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2009年12月 1日 (火)

3時10分、決断のとき

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アメリカ本国では,2007年に公開された傑作西部劇。第80回のアカデミー賞2部門(作曲賞、音響賞)にもノミネートされている。主演は,まだ太る前のラッセル・クロウと,めずらしく地味なキャラのクリスチャン・ベイル。これは観なくっちゃ!

ときは南北戦争後のアメリカアリゾナ州。借金苦の農場主ダン(ベイル)が,強盗団の親分ベン・ウェイド(クロウ)を護送する道中,さまざまな出来事を通して,二人の間に不思議な絆が生まれるという物語。全く正反対の,むしろ敵対するタイプの二人が意に反してバディを組む物語,という点では,マイケル・マン監督のコラテラルを思い出したりして。
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邦題は「3時10分、決断のとき」だが,原題は「ユマ行き3時10分発」。つまり,3時10分とは,ウェイドをユマの刑務所に護送する汽車の発車時刻のこと。南北戦争で片足を負傷しているダンは,農場の経営に行き詰まり,地主からも嫌がらせを受けて,妻や息子からの信頼も薄れつつあった。ウェイドの護送を引き受けたのは,賞金目当てと,少しでも息子に誇れる仕事がしたかったためだった。

ダン一行は,逮捕されたウェイドを,3日後のユマ行きの列車に乗せるために駅を目指して出発するが,途中,護送の一行の一人をウェイドが殺したり,アパッチ族に襲撃されたり,ウェイドが脱走を図ったりと,さまざまな事件が起こる。
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この作品のベイルは,バットマンで見せた強さや華やかさは見られず,どちらかというと,うらさびれたキャラである。(しかし,どんなに落ちぶれた風体をしていてもやはりカッコいいのではあるが) 彼の特徴は何と言っても善良で,家族を思うよき父親,という点だ。そして家族を守れない現状を恥じ,家長としてのプライドを賭けて,ウェイドの護送を無事に勤めあげたいと願っている。それが息子に対して,唯一面目を施すことだとも思っている。
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そして,クロウの演じた強盗団のボス,ベン・ウェイド。
その罪状は,強盗,殺人など数限りなく,間違いなく筋金入りの悪党である。クロウの悪役って,珍しい(ずるがしこい上司の役はあったが)んじゃないか?

しかし何と言うカッコよさ!グラディエーター以来のカッコよさかもしれない。彼のハスキーな超低音ボイスは,悪役を演じるときにもピッタリとハマる。悪党のボスとしての凄みや風格は半端じゃない。しかし,同時に彼の風貌(=タレ目)からは,悪役と言えども,どこか憎みきれない愛嬌や哀愁も 感じるのだけれど。
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記事の冒頭に書いた二人の絆は,どちらかというと,ウェイドの心の変化が生んだものだったと思う。

ウェイドがダンの善き家庭人としての生き方を揶揄するそぶりを見せ,ダンの妻に秋波を送ったり,ダンの息子の気をひいたりしたのは,実は彼に嫉妬していたのではないか?と思う。ダンの不器用さ,善良さ,そして善人ゆえの何ものにも冒されない誇りを,自分が手に入れられなかったものとして,羨ましく思う気持ちがあったのではないだろうか?
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そしてそんなダンへの,そしてダンたち親子への思い入れが,彼にラストの感動的な行動を取らせたのだろう。男泣きする感動のラスト・・・・という宣伝だが,女である私は涙腺こそ緩まなかったものの,ラッセルの行動のカッコよさに痺れ,そして同時に切なさに胸がいっぱいになった。彼の速撃ちのシーンの鮮やかさは必見である。
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ストーリーは結構シンプルで,話のオチも予想がつくため,この作品の魅力を左右するのは,やはり役者の演技や醸し出すオーラによるところが大きいと思うが,そんな点でも,カッコいい(太ってない)ラッセルや,哀愁の漂うベイルを観れる,というだけでもお勧めの一本である。

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映画 さ行」カテゴリの記事

コメント

ななさん、こんばんは^^
ちょっぴりお久しぶりで~す♪

この作品ね~~ベイル目あてで映画館に行ったのですが、苦手なラッセルが(笑)思いがけず
カッコよくて(ほんとグラディエーター以来だよね・笑)思わずハート満点にしちゃいました(^^ゞ

ストリーはシンプルでしたが、ラッセルとベイルの演技が素晴らしくて、他のキャストも良くって
楽しめました♪
CGとか使わなくてもドキドキハラハラさせられるよな~と本当に面白かったです!

ななさん、泣かなかったの?私は女ですが
男泣きしました(T.T)

ラッセルこのくらい痩せてるとカッコイイ
のにね~(笑)

ぼくもお久しぶりです。

>彼に嫉妬していたのではないか?

なるほど。
こういう観方もありですね。
彼が「分かった」というシーンが
もう泣けて泣けて…。

ほんとうに好きな映画です。

ななさん、こんばんは!
ご無沙汰してましたー。
体調いかがですか?無理しないでねー。

>主演は,まだ太る前のラッセル・クロウと,めずらしく地味なキャラのクリスチャン・ベイル。これは観なくっちゃ!

これじゃなくて、消されたヘッドラインみたんだけど、太ったラッセルだった・・・笑 内容はよかったけどね。

>彼の風貌(=タレ目)からは,悪役と言えども,どこか憎みきれない愛嬌や哀愁も 感じるのだけれど。

そうそうタレ目が茶目っ気と少年ぽさをかもし出していい。
ラッセル・クロウって売れる前に、レオ様と西部劇でてたよね?
これみよ!

ひろちゃん こんばんは!
おひさしぶりで嬉しいです!

>苦手なラッセルが(笑)思いがけず
>カッコよくて(ほんとグラディエーター以来だよね・笑)
そうですよね~,わたしはどんな役のラッセルも大好きなんですが
(名優のオーラにやられちゃって・・・)
でも,万人にお勧めできるカッコよさを持ったラッセルの作品って
これとグラディエーターくらいかな?
彼は役に合わせて太ったりやせたりしますからねぇ~
「インサイダー」で太り,「グラディエーター」でもとに戻り
「マスター・&・コマンダー」でまた太り・・・
「シンデレラマン」でまた絞り・・・
(あ,シンデレラマンもカッコよかったね!)
そして「ワールド・オブ・ライズ」で再びデブに。
さすがに年齢のせいかなかなか元に戻らなくなってますね。ああ・・・

>ななさん、泣かなかったの?私は女ですが
男泣きしました(T.T)
わたしは涙腺が枯渇しているタイプで
もともと滅多に泣かないんですよ~
この作品は泣くよりも「うわ~,カッコいい!」って
ラストの二人に思う気持ちが強かったのかなぁ
でも心地いい感動でした!

えいさん お久しぶりです!

えいさんは男泣きされたのですね!
やっぱり女性より男性の方が
ハートにぐっと来るところがあるのでしょうね。
わたしは,ラッセルの演じたウェイドの
悪党なんだけど,実は家族愛に飢えてるようなまなざしに
母性本能をくすぐられましたよ!
この役にラッセルをもってきたのは大正解!
そしてベイルはといえば・・・
彼はもちろんお一人でも素晴らしい存在感の俳優さんですが
「誰かと組む」ことで一層光り輝くタイプの俳優さんですね

アイマックさん,こんばんは!

「消されたヘッドライン」わたしもDVDで先日観ました~
いや,きっと記事は書かないと思うけど,なかなかよかったわ。
でもラッセルは,ぜったい「ワールド・オブ・ライズ」の
激太りがまだ解消してない状態なんだよね。
もう開き直っちゃるのか,デブであることを売り物にするような
自嘲気味の演出も,もの哀しさを感じました・・・。
やっぱり痩せてほしいです~。
そして願わくば,もう若くないんだから
役のために太ることはやめてほしいな~,元に戻らなくなるもん。

>ラッセル・クロウって売れる前に、レオ様と西部劇でてたよね?
シャロン・ストーンも出てた「クィック&デッド」ですかね~
これけっこう好きなんですよ~
もちろん売れるまえのラッセルの
野性味あふれるアウトローぶりも痺れますよ~お勧め!
ラッセルのタレ目は,タレ目のくせに目力があるから好きです!

これ、いいですよねえ。今年劇場で観た作品では私的にベスト10に入ります。もちろん、DVDも買いましたよ。ラッセルもクリスチャンもいい演技してるんですよね。
ちなみに、劇場で観た時は、結構混んでいて、しかも9割ぐらいが男性でした。年配の人が多かったかな。さすが西部劇、という感じですね。私は西部劇大好きなので、こういう作品は大歓迎!ですが、女性はやはりあまり見ないのかな?

こんにちは。
お久しぶりです。
ちょっと忙しかったもので、ブログの更新だけで精一杯でした。
こちらに伺うのも久しぶりになります。

この作品、もうDVDになったのですか!
観たい観たいと思っていたのに、時間がなくて観ることができなかったんです。
これは、今からでもレンタルしにいかなきゃ。
物語的には分かりやすそうですが、演技が良いということなので、期待できますね。

良い情報、ありがとうございました。

ななさん、こんにちは!

二人の男の生き様がカッコ良くって!
ラストもよくある友情物語のような馴れ合いになるのではなく、それぞれに自分の生き方・価値観を貫きつつ、相手のそれも認めているような感じが良かったです。
価値観というより、それを貫こうとする姿勢そのものに対してかな。
クリスチャン・ベールって、いい男優とパートナーを組む時、相手も輝かせ、自分も輝く感じがしますね。
本作もそうだし、「ダークナイト」もそうだし。
ジョニー・デップと共演する「パブリック・エネミーズ」も期待しちゃいます。

mayumiさん こんばんは。

ご覧になってたんですね~,さすが!
こんなに素敵な作品なのに
公開がこんなに遅れて,それもミニシアター扱いってのは
ちょっと勿体ないですよね。
でも遅ればせながらでも公開されてよかった~。
男性にとっては「男泣き」必至の作品だと思いますね。
女性が観ても十分感動する作品なので
まだ未見の方にも強くお勧めしたいですよね。
リメイクとはいえ,久々の正統派の西部劇で人間ドラマもしっかりしていますよね。
何より主演の二人が魅力的でした。

亮さん こんばんは
今年ももうまもなく終わりに近づき
相変わらずお忙しそうですね~
風邪などひかないようにご自愛くださいね。

この作品,まだ新作扱いですがDVD出ましたね~
わたしも劇場で観たかったのですが機会がなくて
リリースを待っていた作品のひとつです。
男性の方はとくに大満足できる作品だと思います。
ご覧になったらまた感想を聞かせてくださいね。

はらやんさん,こんばんは

西部劇のバディーものは総じて感動するものが多いのですが
これは仲間ではなく正反対のタイプの二人の絆を描いていて
とても面白かったです。
善と悪の対立・・・という雰囲気もあったのが興味深かったですね。
ダンとウェイド,どちらの面も人間って潜在的には持ち合わせているかもしれません。
だから,どちらの男にもそれぞれ共感できました。

>クリスチャン・ベールって、いい男優とパートナーを組む時、相手も輝かせ、自分も輝く感じがしますね。
まったくですね!
「パブリック・エネミーズ」は私も久々に劇場鑑賞の予定です。

コチラ 私大好きな映画なのに、観ている方が少なく語れる人がすくないだけに、この記事読んで嬉しかったです。

これ、とにかく主演二人の格好良いことと、脚本が素晴らしいことで、観て私は痺れてしまいました!

クリスチャン・ベイルはともかく、らっせる・クロウの久しぶりに格好良い演技でしたよね!

本当の格好良いチョイ悪親父を魅せてくれた気がしました!

そうそう コチラの元となった 決断の3時10分も別の意味で面白いですよ!!

コブタさん こちらにもありがとう。

これ,面白いしカッコいいし,感動もするし,ほんとにいい作品ですよね!なぜかミニシアター系扱いなのか,観てるブロガーさん少ないのが寂しいー。今からでも遅くないから沢山の人に観ていただきたいですよね。太ってないラッセルと人間味溢れるベイルのケミストリー。私的には,パブリック・エネミーズのベイルより,この作品のベイルの方が好き!

コブタさん宅にも後でお伺いしますね!

こんにちはm(__)m。
男泣きしてしまひました~(T_T)/。

ラッセル・クロウ演じるベンの気持ちの移り変わりが繊細に表現されていて見事だったし、カッコよかったですね~。

2007年の作品ですから、「消されたヘッドライン」や「ワールド・オブ・ライズ」よりも前に撮られた物なんですね~!

ということは、ラッセルは本作以降、体重増加したんでしょうね(笑)


ひきばっちさん こんばんは

やはり男泣きしましたか!
いや~~,グラディエイター以来のカッコよさ!
いや,わたしはラッセルは大好きなんですが
一番好きなラッセルが
グラディエイターとシンデレラマンと
マスター・&・コマンダーのラッセルだったのですが
この作品のラッセルも追加です!

哀愁漂うベイルもよかったですね。
ちなみに一番好きなベイルは
「若草物語」と「プレステージ」だったりしますが。

ラッセルはたしか,この作品以降から太ってきましたね。
「アメリカン・ギャングスター」よりも
この作品は前ですもんね。

明けましておめでとうございます。
年末に名画座での限定上映に間に合う事が出来ました。オリジナルも見てみたくなりましたね。
主役2人の感情の機微についてはもう語られまくっているのでそれ以外でちょっとつっこましていただくと、
なんであんな弾丸雨あられ状態で全然当たらねえんだよ~!(それは最期のシーンまでひっぱらないといけないから)
だからちょっと期待しちゃったです、最期まで無事って。なので背中ズドンは「わ~ん!!」でした。
でも撃ったチャーリーに腹は立たなかったのですよ。彼もかわいそうだもの。惚れてたんだねボスに。それなのに・・・ボスひどいよお。
ベンのお絵描きの趣味はなにかの伏線かと思ったら、おとうちゃんの絵を残すためか。あれはラッセルさんご本人が描いてたのでしょうか?
口笛でヒュ~イと馬を呼ぶところはあの後やっぱり....ってことでいいのかな?(結局トンズラすんのかよ!)
撃たれてもなかなか死なないあの爺さん、見覚えあるなあと思ったらピーターフォンダだったんですね。わからなくてごめんなさい!
YUMAという地名を知らなくてgoogle mapで検索してみたら、鉄道駅ありました。刑務所はもう使われてなくて、記念公園になっているようです。
最期に、今年も良い映画と出会えます事を。

garagieさん あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

この作品はみなさんけっこうベスト作品の中に
選んでらっしゃいましたね。
地味な作品のはずなのですが
やっぱり万人に好かれる魅力があるのでしょう。

そうそう,手下のチャーリーも可哀そうでした。
彼はこれまでの掟どおりに行動しただけで
ボスのためにあそこまで頑張ったのに,ですね。
まぁ,それも運命ということで。

ピーター・フォンダ出てましたね~
えらく渋いです,やっぱり。若いころを思い出しました。


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