きみがぼくを見つけた日
原題の「タイム・トラベラーの妻」というのが示す通り,これは切ないタイム・トラベラーの愛の物語。邦題の「きみがぼくを見つけた日」っていうのは,ちょっとセンスが悪いかな?まあ,原題を直訳しても愛想がないのだけど。
この作品,アメリカでベストセラーになった原作の映画化だそうで。その昔,NHKの少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー(原作は時をかける少女)」で,時空旅行者ものにハマって以来,この手の物語にはどうしても心惹かれるものがあり鑑賞。
ヘンリー(エリック・バナ)は,トリップのタイミングや行き先を自分の意志ではコントロールできないタイム・トラベラー。おまけに衣服がいっしょにトリップできないため,行き先ではいつもすっぽんぽんで現れる羽目になり,トリップのたびに身につける衣服をまず確保しなければならない。そのためヘンリーはトリップ先で,たいてい人の家に押し入って服や財布を盗んで逃走することが多くなる。ここらへんがとってもリアルで,タイムトリップってちっともいいことみたいに見えない。かえってやたらと面倒な能力のように描かれているのが新鮮だった。
こんな風に,なんだかやけに不自由なことばかりの,大変そうなタイムトラベラーの彼が,トリップ先でひとりの少女に出会い,やがて成長した彼女と再会し恋をして家庭を持つことになるのだが,はたして彼と妻のクレア(レイチェル・マクアダムス)は幸せな家庭を築くことができるのか・・・・?
大好きなエリック・バナ。ロマンチックなラブストーリーのヒーロー役にはちょいと年を取ってる感じがしたけど,主役のヘンリーの若いころから40代までを幅広く演じ分けるには,彼くらいの落ち着きのある俳優さんでちょうどよかったと思う。
また,この物語には,夫婦の愛だけでなく,親子の愛も描かれているので,トロイで「妻子を愛し,守るよき父親」のイメージがある彼には,ピッタリの役だったかも。その反面,ヒロインのレイチェル・マクアダムスは可愛い系で,中年になったシーンでも,やっぱり可愛らしすぎたような気も。
ヘンリー自身の苦悩もさることながら,妻になってからは,クレアも彼の重荷を分かち合うことになる。もちろん,新居の購入のために宝くじの大穴を当てて大金を得る,ということも一度だけやったヘンリーだが,「たまにはそれくらい得することもあっていいのでは?」と大目に見たくなるくらい,彼らの結婚生活,いやヘンリーの人生は,彼の特殊能力から引き起こされるトラブルによるリスクの方が大きい。
いつなんどき消えるかわからない夫,トリップ先で夫の身に危険なことが起こるかもしれない,という不安,そしてふたりの間の子供について・・・・。家族にタイムトラベラーがいるということは,かくも苦労の種がつきないものか。これまでに小説などでお目にかかったタイムトラベラーたちは,だから家族を持たずに孤独に生きているケースが多かったような。
しかしこの物語のヘンリーとクレアは,それでも愛することを諦めなかった。時空をも運命をも越えた,色あせることのない愛の存在が心を打つ物語だ。特に二人の娘のアルバとのエピソードは,切なくもあたたかい。
それにしても,未来にトリップできるということはヘンリーのように自分の死期もわかってしまうこともあって,それってやっぱり辛いよなぁ・・・と。未来がわからないからこそ,人って無心に頑張って生きていけるのかもしれないな,なんて考えてしまった。
うーん,どちらかというと完全に女性向けのお話なんだろうけど,そしてこの作品,封切られて間もない時に観に行ったのに,劇場にはお客は私一人という有様だったのだけど(田舎の劇場だからかな?)それでも個人的には大満足して,素直に感動できた作品だった。
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