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2010年1月 3日 (日)

復讐者に憐れみを

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パク・チャヌク監督による,復讐3部作の第1章。

オールドボーイ親切なクムジャさんに比べると,3作の中では,この作品が一番人気が低いかも。事実,私もこの作品のレビューは今日まで後回しにしてきたし,この機会に観直してみたら,中盤から記憶が飛んでいた。(たぶん初見時は,途中で観るのを断念したらしい,自分)

しかし,今回じっくりと最後まで再見してみて,3部作のなかでも,監督が一番描きたかったのは,この物語なのではないか,と痛感した。好き嫌いは確かに分かれても仕方のない救いのない物語だが,その完成度は素晴らしく,訴えたいことが直球で強烈に伝わってくる。
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思えば,オールドボーイもクムジャさんも,どちらもストーリーを面白くするためにか,かなり奇天烈な設定(15年間の監禁とか,被害者の集団私刑とか)が入れられており,その奇想天外なところがまた魅力だったのだが,この「復讐者に憐れみを」は,そんな「一見ありえないような」派手な設定はなく,どこまでもリアルで,ある意味シンプルに復讐の連鎖が引き起こす悲劇を容赦なく描き切っている

復讐の連鎖にとらわれていく3人の主人公たちは,別に犯罪者でも悪人でもなく,ごく普通の人間たちだ。(ユンミだけはテロリストの卵だったが)
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復讐の連鎖の原因を作ったのは,聴覚障害者のリュウ(シン・ハギュン)。心やさしく繊細なリュウ。たったひとりの肉親である姉の腎臓病を,なんとか治したいと願うが,勤め先からは解雇され,なけなしの退職金を手に,闇の臓器売買屋グループを訪ねた彼は,お金と自分の腎臓を騙し取られてしまう。その後,医者から,姉のためのドナーが確保できたという吉報が入るが,騙し取られてしまった手術費用はすでに無い。
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そんなリュウに,誘拐をすすめる恋人のユンミ(ベ・ドゥナ)。金持ちの子供を誘拐し,身代金を手にして子供は無事に親元へ返す。これは「いい誘拐」だと,しぶるリュウを説得するユンミ。グエムル空気人形のペ・ドゥナ,この作品の髪形や雰囲気が一番可愛い。かなりキレたキャラではあるけれど。

そして彼らが選んだターゲットがシングルファーザーの会社社長,ドンジン(ソン・ガンホ)の娘ユサン。二人は誘拐したユサンを大切に可愛がり,身代金さえ貰えれば,無事に返すつもりでいたが・・・・

警察に知らせずに解決しようとしたドンジンのおかげで,計画通り身代金を手にするリュウ。しかし,真実を知った姉は手術を拒み,自ら命を絶つ。おまけに思わぬアクシデントのせいで,リュウは無事に返すはずだったユサンを溺死させてしまう。
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そしてここから,一気に幕が開ける,壮絶な復讐の連鎖
娘を失ったドンジンは,誘拐犯のユンミとリュウに復讐を誓い,リュウは自分を騙し,誘拐の原因を作った臓器売買グループに壮絶な復讐をする。そしてラスト,ユンミの仲間のテロリストたちが,ユンミを殺したドンジンの前に現れる。

・・・・そして,誰もいなくなった。
まさに,アガサ・クリスティの推理小説の題名の言葉が,なんとも虚しく心に浮かぶラストまで,目を覆いたくなるような,あるいは哀しみに胸を押しつぶされるような残酷なシーンが容赦なく続く。見事に何の救いもない。このあたりから,観るのが辛すぎる場面が耐えられなくなって,わたしは前回DVDを止めたのだろう。

一般の,たとえばハリウッドの好むリベンジものの場合は,復讐される方が極悪非道な悪党で,観客も復讐者にすんなり肩入れし,復讐を応援する気持ちになり,成功のあかつきにはカタルシスを感じる,というものがほとんどだが,この作品は違う。
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この作品では,2人の主要人物であるリュウとドンジンが,ある時は復讐者になり,またある時は反対に復讐される側にもなっているのだが,前述したように,二人とも決して悪人ではないし,それぞれの抱えた事情や心情も同情に値するものなので,彼らの復讐劇は,観ていてとても痛ましく,辛いものを感じるのだ。

聴覚障害者であるがゆえに陥る,リュウの不運。
もし,彼の耳が聞こえていれば,起きなかったであろう悲劇。

シン・ハギュンの天真爛漫な笑顔や寂しそうな表情からは,リュウの純真さが伝わってくる。愛する姉へのひたむきな思いと,強気の恋人に押し切られる気弱さ。そんな,どこから見ても善人そのものの彼が,ひとたび復讐の鬼となったときの,その変貌のすさまじさ。きっと,あの時には彼はもう壊れてしまっていたのだろうけれど。
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そしてまた,ひとり娘を殺されたドンジンの慟哭も,その復讐への異常とも思える執念も,十分に理解できるのだ。ターゲットが哀れなリュウであるだけに応援はできないのだが,それでもドンジンを責めることもできない。

子供を殺された親の気持ち・・・それが故意であろうと,過失であろうと,とうてい許す気持ちにはなれないのではないか。自らを「まっとうに生きてきた」と言う,こちらももともと善人のドンジンが,ユンミやリュウに取った復讐の方法の残酷さには目を覆いたくなるのだが。

唯一,復讐されても仕方ないかな?と思えたのはあの臓器売買の輩たちだけで,あのシーンだけはちょっとカタルシスがあった。(いきなりリュウが強すぎ,とは思ったが)

最後に登場したテロリストたちには,「要らんことを!」とも怒りを感じたけれど,それでも彼らの顔からは,ドンジン個人に対する憎しみは感じられず,「掟だから仕方なくやってる」という哀しみや諦めのようなものすら感じられ、複雑な思いになった。
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復讐者に憐れみを。
まさに邦題どおりのテーマである。

復讐の持つカタルシスではなく,その正反対にある負のパワーを「これでもか」というほど辛辣に,手加減することなく描いている。
しかし「復讐は虚しいし,損だからやめましょう」という説教臭さはなぜか感じられない。ただ,真実を描いた・・・そんな感じがする。

復讐なぞ,誰だって,したいと思ってするわけではない。

しかし,人は時にはそういう運命に囚われることもあり,復讐の負の連鎖に翻弄されて滅んでいく可能性を誰しもが持っていると監督は言いたかったのだろうか。復讐を肯定も否定もせず,翻弄される人間を憐れんでほしいと,そう言いたかったのではないかと思う。これほど見事に復讐の本質をシンプルに浮き彫りにした物語はないのではないだろうか。

 

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コメント

この映画の復讐がある意味一番恐ろしいですよね。
『オールド・ボーイ』の復讐は表面的に恐ろしい、『親切なクムジャさん』の復讐は心理的に恐ろしいのに対して、この映画の復讐は生理的に恐ろしいものでしたから。

まさに負の連鎖の象徴ともいえる映画だったと思います。

にゃむばななさん こんばんは!
今年もよろしくお願いいたします。

この作品の復讐が生理的に恐ろしいって
わかる気がします。
だから私は初見時は
最後まで観ることができなかったと思います。
それに,復讐されるのが,されて当然の人間ではなく
事情を抱えたキャラだったので
余計に観るのが辛いですよね。
「オールドボーイ」と「クムジャさん」は
エンタメ性やカタルシスがまだあるので救われますが
この作品はまさに復讐の負の部分だけ描いていて
だから凄いんですけどね。
今にして思えば,これが1作目でよかったかも
これが最後のまとめの作品なら,やりきれないですね。

容赦のない韓国映画でも、ラストには微妙な望みを感じさせるショットはあるものです。(オアシス、シークレットサンシャイン、はたまたオールドボーイにおいても ・・)
がしかし、この映画には一切、全くもってありませんね。この
最後のかすかな光さえも残そうとしない徹底度は恐れ入りました。たぶん、こういう映画は玄人向きな観客でないと受け付けないような気がします。R18になっていますしね。
ななさんも書いていらしゃるように、パクチャヌクはこの映画が一番描きたかったのではないか?そう思います。
復讐はダメなんだという説教くさいものを排除する演出だからこそ、余計に感情を揺さぶられました。
 映像的には、シンハギュンがブローカーに会いに行く
階段のシーンのロングショットは上手いなあ~と思いました。
兄姉が住むアパートの美術もオールドボーイやクムジャさん同様にセンスありましたね。
さすが、もともと映画評論家だったらしく、無数の映画が右脳にインプットされていたんですかね?

※ 新作、「渇き」はまたしてもかなり評判はいいようですね。
これは多分、博多でも公開されますから観れるので楽しみです。

※韓国映画のデータベースとして、『輝国山人の韓国映画』
とうHPがあります。かなり詳しく載っています。
私がやっているわけではありませんがおススメですよ~

みちしるべさん こんばんは

韓国映画は総じて他の国の作品よりきっとバッドエンドの本数は多いのではないかと思いますが,ここまで救いを徹底的に排除した作品はないですよね。思えば,あの「チェイサー」でさえも,被害者の娘とデリヘル社長の絆の誕生とか,なにか救いのシーンはありました。この作品はそんなものは一切なくて,わたしは今回初めて最後まで観て,ソン・ガンホがあんなことになるラストシーンは,実は呆気に取られるくらい衝撃的でした。

復讐とは,そこまで救いがないものなのかもしれません。リアルの世界ではね。復讐でカタルシスが得られるのは,ハリウッドの作品の世界の中だけなのかも。だから「復讐者に憐れみを」なんですよね。

聖書の中に神が「自分で復讐してはいけない。復讐は私の仕事だから」という箇所があります。旧約聖書ですけど。それを口語訳でなく,文語訳で言うと,「復讐するは我にあり」となります。邦画でもそんな題の映画がありましたね。緒方拳さん主演で。あれも救いのない後味の悪い作品でした。
「復讐するは我にあり」という言葉だけ見ると,「我」というのは被害者のことだと思いがちですが,この言葉の本来の意味は「我」と言うのは「神」のことなんですよね。だから人間は復讐はしないほうがよいと・・・・それはこのように負の連鎖を呼んでしまうからかもしれません。しかし,実際のところ神様は,復讐してはくれないことの方が多いように見えますけどね。だから自分でやりたくなるのもまた真実なわけで。

パク・チャヌク監督は何しろ映画が好きで好きで,だから凄く研究してるし,いい作品が撮れるのだろうと「オールドボーイ」の特典映像で俳優さんかスタッフのだれかが,言ってました。彼の新作,楽しみです。

サイトの紹介,ありがとうございました。また覗いてみますね!


お邪魔します~
今年も仲良くしてくださいね。
わ~~、新年早々、重い映画を再見されたのですね。
ななさんの感想、じっくり拝見させていただきました。
そして↑の聖書のくだり。とっても参考になりました。
そうか。。そういう風に考えるのかって。
実は上の作品、私はダメでした。ななさんは、最初途中挫折されたようですがお気持ちわかります。私はとりあえず、最後まで観るには観たのですが、観終わった後、これは、再見はありえないなと確信しました・・・笑
リアルな部分を受け止めるだけが精一杯でそれ以上の
思考が湧いてきませんでした。
火葬シーンや、ペ・ドゥナの拷問とかに趣味の悪さを感じて。
市川染五郎に似た人がいたよね・・・という妙な印象のみ。
でもオールドボーイは好きなんだな・・・。理由はななさん
おっしゃるとおりだと思うけど。
まあ、いろんな感想があるってことで。
でも、次回作はきっと観ると思うわ・・楽しみだよね。

再びすみません。名無しでしたね・・
みみこです~~

みみこさん こんばんは!

今年もよろしくね~
お名前がないけど,雰囲気でみみこさんかなぁ~?とは
思っていたんですよ。(笑)
そっか~,これ,ダメだったのね。
わかるわー,私もそうだったもん。
私はペ・ドゥナの拷問と
シン・ハギュン(=市川染五郎?)が
川の中でアキレス腱切られるシーンが
生理的に受け付けなかったなぁ。

でもこないだ個人的にソン・ガンホ祭りやってて
久々にJSAを観たら
この映画もこの監督で
ソン・ガンホさんとシン・ハギュンさんも出ていて
とくにハギュンさんの演技に泣かされて
それてこちらの作品も最後まで観てみようかなと。

再見してみたら,思ったほどエグさが感じられなかったのは
きっと今年観た「チェイサー」とかのせいだわ。
だってこの映画以上にエグいし後味悪かったから,チェイサーは。
こうやってだんだんこの手の作品にも
免疫がついてくるのかな?
それにしてもこんな作品をさらりと撮ったり
それを受け入れる韓国人ってすごいです。
でもこの作品はさすがに,韓国内でも
そんなにヒットしなかったとか・・・・エンタメ性がないものね。

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復讐三部作の衝撃の第1作目、『オールド・ボーイ』の原点と聞いてから見てみましたが、これが救われない映画でしたね。映画自体が悪いのではなく物語りが救われないのです。復讐が復讐を呼ぶ負の連鎖にかなり気分悪くなったことを覚えていますが、ミニシアターの隠れた秘作....... [続きを読む]

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