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2009年5月31日 (日)

デビルズ・バックボーン

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解説:
『ブレイド2』や超大作『ヘルボーイ』の成功でハリウッドでも注目を集めるメキシコの異才、ギレルモ・デル・トロ監督がスペインに招かれて撮ったホラー映画。激情型の男を演じたスペインのビッグスター、『オープン・ユア・アイズ』のエドゥアルド・ノリエガや、新星フェルナンド・ティエルブの熱演も見ものだ。ヨーロッパの血塗られた歴史と風土に培われた、怨念のすさまじさが霊を生息させ、さらに恐怖の結末を招く。(シネマトゥデイ)

ギレルモ・デル・トロ監督は私はホラー限定で好きだけど,最初に観たのはこの作品だった。おどろおどろしい題名ではあるけど,実はこの「デビルズ・バックボーン(悪魔の背骨)」というしろものは,そんなにストーリー上,重要な役割はしていない。なんでこんな題なのかいささか不思議である。
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物語の舞台は,内戦時代のスペイン。内戦で両親を失い,人里離れた荒野の真ん中のサンタ・ルチア孤児院にやってきたカルロス少年は,そこでサンティという名の少年の幽霊を目にするようになる・・・・。

パンズ・ラビリンスの原点のような雰囲気を持つこの作品,陰惨な時代背景ゆえか,陽光のあふれる昼間のシーンでも,まるで真夜中のような不気味な暗さが漂っている。
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もと共和党の闘士だった義足の女院長先生。
地下の不気味な貯水槽と,
中庭に落下したまま放置されている不発弾。
隠し事や悪事をいっぱい抱えていそうな,胡散臭い男前の管理人。
生薬として売られる,胎児漬けのラム酒。
(うげー( ̄Д ̄;;)。
・・・それを飲む老医師カサレス。(ぎょえぇぇ!((゚゚дд゚゚ ))!!。
このラム酒漬けの胎児の背骨を,デビルズ・バックボーンと呼ぶらしい。

いやはや,これだけ揃うと,別に幽霊が出なくても,
十分に気色の悪い孤児院・・・であると思うが。

そしてサンティ少年の幽霊は・・・・・・こんな感じ。
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けっこう・・・いやかなり怖いかも。
このサンティくんのヴィジュアルは。
さすが,「異形のもの」のヴィジュアルには,こだわりのある監督らしいと思った。このサンティ少年の霊は何を訴えたいのか・・・彼は繰り返し,カルロスの前に現れ,「大勢死ぬぞ」というセリフを囁く。

しかし,この物語の中で,本当に怖いものとして描かれているのは,実は幽霊ではなくて人間だ。

物語の後半,孤児院の少年や教師たちは命の危険にさらされ,物語は俄然,ホラーからサスペンス・アクション風に面白くなってくるが,敵はなんと反乱軍ではなく,戦争によって良心が冒されてしまった「身内の人間」だった。
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エドゥアルド・ノリエガ
が演じた,管理人のハシント
思わず見とれてしまうくらい,ワイルドでセクシーだが,これがとんでもない極悪人で。目的のためには,恩人だろうが恋人だろうが,子供だろうが平気で殺してしまうような男なのである。

しかし,彼がこんな冷酷な人間になったのも,内戦で家族を失って愛のない少年時代を過ごしたからであり,彼もまたこの時代の犠牲者なのかもしれない。
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デル・トロ監督のホラーは,こんな風に,理不尽で不幸な目に合う子どもたちが主役になることが多いし,ラストに用意されている救いや癒しも,この世的なものではないことが多いけれど,この作品はラストに現実的な救いがあると言えるだろう。

カルロスを中心とする生き残った少年たちは,勇敢にもハシントと闘うのだが,少年たちに手を貸すのが,サンティ少年と・・・もうひとり,「あるひとの幽霊」が登場する。このシーンはちょっと感動するかもしれない。少なくとも私はじーんとした。
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作品の題名だけ見るとオカルトもののようだけど,これは幽霊の因果応報の物語である。因果応報の物語って,たとえ怖くてもやっぱりカタルシスが漂うものだ。それに,ただ怖いだけでなく,立派なヒューマンドラマとしても観ることができる作品だと思う。

怖いのが絶対にダメ・・・というひとにはお勧めしないが,ものすごく怖いわけではないし,味わいと余韻のあるホラーが好きな方には,太鼓判を捺せる作品である。

私はこの作品では,幽霊よりも,人間の邪悪さや,それを生み出した「内戦」という時代背景の方がよほど怖く感じられた。

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コメント

ななさん コメントありがとうございます。
TBはどうも相性があるようで、ご面倒をおかけしました。

ホラーは大の苦手ですが、ギレルモ・デル・トロ監督の作品は色使い、世界観、異形のものの造形等、好きな部分がとても多い監督さんです。
それにプラスして、この作品はスペインならではのテーマも盛り込まれていて、ななさんが書かれている様にヒューマンドラマとして心に残りました。


ところでリンクの件ですが、相互リンクと言う形でこちらからもお願いして宜しいでしょうか?
宜しくお願いします。

こんばんは。

わぁ!と心の中で歓声を上げつつも、「課題作だからそのうち観るかも・・・」と、ななさんのレヴューを大切に取っておこうかと思案中です。
で、先にコメントだけ入れさせて頂きます。(^_^)

しかしななさん、、、「怖いと言うよりこの作品は可哀想っていう感じで・・・」とコメントを返して下さっていましたが・・・あの~、十分怖いんですけどぉ~サンティ少年のビジュアル。(^_^;)
私に観れますでしょうか・・・。

近いうちに鑑賞できたとしても、やっぱり怖いからもっと先に延ばすと決めたとしても、どっちにしても再訪させて頂きますね。(*^_^*)

哀生龍さん こんばんは!

>ギレルモ・デル・トロ監督の作品は色使い、世界観、異形のものの造形等、好きな部分がとても多い監督さんです。

そうですよねー,私も同様の理由で彼のホラーには惹きつけられます。
彼だけではなく,スペインの監督さんの撮るホラーは
アメリカンのものとは一味違っててとても好きです。
霊的なもの・・・怖いというより,やはり惹きつけられますね。
霊魂・・・というより,生身を離れてまで生き続ける魂・・・という概念が好きなんです。
私自身はまったく霊感などはありませんが
目に見えないものも信じるタチですから。

リンク,貴ブログでもしていただけるとのこと
ありがとうございます!
これからもよろしくお願いいたします。


ぺろんぱさん,こんばんは

あはは,たしかにサンティ少年の幽霊のヴィジュアルは怖いです。
・・・それは否定しませんがー。
でもやっぱり怖いというより可哀そうなんですよ。
最後は悪者はちゃんとやっつけられますけどね。
幽霊の仇討ちって,カタルシスありますよー。

>私に観れますでしょうか・・・。
うーん・・・どれくらい怖いのが苦手かによると思いますが
ただ,単なるホラーと位置づけてスルーするには勿体ない内容であることは確かです。
サンティくんの出てくるところは早送りしてご覧になる・・・というのはどうでしょうか?
そんなにしょっちゅう出てきませんし。うふふ。
あ,幽霊が出てこない場面も全体的にダークで不気味な感じはしますが
これはこの監督さんの持ち味でしょうね。

こんにちは♪

胎児のラム酒漬けとか、タイトルからして
どんなグログロなホラーやねん!とヘンな期待をしてしまうけど
そういう映画じゃないんですよね

オバケよりも生きてる人間の方がなんぼか怖いとか
やっぱり「パンズ」に通じるものがありますよね。
カサレス医師役の俳優さんが主演で、
デルトロ監督の長編デビュー映画「クロノス」も
悲しきホラーでおすすめなんだけど
こちらのDVDはどうやらすでに絶版になってるっぽいです

kenkoさん,こんばんは!

そう,このラム酒漬けの胎児と,タイトルと
ジャケットのデザインがほんと怖すぎますよね。
で,蓋をあけてみると,ホラーでは味わえないような
ヒューマンな感動もあって・・・・
「怖そう」というだけで食わず嫌いをされちゃう作品ですね。

それと反対に「パンズ~」の方は
まるでおとぎ話のようなキラキラしたデザインのジャケットで
「ロマンチックなファンタジー?」と期待して観てみれば
こっちも限りなくダークで予想を裏切られますし・・・。

「クロノス」も聞いたことあるなぁ・・・
あのお医者さん役の彼が主役なんですか。
観たいけど,絶版かぁ・・・残念。


こんにちは。
最近、忙しくて自分のブログの更新だけで一杯一杯でした。
本日は、時間があるので、こちらのブログもじっくり読ましてもらってます。

この映画、ホラーというだけではないんですね。
その裏にあるヒューマンドラマが見所ですか!
そんな作品は大好きです。
「ミスト」もそうでしたよね。
観てみたかったけど、レンタルにはないかなぁ。

亮さん こんばんは!
お忙しいのに,遊びに来てくださって感激!(≧∇≦)
私の方こそ,ご無沙汰してしまって・・・・

この「デビルズ~」は公開された年に観たのですが
強烈な印象を受けましたね。
スパニッシュ・ホラー独特のダークな風味は
「ミスト」とはまた一味違う点もありますが
「人間の怖さ」の方がテーマだという点は
「ミスト」と似ているかもしれません。

レンタル店にあるかなぁ・・・?
大きい店や,あるいは店主の好みによっては置いているかも。
ちなみに私の街のレンタル店にはなかったので
DVD買いました。

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