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2010年1月の記事

2010年1月29日 (金)

LOVERS

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わたしが金城武と出会い,彼の美しさにストレートにノックアウトされた作品がこれ。この作品の見所は,何といってもイーモウ監督こだわりまくりの映像美。使われる色そのものもだが,その取り合わせの妙が素晴らしい。

劇中に登場する,森や竹林,草原や紅葉といった自然の色を背景にして,鮮やかに映える衣装の色。これは衣装担当のワダ・エミさんの力もあるだろうけど,やはりイーモウ監督の,ただものではない美意識のなせる技だろう。
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初期の作品ではまだ渋く,最新の作品,王妃の紋章では少し華美すぎる気もする色彩の取り合わせが,この作品ではちょうど最高のバランスの境地に達しているのではないかと思う。

とにかく使われる色がすべて,目を見張るほど美しく,そして洗練されている。牡丹坊でのツイィーの舞踏シーンの衣装に多用された,柔らかな薄紅色やセルリアンブルーのハーモニーにはうっとりするし,逃避行をするときの彼女と金城さんの色違いの衣装の臙脂,茶,群青色も,あざやかな林の木々や葉の色に映えて美しい。また,飛刀門一族の衣装は,周囲の竹林の色に溶け込むような綺麗な若草色だ。
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ストーリーは込み入っているように見えるが,敵同士の間の許されない愛,三角関係,誰も幸せにならないラスト,といった王道のラブストーリーで,何よりも主要登場人物が3人のみ,というのがわかりやすい。

そしてまた,この3人がみんな美しく,
キャラ立ちまくりで素晴らしくて。


たおやかさと少年のような硬質な美しさを持つ,盲目の踊り子,実は飛刀門の女戦士・小妹(シャオメイ)を演じたチャン・ツイィー。 端正な顔立ちで弓の名手でもあり,小妹と運命的な恋に落ちる役人のジンを演じた金城武。 そして,彼の同僚(実は飛刀門からの密偵)で,小妹を深く愛するリウを演じた,渋さ全開のアンディ・ラウ
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3人の間で繰り広げられる愛憎の物語。
押さえ切れない思いや葛藤,愛するがゆえの憎しみや悲しみを表現する,3人の表情の見事さには,それぞれ見惚れてしまう。そして切ない名セリフもまた多い。

小妹; 「なぜ戻ったの?」
ジン; 「戻るさ。君のためなら。」

リウ; 「俺は三年間想い続けたのに,お前は三日であいつと」
・・・・などなど。

アクションシーンも,中国武侠映画ではお約束の,竹林での戦いや,一刀必殺の飛刀シーン,弓をあざやかに連続で射る金城さんのシーンとか,見ごたえたっぶりだ。特に予想を裏切る飛び方で,必ず相手を倒す飛刀門の技は凄い!
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基本的に背景はCGに頼らず,ロケ映像に命をかけるイーモウ監督。この作品も,竹林は四川省で,美しい森や原野はウクライナで撮影したそうだ。

花の咲き乱れる原野で,ジンが小妹に花束をプレゼントするシーンがあるが,このシーン,花畑用にと数ヶ月前から苗を植えておいた花が,監督のイメージにかなう成長をしていなかったため使わず,急遽探し出した別の場所での撮影(だから花は野生)だったそうである。特典を観ていて,「こだわりの強い監督の下のスタッフってなんて大変なんだろう」と思ったが,こんなこだわりがあったからこそ,素晴らしい映像の作品ができたのだろう。
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また,10月のウクライナでの撮影中,急に季節外れの大雪に見舞われ,前日まで紅葉を背景に撮っていたリウとジンの一騎討ちのシーンを,やむを得ず続きを雪の中で撮影し,結果的には,紅葉の中で始まり吹雪の中で終わる,あのような印象的な戦闘シーンになったそうである。
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実は私も一番感動したのがあのシーンで,何が感動って,アジアを代表するイケメン二人が一人の女を取り合って組んづほぐれつの肉弾戦を延々と繰り広げていることに感動,というか,このシーンを見ると瀕死のツイィーが羨ましくなる。いーなあ,あんな二人に命懸けで愛されて。

そして哀しいクライマックスを迎えるラストシーン
リウの飛刀はジンに向けられ,小妹は自分の心臓近くに刺さった刀に手を伸ばし,自分の命と引きかえにジンを助けようと,リウを狙う。「あの人を殺すなら,わたしもあなたを殺す」・・・・このシーンで,一番可哀想に思えたのは,リウ。アンディの演技が,もっとも光る場面だ。
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結局,リウの手の中の飛刀は宙を飛ぶことがなく,彼は憎い恋敵を殺すことよりも,自らが小妹の刃に倒れることのほうを選ぶ。しかし小妹の刃は,ジンを守るためだけに投げられたもので,彼女はリウの命を奪うつもりはなかった。それぞれ相手の思いがわかった時の表情が切ない。

息を引き取る小妹と,嘆きの中に取り残される男たち。
このラストシーンの三人三様の悲劇が哀しい。主題歌の美しい調べとともに,ベタなお話とわかっていても,必ずうるうるしてしまうシーンだ。
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今回,感想をまとめるために久々に再見してみたが,何度も観ているはずなのに,やはり同じ場面で新鮮な感動や興奮を覚える。エンタティーメント色の濃い作品ではあるが,同時に心を打たれる抒情的な物語でもあると思う。

とにかくこの映画,半端でなく美しいのだ,何もかも!映像も,描かれる愛も,音楽も,そして3人の俳優さんたちも。
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2010年1月26日 (火)

縞模様のパジャマの少年

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DVDで鑑賞したのは昨日。そしていまだに,この作品の衝撃のラストをひきずっている・・・・。ナチスの将校を父に持つドイツ人少年と,収容所内のユダヤ人少年との友情と悲劇を描いた物語。

ほぼネタばれです。未見の方はご注意ください。

父が所長に就任した収容所の近くに越して来た一家。8歳の少年ブルーノの目には収容所は農場にしか見えず,中で働いている人たちが,みんな縞模様のパジャマを着ているのを,不思議に思う。
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近くに人家もなく学校へも行けず,友達が欲しくてたまらないブルーノは,親の目を盗んで収容所(彼にとっては農場)に出かけ,有刺鉄線の張り巡らされた塀越しに,ユダヤ人の少年シュムエルと出会う。

ホロコーストを題材にした映画は,シンドラーのリストヒトラーの贋札など,史実に基づいて脚色された作品が多いが,この物語は,まったくのフィクションだ。確かにフィクションらしく,あり得ない展開と設定の物語だが,同時にフィクションでよかった,と安堵するほど,残酷で救いのない物語でもある。

8歳の少年の目線で語られる物語は,終盤近くまで淡々と穏やかに続く。両親や使用人たちの言動から,この時代の不穏な空気を感じ取ってはいるものの,しょせん8歳の子供は,大人が誰も教えてくれないことを自分で見抜く力はない。
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ブルーノの目には,塀の向こうのシュムエルが着ているのは単なるパジャマで,胸につけられた番号は,ゲームのためだとしか映らない。

塀のこちら側とあちら側では,天国と地獄ほどの違いがあることを知らないブルーノ。縞模様のパジャマがどんな運命を意味するのかもわからず,もちろんパジャマを着た人たちへの差別心もない。当たり前だ。それは8歳の無垢な子供の理解を越えた世界だから。

夫の仕事を知ってはいても,実際に収容所の中で何が行われているのか知らなかったブルーノの母は,収容所の煙突の煙の正体を知ったときにショックを受け,嫌悪や罪悪感から次第に精神を病んでいく。・・・・しかし彼女もまた,ブルーノに真実を教えることはしなかった。いや,できなかったというべきか。
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そしてあの日,何の恐怖もなく塀を越えたブルーノ。いなくなったというシュムエルのパパを一緒に探すために。シュムエルが手に入れてきた縞模様のパジャマを身にまとって。

初めてシュムエルと手を取り合い,寄り添ったときに,二人がかわす微笑みが切ない。二人のいる場所が,塀のあちら側ではなく,こちら側だったら,どんなによかったことだろう。
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ラスト15分の間に起こる悲劇には打ちのめされて声もでない。ブルーノが着替えた時から,先が読めたが,それでも「予想が当たってほしくない」と祈るような気持ちで画面を凝視した15分間。・・・・しかし,救いはなかった。

これはユダヤ人を処刑してきたブルーノの父への天罰なのだろうか?そうだとしても,それでもあまりにも残酷だ。「塀のこちら側にいる者は,決してあちら側へ行くことはない」と思っている人々の,無関心や無知の愚かしさ。自分の身にふりかかって初めて,体感できる想像を絶する他人の痛み。そしてまた,「縞模様のパジャマを着た少年」というタイトルの持つ,本当の意味が腑に落ちたときに感じる戦慄。
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美しい映像。
心に残る子役の演技。
語り過ぎない秀逸な脚本とラストの衝撃。
訴えてくるメッセージの強烈さ。

軽々しく誰にでもお勧めはできないけど,紛れもなく傑作である。たしかに残酷すぎる物語だけど,ホロコーストが史上最大の凶悪犯罪であることを考えると,このような物語もあっていいのではないか,と思えた。その事実を風化させないためにも。そして,人類が再び同じ過ちを繰り返さないためにも。

2010年1月23日 (土)

Dr.パルナサスの鏡

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一昨年の昨日,撮影途中に急逝したヒース・レジャーの役を,ジョニー・デッブ,ジュード・ロウ,コリン・ファレルの三人が引き継いで完成させたテリー・ギリアムのファンタジー話題作。ヒースの命日の翌日に公開とは,なかなか狙ったタイミングである。

ヒースの遺作ということももちろんだが,彼の役を引き継いだ俳優陣の豪華さが話題を呼んだ作品。もちろん,公開初日に鑑賞。そのストーリーは・・・・。
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人が心の中で想像した世界を映し出す魔法の鏡
を持つ旅芸人の座長,パルナサス博士(クリストファー・プラマー)は,不死の命と引き換えに、娘ヴァレンティナが16歳になった時,彼女を悪魔に差し出す約束をしていた。約束の期限が迫ってきているある日,橋の下に吊されていた謎の青年トニー(ヒース・レジャー)が一座に加わり,事態は思いがけない方向へと進んでいく…というもの。

白状すると,ファンの方には誠に申し訳ないが,ギリアムさんの作品は個人的にはかなり肌に合わない。(ヒースのブラザーズ・グリムも,鑑賞中に,劇場を何度も途中退場しようかと真剣に思った。)何と言うか,この監督さんのストーリーのよさが私にはわからないのだ。ただの意味不明なドタバタに思えて。それに,大人のファンタジーが特に好きでもない身としては,今作のあらすじを知っても,ちっとも鑑賞意欲をそそられなかった。ただひたすらヒースに再び逢いたいがための鑑賞。言いかえれば,ヒースの遺作でなかったら,きっとスルーしてた可能性大の作品。
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で,鑑賞した感想は・・・・・ヤバイ,やっぱり悪い予感が的中してしまった。(以下,かなりの辛口感想です。ギリアムファンの方,またはこの作品をお好きな方,ご容赦を。あくまでも個人的な好き嫌いからの観点です。)

ダークナイト以来,約1年と半年ぶりにスクリーンで観たヒース。
首吊り男トニーって,実は悪徳慈善家という,胡散臭い役なのだが,スクリーンに登場した彼を観たとたん,懐かしさと愛しさで思わずウルウル。この世にはもう彼がいないのに,映像のヒースはやっぱり変わらず素敵で健在で・・・・映像の彼が素敵であればあるほど,余計に彼の不在が哀しく感じる。
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ダークナイトのジョーカーとは正反対の,陽気で軽妙なキャラのヒースの魅力。彼のよく動く表情や,コミカルな身体の動きを追うだけで,確かに幸せな気持ちになったけど。

しかし同時に,はじまって間もなく,「はやく終わらないかな?これ」と感じたのも事実。スクリーンのヒースはいつまでも観ていたい,でもこの作品ははやく終わってほしいという,非常に矛盾した2時間を過ごした。2日前にひいた風邪をまだひきずってて,体調が万全でない,という日には,かなりツラい2時間だったかも。でも,ジョニーやコリンに混じって,終盤でもけっこうヒースが出てくるので,気が抜けないと言うか,睡魔にだけには襲われずに観ることができた。もう目にすることができない,と思うと,ヒースの映像はどんな些細なものでも目に焼きつけておきたいから。
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しかし,やはり「ギリアムさんの作品は,残念ながら私は性に合わない」ということを再認識させられた。「なんでそこでそういう展開になるの?」とか「その台詞はどういう意味なの?」とか唐突なストーリー展開や,発想や行動がイマイチ共感しにくいキャラたちが繰り広げる大騒ぎに,居心地の悪い思いになるのだ。同じ大人のファンタジーでも,ティム・バートン監督の世界は大好きなのだが。

もっとも,鏡の中に入った人の願望や想像が,実際に映像となる場面は面白かった。少年はお菓子とゲームの世界,お金持ちの婦人はブランド物の世界。私が鏡の中に入ったら,さしずめ猫づくしの世界かもしれない。選択を誤ると大変なことになるのはイヤだけど,それでも入ってみたいなぁ,鏡の中。好きなものばかりに囲まれた世界って心地よいと思う。世界中のあらゆる種類の猫に囲まれて至福の時を過ごしたい・・・(世界中のイケメンでもいいけど)
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そして,ヒースのやり残した後を継いだ,3人の天晴れな俳優たち・・・,ジョニー,ジュード,コリンは,どなたも素晴らしかった。編集もとっても上手くて,初めから4人でトニーを演じることになっていたかのように違和感なかったし。

3人とも,それぞれの持ち味がうまく役柄に反映されていて,婦人をエスコートするジョニーはあくまでも紳士的で美しいし,ジュードはやんちゃ,コリンはちょっとワルっぽい役回りで。次はヒースが誰の顔になるかな~?という楽しい期待もあったりして。

映像や音楽や衣装の雰囲気は好きだ。ミステリアスで幻想的で美しい。しかし,自分にとって,ストーリーやキャラが消化不良なところが多い作品は,やっぱり観ていて少なからずキツいものがある。(一番意味不明なキャラはパルナサス博士だったが・・・・)イマジネーションの映像化,という作品では,落下の王国などはきっちり感動したんだけどなぁ。
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エンドロールが始まると,最後まで撮影を全うできなかったヒースに追悼の気持ちがこみあげてきた。親交があった俳優たちが,力を合わせて未完成の作品を仕上げてくれた・・・それはそれで心温まる美談なのだけど,やはり彼に最後まで演じてほしかった思いも捨てきれない。ジョニーたちが加わったことは,たしかにこの作品の話題性を上げ,作品にメリハリをつけているのだけれど。

2010年1月20日 (水)

不夜城

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不夜城という響きが好きだ。
眠らない街,新宿歌舞伎町。夜の8時には,商店街が早々とシャッターを下ろす四国の片田舎から一歩も出たことのない身としては,夜通し喧騒とネオンに彩られる街には,憧れさえ感じる。・・・たとえ,そこにどんなやっかいで危険な魔物が潜んでいようとも。

この物語のもうひとつの主人公は,他ならぬ新宿歌舞伎町そのものなのだろう。さまざまなアジア人種が生存競争を繰り広げる無国籍都市,歌舞伎町。
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不法滞在者,残留孤児二世,中国三大マフィアの抗争
などなど,私にとって,初めて知った事実も多かった。(原作は未読。)治安のいい我が国では,おそらく唯一ハードボイルドの世界が似合う街,それが歌舞伎町なのだろうか。

金城武が演じた主人公の劉健一は,日本人と台湾人のハーフで,どのグループにも本当の意味では属さず,一触即発の緊迫感をはらんだ歌舞伎町の中国人たちの間を器用に渡り歩いている故買屋だ

「食うか食われるか」という危険な世界の中で,日本人でも中国人でもない彼の抱える,一匹狼ゆえの誰にも心を許せない孤独と,いつ命を狙われてもおかしくない危うさ。

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ひっつめ髪に黒いコート姿で,馴染みの輩に声をかけながら,歌舞伎町の街並みを,手慣れた風に歩いていく彼。その後ろ姿がハンディカメラの長回しで写し出されるオープニングのシーンから,金城さんの全身から醸し出されるオーラに釘付けになる。

当時24歳だったという金城さんは,今の彼と比べると日本語の発音がかなりたどたどしい。(ということは反対に今の彼はだいぶ日本語が上手くなっているということか)。そしてお顔は今より少し細面で,切れ長の目の美しさが際立っている。 そのたたずまいからは,弱冠24歳とは思えない成熟したクールな色気が漂うところはさすがだ。
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物語の詳細は説明しない,というか人間関係も中国名もややこしくて説明しにくいのだが,中盤からは,上海,台湾,北京の三大マフィアの覇権争いが本格的に繰り広げられ,互いに裏切られたり騙されたり,の緊迫したシーンの連続。そしてその渦中を生き延びるために,危険な策を弄する健一。

健一を取り巻く人々。かつての相棒の呉富春(椎名桔平)や,健一がおやじさんと呼んでいる漢方薬店の楊偉民。そして健一が愛した,夏美と名乗る謎の女(山本未来)。日頃親しくしている相手でさえ,いつ自分を裏切り,寝返るかわからない。
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そしてまた健一自身も,自分の利益のため,もしくは保身のためにいつ誰に銃を向けるかわからない。この物語の登場人物全員が,お互いに誰も相手を信用していないのだ。特に終盤の,目まぐるしい裏切り合戦は,いかに素早く状況を判断し,先を読んで行動できるかで,勝敗が分かれていたように思う。

しかし何という厳しい殺伐とした世界だろう。
そう,人間不信の極み。真実の愛など求めてはいけない世界で,それでも真剣に愛したいと願った相手を,結果的にはあのような形で喪った健一。二人の間には愛も確かにあったかもしれないが,どちらも相手への不信やエゴの方が強かったのだろう。
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健一はその体験から,よりしたたかに,より冷酷に成長し,いずれ彼は,歌舞伎町を牛耳る存在にまでのしあがっていくのだろうか。

「ところで夏美って誰だ?」というラストの健一の台詞に,彼の気持ちや,今後の生きざまが見えたような気がした。おそらく彼は,もう再び誰かを愛することはないのだろう。

自分が全く預かり知らない別世界を垣間見れる作品。そして幅広い金城さんの魅力に触れることができる作品。しかしきっとこのダークでハードな物語を深く理解したいのであれば,映画よりは原作小説の方が,断然オススメなのだろうけれど。

2010年1月18日 (月)

DVD化,もしくは再版してほしい作品たち

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過去にVHSで鑑賞した大好きな作品のうち,DVD化されてなかったり,廃盤もしくは販売店ではもう扱ってなかったりする作品,レンタル店の店頭からも姿を消し,ネットに出品された中古には,法外な値がついていたりして・・・そんな理由で,再見したくてもできない作品,私の場合も,いくつかあります。たとえば・・・・

紅夢
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チャン・イーモウ監督の知る人ぞ知る傑作。
1991年製作。コン・リー主演。十数年前に,わたしが初めてビデオで観た中国映画がこれ。それ以来,イーモウ監督作品にハマった。富豪の家に第4夫人として嫁いだ少女が,封建的,閉鎖的な「家」社会の中で,次第に正気を失っていく悲劇の物語だが,赤と黒を基調とした美しい色彩や,完璧なシンメトリーになっている構図など,見事な映像が素晴らしい
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「紅夢」という題は,主人が夜を過ごすと決めた夫人の居室の前に赤い提灯を灯したところから来ている。美しくも残酷な物語だが,実はイーモウ監督作品の中では一番好きな作品。監督の,映像や構図への徹底したこだわりは昔から同じだけれど,最近作の王妃の紋章などと比べると,ずっとシンプルなだけに,かえってその映像美が際立っている。コン・リーも若くて綺麗。これだけの傑作が,残念ながらDVD化されていない。

司祭
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カトリックの司祭でありながら同性愛者である青年の苦悩を描いたシリアス・ドラマ。1994年製作。キリスト教会が説く罪と裁きとは?赦しとは?そして戒律とは?とさまざまなことを鋭く問題提起した作品。カトリック教会からは冒涜だと激しく非難されて話題を呼んだ。

主演のライナス・ローチの他にも,先輩の神父にトム・ウィルキンソン,グレッグ神父の恋人にロバート・カーライル,と豪華な顔ぶれでもある。これは,もう中古しか手に入らないのだけど,ネットでは10000円以上の,法外な値がついている。

ファイアー・ライト/情炎の愛
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ソフィー・マルソー主演
,1999年日本公開作品。舞台となった英国の冬の田舎の館の雰囲気や,ストーリーそのものも,なんとも言えず好き。そしてソフィー・マルソーがとても美しく魅力的だ。お金のために代理母をつとめたソフィーが,数年後に手放したわが子を再び取りもどすまでの物語。これはDVDは廃版になっている。ネットに出品されている中古もお高い。

モーリス
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もうこれは説明は要らないでしょう~。英国のカレッジを舞台に繰り広げられる,青年たちの愛の物語。ヒュー・グランドが輝くほどに美しい。これは長いことDVDの再版を待ち望んでいたのだけど(中古なんて2万円ものお値段が!)今年の5月末に待望の再版DVD(HDニューマスター版¥ 2,953 )が出るそうだ!

東宮西宮
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夜の公園で逮捕されたゲイの青年と,逮捕した警官(胡軍さん)の秘められた葛藤の物語。派出所の室内だけで進行する,緊迫した心理ゲームのような展開の作品(らしい。未見だ)東宮西宮とは,紫禁城の両脇に立つ公衆トイレの名前で,ゲイのハッテン場であるらしい。1997年製作。

見たくてたまらないのだけど,日本語字幕のDVDってまだ出ていないようだ。中国語や英語の字幕のを入手しても肝心の台詞の理解が十分にできないと,魅力が半減するだろうし・・・・。

みなさんの,再版もしくはDVD化してほしい過去作品って何ですか?

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

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何ですか・・・この映画の意味不明なサブタイトル「燃え尽きるまで」って。内容と合ってないじゃん。これは,劇場予告を観た地点で鑑賞意欲を削がれて,(だって予告編,夫婦喧嘩のシーンばっかりで)DVDになっても,今まで観たいと思わなかった作品。このたびやっとレンタルで鑑賞~。

うん・・・やっぱりロマンスでもなんでもなく,夫婦間の危機を描いた地味で痛い物語だった。しかし,それはそれなりに見どころもあり,何よりもよく練られた脚本や美しい映像,そしてやっぱり名優のケイトとレオの演技に魅せられた。
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夫のフランクを演じたレオの「ごく普通のサラリーマン」ぶり!どちらかというとブラッド・ダイヤモンドや,ワールド・オブ・ライズのような,ワイルドでハードボイルドやってるレオを見慣れていたので,これはなかなか新鮮だった。ごく普通の男の役って,案外難しいものだから,改めてレオって何でもこなせる上手い俳優さんだと感心。こんな地味な役でも,彼はやっぱり目が離せない上質な演技をしてくれる。
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そして妻のエイプリルを演じたケイト・ウィンスレットは・・・・タイタニックの頃よりずっと細面になって(その分レオが丸顔になっていたが),そして愛を読むひとよりも,ゴージャスな美しさ!50年代の女らしいシルエットの衣装や濃いめのメイクがよく映えること。

で,肝心の物語は・・・・そんなに共感できないところもあったのだ。夫婦間の気持ちのズレや,そこから拡がってゆく溝の存在は理解できるし,どんな夫婦でも起こりうることだと思う。理解できなかったのは,やはり妻のエイプリルの価値観。
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結婚して子育てもしている主婦が,いつまでも,自分たちは「特別な存在」だと信じ込んでいるところとか,パリに行きさえすれば,とにかく夢が叶うと思いこんでいるところとか,ラストに彼女が,絶望からか腹いせからか取ったあの行動とか・・・・

う~~ん,やっぱり彼女には同じ女性として共感はできないなぁ。こんな女性って本当にいるんだろうか,とさえ思う。だって,女性って,本来,巣作りを優先して安定性を求め,そのために必要な環境への柔軟性を男性より持ち合わせている生き物だと思うから。つまり,現状を受け入れ,その置かれている場で最善を尽くすことができる能力は女性の方が上ではないのだろうか?それとも,日本人とアメリカ人の価値観は違うのだろうか?
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とにかく,全編にわたって,フランクが可哀そう~と思ってしまった作品。女遊びやギャンブルや借金で妻を苦しめたわけでもないのに,家庭への愛が報われなかった哀れな夫に見えてしまった。

それでも,いろいろと共感ができない点があるにもかかわらず,最後まで飽きずに面白く見通すことはできた。それは,エイプリルの行動や心境が理解不能すぎて,かえって目が離せなかったせいもあるけれど。

ラストの,キャシー・ベイツの夫の取った行動は・・・。円満な夫婦生活を送るための秘訣はこういうことか。この,ラストの辛辣な教訓が一番心に残ったかも。結婚に対して抱きがちな,非現実的な甘い夢を打ち壊してくれる,どこまでもリアルでシニカルな作品である。こんなテーマは好きだ。

2010年1月14日 (木)

2009年に観たお気に入り旧作DVD!

2009年度に,世間での高評価や,お友達ブロガーさんのオススメに惹かれてレンタルした旧作DVDの中で,特にこれは観てよかった!と感動したものをあげてみました。勧めてくださった皆さん,ありがとう~~~。かなり古い作品もありますが,名作というのはやっぱり色あせないものですね。私の好みにあった10作品は・・・・・

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スケアクロウ

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奇しくもどちらもパチーノの出演作。そしてどちらも男たちの物語。
スケアクロウの若かりしパチーノは可愛いですよ。

オアシス
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ユア・マイ・サンシャイン
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この2作品は,ヒロインを演じた二人の韓国女優,ムン・ソリとチョン・ドヨンの体当たり演技に釘付けでした。テーマも,「オアシス」は障害者の恋,「ユア・マイ・サンシャイン」はエイズ患者の恋・・・・どちらも観た後考えさせられる作品。

裏街の聖者

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人情あふれる,型破りな町医者を演じたトニー・レオンがキュートで最高でした。

マッハ!!!!!!!!!!

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生身の仰天アクションは,ストーリーの薄さなぞ吹き飛ばすほどのパワーあり。

天使の涙

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登場人物の不思議な魅力,そしてあの時代の夜の香港の映像に眩惑されました。

ラヴソング

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テレサ・テンの歌を背景に綴られる,まさに珠玉のような恋人たちの物語

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北野作品初体験。ラストの台詞が心に響きました。

フライ、ダディ、フライ

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爽快&痛快なオヤジのスポコン物語。韓国判もいいですよ。

ちなみに2008年度に観た旧作DVDで,一番感動したのは,何と言っても藍宇(2位は花蓮の夏)でしたが,2009年度の作品は,どれも同じくらい好きで順位がつけにくく・・・・強いて言えば,一番好きなのは天使の涙でしょうか?カーウァイ監督作品の中でも特に好きな作品になりました。

俳優さんで一番印象に残った,というか,DVD鑑賞で初めてその魅力に接した俳優さんは,「ラヴソング」と「天使の涙」のレオン・ライ(黎明)です!この方,名前は知ってたけど,お顔と名前が今まで一致してなかったのね。天使の涙のクールな殺し屋の役も素敵だったけど,ラヴソングの時の純朴な青年役や甘い声にうっとり・・・・。

それと個人的に今年ハマった俳優さんは,金城武さん。
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「天使の涙」や「ウィンターソング」で,彼の幅広い魅力に,悩殺された1年でした。DVDだけでなく,劇場公開作品でも活躍されていましたね~。

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その他にも,昨年来,「藍宇」にハマってから大好きになったリウ・イエ。2009年は,彼の過去の出演作品を追いかけた一年でもありました。

監督さんで注目したのは,韓国映画界に彗星のごとく現れたチェイサーナ・ホンジン監督。この方の撮る作品は,今後も注目していきたいと思います。

いやー、映画って,ほんとうに限りなくいいものですねー。最近はDVD鑑賞も洋画よりアジア映画を観ることが多くなり,お気に入りの俳優や監督さんも,韓国や中華圏の方が増えてきましたが・・・。

新しい新作が次々と公開されるのもむろん楽しみですが,こうして旧作の中から宝ものを掘り出す楽しみもまた捨てがたいものがあります。ブログをやってて一番得したなぁ~と思えるのは,みなさんのオススメが聞けること!これからもよろしくお願いしますね!

2010年1月 7日 (木)

アフター・ザ・レイン(Dark Matter)

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2006年にリウ・イエがメリル・ストリープと共演したアメリカ作品。原題は「Dark Matter(暗黒物質)」・・・・なのになんでこんな邦題がついちゃったんかようわからん。もちろん日本未公開作品。アメリカでは製作からかなり遅れて2008年に公開されたとか。
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この物語は,1991年にアイオワ大学で実際に起こったスクール・シューティング(=学校内での銃乱射事件)を元にしているそうだ。中国人留学生の盧剛(ルー・ガン)が,担当教授や同級生を大学内で射殺し,その後自殺した事件である。

リウ・イエは主人公の留学生で,名前もリウ・シン。宇宙学で博士号を取るために中国から留学してきた彼は,ものすごく優秀な学生で,教授(エイダン・クイン)からも目をかけられ,夢と希望にあふれて研究に励んでいた。
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物語は,そんな明るく素直で模範学生の彼が,挫折や失意の果てにあのような事件を起こすまでの様子を,丁寧に綴っている。彼の才能や発見した新理論への教授の嫉妬や妨害。

教授がわざと彼の卒論を認めなかったために将来が絶たれ,夢がすべて潰えてしまったリウは,故国の両親にそれを打ち明けることもできず,絶望と恨みをすべて胸に抱え込んだまま,自室の荷物を整理し,ジャンパーのポケットに銃をしのばせて,ライバルの学生の晴れ舞台の場に向かう。

※映画の原題の「Dark Matter」とは,宇宙にある星間物質のうち,自力で光っていないか光を反射しないために,光学的には観測できないとされる仮説的物質のことで,リウの研究テーマだった。
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残念ながら,そんなに完成度の高い作品とは思えない。全編を通してとても素直に作ってあるけど,いまひとつ,どのシーンも何か足らなかったり,わざとらしい余計な演出があったりと,稚拙な印象が残る。(とくにBGMは芸がない)しかし,この事件に興味のある人や,リウ・イエのファンは必見の作品。

なぜなら,この作品のリウ・イエはとても綺麗だから。彼の演技も表情ももちろん素敵なのだが,とくに彼の魅力をよくわかってて,綺麗に撮ってくれてるな,とも感じた。

これが撮影されたのは,あの藍宇から5年も経っていたはずなのに,まるで藍宇が戻ってきたような可愛らしい彼に会える。髪形のせいだろうか?坊主頭でも白髪頭でもなく,もちろんひっつめの時代劇頭でもない,わたしの一番好きな髪形のキュートな彼である。
Cap001←こんな

それに,初めからしまいまで,出ずっぱり!前半は,彼の屈託のない,いかにも素直で純な表情を楽しみ,後半は悩める彼の,いじらしく切ない表情に萌えることができる。

暗いお話だし,学術用語は難解でわからないし,ラストに至るまではやや退屈なお話とも言えるのだが, 彼の存在感と魅力は最後までずっと物語を引っ張っていく。
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それに,彼にとってこの物語の主人公はまさにハマり役だ。
彼の魅力である,純朴さ,一途さ,不器用さ。そしてやっぱり何と言っても悲劇が似合うところとか。いや~,彼の作品ってこれまでも報われない可哀そうな役ばかりなんだけど,この作品の彼もまた・・・・見ているのが辛くなるほど可哀そうで,それでもそれがやっぱり似合うし上手いんだな,これが。

この作品の中では,彼は中国語と英語と両方喋っている。英語で宇宙論を論じたりして,大変だったと思う。発音がいいのか悪いのか・・・・どっちにしても彼の声はモゴモゴしてるので(そこが好き)よくわからないのだけど。

メリル・ストリープは,中国人留学生たちの後援活動をしている女性の役で,最後までリウの理解者であり,味方だった。彼女の出番と言うか役回りも,もっと多くすればよかったように思った(なんだか勿体ない)
Cap055
それでも,ラスト近くの,メリルとリウのツーショットのシーンは脚本の薄さにも関わらず,とても心に残るものだった。夢をあきらめたリウが化粧品の販売の仕事を始め,メリルを訪ねて商品をぎこちなく彼女の顔に塗るシーン。

リウ・イエのなんとも哀しそうな表情と,慣れない品を扱うときの,不器用で危なっかしい手つきが痛々しい。そしてメリルはそんな彼を思いやり,控え目ながらも,何とか彼を力づけようとする表情をする。この時の二人の演技が秀逸で,思わずほろりとする。やはり上手いなぁ,お二人とも。
Cap073
しかし,この作品のストーリーが1991年のアイオワ大学の事件をどこまで忠実に再現しているのか,そのことも気になった。もし映画の通りなら,犯人の学生はなんて可哀そうな事情だったのだろうか,と思う。もちろんどんな理由でも,殺人はいけないことだけど。映画では,殺された教授には中学人留学生に対する差別意識もあったような描かれ方だった。本当のところはどうだったのだろうか?

最後に・・・・
藍宇を彷彿とさせる画像を二つ。
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これとか・・・

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これなんか・・・・
特に下の画像なんか,横に胡軍さんがいても,ちっとも不自然じゃないよね。

DVD買いたいのだけど,現在のところはレンタル専用で,どこも扱ってないみたい。いずれレンタル店からも姿を消しそうな予感がするので,買っておきたいのだけど・・・。そのうち販売されるだろうか?
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メリルたちと。あらら,やっぱりそんな髪形?
一気に老けた・・・いや,大人びたよ,リウ君。前髪下ろしてジャージ着てると高校生にも見えたのにね。
Riuie533← オマケ
やっぱりこんな笑顔が可愛い。

2010年1月 5日 (火)

アバター

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2010年の劇場初鑑賞作品はこれ。3D映像体験もお初です。

ジェームズ・キャメロン監督が構想14年,製作に4年の歳月を費やしたという,最新の映像技術を駆使したSFファンタジー&アドベンチャー大作。衛星パンドラにやって来た人類と,その星の原住民であるナヴィ族との戦いを描いた物語。

主人公のジェイク(サム・ワーシントン)は,戦闘で下半身不随になった,元海兵隊員。彼は莫大な報酬と足の治療を見返りに,「アバター作戦」というプロジェクトの参加者になる。アバターとは,人間とナヴィを遺伝子操作で組み合わせた肉体のこと。パンドラの大気を呼吸できない人間たちが,ナヴィ族に近づくために考え出したプロジェクトだ。
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人間たちの狙いは,パンドラの奥深く,ナヴィたちのテリトリーにある希少鉱物。それを手に入れるために,彼らを追い払いたい人間たちは,ジェイクのアバターをスパイとしてナヴィ族の中に送り込む。しかしジェイクはそこで,部族の王女ネイティリと恋に落ち,ナヴィ族たちとも絆を深めてゆき・・・・・
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この手の半分CGという作品は,どちらかというと苦手なのだが,これは大丈夫だった。さすが元祖ターミネータータイタニックのキャメロン! ストーリーもすごく面白く飽きさせないし,映像の素晴らしさには,ただもう言葉も出なかった。

3Dも初体験だったので,はじめは慣れるまでは,ちょっと船酔いしたようなイヤな気分に。映像はともかく,字が前面に飛び出てくるって,落ち着かない。吹き替えで観て正解だった。それに私は顔の幅が狭いので,3Dメガネがずり落ちそうで困った。
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しかしこの作品はぜったい劇場で観るに限る!

CG作品にはある程度は慣れているはずなのに,出てくる映像がすべて,「こんなの初めて~」と絶句するような素晴らしさ。臨場感や迫力もだけど,監督が描いて見せたパンドラの夢のように神秘的で美しい世界や,そこに住むナヴィ族やその他の生き物たちのキャラクターのユニークさがすごくいい。飛び出す映像によって,自分もその摩訶不思議な世界で一緒に冒険をしているような気持ちになる。
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それに,この作品,「見どころは映像だけでストーリーは薄い」どっかのディザスター大作とは大違いで,物語もとても感動できた。侵略戦争への批判をしっかりとテーマに据え,またジェイクとナヴィの王女とのラブストーリーや,人間とナヴィ族との板ばさみになって葛藤するジェイクの心情など,ドラマ部分も見応え十分だったと思う。

「とにかく戦が大好きで」どこまでもしぶとくナヴィ族を苦しめる憎々しい大佐や,鉱物採掘しか頭にない,見るからに小物のRDA社の責任者(ジョヴァンニ・リビシが演じてた)など,悪役もほどよく充実しており,面白かった。
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大佐が人間ロボット型戦車みたいなのに入って,ジェイクと死闘を繰り広げるところは,ターミネーターの雰囲気を思い出したし,ジェイクとネイティリとのロマンスは,禁断っぽいところや命がけなところが,タイタニックを彷彿とさせる。

それにしても,CGキャラ(だよね?)なのに,ナヴィ族(アバターのジェイクたちも含めて)のキャラクターの誰もが生き生きとしてて,まるで生身の人間を見ているようで,彼らの感情の変化にこちらもわくわくしたり,ドキドキしたりしんみりしたり・・・まさに血の通ったCGキャラだった。特にネイティリのカッコよさや情の深さには感動し,ジェイクとのロマンスも,ほんとうにうっとりした。キャメロンさんは,ロマンスもアクションもアドベンチャーも得意な監督さんなんだと改めて感心。
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いやー,面白かった!
好きなジャンルではないので,残念ながら年内に観ていたとしてもベスト10入りはしてなかったと思うけど,大満足のお勧めの作品!好きな人はたまらないだろうなぁ~。これ,続編ないのかしら?

2010年1月 3日 (日)

復讐者に憐れみを

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パク・チャヌク監督による,復讐3部作の第1章。

オールドボーイ親切なクムジャさんに比べると,3作の中では,この作品が一番人気が低いかも。事実,私もこの作品のレビューは今日まで後回しにしてきたし,この機会に観直してみたら,中盤から記憶が飛んでいた。(たぶん初見時は,途中で観るのを断念したらしい,自分)

しかし,今回じっくりと最後まで再見してみて,3部作のなかでも,監督が一番描きたかったのは,この物語なのではないか,と痛感した。好き嫌いは確かに分かれても仕方のない救いのない物語だが,その完成度は素晴らしく,訴えたいことが直球で強烈に伝わってくる。
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思えば,オールドボーイもクムジャさんも,どちらもストーリーを面白くするためにか,かなり奇天烈な設定(15年間の監禁とか,被害者の集団私刑とか)が入れられており,その奇想天外なところがまた魅力だったのだが,この「復讐者に憐れみを」は,そんな「一見ありえないような」派手な設定はなく,どこまでもリアルで,ある意味シンプルに復讐の連鎖が引き起こす悲劇を容赦なく描き切っている

復讐の連鎖にとらわれていく3人の主人公たちは,別に犯罪者でも悪人でもなく,ごく普通の人間たちだ。(ユンミだけはテロリストの卵だったが)
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復讐の連鎖の原因を作ったのは,聴覚障害者のリュウ(シン・ハギュン)。心やさしく繊細なリュウ。たったひとりの肉親である姉の腎臓病を,なんとか治したいと願うが,勤め先からは解雇され,なけなしの退職金を手に,闇の臓器売買屋グループを訪ねた彼は,お金と自分の腎臓を騙し取られてしまう。その後,医者から,姉のためのドナーが確保できたという吉報が入るが,騙し取られてしまった手術費用はすでに無い。
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そんなリュウに,誘拐をすすめる恋人のユンミ(ベ・ドゥナ)。金持ちの子供を誘拐し,身代金を手にして子供は無事に親元へ返す。これは「いい誘拐」だと,しぶるリュウを説得するユンミ。グエムル空気人形のペ・ドゥナ,この作品の髪形や雰囲気が一番可愛い。かなりキレたキャラではあるけれど。

そして彼らが選んだターゲットがシングルファーザーの会社社長,ドンジン(ソン・ガンホ)の娘ユサン。二人は誘拐したユサンを大切に可愛がり,身代金さえ貰えれば,無事に返すつもりでいたが・・・・

警察に知らせずに解決しようとしたドンジンのおかげで,計画通り身代金を手にするリュウ。しかし,真実を知った姉は手術を拒み,自ら命を絶つ。おまけに思わぬアクシデントのせいで,リュウは無事に返すはずだったユサンを溺死させてしまう。
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そしてここから,一気に幕が開ける,壮絶な復讐の連鎖
娘を失ったドンジンは,誘拐犯のユンミとリュウに復讐を誓い,リュウは自分を騙し,誘拐の原因を作った臓器売買グループに壮絶な復讐をする。そしてラスト,ユンミの仲間のテロリストたちが,ユンミを殺したドンジンの前に現れる。

・・・・そして,誰もいなくなった。
まさに,アガサ・クリスティの推理小説の題名の言葉が,なんとも虚しく心に浮かぶラストまで,目を覆いたくなるような,あるいは哀しみに胸を押しつぶされるような残酷なシーンが容赦なく続く。見事に何の救いもない。このあたりから,観るのが辛すぎる場面が耐えられなくなって,わたしは前回DVDを止めたのだろう。

一般の,たとえばハリウッドの好むリベンジものの場合は,復讐される方が極悪非道な悪党で,観客も復讐者にすんなり肩入れし,復讐を応援する気持ちになり,成功のあかつきにはカタルシスを感じる,というものがほとんどだが,この作品は違う。
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この作品では,2人の主要人物であるリュウとドンジンが,ある時は復讐者になり,またある時は反対に復讐される側にもなっているのだが,前述したように,二人とも決して悪人ではないし,それぞれの抱えた事情や心情も同情に値するものなので,彼らの復讐劇は,観ていてとても痛ましく,辛いものを感じるのだ。

聴覚障害者であるがゆえに陥る,リュウの不運。
もし,彼の耳が聞こえていれば,起きなかったであろう悲劇。

シン・ハギュンの天真爛漫な笑顔や寂しそうな表情からは,リュウの純真さが伝わってくる。愛する姉へのひたむきな思いと,強気の恋人に押し切られる気弱さ。そんな,どこから見ても善人そのものの彼が,ひとたび復讐の鬼となったときの,その変貌のすさまじさ。きっと,あの時には彼はもう壊れてしまっていたのだろうけれど。
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そしてまた,ひとり娘を殺されたドンジンの慟哭も,その復讐への異常とも思える執念も,十分に理解できるのだ。ターゲットが哀れなリュウであるだけに応援はできないのだが,それでもドンジンを責めることもできない。

子供を殺された親の気持ち・・・それが故意であろうと,過失であろうと,とうてい許す気持ちにはなれないのではないか。自らを「まっとうに生きてきた」と言う,こちらももともと善人のドンジンが,ユンミやリュウに取った復讐の方法の残酷さには目を覆いたくなるのだが。

唯一,復讐されても仕方ないかな?と思えたのはあの臓器売買の輩たちだけで,あのシーンだけはちょっとカタルシスがあった。(いきなりリュウが強すぎ,とは思ったが)

最後に登場したテロリストたちには,「要らんことを!」とも怒りを感じたけれど,それでも彼らの顔からは,ドンジン個人に対する憎しみは感じられず,「掟だから仕方なくやってる」という哀しみや諦めのようなものすら感じられ、複雑な思いになった。
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復讐者に憐れみを。
まさに邦題どおりのテーマである。

復讐の持つカタルシスではなく,その正反対にある負のパワーを「これでもか」というほど辛辣に,手加減することなく描いている。
しかし「復讐は虚しいし,損だからやめましょう」という説教臭さはなぜか感じられない。ただ,真実を描いた・・・そんな感じがする。

復讐なぞ,誰だって,したいと思ってするわけではない。

しかし,人は時にはそういう運命に囚われることもあり,復讐の負の連鎖に翻弄されて滅んでいく可能性を誰しもが持っていると監督は言いたかったのだろうか。復讐を肯定も否定もせず,翻弄される人間を憐れんでほしいと,そう言いたかったのではないかと思う。これほど見事に復讐の本質をシンプルに浮き彫りにした物語はないのではないだろうか。

 

2010年1月 1日 (金)

あけましておめでとうございます。

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いつも遊びにお立ち寄りくださる皆様
旧年中はたいへんお世話になりました。
2010年も引き続き,よろしくお願いいたします。


確か昨年の抱負は,「笑顔」とかなんとか書いたような気がしますが,心がけていたせいというよりは,(某管理職の退職とともに,)職場の雰囲気がとてもよくなって,昨年は年中大笑いしていました。楽しい1年で感謝しています。

で,今年の抱負は,健康・・・ですかねぇ。
実は年末に,6年ぶりに人間ドッグに行ってまいりました。体重や血液の状態,肝機能・・・などは6年前とさほど変わらず,いい状態だったのですが,総合判定はなんとD!
いやなに,治療中の持病がある項目は,問答無用でD判定になるらしくて,一昨年の春に倒れて以来,高血圧の薬をずっと飲まなければいけない身体になっていたのと,最近,なぜか緑内障を発症しまして。この2項目が「治療中」のDになってしまったので,総合判定もDになっちゃったわけです。

それにしても,6年前は,なにひとつ持病などなかったのに。
やはり年齢を重ねると,身体もいたんでくるんですよね。若いころと同じつもりで,不節制や無理をするのは禁物だと感じました。人間ドッグも,もっと頻繁に行かなきゃね・・・・。

そんなわけで,今年はもっと自分の身体を大切にして,身体によい習慣を身につけないと。皆さまも,ご自愛くださいませ。みなさまの健康が今年1年守られますよう,お祈りいたします。

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今年はワタシの年よ~ん(↑とらねこ)
イヤ,違うって・・・
でも,アンタも元気で長生きしてよね~食べ過ぎは駄目よ。

 

 

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