エグザイル/絆
解説: 香港映画界が誇るヒットメーカー、ジョニー・トーが監督を務めた、裏社会に生きる男たちの友情とロマンを描いたノワール・アクション。因縁の再会を果たしたマフィアの仲間たちが、ボスの追っ手から逃れるべく激しいガン・アクションを繰り広げる。アンソニー・ウォン、ラム・シュー、サイモン・ヤムといった、ジョニー・トー監督作品ではおなじみの役者たちが集結。緊迫感あふれるシーンの中でときおり見せる、男同士の純粋でユーモラスなやり取りにも胸が熱くなる。(シネマトゥデイ)
聞くところによると,これ,脚本も,出演者への演技の注文も無いに等しく,ほとんど役者のアドリブで撮った作品らしい。・・・・なんでも,トー監督の,大作の後の息抜き作品だそうで。(信じれん・・・Σ( ̄ロ ̄lll))
なのにこの魅力と来たら!
とにかくカッコいい男たちのてんこ盛り!
月並みな褒め言葉だけど,その一言に尽きる作品だ。
舞台は,中国返還前夜の,ポルトガル領マカオ。
もちろん脚本がないに等しいので,人物の背景の掘り下げは浅い。互いの過去のいきさつなんぞ,五人の男は幼馴染みで,その中のひとりで妻子持ちの男が,ボスに歯向かって逃げていたが,また舞い戻ってきた,ということくらいしか設定されてない。
そんな書き込み不足な背景にもかかわらず,五人の男たちのキャラが燦然と輝いているのが素晴らしい。みんなそこそこいいオッサンで,服装も洗練されていないのだけど,五人とも表情や間の取り方,アクションも含めたそれぞれの動きが,何とも絵になるのだ。わたしはアンソニー・ウォンしか知らなかったが,それぞれが違ったセクシーさを持っている。
聞けば皆さん,ジョニー・トー監督作品の常連だそうで,顔を合わせれば,アドリブでもなんでも,阿吽(あうん)の呼吸で,演技ができるのかもしれない。どの俳優さんの動きも,みんな無駄がなく,そして美しいったらない。
痺れるくらいスタイリッシュな銃撃シーン。
特に室内での乱れ撃ちの場面は圧巻だ。
銃弾にはためくカーテンや,宙を舞う空き缶など,小物の使い方も心憎い。最後の銃撃戦の,天井から俯瞰するようなショットは,まるで美しい群舞のようにさえ見える。思わず「うわぁー,綺麗」とため息がでるほどに。
絶妙な間合いで訪れる,これらの最高の銃撃シーンに見とれて,少しオーバーアクション気味に思える演技や,都合のよすぎる薄いストーリーなどの粗は,そんなに気にならなかった。
エキゾチックなギターの音色や,哀愁ただよう鈴の音を使ったBGMも洒落ていて素敵だった。人間ドラマよりアクションのほうが際立っている作品ではあるけれど,五人の男たちの熱い友情には,やはり感動もできたし・・・・・。
生(き)のウィスキーを瓶ごとラッパ飲み,回し飲みする彼ら・・・最後の最後までカッコよかったなぁ・・・・しかし,あの風俗嬢のラストの行動は,まさに漁夫の利だね・・・。
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くくくぅーーーーーっ!!
今回は40代大集合映画なので、昭和な30代ルイス・クーはお休みです{/face_naki/}
なんだかベタなオヤジギャグの出だしで申し訳ありません。
しかし、まあ映画は全編通して「くくくぅーーーっ!!」というしかないですね。
もうあれこれいわず観ましょう。
(まあ、相変わらずのフィルム一本か二本の巡業みたいですが)
「レッドクリフか20面相をリピってもいーんだけどね」
と思いつつ、このどっちかを2009年幕開け作品に持ってくるのもなあ・・・
と、この映画の公開を待... [続きを読む]
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香港映画。ジョニー・トー監督によるノワール・アクション。
おはなし:中国返還が迫るマカオで ブレイズ(アンソニー・ウォン)、ファット(ラム・シュー)、タン(フランシス・ン)、キャット(ロイ・チョン)の4人が再会した。ボスのフェイを銃撃して逃亡したウー(ニック・チョン)を巡り、幼馴染の彼らは敵と味方にわかれることになってしまう。
『インファナル・アフェア』シリーズのようなストーリー性で魅せる作品ではないけれど、男の美学と映像に酔いしれる作品でした。どちらかとい... [続きを読む]
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40本以上の監督作をもつベテラン、ジョニー・トーの最新作{/atten/}
といっても、2006年の作品。やっと日本で公開。
劇場の予告篇を観て面白そうだな〜と思ってたら、くまんちゅうさんにオススメされたので
週末はまたほかに観たいのあるし、早々に観てきました〜{/light/}
『ザ・ミッション』の続編らしいけど観てなくてもぜんぜんOK☆
いや〜これ、めっちゃカッコイイ映画でした
男たちの友情、美学、絆。
いいね、いいね。 渋すぎです{/ee_2/}
『インファナルアフェア』シリー... [続きを読む]
こんばんは!
ホント、かっこいい男たちがテンコ盛りでしたねー♪
そして、それぞれのキャラが際立ってましたね。
その中でメインの幼馴染たちの(イイ年して普段は悪ガキの集まりみたいだけど)いざというときはどう動くかお互い何も言わなくても分かり合ってるという雰囲気までもが絵になってて、しびれましたーーー!
不器用な生き方しかできないけど、友情に篤い奴らでしたね・・・。
お暇があれば、是非是非、「ザ・ミッション 非情の掟」のほうもご覧になってみてくださいませ~。
投稿: DD | 2009年5月29日 (金) 00時45分
こんにちはー。
「大作後の息抜き」なのですが、その大作が日本公開もDVD発売もされる気配がないので
かなしい限りです・・・(爆涙)
息抜きというか、監督の趣味と好みに没頭できたってことでしょうね。
興行成績狙いのときは、また違う雰囲気出してきますから。
アンディ兄さんの「イエスタデイ ワンスモア」とかは、興行狙い系なんですが、
コレは興行狙い系ジョニトー先生作の中でもおススメです。
投稿: RIN | 2009年5月29日 (金) 13時52分
ななさん、こんにちは! いつもコメントとTBをありがとうございます~。
この映画、カッコよかったですね♪
そうか~、脚本も演出もほとんどないって、、どんな現場なんでしょうね?
ジョニー・トーの映画ってほとんど知らないんですよ。
↑のコメントでRINさんもおっしゃってるけど「先生」って呼ぶ方が多いような。。
どんな監督さんなんだろう? もっとたくさん作品を観てみたいです。
投稿: 真紅 | 2009年5月29日 (金) 19時32分
DDさん こんばんはー
コメント,ありがとうございます。
この映画,前から楽しみにしてたんですが
近場では劇場公開されなくて
DVDを首を長くして待ってたのですよ。
もう「カッコいい!」のひとことにつきますね。
暴力が好きなわけではありませんが,なぜかガンアクションに目がない私。
大満足の作品でした。
ほんと,幼馴染の5人の阿吽の呼吸はすごかったですね。
どんだけ仲がよかったんだー?ということがよくわかりましたよ。
この監督さんの作品って初めてなんですが
「ミッション 非情の掟」もぜひ見たくなってしまいました。
投稿: なな | 2009年5月29日 (金) 23時51分
とっても、男くさい映画と言いますか、これが男の美学なんだなあって思わる映画でしたね。
画面もちょいセピアがかってた感じで、雰囲気ありました!
銃撃戦のさなかにいきなりご飯作ろう! みたいな流れになって、それまでドンパチやってた男たちが一斉に手際よく手伝うところなんて、面白かったですね。
投稿: rose_chocolat | 2009年5月30日 (土) 06時52分
こんにちは~♪
しばらく劇場鑑賞の予定はないんですかー?
お忙しいのね、きっと。
>もちろん脚本がないに等しいので,人物の背景の掘り下げは浅い
キャハハ!
そうなのよね。
でも、そんなのカンケーねー!っていうくらいにアクションが美しかったからいいの。
しびれましたっ!
投稿: ミチ | 2009年5月30日 (土) 15時54分
RINさん,こんばんは!
ほぉ,「大作」よりこちらの作品の方が人気をさらってしまったのですね。
監督さん,こちらの作品では,
ご自分の趣味を徹底できた・・・というのも頷ける雰囲気がありました。
結果的にそれが興行成績につながるというのもなんか素敵ですね。
>アンディ兄さんの「イエスタデイ ワンスモア」・・・
うーん,未見ですね~,というか,初めて耳にしましたが
アンディ兄さんは好きなので,また探してみます!
投稿: なな | 2009年5月30日 (土) 22時32分
真紅さま こんばんは
わたしもジョニー・トー監督ってこれまで存在も知りませんでした(汗)
今後は注目したいと思います。
>脚本も演出もほとんどないって、、どんな現場なんでしょうね?
気心の知れた俳優さんぞろいだったのでしょうか?
なんでもラストシーンだけは監督の注文があったらしいですけど
その他のアクションシーンなんかも俳優さんたちだけで動きの打ち合わせをしたりして
監督は何も指示しなかったとか・・・
それでもこれだけのものが撮れるのですね。
投稿: なな | 2009年5月30日 (土) 22時36分
rose_chocolatさん こんばんは
男ならだれでも「カッコいい!」と憧れる世界なんじゃないかと思いながら観ました。
彼らのしぐさや表情のどれをとってもクールで素敵でした。
・・・・みんな「ワル」には違いないんですけどね。(笑)
そうそう,急に仲直りしてご飯作るシーン
あのシーンだけでも,彼らが昔からほんとに仲がよかったんだなぁって
伝わってきましたね。
投稿: なな | 2009年5月30日 (土) 22時43分
ミチさん こんばんは!
このまま もしかしたら夏休みまで劇場へは行けないかも~(。>0<。)
土日が自分のためにそんなに使えないのと
糖尿病持ちの母がインフルに神経質になってて
「映画館なんかでインフルもらってきたら私にうつる~」とうるさいのですよ。
・・・ウチの県にはまだ入ってきてないのに・・インフル。
DVD三昧で我慢することにします・・・
この作品は気分爽快にさせてもらえましたね!
たしかにアドリブのセリフでは,お互いの背景なんかについてはとっさに言及できないだろうし
「5人は仲良し」っていうのしかわからなかったけど
それでもあの銃撃戦さえあれば,あとは何もいらない!っていうくらい
美しくてカッコいいシーンがどっさりでしたね。
投稿: なな | 2009年5月30日 (土) 22時52分
漢たちの立ち位置が最高ですよね。
単に横並びするのではなく、前後左右バラバラなのにそれが逆に渋くて格好いい。
これぞ男ではなく漢の映画でしたよ。
投稿: にゃむばなな | 2009年5月31日 (日) 14時38分
にゃむばななさん こんばんは
>漢たちの立ち位置が最高ですよね。
って,夜中の集会では,ああいう風に距離を置いて
そうですよねー,適度にバラけて佇んでいましたね。
わたしは彼らがウーの家の周囲に現れる冒頭のシーン
彼らが互いに距離をおいて無言で互いを牽制しながら立ってるあの場面を観て
「猫の集会」を連想してしまいました。
猫
互いに顔色を窺ってるものなので・・・・。
投稿: なな | 2009年5月31日 (日) 19時42分
ななさん、こんばんは☆
ご覧になられたのですね!
私も早く見たいです~。
トー監督、かっこいい映画多いですが、
「ザ・ミッション」は特にしびれました。
美学炸裂、出てくる男全員かっこいいんです♪
投稿: 武田 | 2009年5月31日 (日) 21時13分
武田さん こんばんは!
これはまえまえからDVDになったらぜひ観よう!と思い決めてて。
いや,この監督さんの作品,初めてなんですけどね。
武田さんは,「ミッション~」ご覧になったのねー。
>美学炸裂、出てくる男全員かっこいいんです♪
きゃぁぁ,観たい,観たい!
きっとこの「エグザイル」と出演者もかぶってるんじゃないかなぁ?
この監督さん,男性を素敵に撮ると評判らしいです。
武田さんも,「エグザイル」ぜひご覧になってねー。
投稿: なな | 2009年5月31日 (日) 22時27分
こんばんは~~。
コレ観たかったんですが・・・上映期間、超短くて・・・残念でした。。。
でも~“息抜き”だったの~?
知らなかった!!
みんなおじさんになってしまったけど~ステキだよね。
なんか、カッコいい!!
トー監督の手腕もあるかな?
横レスですが・・・
『イエスタディ・ワンスモア』アンディがとってもカッコいいので~機会があったら観てね♪
おなじみのサミーとの共演です。
泣けちゃったりもする(私だけ?)
投稿: マリー | 2009年6月 1日 (月) 20時58分
マリーさん,こんばんは!
さすがアンディ・ファンのマリーさん!
ジョニー・トー監督作品もご覧になっているのですね。
今日,ツタヤでトー監督の他作品を探していたら
アンディと反町さんの「フルタイム・キラー」ってのもありました。
「イエスタディ~」はリリースされてすぐに,レンタルしようかと迷った記憶がありますが
「ラブコメか?」と思っちゃって(ラブコメそんなに好きじゃない)
スルーしちゃったんですよね。勿体ない。
また機会があれば探してみますね。
アンディはサミーさんとよく組みますねぇ。
「ダイエット・ラブ」というのを観たことありますよ。
で,調べてみたらあれもトー監督だったんですね!
この監督さんの作品,なーんだ初めてじゃなかったんだー!
でも「ダイエット~」とこの「エグザイル」が同じ監督さんの作品とはとても思えなかった・・・。
>でも~“息抜き”だったの~?
息抜きというか,「ほんの気晴らし」みたいなノリで
楽しく撮ったみたいですねぇ。
細かいこと気にせずに,ご自分の趣味に走りまくった,という感じですね。
投稿: なな | 2009年6月 1日 (月) 22時57分
ななさんこんばんは☆
コメTBありがとうです!
なかなか来られずゴメンナサイ、
もうこの映画はカッコイイ!の一言でした!
オヤジは好きじゃないんだけど(笑)
この方達は皆クールでしたよね♪
投稿: mig | 2009年6月 2日 (火) 01時08分
migさん,こちらこそご無沙汰してますー
この映画の男たちのカッコよさと来たら!
>オヤジは好きじゃないんだけど(笑)
>この方達は皆クールでしたよね♪
私も若い子の方が好きですが
オヤジにしか出せない円熟したカッコよさってあるんですよねぇ。
投稿: なな | 2009年6月 2日 (火) 21時55分
かっこいいビジュアルですね。
映画を思い出します。
最近のアクション映画(とりわけハリウッド製)には
失われてしまった
エモーショナルがここにはふんだん。
やはり、映画はこうでなくっちゃ。
投稿: えい | 2009年6月 2日 (火) 23時19分
えいさん,こんばんは!
そうなんですよねー
これはハリウッドは逆立ちしてもマネできっこない世界だと
思うのは私だけでしょうか?
聞くところによると
ハイウッドリメイク決定したそうですが
やめといた方が・・・・と思うのも
また私だけでしょうか?
投稿: なな | 2009年6月 2日 (火) 23時31分
こんばんは♪
「どこを切り取っても一幅の絵になっている」とは、こういう作品を言うのだなあと、実感しました。
おっしゃるようにそれぞれのキャラが立っていましたね!!
3枚目のラム・シュでさえ渋いと思わせる瞬間がありました。
さて、これ以上何を褒めればいいのだか…。
ところでほとんどがアドリブだなんて、信じられません!
阿吽の呼吸だからこその、あの空気なのでしょうか。
撮影風景を見てみたいです。
投稿: 孔雀の森 | 2009年6月 4日 (木) 21時43分
孔雀の森さん こちらにもありがとう!
ほんと,構図がどれも美しくキマっていて最高でした!
>さて、これ以上何を褒めればいいのだか…。
あはは,その他は別にないのかもしれませんが
それだけでもこれだけ魅力があるのですから
大したものです!
脚本がどうってことないにもかかわらず,傑作になる作品ってそうありませんよ!
>ところでほとんどがアドリブだなんて、信じられません!
ほんとにね。こういう撮り方はウォン・カーウァイもやりますが
あちらはアドリブでもたくさんシーンを撮って,その中から選んで編集すると聞いてますが
トー監督はほんと役者まかせでぶっつけ本番!って感じだったのかもしれませんね。
気ごころの知れた役者ばかりだったので出来たことなのかも。
投稿: なな | 2009年6月 5日 (金) 21時36分