね,ほんとに。
ジェームズ・ウッズの演じたマックスは
色んな意味でカッコよくもあり,あわれでもありました。
ヌードルスより印象に残るキャラですね。
あのラストのゴミ収集車のシーンは泣けました。
ところで,「コネクテッド」アップされてましたね!
私も昨日観たのですが(リウ君カッコいい~美しい)
記事がアップできたら,またお邪魔しますね~
投稿: なな | 2010年2月24日 (水) 22時29分
ななさ~ん、こんにちは!今日はお昼休みを利用して遊びにまいりました♪旅行から帰宅早々ひどい風邪を引いて寝込み、ようやくほぼ回復して、遊びに来られました~!
本作、わたしも子供の頃に確かに観ているハズなのに、まったく覚えてない!なんでかな・・・理解していなかったのかもしれません。今度もう一度観てみようと思います。この作品となぜか「アンタッチャブル」が入り混じってます(恥)同じ禁酒時代だから!?
ところで、ななさん、グリーンのおしゃれなベレー帽が良く似合う~カワイイ!!
投稿: JoJo | 2010年2月25日 (木) 12時56分
JoJoさん こんばんは~
お風邪だったんですね,
お見舞いコメントもせずにごめんなさい。
長引いたのですね,何はともあれ,回復してよかったです!
ここ数日は気持ち悪いくらい暖かいので
かえって体調が狂いそうですね。
病後のケア,十分に気をつけてくださいね。
で,この作品ですが,私も若すぎる頃に観て
「なんだかとってもいい作品」という印象だけは受けて
細かいことはまったく理解できず,
あらすじ(特に後半)がそんなに記憶に残らなかった作品です。
でも今回見直してみて,ほんとに大傑作で
ゴッドファーザーにも負けてないな~と思いました。
ぜひ,機会があれば再見してみてくださいませ。
>グリーンのおしゃれなベレー帽・・・・
褒めてくれてありがとう~
これはお気に入りで,この冬はよく被っていました。
帽子はけっこう好きなんですよ~
投稿: なな | 2010年2月26日 (金) 00時25分
こんにちは~~
私もこれ好き★
同じく若い頃に見て(かなり前・・・笑)
完全版のDVDが出た折に再度見たけれど(購入・・・★)
色々思うことあったわ・・。やっぱりある程度、年いってからのほうがグググ~~とくるよね♪↑のブリッジ背景の場面は
この映画の象徴のようなショットだよね。映像も音楽もツボに
はまったわ。そうよね・・・・長いから気軽に誰かに観てね・・といえないのが残念だよね。それにしでも、ジェニファー・コネリーは可愛かったよね・・私もそんな時代があったのよね・・・
・・・・デニーロと同じ気分になるよ。
投稿: みみこ | 2010年2月26日 (金) 11時44分
みみこさん こんばんは
コメント嬉しい~,やっぱりご覧になっていたのね,これも。
>やっぱりある程度、年いってからのほうがグググ~~とくるよね♪
あるある~,そんな作品けっこうあるけど
これもだけど,「ゴッドファーザー」も
若いころに観てもわけわかんなかったけど
年いってから観たら「あそこはああいう意味だったのか」と。
あのブリッジを遠景にした場面,美しすぎて
あれとジェニファーのバレエシーンだけは覚えていました。
ジェームス・ウッズの裏切りなんか,全く記憶から飛んでたけど・・・・。
ジェニファーが子役を演じたデボラが成人したときの女優さん。
どこかで観たような・・・と思ってググってみたら
「鳩の翼」でヒロインたちの侍女(コンパニオン?)役のひとでした。
黒髪になってて,年もとってて,全くわからなかったわ。
投稿: なな | 2010年2月28日 (日) 19時55分
こんばんは
ワ行の中に、この映画は絶対入っている確信のもとに検索!
もち、ありましたねうれしいです。
私のベストテンの中に入る映画です(^_^)
もう、ずいぶん前の映画なので全体のストーリーを覚えているだけで、細かい描写などは記憶が薄れてしまったのですが何故か胸キュンになり、せつないシ−ンとして覚えているのが、こっそりショートケーキを盗み食いするシーンです。ほんの少しクリームを指でなぞり、やめるつもりがとまらなくなってしまう、、、 映画音楽もせつなく流れます。
この映画はマフィアの世界を描きつつ、人生も見事に描いてますね。
当時、この映画を観たのは上映時間21時からの、小さな小劇場でした。つまらない映画ならすぐ居眠りしてしまう(笑)時間ですが、どんどん引き込まれ時間の過ぎるのはあっという間でした。
レンタルでも観たけれどあのラストシーンは、やはり映画館で観る映画ですね。
投稿: NONNON | 2011年7月 1日 (金) 20時33分
NONNONさん こんばんは
こちらにもコメントありがとうございます。
私もこの作品は愛してやまないものの一つです。
しかし長いせいか,何度観ても
細かいストーリーは頭に入らないんですが・・・
それでも作品全体から受ける
「美しさ」「切なさ」「哀しさ」などが強烈で
登場人物たちの少年時代,青年時代,そして老いてからと
どの時代の物語も愛しく胸に迫ってきますね。
この作品のデ・ニーロも大好きです。
マフィアものとしては
大好きな「ゴッドファーザー」とはまた一味違った魅力で
甲乙つけがたいと思っています。
そうそう,あのケーキのシーン・・・
私も大好きで心に残っています。
投稿: なな | 2011年7月 6日 (水) 21時19分