« 裏街の聖者 | トップページ | アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン »

2009年7月 4日 (土)

ファニーゲームU.S.A.

Funnygames
オリジナルをビデオで観たのは何年前か・・・・。
その,強烈で,吐き気を催すほどの後味の悪さは,あまりにも衝撃的で,思わず「こんな作品があっていいのか?」と,直後にもう一度最初から観てしまった作品。2回続けて観終わったあとは,夜が明け始めていたっけ・・・。なんともハードなオールナイト鑑賞の一夜で,その後はくたびれて結局一睡もできず・・・・。

あらすじ: 別荘で過ごすアン(ナオミ・ワッツ)とジョージ(ティム・ロス)夫妻のもとに、ポール(マイケル・ピット)とピーター(ブラディ・コーベット)と名乗る青年が訪れる。ふてぶてしい訪問者の態度に業を煮やしたジョージがポールのほほを平手打ちすると、突然二人の男は凶暴な顔を見せ、生死をかけたゲームをしようと告げるが……。(シネマトゥデイ)
Funnygames3
一見無害そうに見える行きずりの二人の若者に
家族が皆殺しにされてしまう物語。

なんでこれを今更セルフリメイク?と思いつつも,大好きなナオミ・ワッツ出演と聞くと,やはりスルーはできない。一度観てるから免疫がついてるだろうし,と思ってレンタルしてみた。

観終わってまず一番に感じたことは,ストーリーから各シーンの詳細に至るまで「オリジナルのまんま!」じゃん・・・ということ。セルフリメイクだから許されることなのだろうが,細部に至るまでほとんどオリジナルのままだったような?
Funnygames_2
リメイクした意義って,これをハリウッドの演技派の名優たちが演じてみた・・・ということだけなのかな?なにはともあれ,ハネケ監督は,この作品が非常にお気に入りなんだろう。

ストーリーは先を知ってるので,初見時に比べると,衝撃や不快感は,私の場合かなり弱まっていた。それより,オリジナルの俳優さんたちと,リメイク版の俳優さんたちの個性を比べてみたりして,そういった面では楽しめた。
Funnygames9
ナオミ・ワッツがヒロインだと,やはり華がある。

それに彼女は,こんな風なボロボロにパニクる役が非常にハマるし,スタイルが抜群なので昔から下着姿もハマる。しかしこの作品の場合は,長時間下着姿でいる彼女を,セクシーだと感じる余裕はなかったが。
18943489_w434_h_q80
一家の父親役を演じたのはティム・ロス。いい具合に老けたくたびれ具合が,この役にぴったりだ。オリジナルではあの善き人のためのソナタウルリッヒ・ミューエさんが演じていた。ミューエさんの哀しげな瞳もまたこの役にぴったりで・・・。

ハリウッドのお約束の,「最後には敵を撃退するお父さん」はこの物語には存在しない。また,「子供は生き残る」というハリウッドのお約束も容赦なく破られる。
18943496_w434_h_q80
びっくりしたのが,主犯格の青年を演じたマイケル・ピットが超ハマっていたこと!今まで観た彼の作品の中で一番似合ってた・・・・。

彼がシルクで,ラブストーリーの主役を演じたときには「何とかしろ!その丸顔」とか思ってしまったものだが,この作品の彼は,その丸顔やガラスのような瞳が・・・笑顔の中に凶悪さや狂気を隠した不気味な美青年にぴったりだった。
Funnygamesmovie
それにしても・・・やはり
何度観ても胸糞の悪くなる不快な作品だ。

日常に潜む,暴力の恐ろしさをまじめに描くのが目的ではなくて,ただ観客に不快感を与えたくて作ったような底意地の悪ささえ感じる。犯人の挑発的な台詞や目線は,観客を傍観者に留め置くことを許さず,殺人ゲームに加担しろと誘っているかのようだ。

それでも,映画としての完成度は高いと思う。監督の感性や嗜好にはとてもついていけないけれど,観終わった後には,たとえ不快感だとしても,半端でない感情を残すことは間違いない。

まぁ,それでも私は,
あまり人様に手放しではお勧めしませんね・・・・この作品。

« 裏街の聖者 | トップページ | アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン »

映画 は行」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。

コメントいただいたので、
どんな形で褒めてられるのかなと思い、
さっそくお伺いしたら、

>何度観ても胸糞の悪くなる不快な作品だ。
>まぁ,それでも私は,あまり人様に手放しではお勧めしませんね・・・・この作品。

もう、思わずニヤニヤしてしまったではないですか。
まったく同感です。

ほんとうに、なんでこんな映画を繰り返し作るんでしょうね。
作らせる方も作らせる方ですが…(笑)&(汗)。

えいさん,こんばんは
あら・・・わたし,そういえばえいさん宅では
「ハネケ作品の中で特別な存在」みたいなコメント書いてますね。
で,自分のレビューではぜんぜん褒めてないし~~(;´▽`A``

一般の基準ではやっぱり褒めるわけにはいかないけど
なんというか「怖いもの見たさ」できっとこれからも再見してみたくなる作品なんですよ。
不快感もここまで極められると天晴れ!という感じですかね。
うーん,やっぱり褒めてないですね

>ほんとうに、なんでこんな映画を繰り返し作るんでしょうね。
>作らせる方も作らせる方ですが…(笑)&(汗)。
よっぽどこれがお気に入りなんでしょうね。ハネケさん。
秘蔵っ子の作品だから他人にはリメイクさせたくなくて自分で・・・って感じ?
もしこの作品がハネケさんの価値観そのものだとしたら
怖くって個人的にはお近づきになりたくないなぁ。

ナオミ・ワッツだと華がありますよねぇ〜
私も大好きな女優さんです。
「マルホランドドライブ」のナオミ・ワッツが好き♪

ティム・ロスも良かったし、息子を演じた子役も熱演でしたね〜
こんな恐ろしい映画の恐ろしい役を演じて、トラウマになりやしないかとちょっと心配。。。

ほんっとーに不快な映画なのだけど、それだけでは終わらない強烈な魅力がありますね、ハネケの映画って。

kenkoさん,こんばんは

私もナオミ・ワッツは一番好きなハリウッドの女優さんかも。
けっこう駄作や凡作にも出てる彼女だけど
マルホランド・ドライブや,キング・コング,リングなどの彼女の演技と美しさが大好きです。
この作品ではそんなナオミがどんどんズタボロになっていく・・・
まぁ,どんなカッコしてどんな表情してても美しいのには変わりはないですが。
オリジナルと一人ひとり役者を見比べながら観ましたが
それぞれ持ち味も出ててよかったです。
特にマイケル・ピットくんがよかったかな~

とにかく忘れたくても忘れられない作品ですよね。
ぼくはオリジナル未見なのですが、M.ピットは十分いやらしかった。
監督の思惑どおり、これ以上ない不快感を味わって劇場を後にしたのを憶えてます。

よく2度続けて観られたものだと感心します。
でも、どう目をさらにしたところで、
これっぽっちの救いもない映画であることも確かなんですよね。

クラムさん こんばんは

>ぼくはオリジナル未見なのですが、M.ピットは十分いやらしかった。
オリジナルより,ピットくんの方がよりいやらしい感じかも,です。
色白,童顔,赤唇のせいかもしれませんが・・・・

>監督の思惑どおり、これ以上ない不快感を味わって劇場を後にしたのを憶えてます。
そう,監督の思惑なんですよね,この不快感を観客に与える・・・というのは。
ハネケは観客を煙に巻いたり,不快感を味あわせたりすることを目的としてるみたいで
とっても人が悪い感じがして嫌いです。
で,なんでこれを2度も続けて観たかというと
「こんな作品,信じられない~,何かの間違いじゃ?」という気持ちから
再度まじまじと観てしまった・・・というのが理由だったと思います。(;´Д`A ```

■ 映画としての完成度は高いですね。

音楽の使い方や、編集や衣装や美術などは魅せますね。
また、悪意、不快をえぐり出すの事に徹しているので、これはこれで立派ですね。嫌いなテーマではありませんね。ただ、万人には奨めはしませんね。やはり。

※ イ・チャンドンが新作『詩』を作ったようです。まだ韓国でも封切られてないようですが、彼のベストと言う評判もあるようです。(韓国の評論家によれば)カンヌで何か取る可能性有り?デスネ。ななさんに、その時は彼の代表作『ペパーミントキャンディ』を思い出してブログアップしてくださいね!ななさんの細やかな評には毎回感心してますので …

みちしるべさん こんばんは

そうですね~,この作品は
オリジナルもこのリメイクも
どちらも悔しいけど傑作だとはおもうんですよね。
悪趣味の極みの作品ではあるのですが
ひとつの芸術作品としてみると
とても完成度が高いです。
もっともハネケ監督作品で私が好きな(?)のは
この作品だけですが。

>イ・チャンドン監督の「詩」
そうですか~,それはとても期待大ですね。
「ペパーミントキャンディ」も再見して
記事を書こうと思ったのですがまとまらずに断念していますが・・・
「詩」を目にするのはずっと先になりそうですが
その時はがんばって感想をアップしますね。
あ,ソン・ガンホの「渇き」も早く観たいのだけど・・・。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ファニーゲームU.S.A.:

» ファニーゲームUSA [ぁの、アレ!床屋のぐるぐる回ってるヤツ!]
同じものを撮るということのハネケ監督のハリウッドへの回答。 ファニーゲームU.S.A. [DVD]posted with amazlet at 09.06.26アミューズソフトエンタテイン... [続きを読む]

» 『ファニーゲーム U.S.A.』 [ラムの大通り]
(原題:Funny Games U.S.) 「いやあ、恥ずかしながらこんなこともあるんだな」 ----ニャに? 恥ずかしいのはいつもじゃニャい。 「言うなあ。フォーンも(笑)。 実はこの『ファニーゲームU.S.A.』という作品、 ハリウッドにおける ミヒャエル・ハネケ監督のセルフ・リメイク。 ところがぼくはオリジナルを観ている“らしい”ことに ようやく気づいたんだ」 ----どういうこと? その“らしい”って? 「ぼくがミヒャエル・ハネケを“意識”したのは意外と遅く、 『隠された記憶』の頃。 で... [続きを読む]

« 裏街の聖者 | トップページ | アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン »

フォト

BBM関連写真集

  • 自分の中の感情に・・・
    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。
無料ブログはココログ