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2009年6月 3日 (水)

僕は君のために蝶になる

Poster
ジャケットの美青年と,エグザイル/絆ジョニー・トー監督作品ということに惹かれてDVDで鑑賞。ノワール作品ではなく,不思議なラブストーリーだった。ふ〜ん,こんな作品も撮れるんだ。・・・・で,けっこう好きかも,これ。
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あらすじ:
エンジャ(リー・ビンビン)は密かに思いを寄せていた大学の人気者アトン(ヴィック・チョウ)と結ばれるが、幸せな時間もつかの間、アトンが事故に遭い亡くなってしまう。3年後、法律事務所で働くエンジャは周囲に心を閉ざし、精神安定剤に頼る日々を送っていた。そんなある夜、アトンが当時のままの姿で目の前に現れる。(シネマトゥデイ)

主人公のイケメン(実は幽霊)役を演じたヴィック・チョウ(初見)。ちょっと濃いめの顔立ちと甘めの声が,なかなか素敵。
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死んでしまった恋人が,幽霊になって現れる・・・と聞くと,しさのあまりかなぁ?と思いがちだけど,この物語はちょっと理由が違った。「君のために蝶になる」という邦題に惑わされてはいけない。蝶に生まれ変わっていつまでも恋人を見守る・・・というおセンチな純愛ものではない。そういうありきたりな内容ではなかったところが,新鮮で面白かった。

幽霊アトンは,彼女恋しさで出てきたのではなく,成仏できない自分の悩みを解決したくてエンジャの前に姿を現したのだ。なぜなら,彼にはぜひとも決着をつけたい心の問題がいくつかあったから。ケリがつかないままでは,死んでも死にきれなかったのだろう。
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付き合い始めたばかりのエンジャと痴話げんかになり,「僕を本気で好きなのか?」と問い詰めていた最中に,突然死んでしまったアトン。


途中で中断された喧嘩。
聞くことができなかった彼女の答え。

それが未練となって,
アトンの魂は3年間もこの世から離れられなかったのだ。
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だから,アトンの幽霊とエンジャとの初対面(?)の会話も,「会いたかった~」とかいうものではなく,初めから険悪なムード。


「君のせいで僕の人生終わったんだ」とか「あなたなんか大嫌い,私だって苦しんできたのよ」という,売り言葉に買い言葉のようなセリフさえ交わされる。
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まだ互いの愛が確信できてない,ごく初期のつきあいの段階で,喧嘩の真っ最中に片方が事故死した・・・というカップル。幽霊になって戻ってきた相手と語り合ううちに,互いの真意が徐々に理解できてくる・・・そんなお話。

なんだか,片方が死んでしまってから,やっと始まるラブストーリーのような不思議な設定の物語。アトンの幽霊とエンジャとは,ある時は反発し合い,ある時はしんみりと本音を語って心を通わせながら,次第に互いの間のわだかまりを解いてゆく。
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そして,アトンはエンジャの助けを借りて,もうひとつの未練断絶状態だった父親と仲直りもせずに死んでしまったこと)とも向き合うことができる。この父親を,レッドクリフで劉備役だった俳優さんが演じている。息子と和解していればよかった,と心の中では深く悔いている,不器用で一徹な父親の役を,味わい深く演じていた。

その他にも,エグザイルに出てた俳優さんが何人か,これにも顔を見せていた。(こちらの作品では,しっかり台詞をたくさんしゃべっていた。)

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観終わって,一番心に残ったのは,大切な相手には,手遅れになる前にちゃんと思いを伝えなくては,ということだった。

ある日突然,何の準備もできずに,
逝ってしまう場合もあるのだから。
言い残したことや,やり残したこと,
相手に伝えるべきだった思い。


ほんとは愛してた…言ってやればよかった
と後悔することは,逝く者にとっても,残される者にとっても,なんとも哀しいものだから。
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ラストに,未練が清算できて「やっと最初の僕らに戻れた・・・」と爽やかに笑うアトン。彼の事故死の日から,二人とも後悔やら相手を恨む気持ちやら,自分を憐れむ気持ちやらにさいなまれて,出会ったころの愛を見失っていたのだろう。・・・それがやっとリセットされたすがすがしさ。

今ではきっと,以前とは比べものにならないほどの強い絆を感じている二人にとって,今度こそ本当に訪れる別れはちょっと切なかったが,エンジャにもまた新しく「あの青年」との未来が待っているのだろう。

軽妙な語り口の物語なのに,深いテーマもそこはかとなく感じられて,ほんと不思議な魅力の作品。繰り返し言うけど,これ,けっこう好きだ。

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コメント

ななさん、はじめまして。
トラックバック&コメントありがとうございました。(*^-^*

この作品はファンタジーではあるけど、
守り・守られるといった王子様・お姫様的な甘い恋愛物語ではなくて、
お互いに不満を言いながらも率直な気持ちを語り合い
心が通い合っていくのがリアルでしたね。

ジョニー・トー監督はノワール映画から恋愛映画まで
幅広いジャンルの映画を撮っていて多彩ですね☆

BCさん,こんばんは,いらっしゃいませ!

>ファンタジーではあるけど、
>守り・守られるといった王子様・お姫様的な甘い恋愛物語ではなくて、・・・
デミ・ムーアの「ゴースト」みたいなのとはまた違っていて
まるで喧嘩の続きがしたくてこの世に現れたみたいな幽霊でしたが
そのうちに心を通わせ合って,お互いがお互いを癒していく・・・というストーリーは新鮮でした。
お父さんとのエピソードは心に残りました。

ジョニー・トー監督作品,これのほかは「エグザイル」となんと「ダイエット・ラブ」なんか観てますが
ほんといろんな引き出しを持つ監督さんですねぇ。


こんばんは♪
アトンが幽霊として出現してから2人の仲が進展する様子は、切なかったです。
神様が特例を認め、アトンを地上にもどしてくれないか、などと思ってしまいましたが。(笑)

>ある日突然,何の準備もできずに,逝ってしまう場合もあるのだから。
ドキッとしました。そんなとき未練を残さないよう、日々やることをちゃんとやろうと改めて思った次第です。

エグザイルに出ていた俳優さん、ロイ・チョンはどういう役だったか、もう一度確かめたくなりました。
とても素敵だったので要チェックです。(笑)

孔雀の森さん こんばんは!

>神様が特例を認め、アトンを地上にもどしてくれないか、などと思ってしまいましたが。(笑)
ほんとにね~
生きてるうちにあれくらい,深く相手が理解できてたらよかったのに・・・
幽霊との恋というのは切ないです。
ヴィック・チョウさんはイケメンですが
そんなに切ない系の雰囲気の方ではないので
切なさのあまり泣けてきたりはしませんでしたが
これをリウ・イエなんかが演じていたら
号泣ものだったかもしれません・・・。

ロイ・チョンさん,おだやかーな精神科医の役でした。
「エグザイル」の彼とは別人でした!


ななさん、初めまして。

私のBLOGのこの作品の記事にコメントを下さり
本当にありがとうございました。

ジョニー・トー監督の作品は、ヴィックが
この作品が決まって初めて色々観させてもらい
他にも「ターンレフト ターンライト」など
所謂香港ノワールに括られる作品以外のもの
もあるのだと知りました。
多分、完成の引き出しの多い監督なんでしょうね。
「ターンレフト・・」もなかなか面白い作品でした。

私は最近邦画に偏っている傾向があるのですが、
ななさんのBLOGは色んなアジア映画をはじめとする
私の知らない作品を教えてくれそうな程深く、情報が満載なので、
これからも時々お邪魔させて下さいね。

あっ、最後にリウ・イエさん、素敵な役者さんですよね。私も好きです。

lou_tanさん,いらっしゃいませ!

「ターンレフト・ターンライト」は金城さん主演でしたっけ?
未見なのですが,トー監督ってノワールだけでなく
ラブストーリーを撮らせても,一風変わった魅力的な作品を撮りますよね。
私は「ダイエット・ラブ」というのを観たことがありますが
あれも,変わった設定の面白い作品でした。

邦画もよい作品がたくさんありますよね。
わたしはもともと洋画中心で
今でも鑑賞数は洋画が圧倒的に多いのですが
邦画やアジア映画も厳選して鑑賞してます。
厳選するせいか,邦画とアジア映画はほとんど外れがなく
「観てよかった!」と思うものばかり。
(洋画はときどき宣伝倒れに思えるものにも当たりますが)

リウ・イエくん・・・「藍宇」で初めて観てから大好きになりました。
彼の作品は欠かさず観るようになりましたよ(数少ないけど)
記事も書いてるので,また感想などおしゃべりできると嬉しいです。

lou_tanさんの文章は,とても素敵ですね。
こちらこそ,またおじゃまさせていただきます!


ななさん

再び失礼します。
>多分、完成の引き出しの多い監督なんでしょうね。
もうお分かりでしょうが、変換ミスです
(誤)完成→(正)感性

よくやるんです・・・・

>「ターンレフト・ターンライト」は金城さん主演でしたっけ?
そうです。金城さん主演の作品です。
共演の女優さんが劇中で着ている服のスタイリングがセンスが良かった事を、妙に覚えています。
漫画のようなストーリーですが、なかなか可愛いラブ・ストーリーです。

lou_tanさん,またまたありがとう!

あはは,変換ミス,わたしもよくやりますよん。
自分ちの返コメで間違ったときは直せるけど
人さまのお宅でのミスって直せないので
あとで確認して「うっわー」となっちゃいます。

「ターンレフト~」リリース当時にレンタルしようか迷った覚えがあります。
金城さんも好きな俳優さんなので観てみたいなぁ。
かわいいラブストーリーですか。
トー監督のラブストーリーは単にベタな物語でなく
ちょっと変わったキュートさがあるような気がします。
ありえない設定でもすっと観れてしまう。
さすが香港映画界では「先生」と言われるだけありますね。

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