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2009年9月の記事

2009年9月30日 (水)

好きなシーン−劉燁−

Cap259
藍宇の映画の中でも特に好きなシーンについて
劉燁(リウ・イエ)と胡軍(フー・ジュン)さんのお二人それぞれについて,一つずつあげるとすれば・・・。(なぜか兄貴キャラの胡軍さんにだけ「さん」づけになっちゃう癖が・・・)

まず劉燁のシーンから。一番好きで,この人上手いなあとつくづく感心したのは・・・
Cap008
↑このシーン。

再会後にアパートで捍東に手料理をふるまった後,台所で洗い物をする藍宇。彼に向って,懐かしげに昔の思い出を語る捍東。

「今住んでる貸家の裏庭に花を植えた」と言う藍宇に捍東は,「今も花が好きなのか。覚えてるか?ある年の俺の誕生日に,部屋中を花で飾って,オレの花粉症を悪化させただろう?」と言う。そして,その台詞に対する藍宇の反応が,すごくデリケートなのだ。

この時の二人は,再会はしても,まだ元の恋人関係に立ち戻ってはおらず,肉体的なヨリが戻るのはこのすぐ後。捍東は自分が捨てた藍宇に対して,どこか後ろめたそうで,機嫌を取ってるような雰囲気も感じる。一方,藍宇の方には,やや身構えているような他人行儀な硬さがある。
Cap232
笑顔で思い出を話す捍東と違って,鏡に映る藍宇の顔は真顔だ。顔を上げ,捍東の顔をいっとき何か言いたげに凝視する。この時の劉燁の表情がいい。まるで古傷に不用意に触れた捍東を咎めるかのような,ちょっと微妙な表情をするのだ。

そして一拍遅れて「・・・そう?」と答え,捍東から視線をそらして,ようやくうっすらと微笑み,「そうだった・・・」と言葉を続ける。
Cap012
藍宇が昔のことをすっかり忘れてしまったのかと思った捍東は,「何もかも忘れているようだな。俺の会社の電話番号も(忘れてたし。)」とからかうが,「忘れた方がいいこともあるから。」と藍宇に返されて,ちょっと気まずそうな顔になる。

あのね,捍東。
藍宇があなたとの思い出や,
会社の電話番号を忘れるわけがない。


でも,楽しかった過去を思い出すのが辛い気持ちもあったから,忘れたふりをしたんだと思うよ。あなたを諦めるのがあまりにも辛かった藍宇は,あなたを忘れようと,思い出を封印して生きてきたのかもね・・・・と,私はこのシーンを観るたびに捍東に言いたくなる。
Cap242
この地点ではまだ藍宇を運命の相手だと自覚してなかった捍東と,捍東だけを深く愛している藍宇。これは,そんな二人の気持ちの温度差がよく表れているシーンだと思う。そしてまた,捍東に捨てられたことが,藍宇をどれほど傷つけたか,というのもよくわかるシーンだ。

鏡を使った演出も,風情があって心憎い。
それにしても劉燁!なんて深くて,それでいて自然な演技。特にこのシーンの彼は,ほんのわずかな表情や声音の変化だけで,藍宇の心情をよく表現していた。考えたり計算して演技してるのではなく,もはや藍宇が憑依しているとしか言いようがない。このシーンを観るたびに,藍宇のいじらしさに萌える・・・。
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2009年9月28日 (月)

花の生涯~梅蘭芳(メイ ラン ファン)~

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さらばわが愛チェン・カイコー監督久々の京劇もの。実在した京劇の名優,梅蘭芳(メイランファン)の半生を描いたものだ。「さらば~」とはまた訴えてくるものは違ったが,天才と呼ばれる芸人の背負う業のようなものが,ずっしりと伝わってくる作品だった。

実在した梅蘭芳は,京劇の近代化や海外公演を成功させ,世界的な名声を博した女形俳優。 日中戦争の間は,一貫して抗日の立場を貫いたのち,戦後舞台に復帰して東西冷戦時代には訪日京劇団の団長として,まだ国交のなかった日本で京劇公演を成功させたという。
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若き日の梅蘭芳を演じた,余少群(ユイ・シャオチュン)が美しい。京劇メイクを取った彼の素顔もあでやかで,何ともなまめかしいのだ。舞台の上の彼の顔や仕草の美しさは必見だ。その匂い立つような美には,女の私でもうっとりと見惚れてしまった。
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そして壮年になってからの梅蘭芳は,黎明(レオン・ライ)にバトンタッチ。顔立ちはともかく彼の体格が立派過ぎて,女形としてはどうよ?と思わぬでもなかったが。特に小柄なチャン・ツィイーが男形という設定で一緒の舞台に立つシーンはうーん,ビジュアル的に無理が。(どっちも似合わん)

そのせいかどうか知らないけど,レオン・ライが舞台に立つ映像は,必要最小限だったような。それでも壮年になってからの素顔の梅蘭芳のシーンは,深みのある落ち着いた内面の演技が求められるので,柔和と品格を絵に描いたようなレオン・ライのキャラは,よくハマっていたと思う。
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それにしても,彼ほどの才能を持った人間には,「孤高」がついてまわるのは,宿命なのだろうか。人生途上で選択を迫られたとき,梅蘭芳がいつも何よりも優先させなければならなかったものは,「京劇」だった。それは,時には自分の感情や大切な人との絆を犠牲にしてでも,彼が貫かなければならなかった道だったのだろう。

そしてその道は,彼の家族も,恋人も、友人も,真の意味では一緒に歩むのは無理な道だったから,だから彼はいつも独りで歩き通さなければならなかった。望むと望まざるに関わらず,彼には「京劇という芸術」に対する,彼にしかできない使命があったから。
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教え育ててくれた老師匠との演技対決で,師匠への恩義よりも,「京劇近代化への信念」を取った青年時代。愛人の孟小冬(モン・ツァオトン)が,彼の妻の「梅蘭芳は観客のものよ」という台詞を聞いて,彼のもとを去った壮年時代。義兄弟の契りを結び,マネージャーのように誰よりも彼を支えてくれた邸如白(チウ・ルーパイ)と意見が衝突し,裏切られもした日中戦争時代。

日本軍の要請をかわすために,自ら罹ったチフスで昏睡する梅蘭芳。その枕元で,邸如白が言う,「なんて孤独な人生だったんだ!生まれ変わった時には決して君の邪魔はしない。君は普通の人生を望んでいただろうに・・・・」という台詞が印象的だった。
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梅蘭芳を敬愛し,日本軍のために彼に京劇を演じさせようと骨折った軍人,田中。中国語も演技も上手く,「日本語の上手な中国人俳優さんかしら?」と思ってたら,日本の俳優さんだったんですね。
安藤政信さんという名前,この作品で覚えました。イケメンですよね~,要チェック!

「さらば、わが愛」ほどではないにせよ,久々にチェン・カイコー監督の見事な大作を楽しめた,と思う。映像の美しさは,さすがカイコー監督だと感動。

2009年9月26日 (土)

ウォーロード/男たちの誓い 未公開シーン

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こちらは初回限定コレクターズ・エディション。
2枚組で,本編DISCには,劇場公開時より13分長い完全版が収録。特典DISCには,監督のコメンタリーつきの未公開シーン,メイキング,製作ドキュメント等が収録されている。本邦初公開のフォト満載のビジュアルブックレットつき。
ウォーロード本編の記事こちら) 

観たかったのは,お友だちブロガーさんお勧めの,特典DISCの未公開シーン。特に,「幻のエンディング」と呼ばれる金城さん演じるウーヤンの処刑シーンが観たかった。監督が,「もしこれがカットされてなかったら,きっと彼は香港アカデミー賞候補になっただろう。」と絶賛したという金城さんの演技。

未公開シーンは全部で27分間。
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金城さんのシーンの他も,素晴らしいシーンばかりだった。たとえ上映時間が3時間になってもいいから,カットされたシーン全部入れてほしかった~。そしたら,どんなにかこの作品の深いテーマがよく観客に伝わったことか,と惜しまれる。

今回,未公開のシーンも全部観て,初めてこの作品が単なるストーリーだけが一人歩きする武侠作品などではなく,実は立派な反戦映画だったんだ,ということがわかった。カットされたシーンのほとんどは,名もない兵士たちのエピソード。
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カットされた本編や,それをさらにカットした劇場公開版ではまったく表に出てこなかった彼らにもちゃんと役名があり,壮絶な,あるいは哀切な物語があったのだ。特に蘇州攻めの時の飢えに苦しむ兵士たちの友情のエピソードは・・・・切なくて言葉もない。彼らの痛みから,戦争のおぞましさ,虚しさが肌身に伝わってくる。

監督は,戦闘シーンのアクションも,派手さや華麗さはまったく求めず,まるでアメフトにようにリアルな肉弾戦の再現にこだわった,と言う。
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この作品の戦闘シーンで兵士たちが受ける傷や,死にざまの生々しさは目を覆いたくなるほどだ。「反戦の思いを表したかった」と監督がコメントしていたが,それならなおさらのこと,カットのしすぎでしょ~,監督!せっかくの思いがまったく伝わらないって!

そして,金城さん渾身の演技を見せる幻のエンディング・・・。これは凄かった。ウーヤンはパン暗殺の罪で凌遅刑で処刑される。この凌遅刑っていうのは当時もっとも残酷な処刑法だったらしい。(下記参照)

凌遅刑(りょうちけい)とは、清の時代まで中国で行われた処刑の方法のひとつ。生身の人間の肉を少しずつ切り落とし、長時間苦痛を与えたうえで死に至らす刑。歴代中国王朝が科した刑罰の中でも最も重い刑とされ、反乱の首謀者などに科された。(Wikipedia)

う~~読んでるだけで気分が悪くなってきた・・・・。そんな目に合わされた金城さん。映像は処刑されている彼の顔のアップを映し出しているのだが,その時の彼の表情がいいのだ。
画像はクリックすると拡大します。彼の表情を観て!
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苦しんで泣き叫ぶのではない。あくまでも静かに苦痛に耐えている
のだけど,その目から流れ落ちる涙は,肉体の痛みや苦しみのせいではないことが,痛いほど伝わってくる表情だ。
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きっとウーヤンは,二人の義兄を失ったときに,すでに真の地獄を味わいつくしたのだろう。生に対する執着も無念の思いも感じられない抜け殻のように虚ろなウーヤンの表情の,ひたすら哀しみをたたえたまなざしが痛々しい。緩慢に忍び寄ってくる死を前にして,彼はパンとの出会いから現在に至るまでに起こったすべてのことを,思い起こしているかのようだ。
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いまわの際に天を仰ぎ見る彼の表情は,先に逝ったアルフやパンの面影を追い求めていたのだろうか。

監督は,このシーンのウーヤンの演技は,金城さんに完全に任せたそうだ。金城さんは,死ぬ間際に自分の人生を振り返るような心境で演じた・・とか。いや~~,いつの間にか素晴らしい演技力の俳優さんになったもんだ。

未公開シーン以外にも,製作秘話など盛り沢山。ロケ地は山奥なので何台ものトラックで早朝から出かけて行って大変な苦労があったらしい。脚本はしょっちゅう書き直されるので,役者は誰も脚本は持ってなかった,とか。演出や演技に関してアンディやジェットたちも監督と納得がいくまで話しあって,まさにみんなで力を合わせて作り上げた!という雰囲気がひしひしと感じられた。
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撮影現場の映像では,ジェットのなんとも頼りがいのある,人の良さそうな笑顔がとっても印象的だった。

2009年9月22日 (火)

金城武 作品記事

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ウィンター・ソング

ウォーロード/男たちの誓い

ウォーロード/男たちの誓い 未公開シーン

傷だらけの男たち

K-20 怪人二十面相・伝

SweetRain 死神の精度

天使の涙

不夜城

LOVERS

ラベンダー

Returner リターナー

レッドクリフ PartⅠ

レッドクリフ PartⅡ-未来への最終決戦-

「レッドクリフPartⅠ」のDVD!

ウルヴァリン:X-MEN ZERO

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X-メン・シリーズって全く未見~~
予習していこうかな?と思いつつ,そんなひまもなくて,「ええい!ままよ」って白紙の状態で観に行ったが,結構お話についていけた。そして面白かったー!

ウルヴァリンの誕生秘話で,
外伝みたいなものだったからかな?


記憶をなくした謎の多いヒーロー,ウルヴァリンの
過去の生涯の物語。

父殺しの業を背負い,同じ能力を持つ兄のビクターとともに,南北戦争から始まって二度の大戦 に至るまで,あらゆる戦場を「背中あわせ」でともに戦ってきた不死身の兄弟。オープニングで立て続けに流れる映像。リーヴ・シュライバーの凶暴な表情に不覚にも笑いが・・・。

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いやもうこのヒト,ワイルドさがたまりません~~。
猫系の猛獣ですな,まるで。

このビクターとの愛憎劇と壮絶な兄弟喧嘩が,この作品の見どころの一つなのだが,このお兄ちゃん,ほんとに弟を殺したいと思っているのか,実は歪んだ愛情の裏返しなのか,それともワケあってそういうフリをしているだけなのか,最後までハラハラしながら観た。
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兄弟ともに,「何やっても死なない」のはお互い承知だからかどうか,この二人のバトル,全く手加減というものが無くて~~すごいのなんの。

それでも,ラストの敵に力を合わせて向かっていき,絶妙のコンビネーションで戦うところは,やっぱり兄弟だなぁ・・・と。(ところでこの兄弟喧嘩のオトシマエ,X-メンのⅠではどーなるの?)

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ウルヴァリンの愛の物語は切なかった・・・。
そう,彼の名前の由来も。
彼の恋人ケイラを演じたリン・コリンズ。
ミステリアスでナイスバディの女性だなぁ・・でもどっかで見たことが・・・と思ったらヴェニスの商人でお姫様役(ポーシャ)を演じた彼女だった。(上の画像,まったく別人じゃん)

ヒュー・ジャックマンの筋肉美は完璧!

まさに作りもののようだ。どうやったらあんな筋肉製造できるのか?彼は嘘のように足が長いから,余計に上半身の筋肉とのバランスもよい。今作ではなんとすっぽんぽんで疾走なんてのも見られるぞ。後半のバトルのファッションもなぜかランニング姿で,サービス満点だぁ。

他のミュータントたちの得意技披露の場面も面白かった~。
ゼロのガンアクションや,刀をバトンガールのように振り回すウェイドの技に目がテンに。(か,かっこいい・・・)
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↑この,目から殺人ビームが出る坊や・・・サングラス取った顔も見てみたい。なんでも,X-メン・シリーズで登場する,サイクロップスというキャラの若いころだとか。

しかし,何と言っても一番目立っていてカッコよかったのは,ガンピットでしょうな。トランプ爆弾や棒術最高!気障な立ち回りもこの上なくキマっています。・・・ところで,この俳優さん誰?
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いや~~,面白いじゃないですか!この世界観。
あらためてX-メン・シリーズが観たくなりました,遅ればせながら。この映画の前に期待して観た「ココ・アヴァン・シャネル」よか,ずーーーーっと面白かった。

2009年9月21日 (月)

ウォーロード/男たちの誓い

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あらすじ:
19世紀の中国。太平軍との戦いで1,600人の兵士を失った清の将軍、パン(ジェット・リー)。街に出たパンは盗賊のリーダーのアルフ(アンディ・ラウ)、その養子のウーヤン(金城武)と出会い、昨夜ともに過ごしたリィエン(シュー・ジンレイ)がアルフの妻と知る。アルフとウーヤンは清軍に入り、3人は義兄弟の契りを結ぶことになるが……。(シネマトゥディ)

中国の歴史にはことのほか疎いくせに,予備知識も入れずに観たもんだから,冒頭から誰が誰と何のために戦っているのかちっともわからな〜い状態で。でもさいわいDVDだったので,途中で止めて「太平天国の乱」とか「馬新胎暗殺事件」をググったりして,予備知識を補填しながら観た。
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大好きなラヴソングウィンター・ソングの監督,ピーター・チャンが歴史アクション?と意外な気がしたが,観終わると,アクションも素晴らしいのだが,さすがラブストーリーの名手の監督らしく,人間ドラマが一番心を打つ作品に仕上がっていた・・・・・。しかし,なんという悲劇だ,これ。おしまいには主要登場人物がみんな死んでしまう。

原題は投名状。義兄弟の契りを結ぶ儀式のこと。
この投名状の持つ誓いの凄まじさもまた,平和な日本の感覚ではわかりにくい。 儀式のために,何で関係ない人をまず殺す必要があるのかな?共犯意識が絆を強めるということ?それとも,それだけ悲壮で非情な決意を見せ合わねばならない通過儀式?
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どちらにせよ,生半可な気持ちでは決して結べない,まさに命懸けの血の契り…それが投名状だ。
生まれは違えども,共に死なんとす。
義兄弟を殺めし者には,必ずや死を。
たとえ相手が義兄弟であっても,必ずや死を。

この誓いの言葉の非情な重みは,ラストの悲劇の場面で際立つこととなるのだが。

投名状により,長兄となったパンは,清軍の落武者。
「飢えた民や,虐げられた民を救う世の中を作りたい」という志を持ち,その目的達成のために政治的な権力を目指している。
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彼には大局を見極める能力と,はるか先の目標実現への揺るがない信念や野心がある。それゆえ,必要ならば裏切りも非情な措置も辞さない冷酷さも持ち合わせている。アクション俳優ジェット・リーが見事な演技力で,心ならずも非道な選択を行うパンの,秘めた苦悩を見せている。

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次兄のアルフは盗賊団の頭であり,仲間を思い,仲間を守ることに命を賭ける男。パンの勧めに従って官軍へ入ったのも,ひとえに自分の民を養うため。何よりも仁義を重んじるあまり,視野が狭くなる,という弱点もあるが,民からの人望はあつい。

理想家のパンと現実主義のアルフ。
正反対の二人が最も激しくぶつかり合った,蘇州城の投降兵処刑の場面は,どちらの言い分も苦悩もわかり,正視できないほど辛いシーンだった。
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この二人の義兄の間で,板挟みの役回りを演じる三男のウーヤン。若い彼を突き動かしている原動力は,野心でも民への責任感でもなく,何よりも二人の義兄への敬愛の心。

アルフの情の篤さを慕い,
パンの強さに心酔するウーヤン。

その若さゆえの純粋さ,怖いもの知らずの一途さと短絡的な行動は,後に悲劇を始動させることになる。
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レッドクリフでは羽根扇片手に,優雅に微笑んでいた金城さんが,この作品では血と泥と涙にまみれて,体を張った壮絶なアクションを見せてくれる。

この作品の戦闘アクションは,土埃も血しぶきも殺し方も,すごくリアルで,見ごたえたっぷりだ。三国志の時代よりかなり後の時代なのに,鉄砲の登場以外は,三国志時代とそんなに戦い方が進歩したように見えない。基本は弓矢や槍,大きな肉切り包丁みたいな刀を振り回して,敵を串刺しにしたり叩き切ったり・・・・騎馬戦の迫力も凄かった。
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金城さんは西洋風の男前なので,ジェットやアンディに比べると,あまり辮髪は似合わない。(というか,辮髪にするのが勿体ない顔だ)そのあたりを考慮したのかどうか知らないが,彼はたいがい戦闘帽か防寒帽を被っていた。
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さてこの物語,三人の誰に一番共感するか?

私は,一徹なアルフの人柄を一番好きだと思い,
捨て石に利用されたパンの事情を一番気の毒に思い,
そしてウーヤンの揺れる思いに
一番感情移入しながら観た。

三人の信念や目指すものが違ったから,という理由だけではなく,腐敗した清王朝が抱えるさまざまな問題もまた,この悲劇を引き起こす原因を作ったのだろう。一般の兵士も農民も,生き抜くことが困難だった清朝末期。こんな過酷な時代に生きねばならなかった彼らの,それぞれの進んだ道を思うとき,他にどんな選択肢があったのだろう,という思いになる。
Cap308
アルフの妻は,一体どちらの男を愛していたのか?
いや,彼女はただ,あの戦乱の世の中を,なんとか生き延びたかっただけなのかもしれない。ウーヤンに命乞いをするときの彼女の台詞を聞いてそう思った。しかし,もしそうだったとしても,誰が彼女を責められようか。

とにかく,人間の描き方が半端で無く深い作品で,続けて2度観たくなる傑作。金城さんが被るレッドクリフとつい比較したくなるが,レッドクリフとは全く目指す方向が違う作品。絢爛豪華さはレッドクリフには敵わないかもしれないが,作品の深さはこちらがずっと上だろう。
Cap339
太鼓の乱打から始まる勇壮なテーマ曲も,とても好きだ。
ちなみに劇場公開時にエンドロールでかかったらしいアルフィーの曲は,DVDではかかりませんでしたよ(ほっ)。
ウォーロードの未公開シーンに関する記事はこちら

2009年9月18日 (金)

北京故事-藍宇-

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映画藍宇(ランユー)の原作となった,中国のインターネット小説。もともとは過激な描写も満載だったらしいが,後に出版される際には「藍宇」と改題,加筆修正され,過激な描写は一部割愛されたそうで。

映画の記事にも書いたが,
原作の文章から匂い立つ藍宇の魅力は格別。

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握手した瞬間,彼が目を上げて俺を見た。その目を俺は一生忘れることができない。大きなひとみに憂鬱と不安と懐疑が満ちていた。(原作より)

初めて藍宇と会った捍東が,一目で彼を気に入る場面の描写だ。

原作は,捍東が藍宇と出会ってから死別するまでの紆余曲折の過程が,捍東の一人称で語られる。映画では大胆にすっ飛ばされていた歳月やその背景の事情も,原作には詳しく書かれていて,特に捍東の藍宇への心情の変化は丁寧に綴られている。

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純粋で,繊細,そして同時に
誇り高く,頑固なところもある藍宇。


彼の愛し方は,脇目もふらずに全身全霊を注ぐ愛しかた。まるで生まれて初めてひとを愛したかのように。(いや,ほんとにこれが正真正銘の初恋だったんだよな・・・)その,あまりにもまっすぐな一途さと真摯さに,ブレイボーイの捍東は,たじろいだり,驚いたり・・・・。

藍宇の情は限りなく細やかで深い。 

そのうえ彼は,そんなにも一途なたちであるにもかかわらず,必要とあらば自分の中にじっと思いを秘めることもできるのだ。伝えることで相手の負担になると判断したとき,また,あまりにも大切な思いなので,他の誰とも共有したくないと願うとき,そんなとき藍宇は,痛みや哀しみや恋慕の情を,自分の奥深くに抱え込む。

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幸せだった家庭が少年時代に崩壊し,苦労してきた藍宇は,辛い運命でもじっと受け止めてやり過ごす強さも持っている。捍東の妻の卑劣な中傷が原因で,職場を追われる羽目になったとき,藍宇が後に振り返って言う台詞が印象的だった。

「大丈夫。ものごとって,そのときはすごくこわくても,歯をくいしばっているうちに時間は過ぎるんだ。」依然としてテレビを見ながら彼は静かに言った。「本当言うと,別れた時の絶望に比べればたいしたことなかった。」 (原作より)


藍宇はどんなときも,
自分というものを決して失わない。


捍東との関係も自分のセクシャリティも,罪悪感は持っていても,決して恥じず,後悔もしなかった。捍東との関係のスタートに金が介在したことには,わだかまりがあり,彼の経済力に頼りたがらなかった。捍東を愛しながらも,あくまでも自立した存在を貫こうとする藍宇の生き方は,時には捍東をいらだたせる。
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捍東にとっては,遊びのつもりで始めたはずの情事なのに,いつしかどっぶりと本気になり,時には驚くほど予想に反した愛し方を返してくる藍宇に,気がつけば捍東の方が振り回され,どうしようもなく恋焦がれている始末。

だから,言葉では決して「愛してる」と言わない藍宇とは対照的に,捍東の方は,(行いは時には薄情だが)愛の言葉をまるで確かめるように,何度も激しく藍宇にぶつける。

愛ゆえに繰り返される,小さないさかいの数々や,捍東の結婚による別離と再会,捍東の逮捕と服役,藍宇のあの「献身」と釈放,二度目の同棲・・・・。
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様々な経緯を経た彼らの絆が,もはや揺るぎのないものとなった頃,捍東はようやく,藍宇こそが運命の相手だという確信に辿り着く。

彼は俺の腕の中で眠っていた。深い眠り。俺は自分の人生を思い,事業のことを思い,母を思い,獄中の日々を思った。そして自らに誓った。藍宇がこうした暮らしに飽きない限り,俺はずっとそのそばにいると。(原作より)

 
その先に待ち構えていた悲劇は,この手の物語では,お約束の匂いもして,やはり,片方が唐突に旅立ってしまうブロークバックマウンテンや,トーチソング・トリロジーを思い浮かべてしまうが……。
Cap289
藍宇。・・・・漢字から受けるイメージも,
ランユーという音の響きも,どちらもなんと美しいことか。

愛する能力にかけては,
おそらく天賦のものを授かっていた藍宇。


その魅力を文章で堪能できるのが原作だと思う。

読み返す度に,捍東と同じ目線でひたすら藍宇を追いかけ,彼のデリケートでミステリアスな内面の魅力に溺れていく自分がいる。これほどいじらしく,愛おしく思えるキャラは,これまでに読んだ,どんな小説にも存在しなかった。(←「耐える」キャラに萌えるわたくし)
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最後に,原作の中で特に好きな文をいくつか。

藍宇は過去を語らない。未来は,なおさら語らない・・・・。彼は未来を信じていなかった。そして,俺たちは今このときが幸福だった。

彼の笑顔。彼の話。俺はなんとも言いようのない気持ちだった。彼はちっとも俺を信用していない。それなのに,こうと決めたら,もう後ろを振り向くことなく俺とともにいる・・・・。
(どちらも原作より)
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映画のファンの方は,ぜひ原作も機会があれば読んでみてほしい。(ただし,男性同士の過激な性描写は苦手,と言う方にはお勧めしないが。)
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2009年9月16日 (水)

猫と洗濯物

017 はろー

うちのは,
取りこんだ洗濯物の山の上に座り込むのが好き

やわらかくて好きなのか,
お日さまのにおいが好きなのか・・・
最近は必ずと言ってよいほど,洗濯物の上には
満足そうなの姿が。

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こんな感じ

洗濯物,畳みたいのに,邪魔になるったら!
どく気は まったくないらしい。

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叱られても ,なかなかしぶとい・・・
(でも,ちょっとは怖いので,
耳が後ろに反っている

そして,とうとう・・・・

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じーちゃんに強制退去を迫られて
やや おかんむりのななちゃんでした。

2009年9月15日 (火)

パッセンジャーズ

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 初めにお断りしておきますが,私の感想は,映画のジャンルについてネタバレしています。そして,この作品は,ジャンルをばらすだけで,かなりオチが読めてしまうので,未見の方はご注意ください。まあ,もうDVDになってるので,ある程度のネタばれはご容赦していただけると思いますが,これからご覧になる予定の方は,予備知識はゼロの状態が絶対いいですから。

航空機事故で生き残った乗客たちが,セラピストのクレア(アン・ハサウェイ)にセラピーを受けるうちに,次々と姿を消す謎めいた物語。爆発事故があったらしいのに「人的なミスだ」と言い張る機長や,尾行する怪しげな人々。クレアは航空会社の責任逃れのための陰謀を疑うのだが・・・・。

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陰謀めいたサスペンスを思わせる物語に見えるが,これは実はあのシッ●スセ●スや,ア●ーズと同じジャンルである。つまり幽●ネタ。(ああー,言ってしまった~)

しかし,これまでの同ジャンルの作品と少し違う点は,この作品の舞台が,こちら側の生者の世界でもなく,あちら側の死者の世界でもなく,その中間,つまり,「自分が死んだと気づいていない」成仏していない人々の住む世界であること。そこがユニークだ。

突然死んだりした場合,魂はまだ死を受け入れられなくて,死者の世界に旅立つことができず,このような生と死の中間の世界に留まっている,という設定なのだろう。その世界は彼らが生きていた世界とよく似ている。

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そしてもっとユニークで,しかも心を打つのは,「死んだと気づいていない」彼らの世界へ,「お迎えに来る」死者たちの存在だ。つまり,それぞれ生前に彼らと親しかった死者たちが,彼らが「もう死んでいることを」告げるために,そして彼らを死者の世界へ旅立たせるために,彼らを迎えにやってくる。

もちろん言葉でそれを伝えるのではなく,接触してくるだけなので,人によっては自分が子供のころに死んだ肉親の顔を忘れていて,相手の意図にすぐには気がつかないことも多く,旅立ちに時間がかかるケースもある。

人によって,迎えに来る死者たちはさまざまだ。
先だたれた両親・・・叔母・・・祖父・・・恩師・・・
そして,子供の頃飼っていた愛犬。


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いったい,自分の場合は,
誰が迎えに来てくれるだろうか?

この作品を観た人たちはきっと,今は亡き懐かしいひとたちの顔を,もう記憶の中ではおぼろげになってしまっていたりするその顔を,いろいろと思い浮かべてしんみりしてしまったのではないかと思う。(私だったら,小さい時に飼ってた文鳥に迎えに来てもらいたいな)

ラスト近くになって,それまで主人公たちのまわりに出没していたちょっと不審な人物たちの言動や正体がわかったとき・・・・,こみ上げてくるものを感じた。
幽霊話(それも登場人物の大半が幽霊)ではあっても,ホラー色は皆無で,最終的にこの物語から一番感じたのは,生死を越えて永遠に存在する愛や絆だった。

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遥か昔に,愛の絆を結んだ相手が,死後の世界でも自分を慈しんで迎えに来てくれる。死は終わりではなく,別の世界へ先に行くだけのことであり,愛するものとは死後も再びいつか逢えるという考え方には,とても癒される。

主人公たちのラブストーリーを中心に進む中盤までは,退屈にも意味不明にも感じる作品だが,後半の「お迎えびとたち」の正体がわかってからはとても感動した作品だった。この手はどうしても賛否両論になるので,手放しでお勧めはしないけれども。

2009年9月13日 (日)

ロルナの祈り

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ダルデンヌ兄弟の作品は・・・
実はちょっと苦手だった。

テーマは好きだけど,雰囲気が苦手と言うか・・・・静謐すぎて落ち着かないのだ。私にとって,「息子のまなざし」はよかったが,「ある子供」はそうでもなかった。(とちゅうで退屈してしまった)それでも新作が出たと聞くとスルーできず,ついついこの作品のDVDを手にとってしまったわけだけど。邦題にも惹かれた,というのもある。

で・・・この作品は・・・すごく心に来た。
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人の罪深さ,愛の誕生の不可思議さ。そして,
東欧社会で弱者として生きている人たちの,厳しい現実。
いろいろと考えさせられ,余韻を引きずる作品だ。

主人公のロルナは,国籍を取得するためにベルギーに滞在している,アルバニア移民の女性。国籍を得るために彼女は,闇ブローカーの手引きで,麻薬中毒の青年クローディと偽装結婚する。

ブローカーは,この後,用済みになったクローディを,なんと麻薬の過剰摂取をよそおって殺害し,未亡人になったロルナを,今度は国籍を欲しがっているロシア人男性と偽装結婚させる計画だ。
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クローディ殺害の計画に関してはロルナも承知で,ロシア人からブローカーに支払われるお金は,ロルナの手にも入る。彼女はそのお金を恋人との新所帯に使う予定。そう,彼女はれっきとした犯罪者なのである。

なんともやりきれないストーリー設定だ。
犯罪に手を染めてまで国籍を必要とするロルナのような移民たちや,彼らを利用して儲けているブローカーたち。利用している,と書いたが,考えてみればロルナたちにとっても,彼らブローカーの存在はなくては困るのだ。そして犠牲になるのは,クローディのように,密かに抹殺されても,誰も顧みないあわれな麻薬中毒患者という現実。

カメラは終始一貫して,ロルナの日常生活を静かに何の感情も交えずに追ってゆく。もちろん,BGMなど皆無なドキュメンタリー・タッチ。おまけに俳優たちのセリフも最小限で,淡々とした抑えめの演技なので,よほど感性を研ぎ澄まして観なければ,登場人物の気持ちの変化がわからないまま置いていかれそうな作品だ。

特にロルナの心境の変化はわかりにくい。
冒頭,クローディと形式上一緒に暮らす部屋でのロルナは,不機嫌で,ぶっきらぼうで,取り付く島もない雰囲気を漂わせている。クローディのことをほんとにうっとおしく感じているのか,それとも情が移るのを恐れているのか,彼女の無表情の演技からは何も読みとれない。仕事帰りにひそかに会う,本当の許嫁の青年に見せる笑顔とは別人のようだ。
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クローディを演じるのは,「ある子供」にも出演した,ダルデンヌ作品ではお馴染みのジェレミー・レニエ。役柄に合わせてか,痛々しいほど痩せやつれていた。彼の演じるクローディは,偽造結婚なのにもかかわらず,子供のようにロルナを一途に慕う。そっけない態度のロルナに,「トランプしよう」「話をしよう」と懸命に働きかけ,「麻薬をやめれるように力を貸してくれ」とロルナに縋る。

・・・・確かにどうしようもない情けない男だけど,ひたむきに懐いてくる傷ついた犬のようで,哀れすぎて愛しくなってしまう。

ロルナはいつから
彼を愛するようになったのか?

目的のために利用するだけの相手を。
そして用が無くなると冷酷にも殺すつもりの相手を。

それは決して愛してはいけない相手であり,彼女自身もまた,愛するなんて思いもよらなかった相手だ。
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劇中に唐突に登場するラブシーン
(それもロルナの方から)は,あまりにもいきなりに思える。しかしそれまでに彼女は,ブローカーに「クローディを殺すのは中止して」と何度も懇願するようになっている。きっとあの頃から,彼女の心境には変化が生じていたのだろう。ベルギーで恋人と所帯を持つという目的は果たしたいけど,クローディは犠牲にしたくないという,複雑な思いが起こってきたのだ。それが「愛」とまで呼べるものかどうか,おそらくロルナ自身も気づいてはいなかっただろうけれど。

クローディの子供を想像妊娠し,これまでの計画も,許嫁との未来もすべて投げ捨てて,「想像上のクローディとの赤ちゃん」のために森へと逃走するロルナ。そのとき,彼女のクローディとの行為は,始まりは憐憫の情や母性愛からだったとしても,今は確かに愛にまで昇華したのだと思った。・・・・ただし,相手のクローディはもうこの世にはいなかったのがなんとも哀しい。

お父さんは助けられなかったけど,あなたは絶対に守る」と実際にはいない赤ちゃんに語りかける彼女の台詞に,私は彼女のクローディへの確かな愛と懺悔の思いを感じた。

観終わっても,しばらく言葉が見つからなかった。
こんなにも,暗く,重く,そして静かで強烈な愛の物語。

犯罪者であったロルナの,ある意味これは,人間としての再生物語なのかもしれない。愛を知り,母となって再生したロルナの物語。愛した相手はもう存在せず,母としての彼女は幻想にすぎなかったとしても,それでも彼女の心は救いを得たのだと信じたい。


二人が初めて愛し合った翌朝,ロルナがクローディを追いかけてゆくときに見せた,一瞬の輝くような無邪気な笑みが忘れられない。

2009年9月 6日 (日)

ディファイアンス

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ディファイアンス(DEFIANCE)=抵抗。
これは,第二次世界大戦中に,東欧ベラルーシの森の中で,ナチス・ドイツ軍と戦いながら生き抜いた1200人のユダヤ人たちと,彼らを率いたビエルスキー兄弟の物語だ。

ビエルスキー兄弟って,もちろんこの映画で初めて知った。
舞台となるベラルーシは,現在はポーランドとロシアの間に位置する国(ベラルーシ共和国)だ。ナチス占領下の時代には,国土の半分がソ連,半分がポーランドのものだったらしい。

ユダヤ人狩りによって,家を焼かれ,両親を殺された
ビエルスキー4兄弟。
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コミュニティのリーダーとなる長男のトヴィアを演じるのは,007のダニエル・クレイグ。007とはまた違ったカッコよさで,時には苦悩しつつも,冷静に皆を指揮する器の大きいトヴィアを,深みのある演技で演じきっている。

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熱血漢で行動派の次男ズシュを演じるリーヴ・シュライバー。トヴィアとの見解の相違から,一時コミュニティを出てソ連軍に加わるが,最後には再びトヴィアたちのもとに救出に駆けつける,気骨のあるキャラクターだ。
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そしてデリケートな好青年を絵に描いたような三男アザエルを演じたジェイミー・ベルリトル・ダンサージャンパーとずっと彼を応援してきた私だけど,今回の役は見せ場も多くって好感度も高く,素敵だった。両親を亡くしたばかりのときは,気弱に涙も見せていた彼が,兄のトヴィアを助けてコミュニティの世話をし,愛する女性を妻に迎えて,どんどんたくましく成長していく。
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雪の中のユダヤの結婚式のシーンが素敵

このアザエルは,ラストの脱出シーンでは,意気消沈しかけたトヴィアに代わって,皆の士気を奮い立たせる役目を果たす。

ホロコーストの時代に
自ら抵抗し,闘ったユダヤ人たちがいた。

これまで,抵抗するユダヤ人といえば,アップライジングというワルシャワ・ゲットー蜂起を描いた作品を観た記憶があるが,この物語のように1000人もの大所帯で森に隠れ住んだユダヤ人たちがいたとは知らなかった。
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リーダーのトヴィアは,
どうしても出エジプトのモーセを連想させる。

モーセの時代も,イスラエルの民たちは,紅海分離や天からのマナのような奇跡を目の当たりにしながらも,飢えや不安に襲われると「エジプトの奴隷時代の方がましだ」などと愚痴を言い,モーセを悩ませた。

この物語でも,寒さや飢えから,「ゲットーに帰りたい」と不満を漏らす者や,規律を乱そうとする者が出てきたりして,それらをなだめたり抑えたりするトヴィアの苦労は並大抵ではなかったと思う。

そんなトヴィアが,皆の食料のために愛馬を殺す場面は胸がつまる。強さと優しさと冷静さ・・・・困難を乗り越えなければならない集団を統率していくために必要なリーダーとしての資質を,トヴィアは持ち合わせていたと思う。まさに「男は黙って行動あるのみ」という頼れるタイプだ。
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このビエルスキー・パルチザンに対して,現地では「ポーランド人から搾取した山賊集団」という批判的な見方もあるそうな。しかし,そういう方法で食料調達をしなければ,彼らが飢えた民をここまで養っていくことはできなかっただろう。一番悪いのはやはり,ひとつの民族を,ここまで残虐に抹殺しようとしたナチス・ドイツに他ならないのだから。

史実に基づく,という点がおおいに勉強になるし,きっちりエンタメもしていて,飽きさせないストーリー展開だし,ダニエルもカッコいいし,まだ未見の方はぜひDVDでどうぞ!

2009年9月 2日 (水)

三国志

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レッドクリフじゃなくて,アンディ・ラウの三国志です。三国志というよりは「新説・趙雲伝」と呼んだほうがいいような・・・・。DVDで鑑賞!

蜀の五虎大将軍の中でも,常勝将軍と呼ばれた趙雲が,まだ無名の一兵士だった時代からその晩年までを描き,人間「趙雲」の生きざまや魅力を堪能できる作品。前半は彼が名を挙げた長坂の戦いをメインにし,後半は晩年の鳳鳴山の戦いにスポットを当てている。
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この物語の語り部をつとめるのは,趙雲と同郷の兵士で,趙雲から兄のように慕われていた平安(サモ・ハン)。最初は兄貴分として何かと趙雲の面倒を見ていた平安が,次第に名を挙げてゆく趙雲を嫉妬の混じった複雑な思いで見守るようになり,最後には・・・・という展開を見せるのだが,この平安という人物は三国志演義には存在せず,この作品用に作られたオリジナルキャラだそうだ。
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オリジナルキャラといえば,
晩年の趙雲の宿敵となる曹嬰(マギー・Q)。

曹操の孫娘
という設定だが,もちろんこの映画用に作られたキャラクター。映画を華やかに面白くするために,あえて女性の司令官を持ってきたのだろう。三国志ファンの方なら,このアレンジには,もしかしたら眉をひそめるかもしれないが,三国志に思い入れのないものとしては,なかなか楽しめた。

マギー・Qは美しく強く,男と互角に渡り合う役がほんとによく似合う。彼女とアンディの一騎打ちも,「ありえん」ようなワイヤーアクションもあったが,エンタメとして楽しめた。
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趙雲と言えば何といっても,
阿斗救出で有名な長坂の戦い!

レッドクリフの胡軍さんの活躍も素敵だったが,この作品の趙雲の戦いぶりはもっとエンタメ性を追及し,ほとんどありえないような一騎当千ぶりを見せつけてくれている。趙雲だけでなく,馬の活躍ぶりも天晴れだ!(↑の画像を見よ!)

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しかし,後に映る,阿斗の成人した姿(=劉禅)にはちょっとショック。だってとっても無能そうなんだもん・・・。中国では,「阿斗」とは,「小さい頃は優秀だったが、成長すると凡人となった人」とか「無能な跡取り」という意味で使われるとか・・・。

それにしても
アンディ・ラウは美しい・・・凛々しい・・・。ほんの少しのシーンだけど,若き日の故郷の恋人とのエピソードも心あたたまるものがある。
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彼女とはその後どうなったのか,ちょっと気になるところだか・・・・。波乱万丈な趙雲が,ちゃんと平穏な家庭が持てた・・・とは思えないよね,やっぱり。

アンディが演じる若いころの趙雲は,もちろんとっても精悍で素敵だが,年老いた白髪の趙雲もまた,超渋くって素敵だ。(白髪も皺もよく似合うのよ~~,このひと)

老いてますます増し加わる品格と,鳳鳴山の戦いで見せた悲壮感
に圧倒された。
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矢傷を負いながらも「皆の士気が下がる」 と
鎧を脱がなかった趙雲の心意気。

わずかの部下とたてこもる陣営の前には10万もの曹嬰の大軍。目の前で次々と倒れていく部下と打ち明けられる友の裏切り・・・・。
最期のときを覚悟しながらも,誇り高く馬を駆って,敵陣に単身で乗り込んでゆくラストの彼の姿は最高だった。これ,アンディ・ファンにはたまらん映画だろうなぁ・・・。
Cap027
↑部下を演じたこの方も,なかなか・・・

お題が「三国志」ってのはちょっと詐欺じゃない?という感じもするが,そしておそらく原作の三国志を,都合のいいようにかなり変えてるんだろうが・・・(どこ変えてるかわかんない~)これはこれで,とても楽しめた作品だった。

あ,諸葛孔明は,レッドクリフの金城さんがずっと好み~です。

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