パッセンジャーズ
初めにお断りしておきますが,私の感想は,映画のジャンルについてネタバレしています。そして,この作品は,ジャンルをばらすだけで,かなりオチが読めてしまうので,未見の方はご注意ください。まあ,もうDVDになってるので,ある程度のネタばれはご容赦していただけると思いますが,これからご覧になる予定の方は,予備知識はゼロの状態が絶対いいですから。
航空機事故で生き残った乗客たちが,セラピストのクレア(アン・ハサウェイ)にセラピーを受けるうちに,次々と姿を消す謎めいた物語。爆発事故があったらしいのに「人的なミスだ」と言い張る機長や,尾行する怪しげな人々。クレアは航空会社の責任逃れのための陰謀を疑うのだが・・・・。
陰謀めいたサスペンスを思わせる物語に見えるが,これは実はあのシッ●スセ●スや,ア●ーズと同じジャンルである。つまり幽●ネタ。(ああー,言ってしまった~)
しかし,これまでの同ジャンルの作品と少し違う点は,この作品の舞台が,こちら側の生者の世界でもなく,あちら側の死者の世界でもなく,その中間,つまり,「自分が死んだと気づいていない」成仏していない人々の住む世界であること。そこがユニークだ。
突然死んだりした場合,魂はまだ死を受け入れられなくて,死者の世界に旅立つことができず,このような生と死の中間の世界に留まっている,という設定なのだろう。その世界は彼らが生きていた世界とよく似ている。
そしてもっとユニークで,しかも心を打つのは,「死んだと気づいていない」彼らの世界へ,「お迎えに来る」死者たちの存在だ。つまり,それぞれ生前に彼らと親しかった死者たちが,彼らが「もう死んでいることを」告げるために,そして彼らを死者の世界へ旅立たせるために,彼らを迎えにやってくる。
もちろん言葉でそれを伝えるのではなく,接触してくるだけなので,人によっては自分が子供のころに死んだ肉親の顔を忘れていて,相手の意図にすぐには気がつかないことも多く,旅立ちに時間がかかるケースもある。
人によって,迎えに来る死者たちはさまざまだ。
先だたれた両親・・・叔母・・・祖父・・・恩師・・・
そして,子供の頃飼っていた愛犬。
いったい,自分の場合は,
誰が迎えに来てくれるだろうか?
この作品を観た人たちはきっと,今は亡き懐かしいひとたちの顔を,もう記憶の中ではおぼろげになってしまっていたりするその顔を,いろいろと思い浮かべてしんみりしてしまったのではないかと思う。(私だったら,小さい時に飼ってた文鳥に迎えに来てもらいたいな)
ラスト近くになって,それまで主人公たちのまわりに出没していたちょっと不審な人物たちの言動や正体がわかったとき・・・・,こみ上げてくるものを感じた。
幽霊話(それも登場人物の大半が幽霊)ではあっても,ホラー色は皆無で,最終的にこの物語から一番感じたのは,生死を越えて永遠に存在する愛や絆だった。
遥か昔に,愛の絆を結んだ相手が,死後の世界でも自分を慈しんで迎えに来てくれる。死は終わりではなく,別の世界へ先に行くだけのことであり,愛するものとは死後も再びいつか逢えるという考え方には,とても癒される。
主人公たちのラブストーリーを中心に進む中盤までは,退屈にも意味不明にも感じる作品だが,後半の「お迎えびとたち」の正体がわかってからはとても感動した作品だった。この手はどうしても賛否両論になるので,手放しでお勧めはしないけれども。
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こんばんは!
ななさん、ご無沙汰してましたー。お元気ですか〜
パッセンジャー、レンタルにあったけど今100円で借りられるので、いつも貸し出し中・・・いつ見れるだろう。
画像みたいけど、文字が目にはいってくるので読むのやめときますよ^^;
今日、めざましでヒースの新作映画やってたけど、見たかな?
ジョニデたちが代役して、かれらの出演料はヒースの忘れ形見マチルダちゃんに差し上げるそうね。いい話。
投稿: アイマック | 2009年9月17日 (木) 23時06分
私もこの作品、好きです。
特に犬のエピソードと両親が迎えにきてくれるエピソードにジーンときました。
そして、私も考えちゃいました。誰に迎えにきてほしいかなあ・・・と。7年前に亡くなった愛犬にきてほしいなあ・・・。まあ、あの子は虹の橋で待ってるんだろうけど。
投稿: mayumi | 2009年9月18日 (金) 00時20分
アイマックさん ようこそです~
パッセンジャー,いいですよ。
ある一点が特に感動できるのですが
それ以外がやや退屈でも,その感動のツボだけですべて許してしまえるほど
そこが気に入りました~
女性はみんな感動しそうな気がしますが・・・どうかな?
めざましテレビは見てませんが
ヒースの遺作って,ダークナイトじゃなかったんですね。
テリー・ギリアムの新作の話は聞いてたけど
途中までヒースが出演できてたなんて知りませんでした。
じゃあ,またスクリーンでヒースが観れるのか~~
絶対泣いてしまいそうだなぁ・・・でも楽しみでもあります。
投稿: なな | 2009年9月18日 (金) 22時02分
mayumiさん こちらにもありがとう。
ほのぼのホラーってジャンルですかね?これ。
いや,しんみりホラーか・・・なんだかとっても優しい気持ちになりました。
私もあの,犬と両親のエピソードが好き!
迎えに来た彼らの表情に癒されました。
愛情は死を超えて不滅なんだなぁ・・とうるうる。
投稿: なな | 2009年9月18日 (金) 22時07分
このジャンルは「だまされた」と思われたら終わりで評価も低いものになってしまいますから、
作り手も覚悟がいるし大変ですよね。
私は満足いく作品だったのですが、
公開当時に拝見したみなさんの感想はいまひとつって方が多かったなあ。
そうですね。「あの作品」は気付いてない幽霊(?)がひとり、現実社会で「生きていた」のに対し、
本作は全員死亡の事故に遭った人たちとそれぞれの大切な人たちが出てくる異世界の話で、
生きてる人にはどうやっても会えません。
このややこしい設定が面白いんですが、
ちょっとわかりにくかったかもしれませんね。
投稿: | 2009年9月20日 (日) 12時43分
↑すいません。内容だけ入力して送信してしまいました(汗)
投稿: SOAR | 2009年9月20日 (日) 12時44分
ななさんの感想を読んでいると、「うーん、確かにいい映画だよな」
とおぼろげに思い返しながら自分のページを見てみたら・・・、
結構酷評してました。
あれ?
基本的に、この手の「ほのぼのホラー」ですか?
結構好きなはずなので、
もう一度テレビで放映されるときにでも見てみようと思います。
投稿: クラム | 2009年9月21日 (月) 02時19分
SOARさん こんばんは
ほんとにこのジャンルでヒットしようと思ったら
賭けに出るような気合がいるでしょうね。
何と言っても「あの作品」の単なる二番煎じと片付けられると
おしまいですからね~~
わたしは「あの作品」とははっきり違うこの作品ならではの設定
それはつまりSOARさんもおっしゃるように,
物語の舞台が現実社会でなく「生きている人」が出てこない,という点ですが
そこがとても面白いと思ったし
「先に逝った人々が迎えに来てくれることで安らかに旅立てる」というテーマが
とても気に入ったので,結果的には満足の作品でした。
でも確かに,中盤までは意味不明およびテンポも悪いので
オチが読めたところで一気に
「な~~んだ」と低評価になってしまう観客は多いでしょうね。
投稿: なな | 2009年9月21日 (月) 22時53分
クラムさん こんばんは
>自分のページを見てみたら・・・、
>結構酷評してました。
あはは!
でも私もこの作品はテーマがわかってからが勝負の作品で
ラストまでの作り方は退屈かもと思っています。
あのラブストーリーは引っ張りすぎです。
ラスト近くになってテーマが見えてきて初めて
それまでの意味不明な展開への不満が一気に帳消しになるくらい
感動しました。
この手の欧米のホラーは基本的には「癒し系」ですね。
「シックスセンス」も「アザーズ」も「永遠のこどもたち」も。
欧米はとくに「天国」「魂は不滅」という思想があるので
こういう作品ができるのかもしれませんね。
投稿: なな | 2009年9月21日 (月) 22時59分
こんばんは!
みました〜。
最近、こういうパターンの映画多いよね。
この前もひとつみた。笑
しかしクレアのまわりは不審者ばかりで、普通なら発狂しそう。。
自分がわかってないことはきついなあ。
ラストはいい感じでウルッとさせてくれましたー。
投稿: アイマック | 2009年9月30日 (水) 22時27分
アイマックさん こんばんは!
ご覧になりましたか~
使い古されたネタのお話ですが
この作品独自の世界観もあり
しんみりしてしまいました。
欲を言えば
パトリック・ウィルソンじゃない男優さんが
演じてくれたほうが好みだったかな?
アン・ハサウェイはよかったです。
>自分がわかってないことはきついなあ。
これは「シッ●ス・センス」や「ア●ーズ」でも言えることでしたね。
投稿: なな | 2009年10月 1日 (木) 19時46分
こんにちは!
オチが有名があるので、こういう作品って、むずかしいけど、
描いてるものは、違う世界だし、いい感じの映画かなと思いました。
不可解な話で、アン・ハサウェイの主人公が、
とまどっていく感じは、うまく出てたんじゃないかなと思います。
ラブロマンス的なのと、観てて平坦なところは、
やっぱり、観てて、我慢がいりましたね。
投稿: kino | 2009年10月 3日 (土) 00時13分
kinoさん お久しぶりです!
ウケルかどうかが難しいジャンルの作品ですよね。
でも,こういうふうに少し世界観を変えてでも
どんどん製作していってほしいジャンルでもあります。
こういったテーマの作品には惹かれるタチですので・・・
アン・ハサウェイはシリアスな演技も上手いですね。
>ラブロマンス的なのと、観てて平坦なところは、
>やっぱり、観てて、我慢がいりましたね。
そうですね~,そこがちょっと惜しまれる・・・
途中が冗長なのが評価を下げましたね。
投稿: なな | 2009年10月 3日 (土) 23時07分