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2009年6月10日 (水)

ラヴソング

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ピーター・チャン監督が贈る
切なくも温かい「10年の恋」・・・・・。

何と表現していいかわからないくらい,素敵な雰囲気の作品。心の底から好きになっちゃった,これ。

シウクワン(レオン・ライ)とレイキウ(マギー・チャン)が出会ったのは,返還直前の活気あふれる香港。二人とも,中国大陸から夢を抱いて香港に出稼ぎにやってきた若者。ひとりは天津から。そしてもうひとりは広州から。
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われわれ日本人から見ると,香港も中国大陸も区別がつかないけど,この当時,香港は最先端をいく「大都会」で,夢の叶う場所であり,それに比べて大陸の方は「田舎」だと下に見られていたらしい。
広東語や英語が話せないと相手にされない香港。
大陸人であることに,引け目を感じさせる雰囲気の香港。


香港に出てきて「ひと旗あげ」ようとした大陸人の決意は,わたしたちが「東京」へいって成功したい,という感覚よりも,もっともっと悲壮なものだったのかしら,と感じた。
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そんな中で出会った シウクワンとレイキウ。
初めて接するキャッシュカードやマグドナルドにいちいち驚きの目を見張る,素朴で不器用な青年シウクワン。一方,さっさと香港の言葉やファッションをマスターし,がむしゃらに働いて一攫千金を夢見る,気丈でやり手のレイキウ。

正反対のタイプともいえる二人が「親友」になったのは,やはり大陸人同士,共鳴する悩みや苦労や夢を抱えていたからだろうか。
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シウクワンには故郷の天津に婚約者がいて・・・・。彼のつつましい夢のすべては,彼女との結婚で。それでも,香港の片隅で懸命に生きている彼にとって,同じ境遇のレイキウとの心の絆は日に日に深まっていき・・・。

衝動的に男女の関係になってからも,彼らは「自分たちは親友」だと思いこもうとする。身体は結びついていても,心は互いをどれだけ愛しているのか,まだこの地点では二人ともわかっていない。いや,それからはあえて目をそむけようとした,と言うべきか。
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やがてシウクワンは婚約者を香港に呼び寄せて結婚し,レイキウはヤクザのボス(エリック・ツァン)の恋人となり,事業家としても成功する。夢が叶ったかのように見えた二人だけど・・・・・。

最初の出会いから10年もの間,舞台を香港からニューヨークへと移しながら,愛し合いながらもすれ違いを繰り返すふたり。それは「君の名は」のように「探してるのに出逢えない」というすれ違いではなく,互いに別のパートナーがいるためにタイミングが合わない・・・というすれ違いである。
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素直に,一番愛している相手の胸に飛び込めばいいのに・・・とやきもきしつつ,二人の恋の行方をひたすら追い続けた2時間。それは,主演の二人がいかにも魅力的で,目が離せなかったせいもある。

純情青年を絵に描いたようなレオン・ライのはにかんだ笑顔も,ハッキリして気が強いマギーが時折見せる,愛情深くて繊細な表情も,観ているうちに,どちらもすごく愛おしくなってくる。

10年に渡る恋とひとくちに言っても,よくありがちな,現実離れした波乱万丈の物語ではなく,そのなかに男女のささやかなエゴや弱さも散りばめられた,等身大の物語だ。それが,なんだかものすごく心地いいのは,やはりそのリアルさに共感できるからだろうか。
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ロマンスも非現実的すぎると興ざめするものだけど,この作品の場合,決して誇張せず,押しつけがましくもない淡々とした描き方のせいか,一瞬たりとも興ざめすることなく,どっぷりと二人に感情移入できた。

うまく言えないけど…必要以上にロマンチックすぎないのがいい。
それでも押さえるべきツボはきっちりと押さえてくれているのがいい。

そして,要所要所に絶妙のタイミングで登場する,二人にとっては思い入れの深い,テレサ・テンの歌。・・・・懐かしいなぁ。彼女の歌声!(よくカラオケで歌ったもんだ。「つぐない」とか「愛人」とか。) 彼女の若すぎる死は,日本人の私たちにもけっこうショックだったのを思い出した。
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ラストは素敵だ・・・・なんともいえない余韻が残る。
しあわせて,あたたかい余韻だ。

過去作品の中でも,私にとって,これはもっとも好感度の高いラブストーリーかもしれない。ラブストーリー好きで未見の方は,ぜひ一度ご覧になることをお勧めする。

エンドロールで流れるレオン・ライの「甜蜜蜜」の歌。
なんて甘くて優しい声!
テレサの歌う同曲とは,また一味違った魅力だった。

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映画 ら行」カテゴリの記事

コメント

ななさん、こんばんは。
私もこの作品大好きです。(*^-^*

ひととき離れたとしてもいつの日かまたきっとめぐり会える
二人の結びつきを感じる素敵なラストシーンでしたね。(*^-^*

ななさん、こんにちは。コメントとTBをありがとうございました。
私もこの映画大・大・大好きです!!
マギーって本当にいい女優さんだと思うんですが、今は半引退状態なのがなんとも惜しい!
レオン・ライは『メイランファン』観に行けなかったんですが、DVDになったら是非観たいと思っています。
ところで『チェイサー』楽しみですね。
夜道の運転はどうぞお気をつけて!

ななさ~ん、こんばんは♪
コメントいただき、嬉しくてすぐ飛んできました。
この映画のお話ができるなんて!!

ほんと素晴らしい映画ですよね。香港らしくて。
私も見たあとすぐにDVDを購入してしまいました。
感想ではマギーのことばかり書いてしまったのですけど、
前半のレオン・ライにはちょっと涙が出るほどだったんですよ☆
え?こんな俳優さんだった!?と驚きました。

>必要以上にロマンチックすぎないのがいい。

ほんとそうですよね。
きちんと地に足がついているし…
すれ違いもイライラさせられるようなものでなくてとてもよかったです♪

BCさん,こんばんは!
TB,コメントいただいて,とっても嬉しいです。
実は先におじゃましようと思っていたのですが
先を越されてしまいましたね。

この作品はブログ友だちの方がご自分の記事で絶賛されていたので
最近初めて知った作品です。
レオン・ライの顔と名前も一致してなかった私ですが
(マギー・チャンはよく知ってましたが)
この作品・・・・ほんと素晴らしかったです。
なんと表現していいのか,言葉が足らないくらい
「感じのよい」恋物語ですよねぇ。
きっと定期的に,いつまでも繰り返し観そうな作品です。

真紅さま,こんばんは!

これ,きっと真紅さまもお好きな予感がして
探してみたらやっぱり記事があって,嬉しかったです。
いい物語でしたね~,二人の主役もぴったりでした。
マギー・チャン,そういえば最近はスクリーンで観ませんねぇ,もったいない。
トニーとの共演作もいいのがいっぱいありますよね。

>レオン・ライは『メイランファン』観に行けなかったんですが、・・・・
そうそう,レオン・ライの「メイランファン」,私もDVD待ってます!

「チェイサー」はもう今から期待がふくらみっぱなし・・・。
怖い系の映画は結構平気なのですが
帰り道はさすがに怖いですかね・・・
真っ暗な夜道を山越えしなくてはいけないので・・・。

武田さん,こんばんは!

この作品の発掘のきっかけはまさに武田さんの記事なんですよ~
いい作品を紹介してくださってありがとう~
で,これからもよろしくです。
武田さんのツボにはまる作品って,私も同じことが多いから
感性が似てるのかな~なんて嬉しくなります。

私はこれでレオン・ライにやられました。
というか,「この作品のレオン・ライ」に・・・といった方がいいかな?
アンディ・ラウなんかと並んで四天王とか呼ばれてた俳優さんなんですねぇ,彼。
そうそ,前半の彼の,垢ぬけてない魅力がねぇ・・・
涙が出るくらい,いとおしかったわ・・・
母性本能やられました・・・・。

とっても等身大のラブストーリーで
それでも地味ってことはなくてやっぱり素敵なんですよね。
三角関係も出てくるのですが,憎まれ役がなく,善人ばかりってことも気に入りました。

ななさ~ん、こんばんは!
今日は「T4」を観てきました。
これから夏にかけて、いろいろ好みの
娯楽系作品が公開なので、また
劇場に通うかも~!

ところで本作。懐かしい~!
わたしも大好きです。おっしゃるように、
押し付けがましくなく、非現実的すぎず、
そして筋が通った話でいいんですよね。

マギー・チャン、レオン・ライ、両方が
なんともいえずよかったです。このころ、
よく香港映画を観てました。
あまりロマンス映画が好きではないわたしの、
数少ないお気に入り作です!

JoJoさーん,これ御存じなのねー,さすが!

わたしは今回初めて観たのですが
なんでこんな名作を見逃していたかなぁって。

>押し付けがましくなく、非現実的すぎず、
>そして筋が通った話でいいんですよね。
そうなんですよね,現実的な恋物語なんですよね。
それでも主演のおふたりのキャラの魅力や
細やかな表情の演技で
十分ロマンティックな気分も味わえました。

>あまりロマンス映画が好きではないわたしの、
>数少ないお気に入り作です!
あはは,けっこうロマンス映画が好きな私ですが
これはお気に入りの3本の指に入りますねー。
なんでしょうねぇ,「タイタニック」なんかよりずっと魅力的ですね。

ターミネーター・・・そのうち私も観に行けたら行く予定ですが,まだ未定です。


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