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2009年11月の記事

2009年11月28日 (土)

「硫黄島からの手紙」と「父親たちの星条旗」

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戦争映画というと,どうしても製作国側からの視点だけで描きがちだが,イーストウッド監督は,「硫黄島の激戦」を,アメリカと日本の両方の視点から描き,これまでにない素晴らしい二部作を世に送り出してくれたと思う。

実は「硫黄島〜」の方はとっくに観ていたが,「父親〜」の方は最近になってやっと観たのだ。そして,これは二つでひとつの作品・・・つまり両方を観て初めて,あの戦史に残る硫黄島の戦いについて本当に理解することができるのだ,と思った。イーストウッド監督の描きたかった反戦の思いも,両作品を観ることで,よりはっきりと伝わってきたように思う。
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日本人でありながら,これまで,教科書で習ったことも教えたこともなかった硫黄島の戦い。ほんと,知らなかったことが恥ずかしい。

この島が日米双方にとって戦局を左右する重要な島であったこと,アメリカ側は当初この戦いを,わずか5日間で終わらせるつもりだったのに,日本軍は大本営からの援軍皆無の孤立した状態で,なんと30日間以上も持ちこたえたこと,そしてまた,太平洋戦争後期の上陸戦での米軍の損害が日本軍を上回った稀有な戦いであったこと・・・・これは絶対に記憶に止め,後世に語り継がれなくてはいけない戦いだと思う。
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日本軍を指揮した上官たち。
全長28キロにも及ぶ坑道からの攻防戦を指揮し,無駄な玉砕を禁じて兵士たちを最後まで戦いぬかせた栗林中将(渡辺謙)や,捕虜となった敵兵を看護させたバロン西こと,西竹一中佐(伊原剛志)。そして,一兵卒の立場から観た硫黄島の戦い,という意味で重要な役回りを演じる主人公の西郷青年(二宮和也)と,もと憲兵の清水(加瀬亮)
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二宮和也は,まるで現代の若者があの時代にタイムトリップしたかのように,喋り方も表情も現代っ子のままで(軍服姿は誰よりもあの時代の兵士っぽく似合っていたが)初めは「あんな雰囲気の兵隊があの時代にいるわけないじゃん」と違和感があったのだけど,坑道堀りに明け暮れる毎日に愚痴をこぼし,「生きて帰りたい」と願う西郷の姿は,ある意味,日本の兵士たちの戦争に対する本音の代弁者として監督がわざと演出したものなのかもしれない。それでも二宮和也の演技・・・特に彼が声もなく涙を流すシーンは心を打たれた。(二宮くんは演技,ほんとに上手い)
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そして,憲兵を首になって硫黄島に配属された青年,清水を演じた加瀬亮。人より少し優しく繊細な心を持っていたがために,憲兵が勤まらず,この硫黄島の戦いでも悲運な運命を辿ることになる彼はほんとに可哀そうな役だ。傷ついた米兵の母親からの手紙を読んで,アメリカ人も自分たちと同じ心を持っていると気づき,投降を決心した彼が辿った運命はあまりにも哀しく,救いがなかった。

私はこの作品で加瀬さんを知り,続いて「それでもボクはやってない」への鑑賞意欲をそそられた。それにしても,大日本帝国時代の憲兵の横暴とその被害者について外国人のイーストウッドが描くとは驚きである!
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日本軍もアメリカ軍も,想像を絶する苦戦を強いられた硫黄島の戦い。「父親たちの~」と合わせて観てみると,日本軍とアメリカ軍の精神面での違いが浮き彫りにされていて興味深い。

戦場に赴く前のアメリカ軍の青年兵士たちの様子。無邪気にカードに興じたり,仲間と冗談を言い合ったり,恋人を偲ぶ音楽に耳を傾けたり・・・彼らも,そしてもちろん彼らの上官たちも,「生きて祖国に帰る」ことを望み,そしてその望みが当然のものと考えられている世界。
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一方,日本軍の方は,初めから生きて本土に帰れるとは思っていない。栗林の「生きて祖国の土を踏むことはないと覚悟せよ」という言葉の重み。日本軍に漂うく悲壮感と緊迫感は,米軍のそれとはまるっきり質が違う。

あの,手榴弾による自決シーンの壮絶さ。兵士たちの顔に浮かぶのは恐怖と哀しみ以外の何物でもなかったが,それでも彼らは上官の命令に従い,日ごろ教えられた通りの手順で次々と自決してゆく。個人の命よりも何よりも,お国のため,という思想が優先されたこの時代の先人たちの強さと潔さを,哀しんでよいのか,誇ってよいのかわからない・・・こんな思想が間違っていることだけは確かで,何処へ向けたらよいのかわからない怒りを強烈に感じた。

援軍も弾薬も送らず,「潔く散れ」と指示してきた大本営。「悠久の大義に行くべし」とは綺麗な言葉だが,結局は彼らに「死ね」と命じたのと同じである。
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しかし,日本軍の抵抗に1カ月あまりも苦しめられたアメリカ軍の兵士たちもまた,この戦いでそれぞれ心に深い傷を負ったのだ,ということが,「父親たち~」を観るとわかる。

どこから弾が飛んでくるかわからない恐怖の中を上陸し,次々と倒れるアメリカの兵士たち。物語は,その中で必死に衛生兵として自分の務めを果たすドグ(ライアン・フィリップ)を中心に描かれている。つかまって日本軍の坑道内で惨殺された親友。あろうことか,味方の誤射によって命を落とす上官。
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やがて,6人の兵士が擂鉢山に星条旗を立てる瞬間の写真が祖国の新聞に掲載され,映っていた兵士たちは英雄として祭り上げられる。長引く戦争に嫌気がさし、国庫も空で,これ以上戦争を続けるのが困難になっていた当時のアメリカにとって,彼らの擂鉢山の写真は,国民の士気を鼓舞する格好の材料となった。

6人のうち3人はすでに戦死し,戦いのトラウマも癒えないうちに国民の前でポーズを取り,戦時国債キャンペーンのツアーに駆りだされるドグたちの内心の苦悩。たまたまその場にいて旗を立てたにすぎない自分たちだけが,英雄扱いされることに対する自責の念。戦争をビジネスととらえている事業家たち。国家のために,ドグたちは,従軍した者にしかわからないトラウマを押し隠して,笑顔でツアーをやりぬく。
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戦争とは,どの国でも,そしていつの時代でも,国家が兵士たちに多大な犠牲を強いるものなのだ,ということを改めて感じた2作品。どちらも戦争で傷つく名もない兵士たちのそれぞれの哀しみが描かれていて,イーストウッドの反戦への思いが伝わってきた。死んでゆく兵士たちには,どんな大義名分もヒロイズムもなく,ただただ理不尽な痛みと哀しみがあるだけなのだ。その痛みは,戦勝国の兵士とて変わらない。

同じ監督が敵対する二つの国の視点から作品を撮る・・・・という離れ業。アメリカ人でありながら,製作に当たって,完全に中立の視点を貫き通したイーストウッドは凄いと思った。

私がより感動したのはやはり,「硫黄島からの手紙」の方だが,実際は映画で描かれているよりも,もっともっと凄惨な状態で戦い,散っていった英霊たちに心からの追悼と感謝の祈りを捧げたい。

2009年11月22日 (日)

マッハ!!!!!!!!

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チョコレート・ファイターでピンゲーオ監督のムエタイアクションものにハマって,こちらを遅ればせながら鑑賞。トニー・ジャーの古式ムエタイに魅せられた!いやー,人間の身体って鍛えればあそこまで出来るようになるのか!この作品も,ノースタント,ノーCG,ノーワイヤー,ノー早回しの正真正銘の身体を張ったアクションだ。深夜,DVDを再生しているPCの画面に向かってこぶしを握りしめ,何度も「うっそー!!!!」と叫んでしまったわたし。(かたわらの猫catがびっくりしていた)

ストーリーは,これもあってないようなもの。もしかしたらチョコレート・ファイターより,もっとシンプルでバカバカしいかもしれないストーリーなのだが,かえってアクションだけに意識を集中して観ることができた。

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タイの寒村で村人たちの守り神として大切にされてきた仏像オンバクの頭が盗まれ,信仰篤い若者ティン(トニー・ジャー)が,村のためにバンコクまで仏像を取り戻しに行くお話。冒頭,白塗りの若者たちが,なんだかわけのわからない木登り合戦をやっているシーンでもう目がテンに。大木のテッペンに結び付けている黄色い布を,一番先に取ったものがチャンピオンらしいのだが,観てるそばから脱落者がボコボコ地面に落っこちてくる。これもスタントなしだとしたら相当痛そうだ。

で,見事優勝したのは,もちろん主人公のティン。ここでまずさりげなく,彼の身体能力の高さが紹介されるのだけど,彼のほんとうの凄さが発揮されるのは,仏像奪還のためにバンコクへ赴いてからだ。

いやー,でもアクションする彼の顔が,時々ハルクに似てると思ったのはわたしだけ?

この作品って,結局見せたかったのは「トニー・ジャーのアクション」だけだったような気がするが,そのアクションがバラエティに富んでるし,後になるほどパワーアップもするので,まったく飽きない。その手足の動きは目にもとまらぬ早技なので,一瞬たりとも画面から目が離せない。
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チョコレート・ファイターのジージャーちゃんの足技に比べると10倍もの迫力と殺傷力がありそうで,彼のひじやひざが,相手の顔面や頭部にめりこんだ時の「ボコッ!」「グサッ!」という音も重く,半端じゃないのだ。(相手役,命がけだね)

数あるアクションの中でも好きなのは,バンコクの街中を,チンピラに因縁をつけられたティンとその相棒のジョージが逃げるシーンのアクション。
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なにもわざわざ,こんな中をくぐらんでも・・・・

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乗用車を馬跳び状態・・・・凄い跳躍力!

その他にも,何人もの肩や頭を踏んで飛び越えるとか,狭いガラス板の間を宙返りして通り抜けたりとか,もうやりたい放題なのだが,これらも実際にやってるんだから凄すぎる。体操選手のような連続宙返りのアクションもあり,まるでオリンピックの床体操を観てるようだった。タイの三輪タクシー,トゥクトゥクのカーチェイスも物珍しかった。(三輪って小回りも効くけど横転しやすいのよね~)

そして,何と言っても凄いのは・・・・
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炎の中からの飛び蹴り!
もうこのシーンに至っては,開いた口がふさがりませんでしたよ。だって,ほんとに燃えてるもん・・・トニーさんの足!いくら仕事とは言え,彼の役者魂というか,度胸にはもう言葉もないし,監督の無謀ぶりにも・・・言葉もない。しかし,そこがこの作品とトニーのアクションの魅力なんだけどね。スタントマン出身の彼だからこそできた離れ業なのかもしれない。エンドロールのNG集で,このシーンで足の火がなかなか消えなくてスタッフが大慌てで彼を追いかける場面もあった。(怖)

最後には無事に仏像も戻って,平和な村で象に乗って凱旋って・・・どこまでもタイだねぇ。ありがたや。

続編の「トム・ヤム・クン!」はなんでも象奪還物語だそうな。これはDVDがレンタル屋になかったので他を探してみようっと。

 

中国・香港・台湾映画 索引

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 言えない秘密
 インファナル・アフェア
 ウィンター・ソング      
 ウエディング・バンケット
 ウォーロード/男たちの誓い
 ウォーロード/男たちの誓い 未公開シーン

  裏街の聖者
 エグザイル/絆 
 王妃の紋章
 男たちの挽歌

 花様年華
 花蓮の夏 
 
傷だらけの男たち
 恋の風景
 好奇心は猫を殺す 
 コネクテッド(保持通話)
 再会の食卓     
 
さらば、わが愛/覇王別姫
 三国志
 サンザシの樹の下で

 小さな中国のお針子
 小さな村の小さなダンサー
 中国の植物学者の娘たち
 チルドレン・オブ・ホァンシー遥かなる希望の道
 天使の涙 
 天上の恋人

 花の生涯~梅蘭芳(メイランファン)~   
 
ブエノスアイレス
 胡同(フートン)の理髪師
 芙蓉鎮
 ブラッド・ブラザーズー天堂口ー
 プロミス 無極 
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 僕は君のために蝶になる
  
 山の郵便配達 
 欲望の翼
   
 
ラスト、コーション 
 ラスト、コーション/原作の世界
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藍宇(ラン・ユー)情熱の嵐
 レッドクリフ Part I
 レッドクリフPartⅡ-未来への最終決戦ー

邦画 索引

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   アフタースクール
  アマルフィ 女神の報酬
  硫黄島からの手紙
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  クローズZEROⅡ
  K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝
  告白
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  私は貝になりたい 

韓国映画 索引

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  嘆きのピエタ

  母なる証明
  復讐者に憐れみを

その他のアジア作品

 アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン
 
チョコレート・ファイター
 マッハ!!!!!!!!

2009年11月20日 (金)

キングダム・オブ・ヘブン(ディレクターズカット)

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公開当時は結構不評で,私も初見時には,さほど感動しなかった作品だが,背景の歴史を勉強し,劇場ではカットされたシーンが入った3時間のディレクターズカット版を観てみると,これがなかなかよかった。劇場版だけでは書き込み不足に感じた登場人物がよく理解できて,深いテーマの壮大な叙事詩だと感じた。

物語の舞台は12世紀のパレスチナ。聖地エルサレムを巡って対立を続ける,イスラム勢力と十字軍。その中でも特に,エルサレム王国の衰退と,聖都の明け渡しにスボットを当てた物語だ。

エルサレム王国とは,イスラムから聖地を奪還した十字軍が,パレスチナに樹立したキリスト教王国のこと。100年もの間,イスラム勢力と和平と共存を保っていたその王国が,異教徒との融和を望まぬ一部の諸侯の暴挙や挑発のせいで再びサラディンの率いるイスラム勢と対立し,その結果,戦いに敗れてエルサレムを明け渡すまでのお話。
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史実に基づいていて,主な登場人物はみな実在した人物だ。追剥(おいはぎ)めいた行いで悪名の高かったルノー・ド・シャティヨンも,シビラの夫で愚王のギー・ド・リュジニャンも実際に,ほぼ映画通りの憎々しい行いをやっている。

しかし物語を面白くするために大胆に脚色されている人物もいて,エルサレム王国の貴族のバリアン・ド・イベリンはフランスで鍛冶屋なんぞしてなかったし,シビラ王女との色恋もフィクションだ。(実際にシビラとロマンスがあったのは,バリアンの前の世代のボードゥアン・ド・イベリンというお方らしい。)リーアム・ニーソンが演じた父親のエピソードも創作だ。実在したバリアンと,映画のバリアンとの共通点は,エルサレム籠城の件だけだそうで。
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バリアンを演じたオーランド・ブルームが,この役にはちと線が細すぎ,その涼しげな表情は小綺麗すぎて,肝心のシーンで何を考えているかわかりにくい。一番の違和感は,何といっても,一介の鍛冶屋にすぎない彼が,なぜに短期間で戦闘の達人になり,類まれなリーダーシップで民を統率していくことができたのか?という点だけど,ディレクターズ・カット版には 「バリアンは過去に騎兵として従軍した経験があった」ことや「戦闘のための投石機や武器なども作れる鍛冶屋だった」とさりげなく触れられていたので,少し違和感が和らいだ。
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そしてこのお方,ジェレミー・アイアンズが演じたティベリウス卿。バリアン側の人間だということはわかっていたが,いまひとつどんな立場なのか不明のまま観ていたが,今回調べてみて,彼は,ボードゥアン4世の摂政だったトリポリ伯レイモン3世がモデルだということがわかった。それにしてもジェレミーってほんとに中世の騎士のコスチュームが似合うオジサマだ。
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そして何と言っても一番印象的だったキャラは,エドワード・ノートンが演じたエルサレム王,ボードゥアン4世。銀の仮面をつけたこの病弱な王は,実際に非常に才能豊かで信仰篤く,武勲の誉れ高い名君だったらしい。ハンセン病に冒されながらも,弱冠14歳の時にサラディンとの戦いに勝利を収め,エルサレムに凱旋し,その後サラディンと講和条約を結んだという。(銀仮面は映画のための脚色らしく,実際の王が仮面をつけていたという記録はないそうである。)

彼はイスラムとは融和政策を取り、映画でも,和平を破ってイスラムの隊商を襲ったルノーに激しく怒るシーンがある。つねに仮面をつけて顔を見せないこの役,別にノートンでなくてもよさそうなもんだが,やはり彼が演じると,目と仕草と声のみの演技にも関わらず,全身から王者の品格や魅力がにじみ出ていて,流石だった。
Cap090
対するイスラムの英雄,サラディンも「敵」でありながら,なんとも魅力的に描かれていたので驚いた。その卓越した判断力と,敵に対する寛容さ,冷静さ。

彼が感無量の面持ちでエルサレムに入場したときに,打ち捨てられた十字架像を丁重に扱う場面は,降伏した相手の信じる神にも敬意を払う彼の高潔さをよく表していたと思う。

また,このディレクターズカット版には,シビラと彼女の幼い息子(夭折したボードゥアン5世)との哀しいエピソードも入っていて,劇場版ではいまいち浅かったシビラへの理解も深まった。
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キングダム・オブ・ヘブン ―天の王国―。
罪の赦しと心の平安を求めて故郷を後にしたバリアンが,エルサレムで目にしたものは,欲にかられた諸侯たちの愚かしさと,彼らが犯す新たな罪の数々だった。その中で父の遺言を守り,まことの騎士としての信念を貫こうとするバリアン。
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物語が進むにつれて彼は,天の王国はそれぞれの心の中にこそあるのだという境地に達し,聖地死守のためではなく,仲間の命のために闘えとエルサレムの民を鼓舞する。

リドリー監督は,この映画を通して,現在のパレスチナ問題を憂慮する気持ちをも表したかったのだろう。この作品が初の歴史大作主演となったオーリーは,ベテラン脇役陣に食われがちになりながらも,なかなかよく頑張ったと思う。
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でもやっぱり彼は,主役を張るよりも,パワフルなオーラを放つ大物俳優の傍らで,涼やかに微笑むのが一番ハマる,名脇役タイプの俳優さんかもしれない。同じ史劇ものでも,トロイのヘタレ王子役の方がなぜか似合ってたし,同じ鍛冶屋でも,「パイレーツ~」の方がハマっていたような。

エルサレム・・・・死ぬまでに一度は訪れてみたい都だけれど,願いが叶う日は来るだろうか。

2009年11月13日 (金)

チョコレート・ファイター

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この蹴りに世界がひれ伏す・・・・

タイ発の衝撃のノー・スタント美少女アクション・ムービー!
ヘンな邦題ゆえに今まで観る気がなかったけど,見逃していて損してた~!すっごいストレス解消映画でした,これ。一発でお気に入り。

タイ映画は初めてだし,監督さんのことも前作の「マッハ!」や「トム・ヤム・クン!」も,タイの国技であるムエタイについてもよく知らないが・・・・。
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主人公のゼンは,日本人のヤクザを父に,タイのマフィアのボスの情婦を母に持つ,自閉症の少女。上の画像でもわかるとおり,見かけは華奢で愛くるしい美少女だ。しかし彼女には人並み外れた身体能力と,映像記憶能力があり,生まれながらのファイターだった・・・・。

ゼンを演じたジージャーさんは現在は25歳だそうだが,日本人にも好かれるタイプの,小柄でキュートで,ほんとうに可愛らしい女性。(すっぴんの顔は中学生のようにあどけない)何でもテコンドーの達人で,インストラクターをやっていたらしい。この映画に出演が決まってから,さらに4年間のトレーニングを積んだというが,テコンドーの華麗な足技に,ムエタイの肘,ひざ蹴りをプラスした彼女の眼にもとまらぬ必殺技の数々は見事である。
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小柄な女性だから,重量感や破壊力はイマイチなのだが,そのかわり,動きがとにかく軽やかでしなやかだ。こんな小娘に大の男たちがバッタバッタとなぎ倒される様子は,なんというか・・・・痛快そのものだ。

そう,この作品の魅力は,なんたってこの意外性!ちっとも強そうに見えない,むしろ,か弱そうに見える少女がめっちゃやたら強い!というところがたまらなくカッコいいのだ。おまけに,この監督さんの映画はノースタント,ノーCGが売りらしい。あの超絶アクションを,実際に彼女がこなしていると思うと,凄いの一言に尽きるのだ。

ストーリーは・・・・まあ,二の次かな?
ゼンが闘う理由は,重病に倒れた母親のため。高額な治療費が払えず,かつて母親が貸していたお金を悪党どもに取り立てに行ったことがきっかけだ。(しかし・・・少女相手に身体を張って闘ってまで,お金を踏み倒そうとする奴らばかりで驚き。さっさと払えばいいものを。)闘いを繰り返すうちに,ゼンの技はますます磨きがかかっていくが,やがて噂を聞きつけた,かつてのマフィアのボスがゼンたち母娘に魔の手をのばし,物語はクライマックスの死闘へと向かう。
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ゼンの父親役を阿部寛がやっている!こちらもなかなか渋くってカッコいい。(最初から最後までシリアスキャラ。おまけに後ろ姿のヌードあり。)

クライマックスシーンで彼は、ゼンたちを救いに駆けつけ,日本刀でリアルな殺陣を披露してくれる。(あそこでてっきり死んじゃったと思っていたら,ラストで再度登場して,あれ?生きてたのか~と。)

そして,ある意味本編より印象的だったのが,エンドロールに流れる舞台裏の映像。ひぇぇぇぇ~,ジージャーさんも,相手役の大の男も,顔面にもろに飛び蹴りを食らったりして,みんななんて痛そうなんだ!生傷なんて朝飯前で骨折や入院騒ぎまで・・・・。特にクライマックスの4階建ての雑居ビルの壁面にへばりついての格闘シーン。うわわわ,ほんとうに落ちてるよ~,地面に激突してるよ~~Σ(゚д゚lll)嘘やろ~

仕事とは言え,ここまで・・・やるか?ふつう!と感動するやら呆れるやら。いや~~,タイ映画って半端じゃありませんね。

2009年11月10日 (火)

レイチェルの結婚

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「羊たちの沈黙」ジョナサン・デミ監督アン・ハサウェイ主演で撮った,ある家族の物語。なかなかの秀作で,ハサウェイはこの作品でオスカーの主演女優賞にノミネートされた。

ハサウェイが演じたのは,レイチェルの妹キム。ドラッグ中毒で更生施設を出たり入ったりしている彼女が,姉の結婚式に出席するために,家族のもとに帰ってくるところから物語は始まる。彼女が家に着いたその時から,ハンディカメラによる手ぶれの目立つ映像が,結婚式前夜から当日までの,キムの家族や招かれた客たちの様子を映し出す。
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そう,この作品,スザンネ・ビア監督やラース・フォン・トリアー監督らが得意とするドグマ形式に似た雰囲気で,まるで他人の家庭の結婚式のホームビデオを延々と見せられているような感じなのである。「ここはもっとカットしてもよいのでは?」という冗長に感じるシーンももあって,そこはやや退屈にも感じた。

それでも,「ワケあり家族の再生の物語かな?」と思いつつ最後まで惹きつけられて観たが,観終わった時の感想は,「再生ではなく,傷つけあっても,家族は家族」ということが言いたい物語だったのかな?」としんみり。
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キムの家族は過去に体験した大きな悲劇によって傷を受け,いまだに全員がそれを内心引きずっている。その悲劇とは,キムが薬でラリった状態で運転した車が橋から転落し,弟のイーサンを死なせてしまったこと。両親はそれがもとで離婚し,キムは未だに自分を許すことが出来ず,家族のキムへの思いもそれぞれ複雑だ。

レイチェルの結婚式前後の数日間,顔を合わせた彼らは,これまでの鬱憤や本音を爆発させることになる。それぞれが秘めてきた心の傷を,相手にさらけ出すシーンのリアルな迫力!しかし,これが他人相手なら,関係が決定的に断絶してしまうほどの暴言も,家族の場合は本音をぶつけ合うことで,かえってすっきりする時もあるんだな,と思った。

特にレイチェルとキムの姉妹間の確執。
優等生の姉に,引け目と劣等感を感じていたキムと,常に騒ぎを起こす妹に両親を独り占めされたと思っていたレイチェル。本音を言い合った姉妹喧嘩は,ラストシーンを観る限りでは,彼女たちは以前よりいい関係になれたように思えた。

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しかし,キムと母のアビーとの大喧嘩はもっと重く,痛い。
イーサンの死を互いに責任転嫁する二人の本音のぶつかり合いは,あまりにも痛々しく救いがない。互いに相手の最も痛いところに容赦なく切りこんだためか,衝撃や怒りも激しく,とっさに本気の殴り合いをしてしまう母とキム。

家族の一員が,当の家族に悲劇をもたらす,ということは,こんなにも辛いものか。相手が他人なら,恨んだり責めたりするのに何の躊躇もないだろうに,家族が相手だとそれができない部分もあるから。責めたいけれど責めるに忍びない,というジレンマ。結婚式の晩,去っていく母のキムへ見せる表情は硬いままだった。母とキムが,いつか心から和解できる日は来るのか,とても気にかかった。

そしてどこまでも優しい,キムとレイチェルの父。イーサンの死を今も悲しみながらも,キムへの気遣いと愛を示す彼の姿もまた切ない。この父がいるからこそ,家にはキムの居場所があるのかもしれない。
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家族であることについて,いろいろと考えらせられる物語だ。問題が起こったとき,家族だからこそ逃げられない,という苦しみもあるけれど,家族だからこそわかり合える,理屈ぬきで受け入れることもできる,という癒しもまたあるのだろう。

オスカーにノミネートされたアン・ハサウェイの演技は,文句なしに素晴らしかった。

2009年11月 5日 (木)

重力ピエロ

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なんだか凄い物語らしい,ということだけ小耳にはさんでのDVD鑑賞。あとで原作を流し読みした。重すぎるとも言えるショッキングなテーマを,透明感と軽妙さあふれるタッチで綴った,おそらく他にはない魅力に溢れた作品。原作小説も・・・映画も。

私が好きなのは,断然,映画の方。
原作はちょっと蘊蓄(うんちく)がしつこいというか,私にはすっと入りきれない部分もあって,消化の悪い食べもののような扱いにくさも感じたけれど,映画はそんなこともなく作者の世界に自然に入り込める親しみやすさがあり,それでいて原作の風味やよさはちゃんと活かされていて。とにかく,冒頭の「春が二階から落ちてきた」というシーンからもう画面から目が離せなくなった。
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なにより演じた俳優さんたちが,みな素晴らしかった。原作だけではイメージが十分でなかった登場人物たちが,映画の中でそれぞれとても魅力的に息づいていた。兄の泉水を演じた加瀬亮さんの地味で飄々とした雰囲気も,弟の春を演じた岡田将生くんから感じる,ガラスのように危うい透明感も,そしてこの二人が一緒に揃った時に生まれる,ほのぼのとした雰囲気も,ほんとにいい感じ。

二人の子ども時代を演じた子役の子供が,また加瀬さんたちにそっくりで。そしてあの「最強の」お父さんを演じた小日向さんと,天使のようなお母さんを演じた鈴木京香さんも素晴らしかった。

ストーリーは非現実的だ。こんな設定も,そしてこんな家族も,実際にはあり得ないと思う。そしてとても重く,辛いテーマを扱っている物語でもある。
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だけどこの物語の語り口は,あくまでも軽やかで爽やかだ。そう,劇中に出てくる春の名セリフ,「本当に深刻なことは陽気に伝えた方がいいんだよ」をそのまま実行している感じだ。この語り口の爽やかさがあるから,普通の倫理観や常識を,軽く飛び越えた世界を見せられても,違和感は感じなかったのかもしれない。

ありえない話・・・・そう確かに。突然降りかかった悲劇を見事に乗り越えてゆく家族の愛の力は,とても美しいものではあるけれど,実際には不可能じゃないかと思ってしまうし,春の取った行動が正しかったのかどうかもわからない。またこれからの春の人生も何より気がかりで。
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解決しない問題,答えの出ない問題は,依然として残されているわけだけど,ラストシーンに再び「二階から美しく落ちてくる」春を見上げる,泉水の優しい表情を見ると,ああ,この兄がそばにいるかぎり,春は大丈夫だ,と思った。

愛は遺伝子を超える・・・いい言葉だと思う。そして,楽しそうに笑っている限り,重力は働かない,という言葉も。そんな発想が素晴らしいと思う。
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辛い現実を変えることができないのなら,どうしてもそれを背負って生きていかねばならない運命なら,せめてその重荷の重力を笑顔によって消してしまおう。そうすれば重荷に潰されずに軽やかに生きていくことができる。「最強の家族」の生きる知恵を,自分も少しでも見習いたい,と素直に思った。

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